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ゲームフェイズ2:『3』女帝2

「……っていうことは、君は本当に『海斗』なのか」

「ああ。そういうことだ。ただ、あなたが知っている『海斗』とは違うのだろうが」

 デュオと海斗の会話の意味が、バカには分からない。バカなので。

「違う?……中身が、ということかな?」

「いや。そうだな……『バック・トゥーザ・フューチャー』だと思ってくれればいい。ただし、パラドックスも何も起こらない、都合のいいやつだ」

 海斗が何やらよく分からない暗号のようなものを言っているので、バカは『なんかかっこいい会話だ!』と思った。勿論、意味は全く分かっていない!

「……その、すまない。あまり突っ込んだ話をすると、樺島が混乱するんだ。そして、もし樺島が混乱しないようにしっかり説明して、樺島がそのあたりを色々と理解できてしまうと……全てが崩壊しかねないらしい。ええと、駒井つぐみさんの魂ごと」

 デュオが不審げな顔をしていたからだろう。海斗はそう、弁明した。が、その弁明は当然ながら、デュオの警戒を大いに煽る。

「……随分と調べたみたいだね」

「調べたんじゃない。彼女と、それから、『陽』から聞いたんだ」

 海斗はデュオを前にして、『どう説明したものか』と困っている様子だった。

 ……それはそうだろう。目の前に居る『陽』は、バカのことを知らない。海斗のことも、きっと、ほとんど知らないのだ。そして、『たま』のことを喪った。

 だからきっと、怖いのだろう、と思う。バカはバカだが、それは分かる。

「人質を取るつもりはないんだが……ああ、どうしてもそういう風になってしまうことは、許してほしい。ただ、これだけは先に宣言しておくが……僕と樺島は、駒井つぐみさんのことも、宇佐美光のことも、絶対に救いたい」

「俺も約束する!俺、絶対に『陽』のことも、『たま』のことも、助ける!だって、友達だから!」

 バカは、『これなら俺も分かる!』と、元気に、かつ真摯に喋る。

「なあ、陽。俺、お前が協力してくれたら、多分、このデスゲームも解体できると思うんだ」

 ……この思いは本物である。嘘なんて吐けないバカの言葉は、極めてストレートであった。




 そうして、海斗がざっと説明することになった。主に、『前回デスゲーム』についてを。

「……と、まあ、そういう訳で、僕らは全員、生きている。そして、あなたの過去である『陽』と、あなたの未来である『天城』の2人と共闘した、ということになる訳だ」

「そう、か……」

 デュオは難しい顔をしながら、こく、と頷いた。

「それは……にわかには、信じがたい話だね。まだ、君達が悪魔だ、って言われた方が納得がいくくらいだ」

「そっかぁ!?俺、悪魔かぁ!?」

 バカはびっくりした!バカは悪魔とは真逆の存在である!天使であることだし……あと、何より、バカなのだ!

 頭が悪いと、悪魔になれないらしい。木星さんはちょっと頭が悪かったので、悪魔にしてもらえなかったのだそうだ。ということは、バカにはもっと無理であろう!

「……まあ、それを言うと、僕達もあなたのことを悪魔だと疑っていたのだけれど。もしあなたが『宇佐美光』なのだとしたら、その疑いは晴れる。……どうだろうか」

 海斗が尚もデュオに問いかけると、デュオは少し迷って……はあ、とため息を吐いた。

「ああ、そうだね。俺は『宇佐美光』だ。……初めて参加した悪魔のデスゲームで、恋人を死なせた。そして今、恋人を救うために、何回目かのデスゲームに参加してる。そういう奴だよ」




「このデスゲームは……ええと、5回目、になるのかな」

「そんなにぃ!?」

 デュオが指折り数えるのを見て、バカはびっくりした!バカよりも、デスゲーム歴が、長い!

「手がかりは、掴めたんだ。どうも、体だけ生かしておいても、そこに魂が入らないとつぐみを元に戻すことはできないらしい。ただ、魂の在り処が分からないから、それは探さなきゃいけないし、魂の抜けた体を生かし続けるのも同時にやらないといけないから……」

 デュオはそう言って、暗い面持ちで唇を噛む。……歯がゆいだろうなあ、と、バカはデュオを案じた。

「ええと、魂、というと……悪魔は魂を入れ替えられる、のか?その、あなたのその体は、どうやら、別の人のものであるようだが……」

「ああ。合意があればね。或いは、『合意も反対もすることができない状態』の相手なら、無条件でできるらしいけれど」

 説明を聞いて、バカは『そんな技術があるのか!』とびっくりした。

 魂を動かしたりなんだりする技術は、概ね、悪魔の専売特許のようなものである。天使達は、迷子の魂を連れてきたり、案内したりするくらいしかしないのだ。間違っても、他所の体に別の魂をつっこむ、なんていうことは、滅多にしない!

「つまり、死体だ。或いは、魂が抜けた後の体。それらには、魂を入れることができる。同時に、体が損傷して死んだなら、そこから魂を引き出してくることができるらしい。……或いは、生きている人間でも、その本人の合意があれば、魂と体を分離できるんだそうだ」

 バカは、『勉強になるなあ』と思いながら、ふんふん、と頷いた。尚、聞いた端から忘れそうではある。

「この体は、前回デスゲームの賞品として、悪魔に用意させた。素性は知らなかったよ。……どうやら、あのタヌキのものらしいね」

「うん。返してやってくれよぉ。タヌキ、困ってたぞぉ……」

「……まあ、用が済んだらそうする。決して、使い勝手のいい体じゃないからね」

 デュオはそう言って苦笑した。……使い勝手が悪い、とはどういうことだろうか。筋肉が足りていないんだろうか。まあ、足りてないんだろうなあ、とバカは納得した。バカと比べると、大体の人間は、筋肉不足である。

「あのタヌキも、デスゲームは2回目以降だろうね。……どういう経緯かは分からないが、まあ、悪魔と取引をしない限りは、こういう風に体を他の誰かの『商品』にされることなんてないだろうから」

「ほえええ……」

 あのタヌキ、タヌキのくせにデスゲーム2回目以降であるらしい。すごい。人は見かけによらないものである。

「或いは、タヌキはただ死んだだけで、この体は悪魔がタヌキの元の体をベースにして新たに作ったものかもしれない。悪魔は、人間の体を作ることはできるらしいから」

「そうなのか!すげえな!」

「ただ、魂だけはそうもいかないらしいから……だからこそ、悪魔は人の魂を欲しがるんだろうね」

 バカは『ほええ』と感心しながら聞く。

 悪魔が魂大好きなのは知っている。食堂で働く悪魔が、『やっぱり絶望した人間の魂が一番おいしい……』と言っていたので。天使が、助け合い協力し合う人間を見るのが大好きなのと同じように、悪魔は絶望した人間を見たり、その魂を食べたりするのが大好きらしい……。


「……まあ、そういう訳で、『悪魔と取引をした上で死んだ人間』くらいしか、体や魂を扱われることは無いんだ。同時に、悪魔にしか魂は操作できない。だから俺も、つぐみの魂を取り戻すためには悪魔と取引し続けるしかない」

 デュオはそう言って、ふ、と視線を床に落とした。

「けれど……デスゲームの解体、というのは、つぐみがずっと望んでいたことでもあるから」

 きゅ、とデュオは手を握って、そして、バカを振り返った。

「……そういうことなら、協力する。悪魔を叩きのめして、つぐみを取り返す。そのためなら、俺は君達に協力する」




「ほんとかぁ!」

 バカは大いに喜び、ついでに羽交い締めを解いてしまった。だが、それでも問題なかった。デュオは暴れ出すことも無かったし、海斗が『よろしく』と差し出した手を大人しく握って、握手していたので!

「ただし、俺は俺の判断で動く。君達の邪魔はしないが、俺は俺1人だけ生き残れればそれで十分だから」

「そうか……。まあ、それでもいい。こちらはあなたも含めた全員を生き残らせることが条件だ」

 デュオと海斗がそう話すのを聞いて、バカは……ちょっと、心配になった。

「七香は?」

 デュオは、1人で生き残れればいい、と言った。ならば……ならば、七香はどうなってしまうのだろうか、と。

 ……すると。


「……彼女のことは、ここで始末するつもりだったよ」

 デュオは、そう言った。

 ……言葉の割に、随分と、苦しそうに。




「軽蔑したか?」

 デュオは笑った。少し無理をしたような笑い方だ。バカはそれを見て、『ああ、この顔、天城の爺さんに似てるなあ』と思った。

「……今ので分かったと思うが、俺は恐らく、君達が知っている『陽』とは別の人間だ。元が同じだったとしても、もう、随分変わった」

 デュオがそう言うのを聞いて、バカは『そっかぁ』と、ぽつん、と呟いた。

 なんだか、寂しくて。……目の前の彼が、『陽』とはちょっと違う人で、それでいて、『天城』にこれからなる人だから……これまでも、これからも、沢山苦しいのだろう、と、思って。

「彼女に近付いたのは、金目当てでね。どうしたって、色々と活動するのには金が要る。つぐみの延命にだって、研究資金にだって、金が要るんだ。……起業したのもその為だ」

「起業……1年やそこらでできるものなのか」

「やろうと思えば、何だってできる。初期費用くらいはデスゲームである程度稼げたし……買った恨みは、他人の体を手に入れることでそっちに擦り付けられる」

「わあ……」

 ……デュオの言葉の1つ1つが、鋭利な刃物のようだ。『元が同じだったとしても、もう、随分変わった』という言葉がひしひしと感じられる。そしてその言葉は、バカや海斗だけではなく……デュオ自身に向けられたものなのかもしれない。


「じゃあ、なんで七香のこと、早く恋人にしなかったんだ……?」

 だから、バカは尋ねる。

「……あんまり、騙したくなかったんじゃないのか?」

 どうなんだろうなあ、と思いながらも、どこか、『七香を騙すことに抵抗があってほしい』と祈るような気持ちで、バカはそう、尋ねてみたのだ。

「……そういう訳じゃない。彼女、結構、粘着質な性質でね。ああ、これは深入りしたら厄介そうだ、と思ったから……優秀な人が敵に回るのって、厄介だろう?だから、始末するつもりでここへ連れてきた。彼女には彼女の思惑があるんだろうから、それを阻止した上で、俺だけ、生き残る気でここへ来たんだ」

 デュオはそう言って、また、ちょっと無理をしたように笑う。

 ……なので、バカは。


「……あのな、デュオ。俺、ちょっと、お前のこと軽蔑した」

 バカは、デュオを真っ直ぐに見つめて、そう言ってやった。

「そうか。だろうね」

 デュオは少し安心したような、傷ついたような、そんな顔をする。……だからバカは、その手を、ぎゅ、と握るのだ。

「だから、頑張って戻ろうな!」

「……は?」

「で、たまのことも戻そうな!俺も協力するから!な!」

 よくないことは、よくないことである。

 七香のこともそうだし、タヌキのこともそうだし……デュオは、謝らなくてはならない人が沢山居るのだろう。

 だから、頑張らねばならない。デュオは、頑張らねばならない。

 ……そして、友達が頑張るのだから、バカも付き合う所存である。それはもう、ごく、当たり前に。




 デュオは、ぽかん、としていた。

 ……だが、ふと、笑い出す。

「あはは……成程ね。確かに俺は、君達に救われたんだろうな」

 その笑い方が、陽の笑い方だった。体は別人の体なのに。中身だって、色々と変わってしまったのだと、デュオ本人は言っているのに。それでも、やっぱり彼は、『宇佐美光』なのだ。

 バカはそう思って、なんだか嬉しくなって、にこにこしてしまう。海斗もまた、『ああ、やっぱり陽なんだな』と、笑っていた。


「……まあ、悪いが、方針を変えるつもりはない。俺は俺の判断で動くよ。だが……できる限りの協力は、する。それが、つぐみを取り戻す近道に思えるから」

 そして、デュオは改めて、バカと海斗の目を見て、言った。

「だから……まあ、君達が『やり直し』をしたなら、真っ先に俺に伝えてほしい。『一緒につぐみを助けに行こう』って。……それで、俺が人を殺すのを、止めてほしい」


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― 新着の感想 ―
やっちゃった事は、なかった事にはできないからね デスゲーム5回目、かぁ…… むしろ、腹の括り方として、個人的には好印象です
樺島の純粋さ、泣けるぜ…。 これはデュオの心にも響いたでしょうね。 でもね、たぶん次回には涙も引っ込むと思う。 ほら、『デスゲームの解体』が実演されるからねw たぶん『友情剣・カイトカリバー』になる…
バカが光すぎて眩しいだろうな
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