ゲームフェイズ2:大広間8
誰を味方にしなければならないか、と考えると……まず、デュオを仲間にすることは絶対に必要である。何故なら……そうしないと、デュオ自身が、人を殺し始めてしまうからである!
とはいえ、デュオは1人で人を殺しまくってしまうわけではない。2周目のことを考えると、多分、七香と組んで人を殺していたのだろう、と考えられる。
今回はデュオが七香を上手くコントロールしてくれたし、デュオが七香に自分の素性を話してくれた。それによって七香の願いを掻き消してしまったので、デュオも七香も、自分達の願いのために人を殺すことはしなかった。更に、タヌキが入ってぽんぽこしたことによって、七香はちょっと元気が出ていたように見えた!
……が、それをやるために、今回、かなりの時間を費やしてしまっている。
それでは駄目なのだ。間に合わないのだ。だって、その間にバカは……四郎と五右衛門の方を何とかしないと、今回みたいになっちゃうからである!
七香が人を殺さないため……そして、タヌキと七香とデュオの、なんだか寂しい関係を、少しでもよいものにするために!協力者を増やすためにも……バカは、『次回』も七香を味方に付けなければならない!
……バカが説明を圧縮し!最初から、味方を作り!その上で……五右衛門の謎に、挑むのだ!
なので。
「七香ぁ!『次』、俺、七香になんて言ったらいいかなぁ!?どうしたら、七香、俺達のこと、信じてくれるんだぁ!?」
「え……」
直接聞く!分からないことがあったら、もう、聞いちゃう!
バカの、バカなりの処世術なのである!
……それから七香は、『説明して。最初から。全部』と、表情の無い顔でバカにそう言ってきたので、バカは一生懸命、説明した。
自分が『やり直し』していること。今が、『3回目』であること。
それから、海斗とはまた別のデスゲームで知り合って、でも、そこで出会った『宇佐美光』は、今、ここに居る『デュオ』とはちょっと違うらしい、ということ。
……そして、前回、七香が皆殺して、悪魔に『デュオの心』を望んだ時のことも。
全部話した。全部話していたら、とんでもなく時間がかかったが……ところで、むつはまだ目覚めない。
これについてデュオは、『ああ、むつさんについては不確定な要素をとにかく排除したかったから……咄嗟に、無敵時間の効果時間を24時間に設定しちゃったんだよね……ごめん』とのことだったので、今回はむつに話を聞くのは難しそうである。
が、その分、たっぷり時間を掛けて七香に説明することができるので……それはもう遠慮なく、説明した!
七香はバカの、あっちに行ったりこっちに行ったりする話を時々ぴしゃりと矯正しながらもバカの話を聞いてくれた。
……そして。
「……成程。そういうこと。やっと納得がいったわ」
七香は、ふう、と息を吐き出して、何やら納得してくれたらしい。バカは、『何に納得したのかは分かんねえけど、何かに納得してくれたっぽいからよかった!』とにこにこ顔である。
「納得、というと?」
が、バカが『よかった!』で流してしまうことも気になるのが海斗である。流石はバカの相棒であった。
海斗が尋ねると、七香はちょっと呆れたような、ちょっと軽蔑したような目で海斗をじろりと見た。
「……あなた達3人とも、あまり必死ではないようだったから」
「あー……まあ、そう、だな……」
海斗はちょっと気まずそうな顔でデュオと顔を見合わせている。バカは、『俺、めっちゃ必死だぞ!?』とびっくりした。七香は、『……そうね』とそれには同意してくれた。バカの必死さは七香に伝わったらしいので、バカはまた、にこにこ顔である!
「……本当に、あなた達がやり直せる、というのなら……」
七香はちょっと思案して、それから、ふ、と、表情を緩めた。それは、『諦めた』時の七香の顔だ。
「なら……樺島さん。『次』の私に会ったなら、こう、お伝えください」
七香はそう言って、じっ、とバカを見つめた。
「『アンナ・カレーニナ』と」
「あんな……かれーにな?」
バカは頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべて首を傾げる。すると海斗が横から、『トルストイの名作……あー、つまり、本のタイトルだ』と教えてくれた。成程!本のタイトル!バカは覚えた!
……と、そんなバカの様子を見て、七香は心配そうではあったが……最後に、教えてくれた。
「……その上で、デュオさんとタヌキさんに会わせて、全部説明して。そうしたら……『次』の私も、多少、前向きになれるかもしれないから」
……そうして。
「じゃあ……また、『次』もよろしくな!」
「ああ。まあ……気長にやることになるんだろうが……よろしく、樺島」
「うん!よろしくな、相棒!」
バカは、『今回の』海斗とお別れすることになる。
否、『今回』も『次回』も、全部海斗は海斗だし、バカはそこに疑問を抱くことは無いのだが……それでも、なんとなくちょっぴり寂しい気分にはなる、バカなのである。
「次回は最初からかなり人が多いわけだから、混乱が続くと思うけれど……まあ、頑張ろう」
「おう!……人、いっぱいになるもんなあ!楽しみだなあ!」
「楽しみなのか……」
デュオは何とも言えない顔をしていたが、バカは……まあ、楽しみである!
仲間が、増えていくのだ。こうやって仲間が増えていって、全員が仲間になったなら、きっと……きっと、何もかもうまくいくようになる!
それに加えて、単純に、人が多いのは楽しいことである。何故ならば、人を幸せにするのは人だから!だから、仲間は多い方がいい!バカはそう思っている!
なので……。
「七香、絶対に!幸せになろうな!」
バカは、七香の手を握って、ふり、ふり、とやった。握手である!
……七香は、まだ、何かを信じ切ることはできないのだと思う。
だが……『次』は。否。『次』が駄目であったとしても……『最後』には。
タヌキ諸共、幸せにならねばなるまい!バカは、強くそう思いながら、ぺかーっ、と光り輝き……そして、『やり直し』をしたのである!
……ということで、樺島剛はまた目を覚ました。
目を覚ましてベッドから跳び起き、そしてその勢いのまま、ローリングでドアをぶち破る。
そして。
「七香ぁーッ!」
……バカの個室から一番近いのは七香!そして、バカが真っ先に訪ねなければならないのは、七香!バカは七香の個室をタックルで『バキイ!』と開けて、そして……。
「……っ!?」
絶句して、緊張と恐怖をその表情に浮かべている七香を見て、バカは、『ああ!最初の七香に戻ってるんだもんなあ!』と嘆き……嘆きつつも、ちゃんとしなければ、とわたわた姿勢を正す。
「あ、えと、七香、じゃなくて……小百合、だっけぇ……?」
「……誰?」
名前を呼んでみたところ、余計に不審がられたように思える。だがバカは気にせず元気にご挨拶!
「あ、俺、樺島剛!よろしくな!で、ええと……」
……そして、ご挨拶の後には、バカが七香を真っ先に訪ねなければならなかった『それ』がある。
そう。バカが七香に託された、その言葉を、七香に告げるために……それをすぐ忘れちゃいそうなバカは、すぐ、七香に会わなければならなかったのだ!
……だが。
「……その、なんか、餡子とカレー、みたいな……ああああー!なんだっけぇ!なんだっけぇーッ!忘れちゃったぁー!うわあああーん!」
バカはバカなので!
この短時間でも!
忘れる!
「ごめん七香ぁ!俺、『前回』のお前からの伝言、忘れちゃった!忘れちゃったあああああ!折角教えてもらったのに!ごめんなぁああああ!」
七香は、目の前でぴーぴー泣き出したバカを見て、只々唖然とし、嫌悪に満ちた目をバカに向けていた。
さもありなん。いきなりタックルでドアをこじ開けてきた見知らぬ大男が、いきなり名前を呼んできて、更に、何やら謎の言葉を言い、そして泣き出したのだから!
が、バカの心境たるや、惨憺たるものである!『折角覚えようと頑張ったのに!折角教えてもらったのに!俺がバカだから!俺がバカだから!』と嘆き、しおしおと萎れてしまいそうな心を、必死に立て直そうとし……そのためには行動あるのみ、と、考えるに至った。
「分かんねえから海斗に聞くぅううー!うおおおおおおお!」
「えっ」
ということで、バカは七香を抱えた。
七香は、ぎょっとした。が、七香がぎょっとする間にも、バカは走り出していた!
「海斗ぉおおおお!海斗ぉおおおおお!」
バカは、走る!茫然とする七香を抱えて、只々、ずどどどどどどど、と走る!バカだから!バカだから!
<バカカウンター>
この章に出てきた『バカ』の数:670回ぐらい




