ゲームフェイズ1:『13』死神2
そうして、骸骨の騎士はバカの説教と謝罪を受けた後……そっ、と、懐からカードを取り出して、バカに手渡してきた。
「ん?カード……くれるのか!?」
バカが目を輝かせると、骸骨の騎士は、こくり、と頷いた。
「ありがとな!ありがとな!俺、お前と戦えてよかった!」
バカはカードを受け取り、元気に骸骨の騎士の手を握り、握手した。勿論、骨折している相手に配慮して、それなりに繊細なタッチで……。
すると、骸骨の騎士は折れた骨を庇いつつも、バカの握手に応じてくれた。ふり、ふり、と双方からやられる握手はとてもよいものだ。戦った相手と、こうして試合後に心を通わせるこの瞬間が、バカは大好きなのだ!
「また機会があったら、また戦おうな!今度はかけっことかしような!」
バカの言葉に、骸骨の騎士はこっくりと頷いた。バカはにっこりした。
……話が通じる相手というのは、よいものである!
「海斗ー!カード貰ったぁ!」
「そうか、よかったな……」
バカが海斗の元にてってけと戻ると、海斗は呆れた顔で出迎えてくれた。すると、骸骨の騎士は、馬をぽふぽふ、と撫で、馬はよろよろしながらも立ち上がり、骸骨の騎士と一緒に並んで歩いて部屋の奥へ向かって……そこで、すっ、と消えてしまった!
バカは、『きえちゃった……』とびっくりしたが、とりあえず、手を振っておいた。また会えますように!
「えーと、このカード、どうする?」
さて。部屋の仕掛けが終わってしまったので、バカは早速、カードを手に持ってひらひらやりつつ、相談である。
「樺島君が持つべきじゃないかな……」
「……そうだな。樺島。お前が持っていた方がいい」
が、一瞬で結論が出てしまった。まあ、これについてはバカも異論はない。何せ……骸骨の騎士から貰った、友情のカードだ!これはバカが持っていたいのである!
バカは、『ありがとな!』とにこにこ顔でお礼を言って、カードをポッケにしまった。ちょっと嬉しい!
「えーと、これで樺島君はカードを2枚持っていることになる、のかな?」
「ん?……ううん、1枚!」
デュオに聞かれて、バカはちょっと考えて、それから『実際に持ってる枚数見りゃ早いじゃん!』と気づき、ポッケをひっくり返す。が、カードは1枚である!さっきしまった13番のカード1枚のみ!
「あ、『17』では七香さんにカードを渡したんだね」
「うん!」
「そうか……ええと、でも、樺島君もカードは必要、なんだよね……?」
「え?……うん!必要!」
バカはバカだが忘れていない。このデスゲーム会場から脱出するためには、カードが7枚必要なのだということを!
そしてバカは、ちゃんと脱出して『えーと、こういう構造だから、ここから解体してくれ!』といった指示を出さなければならないのである!何せ、今回の依頼はバカが代表なのだから!
……ということで、バカはちゃんと、この会場を脱出しなければならない、と思うのだが……。
「……あれ?でも、俺じゃなくて海斗が脱出してくれても別にいいのかぁ……」
バカは、気づいてしまった。
……指示を出すだけなら、多分、海斗の方がよっぽど上手なのである!
「え?あの、樺島君、君、脱出できなくても、いいのか……?」
「うん……あの、カード使わなくても俺、脱出できるんだ」
「え?」
バカは海斗に『これ、喋ってもいい奴かなぁ』と視線を送る。すると海斗は頷いて、バカの代わりに説明を引き取ってくれた。
「実は、このデスゲーム会場は解体予定なんだ」
……ということで、海斗からデュオに対して、『このデスゲーム会場は解体予定でして』という説明が成された。
デュオは、ぽかん、としていた。当然の反応であろう。
「そんな……ことが、あるのか……?」
「あるんだ!」
バカは堂々と胸を張った。こんなことがある!そう!キューティーラブリーエンジェル建設が関わったならば!
「……樺島君。君は、何のためにこのデスゲームに参加しているんだ?」
が、堂々たるバカに、デュオは尚も問いかける。
「叶えたい願いがあるから、ここに来ているんだろう?」
……そして、その問いにも、バカは堂々と答えるのだ。
「えーと、えーと……1つは、このデスゲームを解体するためだ!」
「……デスゲームの、解体」
デュオは少し驚いたような、そんな顔をしていた。
「おう!解体するんだ!それでな、できたら、全員で脱出してえ!」
ついでと言っては何だが、バカは全員でここを出られたらなあ、とも思っている。まあ、1人、悪魔が紛れ込んでいるらしいので、それは困るが……。
「……そうか。それが君の願いなんだね」
「うん!」
デュオに堂々と答えて、それから、バカはふと、首を傾げた。
「デュオは?何か用があってここに来たんだろ?」
……すると、デュオは少し迷った様子であったが、『まあ、先に聞いたのは俺だね』と小さく息を吐いて、教えてくれた。
「……恩人が居るんだ。ずっと、目を覚まさない」
「目を、覚まさない……?」
バカは、ぽかん、とした。『ゆさゆさやったら起きるんじゃねえかなあ……』などとも思った。
「……その、植物状態、ということ、ですか」
だが、流石に海斗には分かる。海斗がそう、遠慮がちに問えば、デュオは小さく頷いた。
「まあ、似たようなものだと思う。……意識も、あると言えばある、ような、そんな状態なんだけれどね。……その人を元に戻す手段を探すために、デスゲームに参加したんだ」
バカは、『そっか、そういう人も居るんだ……』と、また一つ、賢くなった。同時に、『ゆさゆさやったら起きるんじゃ、なんて言わなくてよかった……』と思う。
バカは、自分がバカであるが故に、人を傷つけそうになることがいっぱいある。そういう時、『もっと賢くならなきゃなあ』と思うバカなのであった。
「そっかぁ……その人、早くよくなるといいなあ……」
「……ありがとう。気持ちだけでも、嬉しいよ」
デュオは少し笑って、それから、床に視線を落とした。
……その様子は、何か、自分の願いを再確認して、決意を新たにしたような、そんな風にも見えた。
「……少し話し込んでしまったね。そろそろ戻ろうか」
「おう!……もしかしたら、まだ七香、居るかなあ」
そうしてバカ達は、大広間へ戻るべくエレベーターに乗り込んだ。
「今、何分くらい経った?くそ、時計があればいいんだけれどな……」
デュオは少しばかり落ち着かなげに、左腕を見る。……だが、そこにあるのはデュオの腕輪だけだ。腕時計は、無い!
「時計が大広間にしか無いもんなあ……。お腹の空き具合とかで何分経ったか数えるしかねえよなあ……」
「……樺島。お前、そんな特技があったのか?」
まあ、バカの腹時計はよく鳴くことで有名だが、正確性には欠けるということでも有名である。このバカは何かあると、すぐにお腹が空いてしまうのだ。
「……まあ、真っ先に時計を確認してみようか。それから、大広間に居た人達も含めて、チーム分けを考えよう」
「うん!分かった!」
結局のところ、まあ、大広間の状況次第になりそうである。バカは、『もう1部屋くらいはいけそうだよなあ』と考えつつ、上昇していくエレベーターの感覚を楽しむのだった。
そうして大広間に到着して、デュオが真っ先に、大広間のモニターを見に行く。
「残り25分……15分で戻ってこられた、っていうことかな」
「結構かかっちゃったなあ……」
「お前が骸骨の騎士に労災の恐ろしさを語り始めたからだぞ、樺島」
……ゲームクリアするまでの時間は10秒程度だったので、ほとんどがお喋りで終わってしまったことになる。バカはちょっと反省した!
「さて、今、使用中なのは四郎さんの個室、七香さんの個室、9番の個室、か……。ということは、俺達が13番アルカナルームに入っている間に、少なくとも1チームは帰ってきた、ってことだね」
デュオはそんなことを言いつつ……ぽす、と、そのまま個室のベッドに腰掛けた。
「じゃあ、俺はここで七香さんを待つよ。そっち2人は、『11』に行くのかな?」
海斗は、ちら、とこちらを見て『どうする?』というような顔をしていたが、バカとしては、早く海斗と2人きりになりたい。『3』のちょっとえっちな部屋の二の舞にならないよう、海斗には他の部屋がどういう部屋だったかを、覚えている限り全て、話さなくてはならないのだ!
「ああ!そうする!じゃあまたな、デュオ!」
ということで、バカはデュオに手を振りつつ、海斗を引っ張っていって、五右衛門の個室にそそくさと入り、『11』のアルカナルームへと向かうことにした。
さて。
そうして『11』のドアを開けたバカは、『あっ、そうだったそうだった、海斗と2人きりで入る部屋は、でっかい剣持った像が天秤持ってる部屋なんだった!』と思い出す。
前回同様、像はそこにあって、片手に剣を、もう片方の手に天秤を持っている。
……ということで。
「じゃあ海斗!ちょっとここで待っててくれ!片付けてくる!」
「ああ、頼んだ」
バカは、さっさと海斗とのお喋りの時間を作るべく……身構えた。
クラウチングスタートの姿勢から、真っ直ぐに、向かうべき方向を見つめる。その眼差しは真剣そのものだ。
そして、足の置き場や、姿勢の確認をして、角度を調節したり、イメージを固めたりして……。
「っりゃああああああああああああ!」
どっ、と床を蹴り、床を大いに罅割れさせて、バカが走り出す。
凄まじい速度で走り出したバカは、更に一歩ごとに加速しながら、巨大な像へと向かい……。
ぼごぉん!といい音がして、像はその役目を何一つ果たせないままに大破した。
樺島式タックル解体術の勝利である!




