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ゲームフェイズ2:大広間1

 

 皇帝も、まさか、あの状況からタックルかましてくる奴が居たとは思わなかったらしい。バカのタックルに弾き飛ばされ、しかし、バカにかかっていた重圧によって、ギリギリ致命傷で済んだ。

 ……が、そこで容赦しないのがこの、樺島剛という男である。

 先輩達から仕込まれたプロレス技が、ここで役に立つ!

「うおおおおおお!」

「うわあああああ!ギブギブギブ!」

 ……そうして、バカは重圧などものともせず、皇帝をタップまで追い込んだ。

 バカの勝ち!




 そうして、バカはぐったり虫の息の皇帝をほっといて、ドアの向こうで待機中の皆を『終わったぞー!』と呼びに行った。

 ぞろぞろ、と4人もの人間が入ってくるのを見て、虫の息の皇帝は『そんなにいたのか……』みたいな顔をした。こんなに居たのだ。すごいだろう、とバカは胸を張った!


 それから、部屋の中を見て回ったり、ぐったりした皇帝をつついたりしていたところ、皇帝は『無念……』と呟いて消えてしまった。彼が消えた後には、カードが1枚残っていた。

 ……消えてしまった、ということは、彼はやっぱり悪魔だったのだろう。バカは、『次に出てくる時はちゃんと名前、聞かせてくれよ!』と思いながら、なむなむ、と拝んでおいた。

「……成程ね。まあ、ギミック有りの、戦闘部屋、と。そういうことか」

 そして、バカから部屋の概要を聞いた海斗は、渋い顔である。

「なんというか……戦えない異能だと辛い部屋が多いな」

「そうだね。まあ……そういう趣向、なのかもしれないけれど。何か、もうちょっと別の解法はありそうな気はするんだけれどな……」

 バカが攻略すると何もかもがタックルで解決されてしまうのだが、もしかしたら、この皇帝も戦わずに攻略する方法があったのかもしれない。

「他の部屋の何かを使うと上手くいく、とかかなあ……」

 むつも首を傾げているが、まあ、そういうこともあるのかもしれない。

 ……だが、いずれにせよ、バカが関わったゲームは全て、パワーで解決される運命にある。バカは、『海斗の為にも、パワーじゃない解決方法、あるなら知っておきたいけどなあ……』と思いつつ、結局のところ、そっちは海斗やデュオに任せることになりそうである。

 よろしく!海斗、デュオ!




「ところで、四郎さんは居ないね」

「ああ。居ないみたいだ。……となると、『9』のアルカナルームに行くことになる、か……」

 海斗はそう言って、深くため息を吐いた。

 ……そして、ちら、とデュオを見て、デュオにそっと、囁く。

「4+5は9だが、2+7も、9だな?」

「……そうだね」

 バカは海斗とデュオの会話の意味は分からなかったが、デュオはちょっと、苦い顔をしている。……ということは、何かあるのだろう。バカは、きゅ、と唇を引き結んだ。

 できれば、もう、悲しいことは無い方がいいのだが……。




 そうして、バカ達は大広間に戻った。

「さて、残るは『9』の確認だね」

 デュオが七香から『では、腕輪の交換を』と、6の腕輪を受け取って、代わりに1の腕輪を渡す。これでこっちは3+6で9である!

 デュオと七香が腕輪のやり取りをしている間、バカはちょっと気になって、海斗の服の裾をちょいちょい引っ張った。

「な、なあ、海斗……」

「うん?」

 海斗はバカが引っ張るのを見て、ちょっと他の皆から離れてくれた。なのでバカは、こしょこしょ、と海斗の耳元で囁く。

「四郎のおっさんと、五右衛門って、無事……だよな?」

 ……体を離して、海斗の目を見つめる。だが、海斗の目は寂しげであった。

「……僕は、そうは思わないな」

「え……」

「恐らく、デュオと七香さんが、殺してる」

 海斗はそう、やはり小さな声で囁くと、バカに『ちょっと耳貸せ』というように手招きしたので、バカはまた、ひょこ、と身を屈めて、海斗が自分の耳に届くようにした。……こうしないと、バカと海斗は上手にヒソヒソ話ができないのである!図体がでっかいと、こういうちょっと不便なこともあるのだ。

「……四郎さんと五右衛門さん、2人で『4+5』だ。9だな。だが同時に、デュオと七香さんも、『2+7』で9だ。……恐らく、四郎さんと五右衛門さんが入っている9のアルカナルームに、デュオと七香さんも入って、そこで……」

「そ、っかぁ……」

 ひそひそしながら、バカはしゅんとした。

 ……デュオは、陽なのだ。賢いから、きっと、何でもできてしまう。人を殺すことだって。


「……ヤエさん」

 そんな中、ふと、七香がヤエに声を掛けた。

「少し、休んでいかれては、いかがですか」

「……え?」

 突如として掛けられたそんな言葉に、ヤエがぽかんとしている。バカも、『七香って、こういうこと言うんだぁ……』と、ぽかんとしている!

「……お疲れのようですから。一緒に、待っていませんか?」

 七香が、少しばかり、眉根を寄せる。

 ……実際、ヤエは疲れている、のだろう。タヌキの死も、『四郎も五右衛門ももう死んでいるかもしれない』という焦燥も、彼女を苦しめている。

「あの、私……」

「ヤエちゃん、ちょっと休憩したら?」

 ヤエは戸惑っていたが、そこへ、むつが寄っていって、ヤエの肩に手を置く。

「『9』のアルカナルームは見てくるから。大丈夫だよ」

「むつちゃん……」

 むつにもそう言われてしまうと、ヤエとしても無理に反論する気は無いらしい。ヤエは、こくん、と頷き、七香の隣へ移動した。

 バカは、『七香、いい奴だなあ』と思う。そして、休憩する2人のために、座る場所を拵えておくことにした。

 とりあえず、自分の個室からベッドをえっちらおっちら運び出してきて、『これ、腰掛けるのに丁度いいぞ!』と提供する。……七香もヤエも、突然のバカに困惑していたが、やがて、そっ……と、ベッドに腰掛けるようになった。これでよし!




「……じゃあ、こっちは俺達で行ってくるか」

「うん……」

 そうして、バカと海斗とデュオ、そしてむつが、『9』のアルカナルームへ向かうことになったのだが……。

「その、むつは、大丈夫か?」

「へ?」

「休憩、しなくても大丈夫か……?」

 バカとしては、むつも心配である。

 何せ、女子だ。多分、年下だ。そんなむつも、ヤエと同じように、疲れてしまっているのではないだろうか。

「……うん。大丈夫」

 だが、むつは気丈であった。

「分かって、来てるもん」

「……そっかぁ」

 むつは、強い人であるらしい。その瞳の、少し険の強いようにさえ感じられる様子を見て、バカは『かっこいいなあ』と思うのだった。




 ……そうして、バカ達は『9』と書かれたドアの前へやってきた。

「じゃあ、開けるぞ……」

 バカは大いに緊張しながら、ドアを開けて……そして。


「……うう」

「覚悟していたこととはいえ……辛いな」

 ……バカ達の目の前、『9』のアルカナルームの中では、四郎と五右衛門が倒れて死んでいた。




 部屋の中は、薄暗い。その中に倒れたランタンがあって、中ではまだ、火がちらちらと灯っていた。

 そんなランタンの光から離れたところで、四郎と五右衛門がそれぞれに倒れている。

 ……死んでいる、とすぐに分かる。四郎の体は血だまりの中にあるし、五右衛門の手足はひしゃげて、おかしな方へ曲がっているのだから。

 バカはそれを只々悲しく見つめる。海斗もバカの隣で、じっと俯いていた。

 デュオは少し離れたところに居て、むつは……。

「……誰が、こんなこと」

 小さく、そう呟いた。

 ……バカは、『多分、七香だと思う』と、考える。考えるが……それを、口には出せない。

 七香が悪い。デュオも悪い。だが……それを責める気に、どうしてか、なれないのだ。

 バカは、『これって、卑怯かなあ……卑怯だよなあ』と、しょんぼりした。全部全部、やり直して、上手くいくようになったら……この気持ちも、楽になるだろうか。




 四郎と五右衛門は、バカが回収して大広間へ連れて帰ることにした。

 腕輪を破壊済みのバカが、両腕に四郎と五右衛門を抱えて、彼らが使用していた四郎の個室に乗り込み、そこで、えっちらおっちら、大広間へ戻るのである。

 ……流石に、ガタイのいい男性とそれなりに身長の高い男性の2人分を運ぶのは、パワーに自信ありのバカであっても大変である。特に、ボタンを押すのに多少、手間取った。

 とはいえ、それでも特に問題はなく、バカはエレベーターを起動して、大広間へと向かい……。




 その時だった。


 ……リンゴン、リンゴン、リンゴン、と、鐘の音が聞こえた。


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― 新着の感想 ―
両腕に抱えて………ガタイのいい成人男性2人分の遺体を片腕ずつで運べる程度の樺島の単純な腕力に関しては何も疑ってないんだけど、2人の遺体はその輸送方法に耐えられるような状態なのか………って方向に意識が向…
今クールが辛すぎて辛すぎて、次のクールでタヌキを脳内もふもふすることをここに宣言致します! 辛い! からいじゃないよ…。 つらいのよー。
前の36話でディオと七香が2人でいた描写があったので、おそらく9のアルカナに入っただろうなと思ってた。 だから四郎と五右衛門さんが9に向かったとは36話で思いつかなかったんだけど、そうか後から入って殺…
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