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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第四章:月に叢雲、花にバカ
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ゲームフェイズ2:『6』恋人1

 

「じゃあ行ってきまーす!皆さん、ご無事でー!」

「ああうん、君もね……」

「君『が』ね、と言うべきかもしれないな……」

 ……そうして、バカ達はタヌキを『3』の部屋へと見送った。

 理由は簡単である。『タヌキが1人で攻略できてた時、あったし!』という、ただそれだけである。

 ……ちょっとえっちな部屋は、ちょっとえっちだが、ちょっとえっちなだけではある。デュオ曰く、『死ぬ危険が無いんだったら別にいいんじゃない?』とのことだった。……バカは、『えっちなのは駄目じゃないのか!?』と目から鱗が滝のように流れ落ちるような思いであった。海斗は複雑そうな顔だった!

「……タヌキ、大丈夫かなぁ」

「うん、まあ、駄目だったらその時、俺と海斗と樺島君で迎えに行こう」

 ……まあ、デュオの言う通り、駄目だったらその時、お迎えにいけばいいのだ。バカは『それもそうだな!』と納得して、タヌキを乗せたエレベーターが沈んでいったのを見送った。

 がんばれ、タヌキ!




「では、また後程」

「七香ぁ……気をつけてなぁ……」

 そして、1人で頑張るのはこちらも同じ、七香である。

 七香は『7』の部屋に1人で入るので……ちょっぴり心配だ。何せ、『7』はバカにはよく分からない部屋である。七香自身が1人で入っていたこともあったと思うが、それにしても、何をやる部屋なのか、説明はしてくれなかったと思う。

「多分、戦闘になると思うから。気を付けて」

「ええ。覚悟の上です」

 ……が、なんと、デュオと七香は何故か、部屋の中身を想像しているようである。バカが首を傾げていると……。

「えーとね、大アルカナの『7』は、『戦車』なんだ」


「……せんしゃ!?」

 バカは慄くこととなった。だって、戦車である。戦車というのは……戦う車である!

 バカの職場ではいわゆる『働く車』はいっぱい見るのだが、『戦う車』は、そんなに見ない!……が、全く見ない、ということも、ない。

「戦車かぁー……まあ、俺は投げられるけどぉ……」

「……投げられるんだ」

「うん……。野生の戦車と時々、相撲とかしてる……」

「野生の戦車……?」

 バカが、『デカいのはやっぱり、気性が荒いから!』だとか、『やわっこくて、後退りするタイプの戦車は見逃してやるようにしてる!』だとか、一生懸命説明するのだが……バカ以外には『そもそも野生の戦車とは?』というところから通じないのであった。

 だがしょうがない。バカの職場の周りには、野生の戦車が居るし、野生のクレーン車も居るのである。たまに、野生の戦闘機も居る。この間も先輩によって生け捕りにされて、そのまま先輩のペットにされていた。恐らく今日も元気に先輩と一緒に空の散歩をしているであろう元野生の戦闘機である。

「……まあ、樺島君が想像している戦車とは、ちょっと違う奴かもね。タロットの図柄から考えると、もっと原始的な『戦車』の可能性もあるし」

「原始的な戦車……?」

「獣に牽引させるタイプの奴。……まあ、いずれにせよ、七香さん1人でなんとかなるようにはできてると思うけど」

 デュオの言葉に、七香が微笑んで頷いた。

「大丈夫です。……タヌキさんだって、お一人なんだから」

 ……バカは、『ああ、恋すると女の子は強くなる、ってのはこういうことなのかなあ』と、ちょっと思った。

 多分、七香の強さの源は、恋なのだ。最初、デュオに焦がれていた時も強かったし、今は今で、色々と失って……けれど、タヌキとの思い出を取り戻して確認した七香は、また強くなったのだ。




「よし!じゃあ七香、頑張ってな!」

「そちらも、ご武運を」

 そうして七香もエレベーターへで降りていった。それを見送って……さて。

「じゃあ、俺達も行こうか」

 デュオ達のチーム……デュオと四郎とむつとヤエ、という4人組も、『20』の部屋へと向かっていった。

 それを見て、バカ達も『6』の部屋へと向かっていく。

「僕達も……行くか。よし」

「また一緒ね。よろしく」

「頑張るぞー!おー!」

 ……エレベーターの中で、バカは元気に社歌を歌っていた。途中で海斗に『煩いぞ樺島ぁ!』と怒られたので、小声で歌うようにした。

 おお、キューティーラブリーエンジェル建設!ああ、キューティーラブリエンジェル建設!




 ……が、覚悟を決めて『6』の部屋のドアを開けたバカは……『あっ、ここかぁ……』と拍子抜けした。

 何せ……広い広い草っぱらがあって、ちょっと丘があって、林檎の木があったからである。

 ……この部屋は、バカにとって『林檎食べ放題のおいしい部屋』でしかないのであった!


「なんだ、この部屋は」

「えっとな、林檎食べ放題の部屋!」

「絶対に違うんだろうな……だがまあ、林檎の木は確かに、ある、か……」

 バカは『林檎食べる!腹減った!』と元気にテケテケと林檎の木へダッシュしていく。

 ……すると。

「あれっ、ヤエ?」

 ヤエが居た気がして、キキッ、と急ブレーキをかけた。……そしてようやくバカは思い出す。『そういえばこの部屋、草っぱらと林檎食べ放題の他に、なんかかわいい女の子がいっぱい居る部屋なんだったっけ……』と。


「……女の子がいっぱい居るわねえ。これ、何の部屋なのよ」

 バカに追いついてきた五右衛門が、『やだぁー、あの子、ヤエちゃんに似てるわぁーん。かわいいじゃないのよぉーん……どうすんのよこれぇ』と、ちょっと困っている。それはそうだ。知り合いに似ているかわいい女の子がにこにこ近づいてきたら、ちょっと、その、困るのである!

「ああーっ、アタシのお客さんに似てるわ、あの子……。あっちもそうかしら。やーねえ……」

「お客さん?」

「ええ。モデルさんが多いけど、ま、アタシがメイクした子よぉー」

 ……前回よりも、女の子の数は少ない。少ない、のだが……とてつもなくかわいい!

「レベル高いわねー。やーだ、腕が鳴るわぁー……。メイクしたい。すっごく、メイクしたい」

「ご、五右衛門、すげえなあ……」

 五右衛門が女の子達を見て『メイクしたい』と目をぎらつかせているのを見て、バカは『これ、先輩がでけえ違法建築とか見て解体したくなってる時と同じやつかぁー』と納得した。やっぱり五右衛門は、職人さんなのであろう!納得!


「か、樺島……助けてくれ……」

 ……一方で海斗は、かわいい女の子達にもちもちとくっつかれて大層困っていた。

 女の子達はにこにこしながら、或いはちょっとむくれながら、更に或いはもじもじおずおずと……海斗の腕に、腰に、肩に腕を回してくっつきたがるのである。バカは、『わあああ!』と悲鳴を上げた。なんか、見ていて恥ずかしくなっちゃうのである!このバカはこういうのが苦手なバカなのである!

「か、海斗ぉ!今助けるぞぉ!」

「あ、ありがとう……」

 ということで、バカは女の子の群れの中から、海斗を『すぽん!』と引っこ抜いて助けた。そしてそのまま、海斗を自分の肩の上にのっけておくことにした。こうすれば女の子達がくっついてくることもなかろう!ヨシ!


「……で、この部屋、何なのよぉ」

「あー……そこに説明書きがありそうだ。樺島。近づいてくれ」

「うん!行くぞー!」

 ……さて。既に精神力を大分削られたような顔をしている海斗だが、ゲームの説明文を見つけて読む気力はまだあるらしい。バカは海斗を肩に乗せたまま、てってけ、と走ってそちらへ向かう。

「……成程な」

 そうして説明文を読んだ海斗は何やら納得した様子であった。

「さっきから、どうも、林檎を差し出されるのはそういうことだったんだな……」

「うん……。1個の林檎、女の子と一緒に半分こしちゃうとダメなんだったよなぁ……?」

 バカもなんか思い出してきた。そうであった。確か、食べかけの林檎を女の子に食べられちゃいけないし、女の子と林檎半分こもダメなのであった。

 が、そうは分かっていても……辛い。とても、辛い。

 特に、ヤエに似た子がもじもじおずおず、林檎を差し出してくるのは……受け取ってしまいそうになる!バカは逐一、『ごめんなぁ、それ、貰えねえんだぁ……』とお断りしているのだが……その度に、しゅん、とされてしまって、とても辛い!

「……樺島。さっさと林檎食べ放題でもなんでもやってくれ。それでさっさと出るぞ」

 同じく、とても辛いらしい海斗がそう言うので、バカは『その通り!』と大きく頷いた。こんなところ、さっさと出るに限るのである!


 が。

「や……っちゃ、った、わねえ……」

 その後ろで、五右衛門が青ざめていた。

 ……彼の手には半分に割った後に一口食べたらしい林檎があり、そして、ごく、と、五右衛門の喉が動いていた。

 そして、そんな五右衛門の隣では、ヤエに似たかわいい女の子が幸せそうな笑みを浮かべながら……もう半分の林檎をしゃくしゃくと食べているのであった!

 ああ!やっちゃってる!



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― 新着の感想 ―
あ!知ってる! 柔らかい桃のような戦車! 五右衛門さんはやらかしましたね…
むーねにきっざむは退却ダマシイ うーまれてこの方あ☆と☆ず☆ざ☆り いやー懐かしいですね…… そして感想欄を見てると知らない人がちらほら!わしも年を取った……
あんまり大きな声出さなそうな海斗が「煩いぞ樺島ぁ!」って言うのは、そうしないとバカ君の声が大き過ぎて耳に届かないからなんだろうな……
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