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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第四章:月に叢雲、花にバカ
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ゲームフェイズ1:大広間2

 そうして、バカと五右衛門は大広間へ戻ることにした、のだが……。

「……五右衛門、血まみれだぁ!」

 ……そう。五右衛門は、自分の手を鋏に変えて教皇をぶち殺してしまっているので……血まみれである!

 バカは、『そういや、五右衛門が血まみれだったこと、あった!アレ、こういうことだったのかぁー!』と大いに納得した!返り血である!返り血である!

「え?あ、あー……ほんっと、これ、ひっどいわねぇ……」

「全部返り血か!?だいじょぶか!?怪我、無いか!?」

「大丈夫だけど……え?何?樺島君ってそういうこと日常で言う生活してるってことぉ……?」

「うん!初めてタックルで熊とかイノシシ仕留めた時、先輩達が心配してくれたぁ!」

「あっ、物騒な方じゃなくて、ぶっ飛んだ方ってコトね?ハイハイ……」

 バカは、『そういえばお腹空いてきた気がする!』と元気にエレベーターに乗り込み、五右衛門も『はぁー、まあ、樺島君と一緒なら怖がられないかしらねえ』などと言いながら、血で汚れたシャツをぱたぱたやりつつため息を吐くのだった。




「あっ!五右衛門さ……五右衛門さん!?どうしたの!?大丈夫!?」

 そうしてエレベーターが大広間に到着するや否や、むつが真っ先に駆け寄ってきて……そして、五右衛門を見てぎょっとした!当然のことである!

「あっあっむつちゃーん、大丈夫なの。大丈夫なのよぉー。……これぜーんぶ、か・え・り・ち!」

「それはそれで怖いよ五右衛門さーん!」

 むつが隣に居たヤエと一緒に『こわい!』とやっているのを見て、五右衛門は苦笑いしていた。

 一方、四郎は特に何も怖がらず、ずいずい、とこっちに来て、五右衛門を観察していく。

「おい……そりゃ一体、何があった?」

「うーん、とねぇ……まあ、よく分かんないのと戦うことになっちゃった、んだけどね。ま、それでコレよ」

 五右衛門は、『教皇』がどういう奴だったのかを言うつもりはないらしい。言わなくていいと、バカも思う。……五右衛門が自動車事故でヤエの脚を奪ってしまったからといって、それをずっと、こんなところでまで言われなくたっていいと、バカは思うのだ。

「五右衛門、強かったぞ!頼りになるぞ!」

 なので、バカも四郎に『五右衛門が言ってることはホントだぞ!』とフォローしておく。四郎は何か言いたげではあったが、バカもにこにこ顔でこの調子なので、これ以上の追求はしないことにしたらしい。

「ところで、樺島君ってタックルで熊とかイノシシ仕留められるらしいわよ」

「えっ!?何それ!?え、ほ、ほんとに!?」

「おう!俺、熊なら勝てる!まだ象とは戦ったこと無いけど……先輩は勝ったことあるって言ってた!」

「す、すごい……」

 ……ついでに、五右衛門がバカをダシにしつつ話題を変えたので、こちらはもう大丈夫そうだ。バカは五右衛門をちらっと見てみたが……すると、五右衛門はぱちんとウインクしてくれた。

 これで大丈夫だったらしい!バカは嬉しい!




「ところで、そっちはどうだったのよ」

「ああ?こっちは……デカい宇宙飛行士が襲い掛かってきた……」

 ……続いて、四郎達のチームのことを聞いてみると……なんと!そっちは月面の部屋だったらしい!バカは、『ああ、あそこかぁ!』と納得した!

「デカい宇宙飛行士ぃ……?なによそれぇ……」

「な、なんかね、本当に大きな……身長10mぐらいありそうな宇宙飛行士が、大きな旗を持ってて、それで私達を突き刺そうとしてくるっていうかんじで……」

 むつが『すごかった!』と恐々話してくれるのを、バカと五右衛門ははらはらしながら聞く。

「でも、四郎さんがやっつけてくれて、なんとかなった!」

「そっかぁ!四郎のおっさん、すげえなあ!」

「うん!すごかった!」

 ……そうして、バカとむつが『四郎すごい!』ときゃいきゃいやった結果、四郎はなんとも言えない顔をしていた。……多分、照れている!バカはにっこりした!




「あー、ごめん。また俺達のところが最後だ」

 そうして、デュオ達のチームも戻ってきた。

 ……のだが。

「七香!七香、大丈夫か!?」

「……ええ」

 七香が、首に傷を作って戻ってきたようである!きゃいきゃいやっていたバカ達は『わああああああ!』と大慌てで解散し、全員、七香の元へと集まっていくことになった!


 七香は、腕にタヌキを抱き、首に包帯を巻いている。つまり、首に怪我をした、ということであろう。バカは、『大丈夫か……!?』と戦慄するしかない。

「怪我、酷いの!?大丈夫!?」

「ええ、大丈夫。処置済みよ」

「痛みは……」

「問題無い程度よ。出血もそれほど無かったし……」

 むつとヤエが心配そうに七香へ寄っていく。七香の包帯には、血が滲むほどではないようである。それでも心配なのは心配なのだが……。

「タヌキさんが助けてくれたから」

「えっ」

 ……七香が、腕に抱いたタヌキを撫でつつ、しれっ、と、それでいてなんだかじんわり嬉しそうな、そんな顔で報告してきたので。

 なので……バカ達は全員、『タヌキが!?』と慄いたのであった!




「いやあ、助けたっていうほどのことでは……」

 タヌキがもじもじと謙遜する様子を囲んで、バカ達は『如何にしてタヌキは七香を救ったか』を聞くことになった。何せ、気になる。あまりにも、気になる。だってタヌキが!この小さくてポンポコしたタヌキが……七香を助けた、というのだから!

『何故』は気にならない。タヌキは優しいので、人助けはしてくれる奴だ。だが、『どうやって』は、気になる!だってタヌキはタヌキだから!

 と、バカ達が興味津々にタヌキを囲んでいると。

「えーと、最初にデュオさんと七香さんと入った部屋が、色々な紐とか鎖とかがあって、それに捕まっちゃって吊るされちゃうお部屋だったんですけどぉ……そこにぶら下がってた、包帯とか、鎖とか、ワイヤーとか、そういうのをいくらか回収させて頂いてましてぇ……」

「か、回収?」

「あ、はい。まあ……それでですね、七香さんに向かって突っ込んできた、骸骨の騎士に対して……こう、鎖を出して、馬の脚に絡めてですねえ……」

 バカは、『そもそも回収、とは……?』と頭の上に『?』マークを浮かべているところだが、タヌキは『まあ、そんなかんじで……』と話を締め括ってしまう!

「まあ、そういう訳で、タヌキが出してくれた鎖やワイヤーで、骸骨の騎士を落馬させることができたんだ。そうしたら、後は七香さんがやってくれた」

 海斗はタヌキの言葉の続きを引き取ってそう説明すると……ちら、とタヌキを見た。

「で……タヌキ。君の異能については、もう言ってしまった方がいいんじゃないか?」

「あ、そうですかね……?」

 タヌキはちょっと躊躇う様子を見せていたが、海斗が『言ってしまえ』と促し、更に、デュオも『その方がいいと思うよ……』と促したため、タヌキは元気に前脚と尻尾を掲げ、宣言した。

「では……実はですね!私の異能は、『謎収納』なんです!」




「……謎収納!?」

「はい!謎収納です!」

 バカが『どういうことぉ!?』と叫んでいると、タヌキは胸を張った。

「私の『謎収納』は、異次元空間にとんでもない容量の収納を持つことができる異能です!えーと、こういう風に……」

 そこでタヌキは、お腹のあたりをもそもそやって……ぽん、と。いきなり、赤いリボンを取り出した!

「えっ!?どうなってんだそれェ!?」

「私にも全く!分かりません!あの、こういうのは理屈じゃないですよ。なんかできるんですからぁ……」

「それもそうだな!」

 バカは『すげえ!すげえ!』とタヌキの周りをくるくる回った。理屈は分からないが、なんかすごいのは分かったので!

「ただし、生物は入れられないみたいですよ。あと、流石に容量の限界はあるみたいです。とはいえ、普通にしていれば気にならないくらいの限界ですけどぉ……」

 タヌキの説明を聞いて、バカは『そっかぁ、生き物は駄目なのかぁ。俺、タヌキのお腹収納、入ってみたかったなぁ……』とちょっと残念に思った。このバカは、押し入れに体育座りで入ってみたくなるし、デカい段ボールがあったらとりあえず入ってみるタイプのバカなのである!

「生き物は入れられない、ということで……本当は、こちらの『ローブ・リッター』も入れておきたかったんですけれどぉ……しょうがないので、こうして私のボディがかわいくなっております!」

 ……が、どうやらタヌキの異能も万能ではないらしい。『生き物』であるところの薔薇の花だって当然入れられないらしく……タヌキの胴体に薔薇がくっついてかわいくなっているのは、そういう事情らしい!

「まあ、植物を運べない、っていうのはちょっと不便かもね。とはいえ、一度収納した包帯が無菌状態になるのは便利だと思うな」

「ですよねぇ!七香さんの傷が化膿したら大変ですし!私としても、これでよかったと思ってます!」

「とても助かったわ。ありがとう、タヌキさん」

 ……七香は微笑みを湛えて、タヌキの背を撫でている。タヌキは『あの!あんまり撫でられると寝ちゃいそうなので!寝ちゃいそうなのでぇ!』とジタバタ抵抗していたが、七香が気にせず撫で続けたため、『ああーんいい気持ちぃ……』と、とろとろタヌキになってしまった!


「……まあ、そういう訳で、タヌキの異能はこういうかんじだったみたいだよ」

 タヌキがとろろん、としてしまっているので、代わりにデュオがそう締め括った。

「そいつはいいが……俺達に知らせちまって、よかったのか」

 が、四郎は少し、不審げにデュオ達を見ている。

 ……それはそうである。タヌキの異能が公開されてしまったのだ。異能というものは、下手に公開すると命の危険に繋がりかねない。それは、バカの相棒である海斗からよく聞いている。何せ海斗の異能は、戦う役にはほぼ立たない、『リプレイ』なので……。

「ああ、うん。いいと思う。知らせた方が、タヌキの身を守ることに繋がるだろうからね」

 だが、デュオは不敵に笑ってみせた。更に、七香も頷き、海斗も少し嬉しそうに頷く。

「僕らも詳しくは知らないが、タヌキは既に、色々なものを収納しているらしい。下手な異能では、タヌキを仕留める前に大怪我をするだろうな」

「ほう……?」

 四郎が片眉だけ上げて、『そういうことか』と言うかのように少し頷いた。何か納得したらしいが……。

「なーるほど、ね。つまり、『タヌキちゃんを狙わない方がいい』っていうアピール?」

「そういうことだ。僕としてもタヌキとしても……そして、デュオと七香さんとしても、死者が増えることは望んでいない。無用な争いは避けられるなら避けたいんだ」

 五右衛門が『そういうことね』と頷けば、海斗もまた、少し嬉しそうにそう言った。どうやら、そういう戦略であるらしい!バカは、『よく分かんねえけどすごい!』とぱちぱち拍手した!

「そっかー、タヌキさん、強いんだ……」

「はい!見た目はキュートですが、強いですよ!強いですからね!ですからいじめないでくださいね!」

「あ、うん。いじめる気は元々無いよ……?」

 むつはタヌキを見つめて、『成程、キュートだねえ……』とにこにこしている。バカもにこにこしている!




 ……さて。そうして、バカ達がにこにこしていたところ。

「じゃあ、そろそろ次のチームを決めようか」

 デュオがそう、言い出した。そして。

「ということで提案なんだけれど……四郎さん、むつさん。俺と七香さんと組まない?」

「……俺か?」

「え、私?」

 デュオがそんなことを言い出したので、四郎とむつは、大層困惑した顔をした。バカも、困惑した顔になってしまった!


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― 新着の感想 ―
んなー!? ファンタジー御用達アイテムボックス持ちですと!? タヌキさん現実で異能使えたらチートじゃ……あれ?普通に暮らしてたら現代日本であんま使う利点無い……? タヌキさん悪さする気無さそうだしなぁ…
ほんわかたぬき回。良き哉良き哉。 たぬの異能は異世界もの定番のアイテムボックスさんだったとは……容量極大、生物はNG、時間経過はありやなしや? 色んな使いこなし方が網羅されてる能力ですから、確かに何が…
タヌキさんが癒し枠…。 抱っこしてる七香さんの気持ちが少しわからんでもない。 お子様が背負ってる収納力皆無のぬいぐるみリュックよりおても実用的なタヌキさん…。 一家に一匹ほしいですね。
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