ゲームフェイズ2:大広間1
……ということで、五右衛門を囲んで、皆で『どうしたの、どうしたの』とやる会が開催された。
「えーと、そんな大したアレじゃないのよ?ただ、ちょっと、ね?血がぶちまけられただけっていうか……」
五右衛門はそんなことを言って、はあ、とため息を吐いた。
「罠だらけの部屋で殺人鬼から逃げるー、みたいなかんじの部屋だったの。で、罠を上手く使えば殺人鬼を引っかけられる、みたいな……ただ、その罠の一つに、血糊が噴き出す奴があってね?それでこのザマ。んもー、やんなっちゃうわよぉー」
五右衛門が『この服、お気に入りだったのにぃ』などと言っているのを見て……バカは、あれ、と思う。
確か……『5』のアルカナルームは、そういう部屋じゃなかった、のではないだろうか。
『法を遵守せよ』『法に背いた者には罰を』とある部屋で……それで、五右衛門のものじゃない血だまりが、あって……。
……バカは、ちら、と海斗とデュオを見る。2人も、何か気づいた様子だったが、それを表に出すことはしない。デュオに至っては、『それは災難だったね。ハンカチ、貸そうか』などとやっている。デュオは嘘を吐くのが上手なのだ!
まあ……恐らく、五右衛門も嘘を吐いている、のだろう。部屋の内容を知られたくない、のかもしれない。或いは、自分が戦ってきたことを知られたくないのかも。
だが、それが何故なのかは分からない。バカは只々、首を傾げながらこの光景を眺めているのだった……。
……そして。
リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴り、発表フェイズに入る。
「じゃ、発表だな。どれどれ……」
四郎が先頭になってモニターを覗き込みに行くと、モニターには案の定、発表があった。
1番……つまり、海斗が0枚。
2番……デュオが1枚。
3番……タヌキが0枚。
4番……四郎が1枚。
5番……五右衛門が2枚。
6番……むつが1枚。
7番……七香が1枚。
8番……ヤエが1枚。
9番……本来なら孔雀が居たはずの番号だが、まあ、0枚。
そして10番のバカは、3枚である。
「……分散してるよなあ」
デュオが小さくそう呟くと、四郎は、ちら、とデュオを見て、それからまたモニターに視線を戻し、『そうだな』と言った。
バカには何のことかよく分からないが、まあ、前回とはかなり違う状況だ、と言っていいだろう。
「樺島君、いっぱい持ってるわねえー……」
が、そんな中、バカだけ3枚もカードを持っている!バカはそれに気づいて……そして、『あっ!?俺、今回は入った部屋のカード、全部貰っちゃってる!』と慄いた!
「お、俺、全部俺が貰っちゃってた……あの、デュオぉ、七香ぁ、タヌキぃ……1枚、どうぞ……」
「えっ!?いや、いいよ。樺島君が持っていていいものだと思うよ、それらは」
バカがおろおろとカードを配ろうとしたところ、デュオに早速止められた。バカは、『いいのかなあ』と心配になったのだが、デュオはバカの耳元で、こそっ、と、『カードが増えると狙われる危険が大きくなるから、樺島君が持っていて』と囁いていった。
……同じようなことを、海斗も前に言っていた気がする。バカは、『そっかぁ』と納得して、改めて、カードをポッケにしまった。
「今のところ、攻略された部屋は10個、ってことよねえ……。残り11個、か……」
「この調子でカード取得が進んでいくと、誰も脱出できねえな」
五右衛門と四郎は、そんな話をしている。バカはバカだが、『カードが7枚集まらないと脱出できない』ということは覚えているので、『そっかぁー……』と頷いた。
「……よし。じゃあ聞かせてもらうか」
そして、そんな中で四郎が声を上げる。
「……誰が悪魔だ?」
……四郎の鋭い眼光が、全員をじっと、見つめている。
「あー……ええと、俺からしてみると、タヌキは限りなく悪魔の可能性が低い」
そんな中、デュオが声を上げた。意外である!バカはなんかびっくりした!
「……タヌキ。言っちゃってもいいかな」
「あ、はい!どうぞ!」
デュオはタヌキに確認をとって『ありがとう』と微笑んでから、四郎に向かって続ける。
「実は、俺のこの体は元々、タヌキのものだったらしい」
「……なんだと?」
当然、四郎は勿論、バカと海斗と七香以外の全員が驚いた。むつやヤエは、『どういうこと……?』と首を傾げている。
「えーと、まず前提として、俺もタヌキも、それぞれ、過去に別のデスゲームに参加したことがあって……そこで、タヌキは『健康な体』を報酬に貰って、俺は『別人の体』を報酬に貰ったんだよね」
「え、ちょ、ちょっとぉ……何?悪魔のデスゲームなんかに何度も参加する酔狂ばっかりってこと……?」
「酔狂は認めるけれど、まあ、悪魔のデスゲームって、そういう風にできてるんだよ。……何せ、『健康な体』を願ったタヌキは『健康なタヌキの体』を与えられた訳だし、『別人の体』を求めた俺は『末期癌の別人の体』を与えられた訳だし」
デュオが少し暗い目でそう言えば、四郎も五右衛門も、ぽかん、とした。むつとヤエは理解が追い付いていないのか、やはりこちらもぽかんとしているが……。
「まあ……そういう訳で、俺達は互いに概ね、『こいつは悪魔じゃない』と分かる状態にある。……いや、まあ、タヌキからしてみたら、俺は『元々の自分の体に似せた人間の体を使っている悪魔』である可能性が残る訳だけど……」
「あっ、いえいえ。それ言っちゃうと、デュオさんからしてみたら私も『元々の体の持ち主であると主張する嘘吐き悪魔』の可能性が残っちゃいますので!」
バカは『つまりどういうことぉ!?』と頭がこんがらがってきたのだが、海斗が『まあ、証拠は無い、ということだ。お前は考えなくてもいいぞ』と言ってくれたので、考えるのを止めた。
「あー……それから、七香さんについても、その、悪魔じゃない、と、思う。俺、彼女とは元々知り合いなんだ。まあ、元々の知り合いを、記憶や人格ごとコピーできる悪魔が居たら、話は変わってきてしまうけれどね……」
続いて、デュオは七香についても言及した。七香は、なんとも複雑そうな顔をしていたし、五右衛門はそんな七香を見て、『あんた何かあったの……?』と心配そうな顔をしていたが……。
「元々知り合い、ということなら、僕と樺島もそうだな。勿論、それを証明する手段は無いから、僕らが『悪魔と、悪魔に協力する人間』である可能性を客観的に否定することはできないが」
ついでに海斗もそう主張し始めたので、バカも一緒になって『俺達、友達!』と満面の笑みになっておいた。海斗には『顔がうるさい』と小突かれたが!
「……まあ、『誰が悪魔か』を考えるのは中々難しいものがあると思う。僕と樺島のことだってそうだし、タヌキとデュオさんのことだってそうだ。客観的に見て確かにそうだと言える証拠を提示することは誰にもできない。2人以上の人が同じことを言っていたとして、『共謀した』可能性は排除できない」
結局のところ、海斗はそう言って締め括る。
「これ以上の詮索は無駄だと思う。それに、『悪魔をここで殺す』という選択をしたとして、このままだと誰も脱出できない、という事態には変わりがない」
海斗がそう言って四郎を見つめると、四郎は眉間に深く皺を寄せた。
「……多少は改善するだろ。カード1枚分か?或いは、自分が悪魔に殺される可能性を減らせるぜ」
「どうかな。俺も、四郎さんの案には反対だ」
が、四郎の反論は、デュオによってまた封じられてしまう。
「時間が無い。それに加えて、俺達はどうやったって、『協力する』ことでしか、アルカナルームに入れないんだ。……そもそも、『参加者』に紛れ込んでいるっていう悪魔がどんな悪魔なのかも分からないし。悪魔も一枚岩じゃないらしいからね」
「えっ、そうなんですか!?悪魔も大変なんですねえ……」
「大変らしいぞ。とんかつ揚げるの上手い悪魔が言ってた!」
「とんかつ揚げるの上手い悪魔……?え?悪魔ってとんかつ揚げるんですか……?え……?」
……バカのアシストによって話が全く関係ない方へ転がり始めたが、『とんかつ……?』と悩むタヌキと『とんかつ……!』とお腹が空いてきたバカを置き去りに、話は再び、元の位置に戻る。
「ま、そういうことで……俺は、『誰が悪魔か』じゃなくて、『誰を脱出させるか』をそろそろ考えたいかな」
……そう。
どうやらデュオは、そんな話をするつもりらしい。
「誰を、脱出させる、か……?」
四郎が『どういうことだ』とデュオを睨む。だがデュオは全く臆することなく……こう、言い切った。
「ええとね……全員で脱出する方法は、あるんだよ」
「1人が7枚以上のカードを持った状態で、外に出る。それで、残ったカードで、『他の人を脱出させる』っていう宣言をすれば、まあ、他の人も脱出させられると思うよ。ただし、1人につきカード1枚は使わなきゃいけなくなると思うけれど」
デュオがそう説明すると、四郎は訝し気な顔をした。
「……随分と詳しいじゃねえか」
「そうだね。俺、デスゲームは5回目なんだ」
「5ッ……!?」
さらり、と、デュオが言ってのければ、四郎は勿論、むつやヤエ、五右衛門も『5回!?』と慄く。それはそうだ。バカですら驚いたのだから!
「……話、戻すよ。それで、まあ、1人がとりあえず脱出するのに7枚。続いて、他のメンバー全員を脱出させるのに、8枚。合計15枚のカードがあれば、ひとまず、全員脱出できる。カードが全部集まったと想定すれば、6枚分、カードには余裕があるから……6つ、願いを叶える余裕があることになるかな」
涼しい顔でデュオがそう続けるのを聞いて、四郎は唖然とし……そして、じろ、と全員を見回した。
「いや……『7つ』だな。悪魔は、俺がここで殺していく。そいつが脱出することはねえ」
「その『悪魔』が誰かも分からないのにそれをやろうとするのは、かなり難しいと思うけれどな」
四郎とデュオは、暫し、睨み合った。バカは、『あああ……陽って、怖くなろうと思ったら、いくらでも怖い顔、できるんだな……』と、なんだかちょっぴり怖くなった。それだけ、デュオの表情は冷たくて……鋭い刃物のようなのだ。
「……何にせよ、全員、『この人が悪魔だ』と思われる人を探すと同時に、『この人にならカードを託せる』と思える人を探した方がいいだろうね。ついでに、そうやって全員で脱出した場合、叶えられる願いは全部で6つ。それも、考える必要がある」
結局、デュオは四郎を無視して話を進めることにしたらしい。
「悪魔に叶えてもらう願いなら、条件はかなり精査しないといけない。じゃないと、俺とタヌキみたいになる」
「あー……皆さん。その、脅すわけじゃないんですが、膵臓癌って、結構痛いんですよ……?味わわなくていいんだったら、あんな痛い思い、しない方がいいんです。だから、本当にくれぐれも、くれぐれもお気を付けくださいね……」
タヌキも、『痛いんですよ、本当に……』としょんぼりしてしまった。なのでバカはそんなタヌキをそっと抱き上げて、『よしよし』とやってやった。海斗が隣から、不器用にタヌキの背を撫でてやっていた。
そうしていると、タヌキはちょっぴり元気になってきたらしい。
「と、とにかく!そろそろ発表フェイズも終わっちゃいますし!次のチーム分け、しませんか!?悪魔探しにしたって、信頼できる人探しにしたって、脱出はできた方がいいわけですし!なら、カードは集めなくては!」
しゃん、と背筋を伸ばしてそう言うタヌキに、バカは『そっかぁ!それはそうだ!』とぱちぱち拍手を送っておいた!
……ということで。
「じゃあ、チーム分けしようか。ええと、残っている部屋は……」
「0、1、2、3、8、10、11、12、16、19、20、21……か。どうする。ひとまず、樺島が『0』に1人で入ることと、僕、または僕と樺島で『1』に入ること、そして『2』にデュオが1人か樺島と一緒にかで入ることは確定しているな」
早速、チーム分けが始まってしまった。が、こうなるとバカはできることがあんまり無い。足し算は苦手だし、考えるのも苦手だし。
「……そうだな。じゃあ、僕は1人で『1』に入る」
が、そう海斗が言い出したので、バカはちょっとびっくりした!
「えっ、か、海斗、1人で行くのか!?」
「ああ。……その間、樺島。お前とデュオとタヌキと七香さんで、『12』を頼む」
海斗はそう言って、バカの背を、ぽふ、と叩いた。……なのでバカは、うん、と頷く。
以前の海斗が既に、『1』のアルカナルームが海斗1人でも大丈夫だ、ということを調べている。だから大丈夫だし……そう信じるのが、親友にして相棒たるバカの役割なのだ!
「分かった。じゃあ、海斗は海斗で頑張れよ!」
「ああ。……逆に、『0』の部屋は、その、ちょっと待っていてくれ。最後に回したい」
「ん!分かった!」
バカは海斗の背を軽くぽふんと叩き返して、それで、このやり取りは終わりだ。
海斗と別行動だって、バカは大丈夫。何故なら海斗が大丈夫だと判断したからだ!
「となると……残るの、アタシとむつちゃんとヤエちゃんと四郎ちゃんでしょお?そうなると……アタシとむつちゃんで『11』、四郎ちゃんとヤエちゃんで『12』しか無くない?だったら、そっちの『12』と被るじゃないのよぉー……」
が、話はこれで終わらない。
そう!バカ達が良くても、残った4人……四郎と五右衛門とむつとヤエが、困るからである!
「そうだな。そっちは困ることになる。それも織り込み済みだ」
そんな五右衛門に、海斗は堂々と……それでいて、ちょっと緊張しながら宣言する。
「先に言っておこう。僕が最も信用しているのは樺島だ」
「ありがとう!俺も!俺も海斗のこと信じてる!」
なのでバカも宣言した。……海斗はちょっと照れたように、『うん』と小さく言った。バカは満面の笑みである!
「……うん。その、ええと……話を戻すが、まあ、樺島でなくとも、カードを預けられるくらいには、デュオとタヌキを信用している。だから、できる限りこの面子でカードを独占したい。そういう戦略だ」
そして、照れを隠すようにそう言い放って、海斗は五右衛門の出方を伺った。……バカのせいで迫力は2割引きぐらいになってしまったが仕方がない。バカと組むというのはこういうことなのである!
「なるほどねえ……。つまり、海斗君は『誰を脱出させるか』については、『樺島君、デュオ、タヌキ』の3択ってことね?」
「そういうことになる。その上で、僕自身は願いを叶えなくていい。だから、『叶える願い6枠』を争うつもりは無い」
五右衛門は、『あら、そぉ』と言いつつ、ちら、と四郎の方を見た。
四郎は四郎で、ちら、と五右衛門を見て……さてどうするか、というような顔をしていたが。
「……その、『誰を信用できるか』を確認するんだったら、私達も海斗さん達と組んでみたいよね」
そこで声を上げたのは、むつであった。
「あの、海斗さん、1人で『1』に入らずに、こっちと組まない?」
「え?」
「そうしたら、えーと……えーと、その、計算の結果、変わらない?えっと、1増えるんだから、四郎さんとヤエちゃんのところに海斗さん入ってもらって、『13』……あ、13番アルカナルームももう、攻略済みなんだっけ……?」
むつは提案した割に、計算はまだできていないらしい。バカは、『ええと、別の組み合わせ……』と考え……そして、3秒で『あっ、俺にはこれ、難しすぎる……』と理解し、考えることを止めた。
が、バカ以外の者達は、計算ができてしまう。
「……あの」
ヤエもその1人だったのだろう。ヤエは控えめに、おずおずと声を上げて……そして、ちょっと迷ってから、言った。
「私、『8』に1人で入ります。だから……その、むつちゃんと、四郎さんと、五右衛門さんと……あと、海斗さん。4人合わせたら、『16』、ですよね。……4人で、行ってください」
「や、ヤエちゃん!それは……」
「大丈夫です」
五右衛門がすぐ、ヤエのことを心配して声を上げる。だが、それはヤエに遮られた。
「その……四郎さんも、五右衛門さんも、1人で大丈夫、だったじゃないですか。だから、大丈夫です」
五右衛門は、『そう、かも、しれない、けれど……』と、とても心配そうな顔をしている。それこそ、今にも倒れそうなくらいに。
「あ、あの!ヤエ!ちょっといいか!?」
なので、バカが声を上げた。
バカはバカだが……こういう時には、声を上げたいバカなのだ。
「……だったら、その、俺、ヤエと一緒にいくよぉ……。俺、『0』だから、一緒でも大丈夫、だよな……?」
「……え」
ヤエは、きょとん、としていた。そんなヤエを見つめて、バカは『これで合ってるよなあ、俺、今は腕輪無いから、ヤエと一緒に『8』、入れるよなあ……?』と心配になりつつ、ヤエの返事を待って……。
「……それだったらヤエちゃん、1人で行った方がいいかもしれないわ」
そんなヤエに、五右衛門が横から、そう声を掛けた。
「樺島君には悪いけれど……彼が本当に信用できる相手かどうか、分からないんだもの」
「……えええ」
バカは大いにショックを受けた!『俺ってそんなに信用無いのぉ!?』と、ショックを受けた!
だが、考え直してみれば、それはそうである。バカのことを信用してくれている海斗が居るからといって、他の人達までバカのことを信用してくれるとは限らないのである!
「あ、あの、樺島さん……私は樺島さんのこと、信用してますからね……」
タヌキがバカを慰めるようにそう言ってくれて、バカは自分の胸の中、ちょっとざわざわと波立つ心を落ち着ける。
……そして。
「……あの、やっぱり、私、1人で行きます」
「や、ヤエ……」
「……ごめんなさい。その、樺島さんのこと、信じてない、わけじゃ、ないん、です、けど……」
ヤエは歯切れ悪く、そう結論を出したのだった。
……ということで。
「ええと……じゃあ、確認しようか。『8』にヤエさん。『12』に、俺とタヌキと七香さんと樺島君。『16』に、海斗君と四郎さんと五右衛門さんとむつさん。……こういうことになるね」
デュオがまとめて、全員が頷く。
……バカとしては、海斗が心配だ。そして、ヤエのことも。
ヤエが向かう『8』の部屋は……最初の周で、酷いことがあった部屋だから……だから、余計に心配なのだが……それをヤエに言うわけにもいかない。バカは、『どうか無事で』と祈ることしかできない。
「……少なくとも、この場に居る全員にとってカードの回収はメリットになる。だから、全員が全員の無事を祈ろう」
同じことを、デュオも思ってくれているらしい。デュオの言葉に、バカは大きく頷いた。全員、無事な方がいい。誰一人だって、欠けちゃいけないのだ。バカは、全員を救いたいのだ。
「じゃあ、またここで落ち合おう。……行こうか」
「うん……海斗、また後でな」
「ああ。また後で」
……だからどうか、全員また無事に揃ってここへ戻ってこられますように。
バカはそう祈りながら、エレベーターを作動させるのだった。
……そうして、『12』の部屋へ向かいながら、バカは……バカは、ふと、気づいた。
今、同じエレベーターに乗っているのは、タヌキとデュオと、七香である。
……よく考えたら、とても気まずい。
海斗ではなく、七香に移動してもらった方がよかったのではないだろうか。今も、デュオは七香ではない方を向いているし、七香もデュオではない方を向いているし……タヌキはおろおろしているし!
ああ!気まずい!とっても、気まずい面子なのだった!




