ゲームフェイズ1:大広間2
……さて。
「じゃあ、これでカードが拾える、ということか」
そうしていると、海斗がカードのケースを開き、『ああ、開いてる』とカードを取り出した。
取り出されたカードは、ほい、とバカの手に渡ってきたので、バカはありがたくそれを受け取った。
……受け取ってしまってから、『これ、俺が持ってても大丈夫なんだろうか』という顔になってしまったが、特に誰も何も言ってこなかったので、そのままカードはしまっておくことにした。ヨシ!
「……ところで、この宝物って、どうするの?持って歩く……?」
一方、宝物をバンバン拾い集めていた人達は、その荷物をどうするかについて、議論していた。
「私はこのままでいきます!……いえ!やっぱり冠は邪魔になるのでちょっと避けておきます!」
「風呂敷背負ったスタイル、いいわよねぇ……。それがこんなに似合うの、あんただけよぉ、タヌキちゃん……」
「そうですか!?なら私が世界のファッションリーダーになります!」
「風呂敷背負ったスタイルを流行らせるの……?」
……タヌキは、背中に風呂敷包みを背負ったスタイルである。タヌキっぽい。なんだか、タヌキっぽい。尚、風呂敷じゃなくて高級そうなストール包みなのだが、何故かタヌキが背負うと途端に風呂敷っぽく見えてくるので不思議である。
「まあ……首にストール巻いておくんだったら、そこにいくらか包んでおくのはアリ、だけどぉ……首にあんまり物、巻いておきたくないのよねぇ……」
「えっ!?なんでですか!?」
「……これ、デスゲームでしょぉ?首、絞まりそうじゃない?」
「あっ……!」
一方の五右衛門は、慎重派であるらしい。少なくとも、タヌキよりは。
「そうだよねえ……。どこかにひっかかりそう、っていうこととか考えたら、首に巻いておくのは怖いかも。指輪とかも、手が滑りそうだしなあー……」
むつも苦笑しながらそんなことを言って、『これ、ノリで拾ってきちゃったけど、どうしよ』と、宝物を見つめる。
「……返してこよっかなあ」
「あ、じゃあ私も冠は返してきますぅ……」
そうして、むつとタヌキは出口へ向かいがてら、宝物を元あった場所に、ちょこん、と戻した。
「あらぁ、無欲ねえ……」
「まあ、本物かどうかも分からないし。その金インゴットだって、中身、別のものかもよ?」
五右衛門はむつの言葉を聞いて『それはそうなんだけどぉ』とちょっと眉根を寄せつつ、しかし、インゴットは戻さずにポケットにしまっておくことにしたらしい。バカは、『重量トレーニングだな!』と納得した!先輩達と一緒によくやる奴である!
「五右衛門さんは、お金が必要なの?」
そんな折、むつがそう、尋ねる。こて、と首を傾げつつ、ただ、何とは無しに。
「んー……そうねえ」
五右衛門は少し首を傾げて、ちょっと困ったような笑みを浮かべた。
「ま、そんなとこ」
「……そっかー」
むつは、『まあ、そういうこともあるよね』と頷き、タヌキは『お金は大事ですよ、ほんとに大事ですよ』と頷く。
バカと海斗はちょっと顔を見合わせつつ……『五右衛門にはちょっと事情がありそうだ』と思った。まあ、デスゲームに参加している人なのだから、何かしらの事情はあるのだろうが……。
「なー、タヌキぃ」
さて。事情といえば、間違いなく事情があるのがこのタヌキである。
そして、今回のバカは、タヌキにロックオンしているので、タヌキを狙いに行かねばならないのである。
「はい、なんでしょうか!」
タヌキは、のっそりやってきたバカの呼びかけにも元気に応えて、小首を傾げている。可愛らしい仕草である。中身はデュオと入れ替わっちゃった成人男性なのだが!
「あの、タヌキにもじじょーがあるんだよな?」
遠回しに聞く、ということがイマイチできないバカなので、バカは『タヌキの事情をしっかり聞くぞ!』とばかり、真っ直ぐストレートに質問した。
「え、ええと、事情、といいますと……?」
「ああ、そうだな、僕も気になる」
タヌキがバカのドストレート質問に困惑しているところへ、海斗がそっと助けに入ってくれた。ありがとう、相棒!
「喋るタヌキ、というのは、その……あまりにも不思議なものだから。一体、何がどうなって、こうなっているのかと思ってな」
「ああー、まあ、そりゃそうですよねぇ……」
海斗の質問に、タヌキは『それはそうだ!』とばかり、頷いた。
「実は私、元々は人間でして……その、色々あって、このタヌキの体に魂を入れられちゃったんですよ……」
……さて。
ここから、どうやって色々と聞くかが腕の見せ所である。無論、バカの、ではなく、海斗の、だが……。
「元は人間?魂?」
「あ、はい。そのぉー……ほら、四郎さんって、悪魔殺しを目指してるらしいじゃないですか」
「うん」
「あれとはまた事情が違って、私も悪魔を探してるんです。悪魔に、お願いを聞いてもらわなきゃいけないんですよ。それで、『元の体にもどしてください』ってお願いするつもりなんですけれども……」
海斗は『そんなことがあったのか』という顔でタヌキの話を聞いている。……既に、バカから色々聞いているはずの海斗であるので、これは中々の役者である!
「それで……その、実は、ですね」
更に、タヌキは声を潜めつつ、ちょっと迷いつつ……でも、教えてくれた。
「デュオさん、なんですけれど……あれ、私の体なんですよ……」
「そっか!じゃあ、次のチーム分け、デュオと一緒になろう!な!」
「えっ!?」
ということで、バカは満面の笑みでタヌキの手を握った。話が早いのがバカの美点でもあり、欠点でもある。早すぎるのだ。早すぎるのである!海斗が後ろで『あーあ』というような顔をしている!
「で、デュオと話してみようぜ!な!」
「い、いやいやいやいや!そ、そんなことしたらデュオさんに警戒されてしまいます!」
タヌキは『何言ってるのこの人!?』とばかりに混乱している様子だが、バカは『話してみないとなんも分かんねえもんなあ!』とすっかりその気である。こういう作戦なので仕方がないが……そこへ辿り着くまでの道程が、短すぎる!よって、話が早すぎて怖いバカの爆誕!
「そうだな。デュオがタヌキの体を奪った張本人、というわけではなく、単に魂と肉体を操作した悪魔が別に居て、デュオもまた、知らない人間の体に魂を入れられた人間なのかもしれない。確かめてみる価値はあるだろう」
が、海斗もそこに加勢すれば、タヌキも『た、確かにそうかも……』と言い出した。
「もしデュオもまた被害者なのだとしたら、悪魔の情報を共有しつつ、共闘できることになる。悪魔の情報は欲しいところだろう?なら、少なくとも、探りを入れておく必要はあるだろうな」
「そ、そうですね……しかし、危険だと思うんですが……」
それでもタヌキは、警戒している。『やっぱりこの人達に話したのは間違いだったか……』というような、じりじりとした警戒ぶりだが……。
「いや、そこの心配は無いさ」
海斗は、そんなタヌキの背中を、ぽふ、と叩いて笑った。
「樺島が居れば、安心だ。もし、デュオが本当に悪魔だったとしても……樺島なら殴り飛ばせる」
タヌキが『そんなことってあります?』という顔でバカを見つめてきた。なのでバカは、『任せろ!』と満面の笑みで返した。
……タヌキはしばらく、悩んでいた。『これ、本当にいいのぉ!?』と悩んでいた。
だが、その悩みもじきにまとまったらしく……。
「……わ、分かりました!ならば、よろしくお願いします!私と一緒に、デュオさんと同じチームになれるように協力してください!」
そう、お願いしてきたのである!
つまり……タヌキも仲間になったということだ!バカはそれはもう、にっこにこの笑顔である!
……そして。
「わあー、遅くなっちゃいましたねぇ……」
「宝物、結構選んだもんねえ……」
バカ達は、にこやかに大広間へ戻ってきた。タイマーを見ると、残り時間45分程度である。どうも、バカ達は30分近く宝物を漁っていたらしい!でもしょうがない。ぴかぴかの石が綺麗な金細工は、見ていてとっても楽しかったので……。
「あ、戻ってきた」
……そして、そんなバカ達を待ち受けていたのは……デュオと七香とヤエ、そして四郎である!
なんと!全員、待っていたらしい!
「一応、待っていた方がいいかな、と思って待ってたんだ。誰が何処に行ったか分からなくなると厄介だろうし」
「ありがとなぁ、デュオぉ!」
バカはデュオの気遣いを心から嬉しく思う!……今までのやり直しの中で、バカは、自分達が見ていないところで誰がどう動いていたのかをほとんど分かっていない!見えないものは分かりようがないのである!何故か、頭のいい人達はそれができるらしいが……。
が、こうして逐一、全員が大広間に集まるようにしてくれるならば、誰が誰と一緒にどこへ行ったのかが分かりやすくて大変助かる。ありがたいことである。
「さて……えーと、タヌキの荷物が増えてるね」
「はい!色々と持って帰ってきました!あ、では皆さんにお裾分けです!」
……タヌキは風呂敷包みを器用に解いて、中から指輪やネックレスなどを1つずつ、皆に『どうぞ!』と配った。全員、困惑していた。当然であろう。だがこれをやるのが、タヌキなのでまだ困惑程度で済んでいる!ちょっと変な者がちょっと変な物を配っていても、『ちょっと変!』で終わるのだ!
……ということで、タヌキのお裾分けタイムが終わり、むつも『七香さんとヤエちゃんにお土産!』と持ってきたものをお裾分けしたところで……。
「えーと、じゃあ、次のチーム編成をしようか」
デュオがそう提案してくれたので、バカは笑顔で頷いた。
「ええと……俺、樺島君と組んでみたいんだよね」
すると、デュオが真っ先にそう申し出てくれた。こっちから何も言わなくても話を回してくれる!これが頭のいい人である!すごい!バカは驚いた!
「樺島君、俺と組まない?海斗君も一緒でもいいから」
「うん!じゃあよろしく!」
ということで、早速、デュオと合流できた。バカはにこにこである!
「あっ!あっ!でしたら私もそこに混ぜてください!」
そしてそこへ、要領よくスルッと混ざりに来たのがタヌキである。バカはにこにこ笑顔で『ようこそ!』とタヌキを出迎えた。
「これで合計6……ええと、もう1人くらいは増やせる、けど……あ、七香さん、一緒にどうかな」
「……でしたら、私も」
……更に、七香もここに加わった。これで合計は13である。バカは、『七香も入れていいのか!?』とちょっと困惑したが、しかし、思い直す。
この、タヌキとデュオの体と魂の話は、七香にも聞いてもらった方がいい。そうじゃなきゃ……七香が諦められないだろうから。
否、もしかしたら、聞いても諦められないかもしれないが……。
「……となると、残ったのはアタシと、むつちゃんとヤエちゃんと、あと四郎さんね。えーと……」
「あっ、だったらヤエちゃん!私と組もうよ!」
そして、残った4人もまた、順調にチームが決まってしまったようである。
むつがヤエの手を取ってにこにこすると、ヤエも控えめににこにこし、そして、五右衛門と四郎は顔を見合わせ、『となるとここ2人か……』という顔をお互いにした。四郎は既に1人で『4』のアルカナルームに入ってしまっているので、誰かと組むしかないのである!
「なら決まりだな。……『僕、樺島、デュオ、タヌキ、七香さん』で13番、『むつさん、ヤエさん』で14番、『四郎さん、五右衛門さん』で9番、か」
「そういうことになるね。ええと、いいかな」
そうして、海斗とデュオがまとめると、皆からそれぞれに同意が返ってきたのでバカは、『じゃあ、またここで落ち合おうなー!』と元気に手を振って他チームと別れ、元気にエレベーターを起動させ、元気に『13』のアルカナルームへ向かい……。
「お邪魔します!」
元気よく『13』のドアを開けたバカは……思い出した。
「事故現場ぁ!」
「じ、事故現場!?ど、どういうことだ!?」
……バカの叫びに海斗はびっくりしていたが、『相手』もびっくりしていた。
つまり……黒馬に乗った、骸骨の、騎士が……。
……骸骨の騎士の運命が、決まってしまった瞬間である!




