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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第五章:地獄の沙汰もバカ次第
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ゲームフェイズ1:『14』節制1

 バカはどきどきしながら四郎の回答を待った。

 だが。

「何言ってやがる……俺がテメエと組む利が無さすぎるだろうが……」

 四郎はにべもない!バカは悲しい!


「ええー……いいじゃねえかよぉ、誰かとは組まなきゃいけないんだぞぉ……?」

「だとしてもお前である必要はねえっつってんだよ!」

 四郎の態度に、バカは『そんなあ』という気分でいっぱいである。だが仕方がない。四郎が嫌だというのなら、バカは四郎とは組めないのだ……。

 だが。

 バカがしょんぼり、としていると……海斗がそっとやってきて、『まあ、ここは僕に任せておけ』とばかり、ぽふ、とバカの肩を叩いた。

「まあ、そう急ぐな、樺島。無理を言っても仕方がないだろう」

 ……そして、海斗がそんなことを言ったので、バカは『えええええええええ!?』とびっくりした!バカは!組むなら四郎じゃなきゃダメなのに!

 が、海斗はそう言うと、ちょっと笑って、全員に言った。

「まずは自己紹介としよう。それから提案なんだが……『3人組』を作るのはどうだろうか」




 ……ということで、自己紹介が終わった。こちら5人は和やかに、向こう4人は警戒しながらの自己紹介ではあったが、まあ、概ね、前回と同じようなかんじであった。

 そして。

「俺は七香さんとタヌキと組むよ。さっき脅すようなことを言った手前、俺達と組むのは嫌だっていう人も多いだろうし……」

 デュオが先手を切ってそう言うと、続いて、海斗がそっと進み出た。

「そういう理屈なら、僕と樺島は別の方がいいか。……まあ、僕の方は全く戦えない異能だから、特に警戒しないで貰えるとありがたいが、そういう訳にもいかないだろうしな……」

 更に、海斗もそう言ってしまったので、四郎はバカか海斗とは組まなければならなくなった!

「……その、そういう訳で、四郎さん、五右衛門さん、むつさん、ヤエさんは2人組を作ってもらって、どちらかの組が僕、どちらかの組が樺島と組んでもらう、のがいいか、と思う、んだが……どうだろうか」

 海斗は、ちょっとしおらしく、それでいて丁寧に尋ねる。……すると。

「あ、だったらアタシ、海斗君と組むわ。それから……そぉねえ、ヤエちゃん、ご一緒に、どーお?」

 なんと!五右衛門が、ヤエを連れてきてくれたのである!


 海斗と五右衛門とヤエの組み合わせは、どこかでやってほしかった組み合わせだ。それ故に、バカは『こんなにうまくいくことってあっていいのかぁ……?』と心配になってしまったが……。

「海斗君が戦えないっていうんだったら、アタシが入るべきだと思うのよね。アタシ、ぼちぼち戦える異能だと思うし。あ、でも、もしヤエちゃんとむつちゃん、どっちも戦えるようなら、女の子2人の方がいいかしら……?えーと、でも、それはそれでちょっと不安なのよねぇー……」

 ……五右衛門の話を聞いて、そして五右衛門の表情を見て……バカはなんとなく、察した。

 成程!多分、五右衛門はバカのことを警戒していて……だから、ヤエを守るために、さっさとヤエを連れて海斗のところへ行くことにしたのだろう!

 五右衛門は、賢い!


「五右衛門さんが戦えるというのなら、僕としては助かる。その、ヤエさんは、それでいいだろうか……?」

「え、あ、はい……よろしくお願いします」

 そして、ヤエは戸惑いながらもこれで頷いてしまったので、このチームは成立!

 ……つまり!

「じゃあ俺と四郎とむつの3人組だな!」

 バカはにこにこ笑顔でそう言った!

 むつも一緒になってしまうが、むつが一緒な分には、まあ、どうせ仲良くならなければならない人なのだから問題ないだろう!とバカは考えたのである。

 が。

「あー……それとも、その、もし四郎さんがそれでもよければ、むつさんも、こっちに来る、か……?女性が1人で、かつ筋肉バカと一緒のチーム、というのは、不安だろうし。勿論、それでは3人組ではなくなってしまうから、四郎さんさえよければ、ということになるが……」

 ……海斗が、そう、申し出た。

 バカは、『そ、それでいいの!?』という気分なのだが……海斗がやることである。間違いは無いだろう。

 実際、四郎は『むっ』という顔をしつつ……チラッ、とむつを見て、むつが『確かにちょっと不安ではあるけれど……』という顔をしているのを見つけて、ちょっとおろおろし始めた。

 ……ここでおろおろしちゃうのだから、やっぱり、四郎はいい奴なのだろう。バカは『よかったぁ、四郎のおっさんもいい人で……』と嬉しくなった!

「勿論、人数のことを言うなら、僕がそっちに行ってもいい。四郎さんとしては、『こちら側』が2人になってそれはそれで不安かもしれないし、そもそも、僕は戦えないからな。役には立てないだろうが……」

「……あー」

 そうして、海斗がいかにもしおらしくしているものだから、四郎も反論できないらしい。

 ……更に、ヤエが『女の子がいると安心……』という顔でむつを見つめ、むつもその視線に応えるように『女の子がいると安心……』という顔になってしまい、女の子2人が見つめ合う構図になってしまったので……。

「あーくそ!分かった!」

 四郎はそう言って、ため息を吐いた。

「おい、樺島。俺とお前と2人でいいな?」

「……うん!ありがとう、四郎のおっさん!」

 女子達を慮って、自分では危険だと思っているバカと2人組になってくれた。四郎のこの漢気に、バカはもう、満面の笑みである!

 やっぱり四郎は、いい奴なのだ!やったね!




 ……ということで。

「じゃあ、樺島と四郎さんが『14』のアルカナルーム。タヌキとデュオと七香さんが『12』のアルカナルーム。僕と五右衛門さんとむつさんとヤエさんが『20』のアルカナルーム、ということでいこう」

 海斗がそうまとめて、全員が頷く。バカも大きく頷いた。

 そうして、各チームがエレベーターへ向かう。

 バカと四郎は孔雀の個室エレベーターを使う。デュオ達は五右衛門の、そして海斗達はバカの個室エレベーターを使うらしい。

「よろしくな!四郎のおっさん!」

「おう。……てめえがマトモなことを祈るよ」

 四郎は何やら、滅茶苦茶に覚悟を決めた表情である。バカは『ビビらせちゃってるなあ……申し訳ねえなあ……』と思いつつ、できるだけ威圧感を与えないように、ちょっと背中を丸めて、すごすごとエレベーターへ乗り込んだ。




 エレベーターの中では、終始無言であった。こういう時、気の利いたお喋りができればいいのだが、バカはそんなに器用ではない。特に、ちょっと緊張気味の時にはてんで駄目である!

 また、四郎の方は四郎の方で、着々と警戒感を強めているらしく無言である。

 バカは、『俺が海斗みたいに頭よかったらなあ』と思うのだが、まあ、無い物ねだりをしてもダメなのだ。

 バカはバカの持っているもの……即ち、天使の羽で勝負するしかない!

 絶対に四郎の信頼を勝ち取ってみせる!と、バカは決意を強めるのだった!


 そうしている内に、エレベーターは無事、『14』の部屋の前に到達した。

 バカは緊張気味にエレベーターを降りて、そして、四郎に『開けるぞ!』と前置きしてから、そっとドアを開けた。

「こいつは……なんだ。パズルの類か……?」

 そして四郎は、部屋の中を見て、ぽかん、とした。

 ……そう!この部屋、『同時に全ての杯を水で満たすパズルの部屋』だったのである!




 四郎はしばらく、黙ってルールを読んだり壁に張り巡らされた水道管とコックを見たりしていた。が、『ああくそ』と頭を掻くと、ちょっと嫌そうにバカの方を見てきた。

「……おい、樺島。お前、こういうのは得意か」

「うん!これはなんとかなるやつ!」

 そしてバカはバカで、『あっ!これ、難しくてよく分かんねえけど、全部のコップを持ってきて一斉に水の中に沈めたら何とかなる部屋だ!』と思い出したため、満面の笑みである。バカは、自分のパワーでなんとかなる部屋が大好き!

「お前が?そうか……んじゃ、任せるが、いいか」

「うん!あっ、でも、その前に……」

 が、バカはちょっと思い留まった。というのも、バカはバカなりに、『俺のやり方って、海斗以外の人が見たらびっくりさせちゃうんだよなあ』と理解していたからである。

 今、四郎の目の前でコップだの水のタンクだのを引っぺがして持ってこようものなら、『ゲームクリアを妨害された!』と四郎を怒らせてしまいかねない。

 バカのやり方というものは、信頼関係を築いた間柄でのみ、やれるものなのだ。『これから信頼してほしい人』の前でやるのは、ちょっと……よろしくない!

 と、いうことで。

「あの、俺、四郎のおっさんに見せたいモンがあってぇ……」

 バカは、ちょっともじもじしつつ、そう切り出した。四郎は、大いに警戒を強めながら、バカの様子を窺っている。

「四郎のおっさんは、その、悪魔をぶっ殺したい、んだったよ、なあ……?」

「……ああ、そうだ」

「あの、だったら、俺が悪魔じゃない、って分かったら、俺のこと、信じてくれるよな?」

 バカが尚ももじもじしながらそう聞けば、四郎はいよいよ、警戒を強めているのだが……。

「じゃ、いくぞ!」

 バカは、『よし!ここでやらなきゃどこでやる!』と自らを奮い立たせ、大いに気合いを入れて……そして、四郎に見せるべく、自分の羽を、モフン!と出した!


 ……否。

 バカは、バカだった。

 バカだったために、ちょっと余計に気合いを入れ過ぎたちゃったのだ。

 ただ、『羽を見せなきゃ!』という気持ちだけが、滅茶苦茶先走ってしまったのだ。

 つまり……。


『モフン!』と同時に、『バリイ!』と……服を!爆散させてしまったのである!




 だが。

「お前……天使だったのかぁあああ!?」

 そう叫んだ四郎の背中からも、翼が1枚、モフン!と出てきたのである!


 ……ただし!

 四郎も気合いを入れ過ぎたらしく……『バリイ!』とシャツが爆散した!




 が、服を失っても、それ以上に彼ら2人には喜びが大きかった。

「ええぇぇえぇええぇええぇえええ!?四郎のおっさんも、天使ぃいいいい!?」

「もう退役済みだけどなぁあああ!いやあ、まさかこんなところで元同業者に会えるたぁ、思ってなかったぜ!」

「俺もぉおお!わぁああああ!嬉しいなあぁあああ!先輩だぁ!先輩だぁ!」

「はっはっはっは!まあ、そうかぁ!お前は後輩にあたる、ってワケか!いやぁ、妙な縁だなあ、おい!なあ!」

 笑い合い、肩を叩き合う2人は、分かり合えた喜びに満ち溢れていた。

 バカは喜びのあまり、ふわふわの羽をバッサバッサやってしまった!四郎もそれに応えるように、片方だけの羽を、ぱったぱった、とやってくれる!

 こうしてバカは無事、四郎と仲良くなるきっかけを得たのであった!




 だが、バカはパンイチ。四郎も上半身は裸。そして、両者ともに、背中に羽。そしてムキムキ。

 ……傍から見たら、変態!

3月5日(木)に、『頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム』のコミカライズがコミックガルドにて連載開始します。詳しくは活動報告をご覧ください。

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― 新着の感想 ―
これは意表を突かれましたよ。四郎は猜疑心強いし暗い過去を背負った自由業の人とかかなあ、と思ってたけど。羽見せて良かった。でもパンイチでこのあと女子たちにどう向き合うの樺島君。
天使だったのかああああああ!! 見事に予想を外された! そう言われると、確かに先輩方と雰囲気似ている気がしてきました!
ええええ?!四郎が天使なんてむしろ悪魔の魂が同居してて怒りっぽいとかまで考えてたのにむしろ真逆だったああああ これは少し前に魂が複数宿るとどうなるかの話をしてたから閃いたのにこの閃きすらも作者からそう…
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