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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第四章:月に叢雲、花にバカ
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ゲームフェイズ2:大広間2

「……ご、五右衛門!?」

 バカはきょろきょろと辺りを見回してみたが、五右衛門は居ない。

 海斗も見回しているが、何も見当たらない。

 それどころか……五右衛門の『恋人』の子も、ぽかんとした直後、泣きそうな顔できょろきょろと辺りを見回して……しかし、やっぱり五右衛門が居ないのである!

「ど、どういうことだ……?この部屋には、何か、まだ仕掛けがあったっていうのか……?」

 海斗が困惑しているということは、これは想定外の出来事なのだろう。バカはそう理解して、『何かあったら俺が海斗を守るんだ!』と決意を新たに、周囲への警戒を強める。

 ……が、何も無い。

 何も無いのである。

 五右衛門は当然のように見つからないし、それどころか、五右衛門が消えた理由も何も分からない。

 この部屋には相変わらず、かわいい女の子達と林檎の木があるばかりだ。ルールの文にも変化は無い。

 本当に何も無い。なのに、五右衛門がいきなり、姿を消してしまった。

 五右衛門の落下地点の石に付着した血を見る限り、五右衛門は結構な勢いで石に頭をぶつけたことになる訳だが……それが何か、関係しているのだろうか。

 だが、何かありそうではあっても、バカには何も分からない。何せ、バカなので!




「……これは、考えていても埒が明かないな」

 やがて、頭脳派である海斗は眉間に皺を寄せながらも、そう結論を出した。

「あー……そこの君。ちょっと、いいか」

 海斗が声を掛けたのは、五右衛門の『恋人』になった、ヤエ似の女の子である。彼女は五右衛門が居なくなってしまった地点に座り込んで、はらはらと涙を流していた。なまじヤエに似ているものだから……とても、気まずい!

「君、五右衛門さんを殺そうとしたのか」

 海斗がそう問えば、ヤエ似のその子は顔を上げて、ふるんふるん、と首を横に振った。涙に濡れた目が、じっ、とバカと海斗を見つめてくる。……とってもとっても、気まずい!

「あー……違うのか。なら……ええと、五右衛門さんが何処に行ったか、知っているか?」

 続いた問いにも、彼女は力なく首を横に振った。そして、しょんぼり、と俯いて、また涙を零し始めてしまう。ああ、ものすごく、気まずい!

「知らない、のか……?え、じゃあ、五右衛門さんが消えたのは、この部屋の仕掛けじゃ、ないのか……?」

 海斗はいよいよ頭を抱えて……そして、バカの方を振り返った。

「……樺島。五右衛門さんの異能は、『手が鋏』なんだったな?」

「うん。それは間違いねえよぉ……。俺、ちゃんと見たもん……」

 バカは、『そうだったよなあ』と自分の記憶をちゃんと確認する。そう。五右衛門の異能は、確かに『手が鋭い鋏になるやつ』だった。つまり、いきなり消えたり、いきなり移動したりするような異能ではなかった、と思われるのだが……。

「となると、まだ判明していない異能の持ち主が、何か介入した、のか……?いや、何のために……?」

 海斗がぶつぶつと言っているのを聞きながら、バカは『そういや、まだむつの異能って分かってねえんだよなあ……』とぼんやり思う。それから、孔雀も……最初の周以来、一度も会えていないので、異能も何も無いのだが……孔雀のことも色々、分からないままだ。

 ……むつは、孔雀が何処に居るか知っているだろうか。


「……駄目だ。一度、デュオとも相談してみようか」

 結局、海斗も『分からない』という結論に至ったらしい。深くため息を吐いて、それからそこら辺の枝から林檎をもぐと、ずい、とバカに差し出した。

「完食してくれ。そうしたらカードが手に入るんだったな?」

「あ、うん。俺が食っていいのか?」

「僕はなんというか……食べる前からお腹いっぱいの気分だ」

 海斗はげんなりしてしまっていて、元気がない。『まあ、そういうこともあるよなあ』と納得したバカは、早速、大喜びで林檎を食べた。シャクシャクしていて、甘くて、瑞々しくて……おいしい!バカはちょっぴり元気になった!




 バカが『うめえ!』とやっていると、バカの傍に女の子がやってきて、そっとカードを渡して、しょんぼりと帰っていった。

 ……そして相変わらず、五右衛門の『恋人』の子は、しくしく泣いている。とっても気まずい!

「その……元気出せよぉ」

 なのでバカは、ぽふぽふ、と、その子の肩を叩いて励ましてやった。

 ……彼女は泣き止まなかったが、仕方がない。バカ達が五右衛門の代わりにこの子の『恋人』になってやる訳にもいかないことだし……バカ達はなんとも気まずい思いを抱えながら、ヤエ似のその子を残して、大広間へと戻るのだった……。




 バカ達が大広間に戻ると、そこでは七香が1人、待機していた。

 七香はバカと海斗が出てきたのを見て、少しばかり微笑んでいたが……五右衛門が居ない、ということに気付くと、表情を曇らせる。

「……五右衛門さんは?」

 七香は足早に寄ってくると……少しばかり、疑うような目をバカと海斗に向けてきた。それはそうである。バカと海斗が居て、一緒に居るはずだった五右衛門が居ないとなれば、間違いなく何かあったということなのだから。

「ああ……その、嘘を吐いているように聞こえるだろうことは分かっているんだが……その、五右衛門さんが、消えた」

「……消えた?」

 海斗の説明に、七香は眉を顰めて……警戒を強めた。

「それは……『消した』ということかしら」

「誤解だ!僕達は誓って何もしていない!そういう意味じゃないんだ!本当に、忽然と、姿を消したんだ!」

 何やら盛大に誤解されていたところを海斗が必死に弁明すると、七香は『そう』とだけ言った。……もし本当にバカと海斗が五右衛門を『消した』のだとしても興味は無い、とでもいうかのような顔である!こわい!七香って……やはり、ちょっと怖い人なのである!




「その……まあ、五右衛門さん自身によるミスはあったし、それによって彼は『6』の部屋から出られないことが決定した。だが……それとは恐らく全く関係なく、『消えた』んだ。本当に……」

 ……ということで、海斗がもうちょっと詳しく七香に説明した。すると七香は、やはり『そう』と言って、それから少し、考えた。

「……タヌキさんも、デュオさん達も戻ってきません。そちらでも、何か起きているのかしら」

 七香からしてみれば、消えた五右衛門のことは当然気になるのだろうが、それと同時に、タヌキやデュオの安否は気になるのだろう。

 それは当然、バカにも気になることである。『タヌキ、えっちな部屋で大丈夫かなあ……』と、非常にやきもきしている!

 それに加えて……。

「……『3』は女帝。そして『20』は、『審判』ですね。何がある部屋なのか……」

 七香がそう言って、心配そうに視線を彷徨わせているが……バカは、『あれ?20番ってなんだっけ?』と、やはり記憶の中を彷徨い始める。

「ああ……ジャッジメント、か。何がある、と言われると、よく分からないが……」

 海斗が『推測するのが難しいな……』と唸る横で、バカは尚も、記憶の中をふらふらっ、と彷徨って……そして。

「……なんも無い部屋、だった気がする」

 ……そう、思い出した。

 そうだ。『20』のアルカナルームは……『なんも無い部屋』だったのである!




「なんも無い部屋……だと?」

「うん。入ったことあるけど、なんも無いんだよぉ……」

 バカは思い出す。そうだ。『20』の部屋は、なんも無かった。

 バカが入った時もそうだったし、むつが入った時も、『なんも無かった』と報告してくれたことがあった。つまり、あの部屋は『なんも無い』のである!

「ま、待て。なんも無い、ということは……その、カードがただ落ちているだけ、と?」

「うん。床にただ一枚、カード落っこちてた!」

 困惑する海斗にバカが『確かそうだった!』と元気に答えると……海斗の表情は、より一層、険しくなった。

 そして、七香は……。

「でしたら、何故デュオさん達は戻ってこないのでしょうか」

 ……七香は焦燥を露わに、数歩分、歩く。そしてまた数歩、戻ってきて……行ったり来たり、落ち着かなげだ。バカも気持ちは分かるので、七香と一緒に行ったり来たりしてみた。……七香にはちょっと嫌そうな顔をされてしまった!

「……考え得ることがあるとすると、樺島が知っている情報と今回のデスゲームの内容が食い違う、という可能性か。いや、しかしそれよりは、異能の効果を疑った方がいい、のか……?」

 海斗はまたしても頭を抱えて悩み始めてしまったし、七香も心配そうにうろうろしながら何やらぶつぶつと呟いている。

 バカは、『俺、こういう時役に立たねえよなあ……』としょんぼりしながら、海斗のように頭を抱え、七香のようにうろうろするのであった……。




 が、そんなバカ達の耳に、福音にも思えるようなエレベーターの駆動音が聞こえてくる。

 バカ達が『デュオ達が帰ってくるのか!?』とそわそわしていると……。


「ただいまですぅー……。いやー……酷い目に、遭いましたよぉー……」

 ……帰ってきたのは、タヌキであった!ぽんぽこぽん!




「……タヌキか」

「タヌキだったぁ……」

「え?なんですか?この、海斗さんと樺島さんの反応は?あの、私でガッカリ、みたいなの、なんなんですか?ちょっと傷つきますよ?」

 ……バカも海斗も、『まあ、タヌキは無事だろうな……』と思っていただけに、『デュオ達じゃなくてタヌキだった……』と、ちょっぴりしょんぼりしてしまうのは仕方がないのである。タヌキには申し訳ないが。

「お帰りなさい、タヌキさん。ご無事で何よりよ」

 一方の七香は、表情を綻ばせてタヌキを抱き上げた。タヌキは『ただいまです!七香さんは優しい!嬉しい!』と尻尾をぽんぽん振って喜びを表現している。

「えーと……あれ?デュオさん達のチームはまだです?」

 が、タヌキはタヌキで、やっぱりこっちが気になるらしい。なのでバカは、『デュオ達のチーム、まだ戻ってきてねえみたいなんだよぉ……』としょんぼり告げた。そしてタヌキと一緒に『心配……』としょんぼりすることになってしまった!ああ、心配!




 ……が、そうしてしょんぼりしていたタヌキとバカを、海斗がちょこちょこ、とつついた。

「心配なら、様子を見に行けばいいだろう」

「へ?」

 バカが『どういうことぉ……?』と首を傾げていると、海斗は『やれやれ』と言わんばかりの顔でため息を吐いた。……多分、ちょっと心配を隠すための『やれやれ』だ。バカには分かる。

「忘れたのか?お前は元々、『10』の腕輪を持っていたんだぞ」

「え?……あ、うん。そりゃ、そうだけどぉ……」

 バカは、『それに何の意味が……?』と首を傾げる。バカはバカなので。

 その横でタヌキと七香が『ああ、なるほど』という顔をしていたが……海斗は根気強く、バカに説明してくれた。

「だから、樺島。お前の『10』の腕輪を取ってこい。……それに、タヌキと七香さんを連れて行けば、合計は『20』になる。それで、『20』の部屋に入れるはずだ」


 そうしてようやく、バカは『10+3+7=20』を計算することができ、そして、自分にできることを見つけることができたのだった!

 ……どうやら、バカ達は、デュオ達を迎えに行くことができそうである。


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― 新着の感想 ―
意図していない挙動が二回目……さてはこのデスゲーム会場テストプレーしてないな?不備だぞ主催! という冗談はさておき、血痕以外の痕跡がない以上生死が不確定のままではあるんですよねえ……このデスゲーム殺し…
部屋の仕様と違う事件が起きてまた謎が増えてなにが起きてるか分からないけどどうやって改名していくのかそしてどうやったのかワクワクする 毎回続きが気になる出来事や解明する出来事があって読むのが毎回楽しみ…
審判の部屋………五右衛門消失(死亡?)によって内部が様変わり、の可能性も無いでもないけど………樺島たちはだいぶ話し込んでたし、従来の「何も無い部屋」だった場合、時系列的には五右衛門落下より先に出てきて…
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