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ゲームフェイズ1:『18』月2

「えええええええええええ!?デュオが悪魔ぁ!?そんでタヌキィ!?」

 バカはびっくりした!なんと、デュオは自前の体じゃないらしいのだ!アレがタヌキの体だというのだから、驚きである!

「わ、分かりませんよ!?デュオさんが私の体に入ってる、っていうだけなんですから!でも、でも……少なくとも、『悪魔によって魂を入れ替えられた人』であることは間違いなくてぇ……あと、あの体が私のものであることも、間違いなくてぇ……」

「……成程な。少なくともデュオは何か知ってる可能性が高い。……或いは、本当に『悪魔本人』かもしれねえ、ってことか」

 タヌキが齎した衝撃の情報に、四郎も少々たじろいでいる。まさかここまで早く悪魔の情報が手に入るとは思っていなかった、ということだろう。

「いかがですか!?私と手を組んで頂けませんか!?」

「いや、しかし……」

「私、もう喋っちゃったんですよ!?ああーッ!手を組んでもらえないんだったら黙ってればよかったぁ!黙ってればよかったぁー!」

「お、おい……」

 四郎がたじたじになっている横で、タヌキは『ああーん!』とひっくり返ってじたばたしている。すごい。バカは、『これ、中身本当に人間なんだよなぁ!?』とびっくりしている!ものすごく、タヌキなのに!

「わ、分かったから……ったく」

「本当ですかぁ!?私と手を組んでくださると!?」

「……一応、途中までは利害が一致しそうだからな」

「やったー!ありがとうございます!やったー!」

 ……こうして、タヌキと四郎による協力体制が出来上がった。バカは『おおー』と拍手しておいた。ぱちぱちぱち……。




 さて。そうしてやり取りも終わったところで……。

「じゃあ、次のゲームに臨むか。ええと、次のチーム分けは……どうする?」

 海斗がそう言い出したので、バカはびっくりしつつ、思い出す。

 ……そう。今回のデスゲームは、チーム分けした後に、またチーム分けする必要がある。

 何せ、『ゲームフェイズ中に入れるアルカナルームの数には制限が無い』。それでいて、『アルカナルームに入るにはアルカナルームの番号に合わせて参加者の番号の合計を調整しなければならない』。

 バカ達は今、18番のアルカナルームを攻略した。

 そして、まだ制限時間まではたっぷり時間があるので、別の部屋を攻略するべきである。

 ……つまり、合計が『18』になる以外の組み合わせを、このゲームフェイズ中にもう1回2回、組み替える必要があるのだ。


「俺としては、海斗。あんたと組みたい」

 そして、四郎がそんなことを言い出したので、バカは『海斗ぉ!?なんで!?』とびっくりした!

 ……だが。

「……僕が早々に死ぬと思ってるんだな?或いは、僕を殺す気か?」

 海斗がちょっぴりじっとりした目を向けてそんなことを言うので、バカは益々びっくりした!殺すとは一体どういうことだろうか!

「まあ、そう取られても仕方ないが、少なくとも俺はあんたを殺す気はない。樺島を敵に回したくはねえからな」

 四郎はそう言って肩を竦めると、半歩、バカから距離をとった。『敵に回したくはない』のポーズだろう。なのでバカは、半歩分、四郎との距離を詰め直しておいた。離れていかれるとなんとなく寂しいので。

「だが……そうだな。あんたは少なくとも、『戦える異能』じゃないんだろ?さっきの反応で分かった。で、あんたが死んだら、俺はどう足掻いても『5』の部屋には入れねえからな。なら、先に入っておきたいと思うのはおかしなことじゃねえだろう」

「成程な。そうなると、5番の部屋は『デュオとタヌキ』か、『五右衛門』かのいずれかしか入れなくなる、と。そういうことか」

「ああ。で、ついでに言うなら、デュオが悪魔なら、タヌキのことを知っていて、自分の体を取り戻しに来たことくらいは察するだろう。なら一緒にするのは危険だ。その可能性を潰すためにも俺が出るしかねえ」

「おおお……!四郎さん……!」

 どうやら、四郎は優しい人らしい。タヌキを守るために動こうとしている。バカは、『四郎はいい奴!』と覚えた!


「……僕からの返事だが、『ひとまずここを出てから』というのはどうだ?」

 そうして考えた海斗は、そう言ってため息を吐いた。

「例えば、僕とあなたが組んだとして、そうなると樺島とタヌキが組むことになる。するとこっちは『5』、樺島の方は『13』だ。……だが、『13』は既に五右衛門さんとヤエさんが入っているだろう?」

 バカはちょっと考えて……『そういえばそうだった!』と気づいた。そして……『これ、俺には難しいルールだぁ!』と気づいてしまった!

 誰がどこに入ったのかを一々覚えておかないと、次のチーム分けが上手にできない!大変だ!バカにはあまりにも、難しすぎるのである!

「一方で、僕と樺島が組んでしまうと、そっちは合計が『7』だ。……7は既に七香さんが1人で入っているから入れない。じゃあ、僕とタヌキが組むとなると……」

「『4』だ。つまり俺が1人で入れる部屋を潰される、という訳か……面倒なルールだな」

 四郎は舌打ちして、『どうしたもんか』と考え始める。尚、バカは既に考えることを諦めている。計算はできるバカだが、場合分けしていっぱい考えるとなると、頭の容量が足りないのであった。

「……となると、どのみち僕らは僕らだけで全員がアルカナルームに入れるチーム分けするなら、3部屋に別れなきゃいけなくなる。そうなると、1人でアルカナルームに挑戦しなければならない人が2人出ることになる。まあ……それは、樺島ならともかく僕は避けたい。少なくとも、1ターン目からやりたくはない」

「『1』に入れるのはあんただけだからな。まあ、あんたはそうなるか」

「そういうことだ」

 バカが首を傾げる横で、タヌキは『ふんふんなるほど』とやっている。……バカの頭脳はタヌキ以下であるらしい!

「……逆に、僕にとっては、例えば『21』に入る方法は即ち、それなりに数字が大きな参加者が2名以上残っている状況、ということになる。樺島は居るものとして、残り10を埋めるために、例えば、四郎さんとむつさんの力を借りることになるか。まあ……終盤になればなるほど、リスキーだと思う」

「利害がはっきりしてくるだろうからな。殺し合いに発展するだろうよ。或いは、そもそも『合う組み合わせが無くて永遠に部屋を開けられなくなる』か、だな」

「ああ。だから、できるだけ大きい数のアルカナルームに挑んでいきたい。僕個人としては、だが」

 海斗はそう言って、元来た方……つまり、エレベーターの方を示した。

「……だから、もし他のチームが先にゲーム攻略を終えて、組む人が来るのを待っているようなことがあれば、そっちとも合流して新たな番号の部屋に入りたい」

「そういうことか。よし、分かった。なら、話の続きは広間に戻ってからだ」

 四郎もそれに同意して、スタスタと歩き出す。なのでバカとタヌキも彼らを追いかけて、エレベーターおよび個室へと戻るのだった……。




 個室に戻ると、モニターに『大広間』と表示された。なのでそこを『えいや!』とタッチする。すると、個室が揺れ、無事、元の階に戻ってこられた。

「よし。他のチームは……まだどこも帰ってきてない!つまり、俺達が最初!?やったー!一等賞だ!」

「喜ばしいかと言われると、微妙なところなんだぞ、樺島……」

「そうなのぉ!?」

 ドアが開いて外に出てみると、他には誰も居なかった。そして、個室がいくつか消えている。……つまり、それらの個室をエレベーターにしてアルカナルームに挑んでいるメンバーがまだ戻ってきていない、ということなのだろう。

 今、見当たらない個室は、五右衛門の個室、七香の個室、孔雀の個室の3つだ。

 ……恐らく、五右衛門の個室から七香が『7』のアルカナルームに入り、七香の個室から五右衛門とヤエが『13』のアルカナルームに入り、孔雀の個室からデュオとむつと孔雀が『17』のアルカナルームに入っていて、そしてそのまままだ誰も帰ってきていない、ということなのだろう。

 バカは、『そういや、エレベーターが使われてたら、そのエレベーターに繋がってるアルカナルームには入れないんだなあ』とふと気づいた。

 ……ちょっと見てきた限り、1つのアルカナルームは、2つの個室から入れるようになっているようなので、まあ、滅多なことでは『まだ誰も入っていないアルカナルームに入りたいのに、アルカナルームに向かうエレベーターが無い!』ということにはならないのだろうが……。


「残り時間は55分か……」

「……俺達がアルカナルームに移動し始めた時、既に残り70分を切ってた。そう考えると、あと2部屋か3部屋、いけそうだな」

「いや、まあ、樺島が活躍できる部屋については、そうだろうが……うーん」

「……それは俺も分かってる」

 さて。

 バカがとんでもない速度で月の巨人を倒してしまったがために、さっさと戻ってこられてしまったバカ達4名ではあるが、このままこのペースで攻略を続けられるとも限らない。

 だが、時間は惜しい。できることなら、他のチームを待たずに、さっさと次の部屋に挑みたいところである。

 ……というところで、ようやくバカは気づいた。『そっか!最初に組む相手が多ければ多い程、その後、待ち時間無しでチーム分けしやすいんだ!』と。

 もし、七香のように1人でアルカナルームに入ってしまうと、次のアルカナルームに入りたい時、他のアルカナルームに入ったチームの誰かを待たなければならない。タイミングが合わなければ、先に行かれてしまうこともあるだろう。

 それを防ぐためには、『ゲームフェイズ最初のチーム分けではできるだけ人数を多くしておく』ということになるのだ。バカ、覚えた!


「……よし、分かった。なら、俺はこのチームから1人で離脱する。そっちは3人で入るなり、更にバラけるなりすりゃいい」

 そうして考えたらしい四郎は、そう結論を出した。

「その、四郎さんはそれでいいのか?」

「ああ。5分待って、誰か他の奴が来たら、そっちと組むことを考える。5分待って誰も来ないなら、1人で4番のアルカナルームに入る」

「成程!時間制限を設けて誰かを待つ、というのはいいアイデアですね!」

 どうやら、四郎は『ちょっと待ってみる』という結論に至ったらしい。バカは、『成程、そういうのもありだよなあ』と納得した。

「なら俺達は、俺と海斗とタヌキで……えーと、14番のアルカナルームだな!それでいいか?」

「是非よろしくお願いします!」

「ならすぐ行こうか。……もし、僕らが5分以内に戻ってくることがあったら、その時は次は僕が四郎さんと組んで5番に入る」

「うん!分かった!行こう行こう!」

 ……ということで、バカと海斗とタヌキは、自分達がさっきまで入っていたむつの個室で、14番のアルカナルームへと向かうことにした。

 個室に入る直前、バカは四郎に手を振った。『すぐ帰ってくるからなー!』と。

 四郎は口の端をちょっと持ち上げて、軽く手を挙げて応えてくれた。バカはにこにこしながら、早速エレベーターを起動させ……次のゲームに挑戦するのであった!




 バカ、海斗、タヌキの3人が個室に入り、モニターの『14』の数字を押すと、無事、個室が動き出した。

 そして、ふぃーん、と上昇していく感覚を味わい……

「……あの、樺島さん。海斗さん。その、変なことを聞くようなのですが……」

 その途中、タヌキがおずおずと、切り出してきた。

「次の14番のカード、誰が所有することにしますか?」


「……タヌキでいいんじゃないかと僕は思う。樺島。それでいいか?」

 そして、海斗があっさりとそう答えたので、タヌキは『えっ!?』と驚き、尻尾をぷわっ、と膨らませた。

「え?うん。さっきの月のカードは俺がもらったし、次はタヌキでいいぞ!」

「えっ!?海斗さんじゃなくていいんですかー!?」

 タヌキは『何か裏があるんですか!?なんで!?なんで!?』と混乱している。

 だが……。

「ああ。僕は……まあ、叶えたい願いがある訳じゃないんだ。だから最悪の場合でも、樺島さえ脱出できればそれでいい。そうすれば僕は……いや、全員が、脱出できるから……」

「えっ?ど、どういうことですか……?」

 ……海斗がちょっとげんなりした顔で言えば、タヌキが頭の上にいっぱい『!?』を浮かべて首を傾げてしまう。

 だが、バカはそんなタヌキにも容赦しない。

「あのな!仲のいい警察のおっさんが居てな!動いてくれてるんだ!あと、うちの会社も動いてるから!重機とかもう、持ってきてあるんだぜ!」


「……え?」

 ……バカの発言に、タヌキはいよいよ、首を傾げたまま、固まる。

 そして。


「……すまない。その、実は……このデスゲーム会場は解体予定なんだ。物理的に……」

「えええええええええええええ!?どういうことですかぁああああああ!?」

 タヌキの絶叫が、エレベーター内に響き渡るのだった。




 ……親方曰く。

『俺達は、デスゲーム内部は解体できねえ。『駒井燕』さんの救助もできねえ。だから、それはお前がやってこい。……だが、ガワは俺達がやる。こっちは任せろ!』とのことであった。

 ……そう!このデスゲーム……既に解体される運命なのだ!

 今、地上では、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部の面々が、それぞれに重機や木星さんバットや自前のクレーンなんかを携えて待機中なのだ!かにたまなんてもう、朝から『かにかにかに!』と大層やる気で、カニドーザーボディを震わせていたのだ!

 哀れなるかなデスゲーム!このデスゲームは……始まるより先に、物理的な解体だけは、確実に約束されてしまっているのであった!

 おお、キューティーラブリーエンジェル建設!ああ、キューティーラブリーエンジェル建設!


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― 新着の感想 ―
不思議空間を物理的に解体!
タヌキもいるのに雰囲気がこわい 嵐の匂いがする ドキドキ
最初からネタばらし……というかホントに分解(ばら)されてるわけですが…… こうなるともういつ誰が死ぬのか?ってよりも、いつ何が起こるのかのドキドキが発生しますね……!
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