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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第三章:バカと狸の皮算用
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ゲームフェイズ1:『6』恋人

「光」

 たまは、こっちを見て、ぱっ、と笑顔になると、とててて、と駆け寄ってきた。膝丈の白いワンピースの裾がひらりと翻って、なんとも可愛らしい。バカは、『たまって、白い服も似合うんだなあ』とぼんやり思った。なんとなく、たまは黒っぽいイメージなのだ。

「……つぐみ?」

 そして光……デュオの方も、たまを見つめて、ぽかん、とする。そんなデュオを見上げて、たまは変わらず、にこにこと嬉しそうにしているのだ。大変かわいい。

 ……そんなたまを見て、デュオは……。

「……つぐみ。次に取ろうとしてる資格は何?」

「え?」

 デュオは、唐突にそんな質問をしたのだった。


「アマチュア無線」

「そっか。じゃあ、好きな色は?」

「黒曜石の、ちょっと薄くなってるところの色」

 たまとデュオのやり取りを聞いて、バカは『ほええ……?』と首を傾げるしかない。頭のいい人同士の会話っていうのは、かくも不思議なものなのだろうか。

 デュオも、折角たまに会えたのだから、もうちょっと恋人らしい会話をすればいいのに、とバカは思うのだが……。

「成程ね。なら、俺が嫌いな食べ物は?片っ端から、全部挙げてみて?」

 デュオは目を細めて、そんなことを言う。

 これについてはバカもちょっとは分かる。陽は紫蘇とセロリが嫌いなのだ!

 が、勿論、恋人であるたまは、よりたくさんの食べ物を挙げることができるのである。

「紫蘇、セロリ、パクチー……東南アジア系の甘酸っぱ辛い食べ物、それからマシュマロ」

 案の定、バカの知らない食べ物が挙げられて、バカは『やっぱりすげえなあ』と感心する。

 ……だが。


「……ふーん。俺の記憶を参照してるのか。ってことは、幻とか、そういう類かな、これは」

 ……デュオはそう言って、冷たい目でたまを見下ろしていた。




「樺島君。これ、幻か何かだ。タックルしちゃっていいよ」

「えええっ!?」

 バカは慄いた!まさか……まさか、デュオが、自らの恋人にタックルするよう言ってくるとは!バカの理解は追い付かない!

「でゅ、デュオさん!?どういうことです!?これ、どういうことです!?」

 そして、タヌキの理解も追い付いていない!バカは、『俺だけじゃなかった!タヌキも分かってなかった!』とちょっぴり安心した。安心している場合ではない。

「……種明かしは後でいいかな。今は……彼女の姿を、これ以上、見ていたくない」

 ……そう。安心している場合ではないのだ。

 だって、デュオが、あまりにも……あまりにも、辛そうだから。

 ふい、と背けられたデュオの顔に浮かぶ後悔と、怒りと……何より、寂しさが、バカにもひしひしと感じ取れたから。だからバカは……目の前で不安そうにしているたまに、タックルを仕掛けなければならないのである。


「……わ、分かった……タックル、タックル、かぁ……」

 とはいえ、いきなり、この状態からタックルに持ち込めるほど、バカの思い切りはよろしくない。バカの中にだって、迷いはあるし、良識もあるのだ。友達にタックルかますのは、流石に嫌なのだが……。

「……その、たま……じゃ、ないんだよな?」

 だが、デュオ曰く、これはたまではない、のだそうだ。だからバカは馬鹿正直にそう、聞いたのだが……。

「……あなた、誰?」

 たまは、目を眇めてバカを見つめ、冷たい声でそう、言った。

 ……そうしてバカはようやく、さっきのデュオの言葉の意味を知る。

『俺の記憶を参照している』と、デュオは言っていた。バカには『さんしょう』というのが何か分からないのだが……だが、『目の前のたまはデュオの記憶から生まれた偽物なのだろう』ということは、察せられた。

 だから、目の前のたまはバカのことを知らない。目の前のたまは……デュオの記憶にあるたまだ。樺島剛と出会わなかった、デスゲームで死んでしまった、たまなのだ。

「樺島君。早く。タックルが無理そうなら、捕まえて放り投げてくれてもいいから。早く……俺の気が、おかしくなる前に」

 ……デュオが歯を食いしばって顔を背けているのを見て、バカは、こく、と頷いた。

「あの……たま、じゃ、ないのか……ええと、ええと……その、ごめんな」

 たまじゃないのに、どこまでもはっきりとたまに似ているそれを見下ろして、バカは少しだけ、怯んで……。

「……エイヤッ!」

「わ」

 ひょい、と、たまもどきを抱き上げた!

「よいせっ!よいせっ!よいせっ!」

「や、やめて、どこに運ぶの」

 そしてそのまま、どどどどどどど、と走って、たまもどきを連れていく!少なくとも、デュオの目に入らず、耳にも届かないくらい遠くまで……部屋の端っこの方まで、バカは走っていった。

 ……が、部屋の端っこが、いつまでたってもやってこない。となると、この部屋はアホみてえに広い部屋ということであろうか。バカは訝しみつつ……しかし、振り返ってもデュオ達が見えないので、『よし、ここでいいだろ』と納得し……そして。

「でえええええい!」

 ぶん、と。

 ……たまもどきを、投げ飛ばしたのであった!


 バカが本気で投げ飛ばしたことによって、たまもどきは消えた。消えたのだ。見えないところまで飛んでいって……その後は、知らない。

 だが、ひとまずバカはこれで自分の役割を果たしたと言えるだろう。胸の内にちょっと苦いものが残るような、そんな気分だが……これでよかったのだ。

「デュオぉおおおお!投げてきたぁああああああ!」

 ということで、バカはまた、どどどどどどど、と元来た道を走って、デュオ達の元へと戻るのであった!




「デュオぉおおおお!」

「あ、樺島君、お疲れ様。ありがとう。助かったよ」

 戻ると、デュオがちょっと疲れた顔で、それでも笑って労ってくれた。なのでバカは、『こういうのは俺の仕事!』と、元気に胸を張った。

「……ええとね、さっき、タヌキと海斗君には話したんだけど……さっきの彼女。俺の、恋人の姿をしていたんだけど、本物の恋人は今、魂を奪われて意識が無い状態なんだよね」

 バカは大いに頷いた。『デュオにとってのたま』は、デスゲームで死んでしまったのだ。それは、知っている。

「それが、10年前になるんだけど」

「ええええええええええええええ!?」

「……気持ちは分かるけど、今はそれは置いておくよ。ええと、まあ……俺、その10年の間に初めて、『東南アジア系の甘くて酸っぱくて辛いタイプの料理』を食べたんだよね。それが苦手だって気づいたのも、彼女を失ってからだ」

 バカは『10年!?10年!?』とびっくりしているのだが、デュオは苦笑している。デュオとしては、そこはスルーする所存であるらしい。バカは、『後で海斗に聞こ!』と強く思った……。

「彼女が知るはずの無い嫌いな食べ物を、彼女が言い当てた。まあつまり、そういうことだろうな、と思って」

「わかんねえ……」

 そして、デュオの種明かしの方は全く分からない。全く分からないのだが、まあ、とりあえず、『さっきのたまは偽物だった!ヨシ!』ということだけは分かったので、バカは『まあよかった!』と笑顔になるのだった!




 ……と、いうことで。

「それはお辛かったですね、デュオさん……」

「まあ……実は、こういうのは今回が初めてじゃないんだ。2回目と3回目のデスゲームでも同じようなことをやられてね……。だから、まあ、慣れっこではあるよ」

「ひええ……」

 タヌキは、すっかりデュオに同情している。バカとしても、『俺が辛かったんだから、デュオはもっと辛かったよなあ……』と思うし、海斗も悲痛な面持ちであった。

 だが……。

「さて……じゃあ、カードを探そうか」

 デュオがそう言って、バカ達は思い出した。

 ……この部屋は、まだ終わらないのである。


 更に……。

「あのぅ……皆さん。ここのおねーちゃん達、すっごく、かわいくないですか……?」

「……そうだな」

 タヌキと海斗は、何とも言えない顔で、白い服の女性達を見ている。……バカも、彼女らを見てみるが……成程、すっごく、かわいい。

 バカは、『あっ!あの子、ちょっとミナに似てる気がする!』とか、『海斗と一緒に見た映画の女優さんに似てるなあ』とか、色々思いつつ、彼女らを眺める、のだが……。

 ……そんな女性らの群れから、すっ、と1人、やってきた。

 さらりと長い黒髪が印象的な、涼やかな目元の女性である。その女性は、タヌキの前にそっと膝をつくと、微笑んで、タヌキを抱き上げんと手を伸ばす。

「わぁあ……」

 タヌキは、ふら、とその女性の腕の中へ行ってしまいそうになっていたが、そこをすかさず、ひょい、とデュオに持ち上げられてしまった。

「……あの、タヌキ?大丈夫かな?」

 デュオがタヌキの顔を覗き込むと、タヌキは『あああ……』と何とも言えない声を漏らし……そして。

「……成程。よーく、よーくわかりました。わかっちゃいましたよ」

 さながら、名探偵か何かのように、タヌキは……言ったのである。

「……この部屋、好みのおねーちゃんがめっちゃ出てくる部屋、ですね……?」

 勿体ぶった割に、なんかちょっとカッコ悪い。バカは、『流石はタヌキだ!』と、謎の感動を味わっていた!




「すごいですよ。なんか、見た限り私の好みのおねーちゃんばっかりです。お上品で、黒髪ロングで、ちょっとミステリアスで、影があって……あっ、あの子もかわいいー!ショートで活発なタイプの子も可愛いですよねえ!」

「……全然タイプが違うが」

「エッ!?好みってそういうものでは!?」

「……この部屋に女性が多いのって、タヌキのせいかもしれないね。あははは……」

 ……デュオが1人でこの部屋に入っていたら、ここに居たのはたまもどき1人だけだったのかもしれない。バカは、なんとなくかっこいいなあ、と思う。

 一方のタヌキは、『囲まれたい!でも悪魔の罠!いや、でももういっそ罠でもいい気がしてきた!』などと言って、デュオの腕の中でじたばたしている。バカは、なんとなくかっこ悪いなあ、と思う!


「……まあ、『6』のアルカナは、『恋人』。誘惑に打ち勝つ、という意味を持つ訳だから……『好みの人が出てくる』っていう部屋、なのかも。まあ……俺は『誘惑』に勝ったから、皆、頑張ってね」

「ええええええええええ!?この部屋、何をどうやったらクリアなんですかぁ!?」

「少し探索してみよう。リンゴの木があることだし……いや、『誘惑』で『リンゴ』というと、嫌な予感しかしないが……」

 結局のところ、この部屋のことはイマイチ分からない。バカは『探すのなら得意!』ということで、意気揚々とリンゴの木の方へ向かっていく。

 ……すると。

「あっ、なんか書いてあるぞ!」

 バカは早速、リンゴの木の根元に石板を見つけてしまった。


『1つの林檎を誘惑者と分け合って食べたなら、誘惑者は恋人となる。楽園からは永遠に出られず、永遠の愛が約束される。1つの林檎を1人で食べきったなら、その者は誘惑に打ち勝った者。誘惑に打ち勝った者にはカードが与えられる。』


 ……と、石板の文章を読んだバカは……ぱっ、と笑顔になって、そわそわと海斗に尋ねた。

「つまり、ここのリンゴ、全部食っていいってことか!?」




 海斗は、暫し、考えていた。考えていたが……やがて、諦めたように遠い目をして、頷いた。

「腹を壊さない程度にしておけよ。あと、食べ残すなよ。特に、ここの女性達に食べさしを与えるなよ。恋人にされるぞ」

「よくわかんないけどわかったぁ!よっしゃー!食うぞー!

 バカは大喜びで、林檎の木へ飛びついた。

 ……ある種、誘惑に打ち勝てていない者なのであった!



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10年後の陽がいるから時空歪んでますね 陽たちもむつも元々たま弟の死をきっかけに参加したはずだから、むつがデスゲーム数回目で10年後の燕をすぐ分かったと考えるより陽側がなにか特殊な事態になってる感じし…
りんご食べ放題ですね! お腹ゆるくならないか心配ですが…。 あと蜜入りりんごだと果糖の過剰摂取が心配ですね…。 ああ!りんご食べたい! 買ってきます。
ハーレム作れる!?
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