ゲームフェイズ2:『21』世界
門がある。今、バカ達の目の前には、門があるのだ。
……これを見ると、『コングラッチュレーション!』の意味も、分かる。
ここは、これからこのゲームを脱出して帰還する者が通る、最後の部屋なのだ。
「ここから、帰れる、のかな……?」
むつが、門をしげしげと見つめて呟く。
「……試してみる?」
デュオがそんなむつに笑いかけると、むつはちょっとデュオを見て、それから、ふり、と首を横に振った。
「……それは、螺旋階段の上を見てから。そうだよね?」
「そうだね。俺もそう思うよ、むつさん」
デュオは楽しそうに笑って、それから、さて、と部屋の中を見回した。
「……脱出前にはここの食事、食べてみてもいいかもね」
そしてそんなことを言うので、バカは、ぱっ!と表情を明るくしてしまった!
「うん!食べる!やったー!」
「毒だったらどうするんだ……。僕は食べないぞ」
が、海斗は食べないらしい!悲しい!ご飯は皆で食べてこそ美味しいのに!
「うーん、俺は、ここにあるものは全て安全だと思うけれどな。まあ、新たに毒を仕込める可能性は十分にあるだろうけれど……『毒』は、特に見てないしなあ。そういう異能があれば別だっただろうけれど……」
デュオは、ちら、とむつを見てみたが、むつは『このケーキ美味しそう……』とケーキを見つめているばかりである。尚、バカとしてはローストチキンが気になる。こんがり焼けていて、てりてりしていて、とてもいい匂いで、美味しそうなのだ!
「まあ、今は一旦、大広間に戻ろうか。その方が良さそうだ」
「食わねえの!?」
しかし、デュオが苦笑いしながらそう言ったものだから、バカは非常にがっかりした!バカは、目の前のローストチキンにすっかり心奪われているというのに!
「えーと、後でもいいと思うよ。……一応、大広間に持ち帰れそうなものだけ、持っていってみる?タヌキや七香さんにも見てもらったらいいと思うし……」
デュオは、『そんなに樺島君が悲しむとは思ってなかったな……』などと言いつつ、サンドイッチが入ったバスケットを、ひょい、と持ち上げた。
……すると。
「うわっ」
ぽんっ。
……なんと!デュオがバスケットを取った位置に、美味しそうな焼き菓子が沢山載ったトレイが出現したのである!
「……このテーブル、無限に料理が出てくる、のかな……?うーん、珍しいな」
デュオは面白がって、次にスパークリングワインの瓶を取った。すると、その数秒後、ぽんっ、と……ちょっとお高いのであろう、瓶の桃ジュースが出現していた!すごい!
「すげえー!」
「うわー!すごいねえ!」
バカはローストチキンの大皿を持ち上げてみた。むつは苺のショートケーキのお皿を持ち上げてみた。するとそれぞれ、ぽんぽんっ、と、そこに、ローストビーフの大皿と、オペラケーキのお皿が出てきたのである!すごい!
「樺島。食べ物を増やすんじゃない。そんなにどうするんだ」
「食べる!うおおおおお!うまそぉおおおお!」
「……せめて、僕が食べてからにしてくれ」
バカは、目をキラキラさせてローストチキンの大皿とローストビーフの大皿を見つめる。肉!大好き!
だが、肉が大好きなバカであっても、肉以上に……この、不思議なテーブルが気になってきた。
食べ物が沢山出てくる魔法のテーブル、となると、やっぱり気になる!当然、気になる!
「俺、このテーブル持って帰りたい……!」
バカは、『今回のお土産はこれ!』と、にこにこ顔である。テーブルは大きいが、バカのバカ力を使えば運べるだろう。多分、門も通る大きさだ。いける!
……だが。
「やめておけ、樺島」
「なんでぇ!?」
海斗に止められて、バカは『そんなぁ!』と嘆く!……しかし海斗は黙って首を横に振るのだ。
「……そんなテーブルが無くとも、僕達には社員食堂がある!」
「……そうだった!」
バカは、海斗の言葉を聞いて、はっとした。
そうだった。バカ達キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部の社員らには、社員食堂があるのだ!そして、そこで元気に働く、お料理大好きな先輩や悪魔、そしてミナが居るのである!
……お料理が無限に出てくるテーブルは、確かに、とっても便利だろう。だが、これがあったら、ミナや先輩は、ちょっとしょんぼりしてしまうのではないだろうか。『ああ、お料理を作らなくてもよくなってしまった……』と。
バカとしては、敬愛する先輩や大切な仲間であるミナに、そんなしょんぼりとした顔はさせられない。よって、テーブルをお持ち帰りするのはナシ、ということに決定した!
……ということで。
「大荷物になっちゃったね……ははは……」
「概ね、樺島のせいだな」
「ごめぇん……」
バカ達は、スパークリングワインの瓶一本、サンドイッチがつまったバスケット一つ、ローストチキンとローストビーフの大皿、そして苺のショートケーキのお皿を持って大広間へ戻ることになった。
……むつも、食い意地が張っている!バカはにっこにこの満面の笑みである!仲間だ!
「あっ、ボタンが増えてる!『大広間』行きがあるぞ!」
そして、エレベーターの中に入ったバカは、そこで操作盤に『大広間』のボタンが増えていることに気付いて『便利!』とにこにこした。また天井裏に戻って、そこから大広間へ戻って……とやるのは面倒だったので、助かる!
「成程ね。まあ、状況によっては、これを押さない方がいいこともあるんだろうけれど」
「今回は押さない理由が無いな。押してくれ。……いや、僕しか手が空いていないのか……。押すぞ?いいな?」
そうして海斗が呆れながらボタンを押して、無事、エレベーターが動き出す。
バカは、『なんか、エレベーターの中、いい匂いになってきたなあ……』とまたにこにこした。食べ物がいっぱいだと、幸せである!
……ということで。
「ただいまー!七香ー!」
「……上へ行かれたのに、下から戻ってくるとは」
バカ達は無事、大広間へ戻ってきて、七香と合流した!ただいま!ただいま!
「その上、食べ物……どこから持ってきたんですか?」
「『21』の部屋かな。……うん、そんな顔しないで。どうも、天井裏にあった『ダァト』の個室は、エレベーターとして起動すると『21』のアルカナルームに行けるようになるみたいで……」
七香は『意味が分からない……』というような顔をしていたのだが、デュオが色々と説明していくと、ちょっとずつ分かってきたらしい。やっぱり七香も頭がいいのだ。
……そしてその間、バカはきょろきょろ、とやって、ヤエとタヌキを探す。
バカ達が天井裏に行く前、ヤエとタヌキはヤエの個室のベッドの上に居たのだが……今、そこにヤエとタヌキは居ない。
「ああ、ヤエさんとタヌキさんなら、『17』の部屋へ行きました」
……が、七香がそう言ったので、バカは『えっ!?』とびっくりした!
「17……え?どうやって……?あの、俺、バカだけどよぉ……3+8って、17じゃなかったと思うんだけど……」
「そうだな。3+8は17じゃないぞ、樺島……」
バカはバカだが、足し算を間違えなかったらしい!バカは『だよなあ!よかった!』と胸を張った!胸を張るところではない!
「ええ。デュオさんが置いていった『2』の腕輪と、四郎さんの腕輪を使いました」
……そしてバカは、『8+3+2+4は……17!』と指折り数えて計算した。ちゃんと計算できたので、海斗が『よし』と頷いてくれた。バカはまた嬉しくなった!
「桜を見に行かれたそうですよ」
「ああ……そう、だな。ヤエさんは、桜が好き、なんだったか……」
……海斗はちょっと、しょんぼりした様子であった。やっぱり、ヤエのことが気になるのだろう。バカとしても、ヤエのことは非常に心配である。やり直してしまうにしても……やっぱり心配なのだ。
そうして、ヤエとタヌキが戻ってくるのを待つ傍ら、七香は、ちら、とこっちを見て、それから、『むつさん。少しいいかしら』と、むつを呼んだ。むつは、こっちが少し気になる様子ではあったが……七香に呼ばれてしまったので仕方がない。そっちへ向かっていった。
なので。
「さて。七香さんが気を利かせてくれている間に、ちょっと『次』の相談をしようか」
デュオが早速、そう切り出して……。
「まあ、まだ四郎さんについて詳しく調べていないけれど……俺は、むつさんが悪魔、だと思う」
……そんなことを、言い出したのである!




