ゲームフェイズ1:『13』死神
……ということで、バカは海斗から、『3』の部屋で何があったのかを聞いた。
海斗は、『あまり思い出したくないし話したいことでもない』ということだったが、それでも、『次回以降の僕のためだからな……』と、大雑把に説明してくれ、バカはバカだが、一応、理解できた。
理解できたので……。
「そ、そっか……その、ご、ごめん、海斗ぉ……。嫌だったよなあ……その、うん……」
バカは真っ赤になってもじもじしながら、海斗の前でしょんぼりしていた。海斗は海斗で、努めて何ということは無いような顔をしていたが、やはりちょっともじもじしている。バカは、『恥ずかしいこと説明させてごめんなぁ!』とますますもじもじしょんぼりするしかない。
「ま、まあ、幸い、機転が利いたからな。最悪の事態は避けられた。部屋の要求そのままを受け入れていたら、感染症とか、そうでなくとも怪我とか、まあ……そういうことが起こりかねなかったからな。ああ。恥をかいただけだし、多少、その、体力を消耗しただけだ。何も問題は……問題はないとも」
海斗は『僕は割り切ったぞ』と言わんばかりの様子であるので、バカは、『多分、割り切れてはないんだろうけど……』と思いつつも、『そっか!海斗、すげえな!』と頷いておいた。こういう時には、さらっと流して気にしない方がいいということを知っているバカなのである!
「俺、もっと早く、『3』の部屋はなんかちょっとえっちな部屋かも、って、思い出せればよかったのに……」
だが、反省はする。反省しきりである。バカがもうちょっとだけでも早く思い出せていれば、海斗がちょっとえっちな目に遭うことはなかったのに!
仕方がないことではあった。それ以外に説明することが多すぎて、ゲームが始まる前の時間ではちょっと足りなかったのである。バカは、『俺の説明がもっと上手だったら!』と嘆いた!
「ん……いや、まあ、仕方ない、だろう。うん……。こういうことも、ある……。だが、『次』は無いようにしたい。だから樺島。この際、お前が知る限りの部屋の情報を全て話してくれ……」
「あ、うん。ごめん……ほんとにごめんなぁ、海斗ぉ……」
「いい。まあ、今すぐは難しいだろうな。デュオも七香さんも居ることだから……」
海斗は、ちら、とデュオと七香の方を見た。七香が視線に気づいて、ちら、とこちらを見返してきた。そして、デュオと七香が揃ってこちらへやってきたので……話の続きは、後になりそうである。
「えーと、じゃあ、次はどうしようか……」
デュオが少し気まずそうに、そう切り出す。……海斗もちょっと気まずそうなので、なんだかかわいそうである!
「2人ずつに分けるとなると、『9』と『11』、または『8』と『12』になるけれど……えーと、どうする?」
デュオの言葉から思い出して……バカは、『できれば、海斗と七香で『8』に入るのはやめてほしいなあ』と思う。『8』の部屋は、怖い部屋だ。植物がいっぱいで、ヤエが死んでいて……あまり思い出したくない部屋である。
そこへ、海斗を放り込むのはちょっと嫌である。七香はなんだか、悪い奴じゃないような気がしてきているが……でもやっぱり、ちょっぴり心配なのであった。
……すると。
「でしたら、私が残ります。樺島さんと海斗さんとデュオさん、3人で『13』へどうぞ」
「えっ」
七香がそんなことを言い出したので、バカはびっくりするのであった!
「でも、『7』はもう、タヌキと四郎のおっさんが入っちゃったんだよな?そしたら七香は……」
「待機して、どなたかがお戻りになったら、その方と組みます」
バカは七香を心配するのだが、七香はもう、そうするものと決めたらしい。
「……少し、1人になりたいの」
「……そっかぁ」
更に、そんなことを言うものだから、バカも納得した。
さっき、七香と一緒に入ったあの部屋で……まあ、色々あった。だから七香は七香なりに、考えをまとめたいのだろう。
「分かった。じゃあ、俺達3人で『13』の部屋、っていうことで、いいかな」
「おう!俺はいいぜ!海斗は!?」
「僕もそれで構わない。……じゃあ、行こうか。残り時間は41分らしい」
そうして、デュオと海斗の合意も得られたので、バカ達は早速『13』の部屋へ向かうべく、むつの個室に入っていく。
個室のドアが閉まる時、バカは七香に、『いってきまーす!』と手を振った。
七香は、少しだけ微笑んで、小さく手を振り返してくれた。……ちょっぴり嬉しいバカであった!
そうしてドアが閉まり、エレベーターが下降し始めると。
「……樺島君、七香さんと仲良くなったんだね」
デュオにそんなことを言われたので、バカはびっくりして……それから、『あっ!?もしかして、七香が俺と仲良しだって思われちゃったら、七香がデュオとお付き合いしにくくなっちゃうのか!?』ということを考えた。バカにしては珍しく、素早い思考である!
「ち、違うぞ!『17』の部屋の中とか、デュオと海斗待ってる時とかにちょっと喋ったけど、それだけだぞ!そんなに仲良しじゃないぞ!」
「え、あ、そうなのか……。いや、彼女がああいう風な顔をすること、珍しいから……」
デュオは『俺の勘違いかな』と首を傾げている。一方、海斗は『どういうことだ?』とまた首を傾げており……。
「……ああ。俺と七香さんは、元々知り合いなんだ。デスゲームが始まる前から」
デュオがそう説明すると、海斗は『ああ、そういうことか』と納得した。
「うん!俺も、それは七香からさっき聞いた!」
「七香さんから?そうか、じゃあやっぱり、ちょっと仲良くなった、っていうことなんだろうね」
バカが元気に言えば、デュオは苦笑しながら『そうだと思った』などと頷き始める。なのでバカは、『ち、違くてぇ!俺、七香と仲良しじゃなくて!七香は俺よりデュオとの方が仲良しだからぁ!』と、よく分からない弁明をする羽目になる。バカなので。
……すると。
「『17』の部屋で何があったのか、七香は詳しくは教えてくれなくてね。何かと戦った、ということだけは教えてくれたんだけれど……」
デュオはそう言って、ちら、とバカの方を見る。
だが、バカは困った!だって七香と約束したのだ!『海斗以外の人、特にデュオには秘密』と!
……そして、バカはバカなので、『どこからどこまでが秘密なんだっけ!?』と、なってしまうのである!
その結果、バカは、考えて、考えて……。
「あの、七香が秘密なんだったら、俺も、秘密にする……」
頭から湯気を出しながら、バカはそう言うことになったのである!
「あの、あの、七香と約束したんだ。ナイショ、って。色々、話、したことあるんだけど……でも、ナイショだから言えねえ!」
バカは、バカなりにできる限り誠実にあれ、と一生懸命説明する。
「……ええと、話の内容じゃなくて、部屋の内容を聞きたいんだけれど……」
「それもナイショかもしれねえから言えねえ!俺、バカだからどっからどこまでナイショなのか分かんねえんだもん!」
バカがバカであるが故に、『わかんねえんだもん!でもナイショって約束したもん!約束は破っちゃいけねえんだもん!』と主張すると、デュオは『そ、そう……』と引き下がらざるを得ない。
「……あの、そういうことで、あんまり話せねえんだけど、『なんかと戦った』っていうのは、ほんとだよ」
「そうか……うん、まあ、無事なんだったら、それでいいんだけれどね」
デュオは少しばかり、考えるような表情をしていたが、だが、結局は笑って『まあ、七香さんに直接聞いてみるよ』と言うのだった。
そうしている間に、エレベーターは無事、『13』の部屋の前へと到着する。
……いつもの如く、バカが先頭に立ってドアを開ける。『えっちな部屋じゃないといいなあ……』と思いつつ、『でもちょっとだけ、えっちな部屋、気になるなあ……』とも思いつつ……。
そして。
「……うわあああああああ!かっけえええええええ!」
ドアを開けたバカは、叫んだ。
何故なら……そこには、黒馬に乗った骸骨の騎士が居たからである!
「うわあああああ!かっけえ!かっけえ!うわああああああ!」
黒い馬はかっこいい。西洋の甲冑もかっこいい。少し破れた旗が結ばれた槍もまた、かっこいい。
……そして、骸骨の眼窩の奥に、ぼうっ、と灯る光もまた、かっこいい!
「かっこいい!かっこいい!骸骨の騎士だぁあああ!」
バカは、それはそれはもう目を輝かせて骸骨の騎士を見つめた。
骸骨の騎士も、こちらに気付いて馬を停め、じっ、とバカを見つめてきた。
……そして。
ぴっ、と、槍の切っ先がバカへと向けられる。骸骨の騎士は、真っ直ぐにバカを見つめている。
……次の瞬間、骸骨の騎士は馬を駆り、バカに向かって突撃してきたのである!
「うわあああああああ!」
急な突進にびっくりしたバカは、咄嗟に自分も突進し返すことで対抗した。
つまり、タックル返しである。
そうして。
「うわあああああああ!交通事故ぉおおおおお!」
バカにぶつかられた馬は見事跳ね飛ばされ、馬に乗っていた骸骨の騎士も当然跳ね飛ばされ、めしゃっ!と床に落下した。
バカが『ごめん!ごめん!』と謝る中、骸骨の騎士は、ぷるぷるしながら倒れていた。
「そうか、お前は馬とぶつかり合って勝てるんだったな……」
海斗は遠い目をしてそんな光景を見つめていた。デュオは空笑いしていた。
「うん……ごめんなぁ、痛かったよなぁ……。でも、その、急に発進しちゃ、いけないんだぞ……?ちゃんと、声掛け確認してから発進してくれないと危ないんだぞ……?」
バカは正座しながら、同じく正座している骸骨の騎士と話している。骸骨の騎士はところどころ骨折していたものの、一応、生きているらしい。ただ、戦う気力はもう無いらしく、馬共々、しょんぼりしている状態だ。
「声掛けし合える職場がな、労災の少ない職場なんだぞ!」
「ここは職場じゃないし今のは労災じゃないぞ、樺島……」
……海斗は、バカにはねられた馬を『よしよし……』と撫でてやっている。……平和である!




