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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第四章:月に叢雲、花にバカ
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ゲームフェイズ1:『17』星1

「俺、できるだけ大きめの数の部屋に入りたいんだよね。それでいて、今までに1回以上組んだことがある人がバラバラにならないように、と思うとこうなるんだけど、どうかな」

 ……ということで、デュオが提案したのは、『バカ、海斗、タヌキ、五右衛門、ヤエ』で『17』に入り、『デュオ、四郎、むつ、七香』が『19』に入る、という案だった。

 全員が『ほええ』という顔をしている状態ではあるのだが……デュオは、なんとなくそれっぽい理由を付けてそれっぽくチーム分けをしてしまった!すごい!

「まあ……僕は特に反対する理由が無いな。樺島、どうだ」

「ん?俺もいいぞ!」

 バカは『これならまた五右衛門とヤエと一緒になれる!あとタヌキもついてくる!』とニコニコ顔である。

「タヌキは……七香さんとデュオと別れてしまうが、いいか」

「はい!私も大丈夫ですよ!ヤエさん、五右衛門さん、よろしくお願いします!」

「え、あ、よろしく、お願いします……」

「あ、じゃあこれで決まりってコト?まあいいけど……うん、よろしくね、タヌキちゃん」

 ……そうして、タヌキが『よろしくお願いします!』を元気にやってしまったことによって、五右衛門とヤエもなし崩しにチーム分けを了承することになる。そして、ここがOKを出してしまえば、四郎とむつも、『駄目』とは言えないのである!




 ……そうして。

「多分、次の部屋がゲームフェイズ1回目に攻略できる最後の部屋になると思う。発表フェイズ中はエレベーターが動かないらしいから……まあ、できるだけ全員、戻ってこられるように頑張ろう。もし戻ってこられなかったら、発表フェイズ終了直後に戻ってくるように頑張る、ってことでいいかな」

「ええ、それでいいわよぉ。じゃ、気を付けてね」

「そっちも気を付けてねー!」

 ……バカ達は2チームに分かれて、『いってきまーす!』と挨拶し合ってそれぞれのアルカナルームへ向かっていく。

 今回は、全員が割と仲良しでとてもやりやすい。……まあ、既に、タヌキも七香もデュオも仲間なので、当然と言えば当然だ。多数決をしたら、仲間の方が多いのだから。

 やっぱり、仲間は増えれば増えるほど、やりやすいのだ。バカはまた1つ、学んだ!




 バカ達の乗ったエレベーターの中では、タヌキが『ヤエさんと五右衛門さんはお花、お好きですか!?』と話しかけ、ヤエが頷き、五右衛門が『綺麗なモノは好きよぉー。好みドストレートなのは、タヌキちゃんが今くっつけてるみたいな素朴可愛い奴じゃなくて、真っ赤な薔薇とかの方だけどぉー』などと答え……賑やかであった。

 バカは『タヌキは誰とでも仲良くなれてすげえなあ』と思いつつ、ちょっと、五右衛門の様子を見る。

 ……五右衛門は、努めて明るく振る舞っている様子であった。さっき、『教皇』を殺してしまった時の苛烈さも、その後に見せた、沼の底に沈んだかのような冷たい暗さも……今はすっかり隠れてしまっている。

 だが、バカは確かに、五右衛門が苛立って、彼曰くの『八つ当たり』をバカに向けてきたことを覚えている。だが、それは五右衛門にとっては不本意なことだったんだろうな、ということも、分かっている。だからバカは、五右衛門のことを責めるつもりはない。

 多分、五右衛門は色々、大変なのだ。ヤエの脚を、自動車事故で奪ってしまって……それを後悔していて、反省していて……でも、多分、疲れちゃっているのだ。バカはなんとなく、そう思う。

 ……人は、『ごめんなさい』しか言えない環境じゃ、生きていられないのだ。バカはちょっとだけ、それを知っている。本当に、ちょっとだけ。記憶の片隅に、ちょこっと、あるだけ。

 だから……五右衛門が今、どういう気持ちでヤエを助けようとしているのか、バカにはちょっとだけ分かるような、そんな気がするのだ。


 そうしている内に、エレベーターは無事、『17』の部屋の前に到着した。

「さて、到着か。……樺島。先頭はお前でいいな?」

「おう!皆、俺の後ろに隠れててくれ!」

 バカは元気よく皆を背に庇いつつ、そっと、ドアを開ける。

 何がある部屋だったかは忘れたが、何か、バカが知っているものがあることだけは間違いない、と思われる。よって、バカは『何かあっても俺が皆を守るぞ!』と、意を決して……。

 ……そして。


「わぁー!綺麗な場所ですねえ!」

 さっきのバカの忠告をすっかりぽこぽん、と忘れてしまったらしいタヌキが、ぴょこぴょこ跳ねて、部屋の中へ入ってしまう。

 だが、それも已む無しである。何せ……部屋の中には、清浄な森が広がっていて、その中に、澄んだ泉が滾々と湧いているのだから。

 ……バカは、『あっ!17番ってこの部屋かぁ!』とようやく思い出した。ここは……バカと七香が一緒に入ったことのある、あの部屋である!




「いいですねえ!素敵ですねえ!私、こういう場所、大好きぃ!」

 タヌキは大はしゃぎである。ぴょんぴょこ跳ねまわりながら、『美味しい空気!優しい木漏れ日!素敵なせせらぎの音!鳥の声!最高!』と、存分にこの部屋を謳歌している。

「……綺麗」

 そしてヤエも、この部屋を気に入ったらしい。木漏れ日の下、泉のほとりまで、歩いていく。

 ……ヤエの歩行は、少し、あぶなっかしい。何せ、片足がただの棒きれみたいな義足なのだ。まだ義足に慣れ切っていないのであろうヤエは、歩く度に体が大きく揺れるのだ。

 さく……ふさ、さく……ふさ、さく……と、アンバランスな足音が森の腐葉土の上を進んでいく。それを聞いて、バカは『ああ、ヤエって本当に脚が悪いんだなあ……』と、ちょっと悲しくなってきた。

 だが、バカがそうなのだから、五右衛門はもっと、のはずである。

 五右衛門は、そんなヤエの後ろ姿をじっと見つめながら、ちょっとぼんやりした目をしていた。


 が、五右衛門もバカも、ぼんやりしょんぼりしていられない事態が発生してしまう。

「あっ、みなさーん!こっちに泉が!泉がありますよー!綺麗なお水です!お魚とか居ませんかねえー!」

 というのも、タヌキが、とててててて、と泉に向かっていき……そして。

「お魚、お魚……あっ!」

 泉のほとりで、タヌキは、ツルッ、と足を滑らせて……泉に向かって転んでしまったのである!




 その時。

 ぱっ、と、ヤエが跳んだ。

 ……バカは、『えっ』と驚き、ただ、ぽかん、としながら、ヤエの姿を見ていた。

 ヤエは、義足の左脚なんてまるで知らないとばかり、右脚で踏み切って、腹這いに跳んだのだ。泉へ落ちていくタヌキに向かって手を伸ばして……そして、ぱしゃ、と泉の水面を指で跳ねさせながら、そこへギリギリ到達していなかったタヌキを、捕まえたのである。

 ……バカも海斗も五右衛門も、唖然としてこれを見ていた。

 まるで、プロのバレーボールプレイヤーのような、そんな鮮やかな動作を見て、言葉などすぐに出てくるものではない。

 それは、ギリギリで救われたタヌキもまた同じで、『えっ!?』とびっくりしたまま、タヌキはヤエの手に収まって、ぽかん、としており……。

 ……そうして、ぐるん、と世界が回転した。


「あ、れ……?ここ、は……?」

 ……そして、森の中は夜の景色になっていた。




 バカは、びっくりしている。だって、確か、七香はここで……『デュオの恋人の幻影』と、戦っていた。

 あの時は、七香が水面に触れた途端に霧が出てきて、それで……女性の影が出てきたのだったか。

 だからきっと、今回は……ヤエの願いの幻影が、ここに、やってくるのだろう、と思ったのだ。

 ……と、思ったのだが。

「えー、と……何も無い、わねえ。あの、ヤエちゃん、大丈夫?さっき、思いっきり跳んでたけど。怪我とか、無い?」

「あ、はい、大丈夫、です……あ、タヌキさんは」

「あっ!私は大丈夫です!いやあー、危なかった!助けて下さりありがとうございます、ヤエさん!」

 ……五右衛門がヤエの怪我を確認し、ヤエがタヌキの怪我を確認し、そしてタヌキが尻尾をぽんと立て、頭をぽこと下げ、深々お辞儀して感謝の意を表して……それでもまだ、何も、襲い掛かってこない。それどころか、霧さえ出てこない!

「……これはどういうことだろうな」

「わかんないよぉ……」

 海斗と一緒に、バカはきょろきょろしてみるものの……特に、何も見つからない!おかしい!七香の時のアレは一体、何だったというのであろうか!


「あー……樺島。本来、ここはどういう部屋だったんだ?」

 そんなバカの困惑ぶりを見て、海斗が『ああ、これは本来想定されていた挙動ではないらしい』と察したらしく、そっと、バカに耳打ちしてきた。

「ええと……ええと……七香と入った時には、七香、デュオの、恋人の、影……?みたいなやつを叩きのめしてたんだけど……それ、七香は、なんか嬉しそうに叩きのめしててぇ……願いを叶える?とか、言っててぇ……」

「……成程。よく分からないが、まあ、分かった。ひとまず、それと今のこれとは、まったく状況が異なるらしいな。やれやれ……」

 バカもひそひそと返せば、海斗はげんなりと呆れた顔をしつつ、ひそ、と返してきてくれた。

 ……入るメンバーが違うと、本当に色々変わっちゃうのがこのゲームの怖いところである。バカは戦慄した!


「……あ、何かここにあります!ありますよ!みなさーん!」

 が、そうしている内に、タヌキが何か見つけたらしい。タヌキは泉のほとりでぽんぽことアピールしていたので、『また落ちるわよ』『もう落ちるなよ』『気を付けろよタヌキィ!落ちちゃうぞ!』とバカ達は駆け寄る。タヌキは『うそ、私の信用……低すぎ!?』と慄いていたが、当然の結果である。ぽん。

「あの、まあ、じゃあ皆さん、こちらをどうぞ……」

 タヌキは『私、もう水ポチャしかけるようなことはしませんからね……』と、そっ、と泉から後退りしていく。

 それを見送って、バカ達はタヌキが教えてくれた石板とやらを見に行って……。


『ここは、水面に触れた者の願いを映す泉。願いを阻むものが無くなった時、霧は晴れる』


 ……そう、石板に書いてあったのを見て、皆一斉に、ヤエの方を見てしまった。

「え?あの……?」

 ヤエは皆に見つめられて困惑していたが……バカ達も、困惑している。

 だって……この石板のことが本当なら……ヤエには、本当に、願いが無い、ということになってしまう!


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― 新着の感想 ―
樺島君の天使になる前の環境があまり良くなかったっぽいのが時々出てきて気になりますね…
もしもヤエちゃんの願いが事故の犯人に会いたいだったら、もう会ってるからと部屋のシステムがバグったりする? でも脚を治したいわけではなく、なんならここから出られなくてもいいまであるなら別に犯人に関心とか…
いや、本当に願いがないなら、『何も起こらない』のでは? 夜の『景色』ってどんな景色?森の中?それとも……
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