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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第三章:バカと狸の皮算用
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ゲームフェイズ2:大広間2

 エレベーターが上がってくる。

 それを見て、バカはいよいよ、覚悟を決めた。

 ……海斗が無事かどうかすら分からないこの状況だ。そして、海斗がどんな嘘を、或いは真実を話したかも分からない状況である。そんな中で、バカは1人、上手く立ち回らなければならない。……海斗の相棒として、胸を張るためにも!




 やがて、エレベーターのドアが開いて、むつ達が降りてくる。

 ……そして。

「海斗ぉ!」

 海斗も、降りてきた!……無事だ!ちゃんと、無事だ!バカは大いに喜び、海斗に駆け寄った!

 だが。

「おい」

 そこに、四郎が割って入ってきた。

 ……その手に握った氷の刃を、海斗の喉に付きつけながら。


 ぴた、とバカは足を止めた。バカはバカだが、流石に……分かる。

 今、海斗は人質にされているのだ、と。




「……海斗。忘れちゃいねえだろうな」

「ああ、勿論」

 海斗は『やれやれ』と言いつつ両手を上に挙げてみせた。……余裕ぶって見せているが、海斗は今、緊張している。細く吐き出された息が震えているのを、バカの無駄に良い耳が聞き取っていた。

「よし。……おい、樺島」

「うん」

 そして四郎に睨まれつつ、バカも若干緊張して、答える。ついでに海斗と同じように、両手を上に挙げておく。敵意は無い、というアピールだ!

「……こいつの命が惜しけりゃ、話してもらうぞ。『お前の数字について』だ」

 ……バカは四郎を見下ろしながら、『本当にこの話になった……。デュオ、すげえなあ……』と、只々、デュオに感心していた!




「数字……」

「ああ。……お前、『10』だったんだな?それがどうして、『0』になってる?ついでに、『9』の奴をどうしたのかも話して貰おうか」

 バカは、考える。……これは、どう答えればよいのだろうか、と。


 正直に話すとなると……バカがやり直しをしている、ということも、話してしまうことができるだろう。

 だが、それはあまりにも危険だ、ということは、分かっている。だって、この中に悪魔が居るのだ。天使の羽だって、見せない方がいいらしいのだ。だからバカは、そのあたりの話はまだ、できない。

 ……それに、今の状況だ。バカが『やり直し』をするのを嫌がって、バカを殺そうとする人達が何人か生まれてしまったら……その時、バカはちゃんと、戦えるだろうか。

 それから……バカは、海斗が言っていたことを思い出す。

『何があっても、お前は生き残れ。たとえ、僕を見捨てることがあったとしても、お前だけは生き残らないと駄目だ』と。

 ……そして、バカは、海斗を信じている!海斗が自分のことを信じてくれていると、信じている!


 よって。

「ごめん!俺、腕輪、引き千切ったァ!海斗がそうした方がいいぞって言ってくれたからァ!」

 バカは、海斗が『樺島はバカだから……』と正しく理解していることを信じて、そう、言い切ったのであった!




 自信満々、威風堂々、どこまでも突き抜けて明るく澄み渡るバカのバカすぎる回答は、今度こそ、四郎の思考を止めてしまったらしい。しばらくそのまま、両者共に沈黙することになってしまった!

「……引き千切った、のか?」

 そして、ようやく言葉を発した四郎は、まず、そこが気になったらしい。

「うん……ごめんなぁ……あ、四郎のおっさんのも、引き千切っとく……?」

「やめろ」

「あ、うん……」

 ……バカが『こう掴んで、こう!』と、ジェスチャーをしてみるも、反応は薄い。それはそうである。

「俺が聞いてんのは、『どうやって』腕輪をぶっ壊したかじゃねえ。『なんで』についてだ。だが、それは……」

「うん。海斗に言われて、千切った!」

 更に、バカはもう一度繰り返す。

 ……説明は、海斗がしてくれる。そして、バカは『バカだから何も分からない』。

 これが、バカと海斗のバディの在り方なのだ。バカは自分の役割を、正しく理解しているのである!




 ……ということで、暫し、全員が沈黙していた。だが、海斗が少し嬉しそうな顔をしているのを見て、バカは、『やっぱり俺、これでよかったんだな』と分かった。なので嬉しい!

「あー……成程ね?じゃあ、海斗に言われて、腕輪を引き千切った、ってわけね?」

「うん!あ、五右衛門のも千切るか?」

「千切らなくていいわよ……」

 バカは五右衛門にも腕輪千切りセールスを持ちかけたが断られた。『俺も何かの役に立てたらよかったんだけどなあ……』と、ちょっぴりしょんぼりした。

 が。

「……千切った後の腕輪、なんで捨ててきたのよ」

 五右衛門が更にそう続けてきたので、『あれっ!?そういえばそうだった!』と気づく!気づくが……。

「えっ!?腕輪、使うんだったか!?……あっ!?確かにそうだよなぁ!?腕輪があったら、『10』の部屋に俺、1人で入れたんだぁ!?」

「……今気づいたのぉ……?」

 バカは慄いた!なんか、よく思い出せないが腕輪は引き千切ったし、その腕輪は……天井裏に、捨ててきちゃったのである!だが、バカはバカなので……なんで捨ててきちゃったのかは、覚えていなかったのである!バカだから!バカだから!

「えええ……ごめん、そっか、腕輪使うんだって、俺、今気づいた……なんで気づかなかったんだろぉ……」

「……ルールを知ったのは後だからだろ」

「あ、そっか……?そっか、四郎のおっさん、頭いいなあ……」

 バカがあまりにおろおろしているからか、四郎がちょっと助け船を出してくれた。なのでバカは、よく分からないながらも『四郎のおっさんは俺より頭、いいみたいだ……』と、ちょっと四郎を尊敬した。四郎は、なんとも複雑そうな顔をしていた……。


「……で、最後の質問だが」

 が、そんな四郎が、質問を重ねてくる。バカはまた『よし!さあ来い!』と身構える。身構えたところで何にもならないが。

「『9』の奴は、どうした?お前が……いや、『海斗が』目論んだのは……『9』の奴が存在しないことを隠すために、お前を『10』じゃなくて『0』にする、ってことだったんじゃ、ねえのか?おい」

「えええ……」

 そして、『そういえばそれも聞かれてたなあ……』と思いつつ、バカは困ってしまう。

「そんなこと言われてもぉ……俺、知らないよぉ……。そもそも、9番の奴が居ないのも知らなかったし……居るもんだと思ったのに、居ないし……」

「居るもんだと思った、ってのはどういうこった」

「だって、部屋はあったしぃ……なのに、居ないしぃ……」

 バカは『なんで孔雀、居なくなっちゃうんだろう……』としょんぼりしているのだが、そのしょんぼりは今一つ、四郎達には伝わらない。ただ、『まあ……確かに、個室はあるんだから、9番が居たであろうことは後から推測できるし、腕輪を引き千切った時点で9番の奴が居なくなることが分かっていたわけじゃねえのか』と納得されているだけである!

 ……バカの説明は下手なので、バカの説明を聞いた者は、自分の頭で説明を補足して考えるしかなく!それ故に、勝手に納得できる理屈を思いついて、勝手に納得してしまうのであった!




「……そういう訳だ。樺島は、その……まあ、バカだからな。特に何も考えていない。分かっただろ」

 そして海斗がそう言うと、四郎は一つ舌打ちして、海斗の喉から氷の刃を離し、海斗の背中を軽く突き飛ばすようにして海斗を解放してくれた。なのでバカは今度こそ、『海斗ぉ!』と海斗に駆け寄って、海斗の手を取ってぴょこぴょこドスドス、跳ね回る。

「ったく……言っておくが、疑いが晴れた、だなんて思うなよ」

「ああ、分かってる。だがそれは、『そっちこそ』といったところだな」

 ……四郎と海斗はちょっと睨み合っている。バカは、『睨むなよぉ……仲良くしようよぉ……』と気が気じゃないのだが、これはバカにはできない戦いを海斗がやっている、ということなのだろうから、あまり強くも言えない。

 ただ……。

「あー、樺島」

 ちょいちょい、と海斗が『こっち来い』とばかりに手招きしてきたので、『ナイショ話だな!』と即座に理解したバカは、海斗の口がバカの耳に届くように身を屈めた。すると。

「……信じてくれてありがとう。いい判断だった」

 ……海斗が、そう言って笑ってくれたので……バカはいよいよ、嬉しくなってにっこにこの笑顔になるしかない!

 バカは、『ああ、俺、海斗の相棒として相応しい行動ができたなあ!』と、幸せいっぱいなのであった!




「あー……ちょっといいですかぁ?」

 そして、そんなバカ達、そして四郎達に、タヌキが声を掛ける。

「ヤエさんが戻ってきていないのが、心配なんですけれどぉ……」

 ……そう。まだ、ヤエは戻ってきていない。

『8』の部屋に、1人で入ったきりだ。




「……時間経過は、20分か。なら、まだ戻ってきていなくてもおかしくはない、とは思うけれどね」

「で、でも……」

 デュオが冷静にそう言うも、五右衛門はそわそわと落ち着かなげである。

 ……そして、五右衛門はちらり、とタヌキの方を見た。タヌキは色々と挟まったので、『私が社長……』のしょぼしょぼからは一旦立ち直っている。

「……ねえ、タヌキちゃん」

「あっ、はい。なんでしょう!」

 タヌキはきょとんとしていたが、そんなタヌキに、五右衛門は思いつめた表情で、持ちかけた。

「悪いんだけど……アタシと一緒に、『8』のアルカナルームに行ってくれない?」




「まあ、待って。それだったら、他にも方法はある」

 タヌキと、タヌキを誘った五右衛門の間に割って入ったのは……デュオである。

「『8』をできるだけ多い人数で作ろうとするなら……『0、1、3、4』の組み合わせになる。或いは、五右衛門さんが入ることを前提としても、『0、1、2、5』ということになるかな」

 デュオはそう説明すると、ちら、と海斗とバカのことを見た。

「……五右衛門さんが、四郎さんや海斗君を信用できるならその方がいいと思うよ。海斗君は頭が切れるから、頭脳戦をする必要があっても助けになるだろうし。それに、樺島君は……まあ、とにかくパワーが強い。海斗君か俺、それに樺島君が居れば、大抵の状況には対応できる」

 バカは、『手伝う!』とやる気いっぱいの顔でアピールしておいた。海斗は、『まあ、僕にできることがあれば』と頷いて見せた。

「あ、そうですねえ……。あの、五右衛門さん。でしたら、私よりも、海斗さんとデュオさんを連れて行った方がいいかもです。私、タヌキボディですので、できることがかなり限られちゃうんですよぉ……」

 更に、タヌキまでもがそう言い出したので……五右衛門は、ぐっ、と言葉に詰まった。

「……勿論、あなたが樺島君を信用できない、っていうことなら、樺島君は抜きでもいいとは思うよ。合理的じゃないな、とは思うけれどね」

 更に続いたデュオの言葉には、若干の棘があった、かもしれない。バカには今一つ、分からなかったが。


「……分かったわ」

 そして、五右衛門はため息を吐いて、言った。

「海斗とデュオ。付いてきて頂戴。……樺島君は、悪いけれど、留守番しててくれる?」

 ……どうやら、やっぱりバカは信用が無いようである。



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― 新着の感想 ―
そうか……今回はほとんどデュオ七香タヌキ達と一緒だったから、他の人達にはバカくんがどれだけバカでどれだけ善性の塊みたいな存在なのか伝わってないのか……ぐぬぬ……。
海斗無事で良かった!デュオがいたお陰でバカが落ち着いて対応が出来た感じ?(事前に知らされてなかったらどうなってたか……筋肉で解決か!?) あとお名前のせいかしら。五右衛門さんの異能が「つまらぬものを斬…
実に素晴らしい信頼関係!!素敵です!!! そして確かに、私達読者側から見ていれば判る事も、彼らには判りませんね……。 一番信頼できるのは、間違いなく彼だというのに……!
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