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開始前:ケテルの部屋2

 作戦会議。作戦会議!バカは、『なんかかっこいい!』と満面の笑みである。秘密基地や作戦会議は男の子の浪漫なのだ!

 さて。

「……考え方としては2通りあるな。1つは、『現時点で怪しいやつを先に調べる』というやり方。もう1つは、『現時点で情報が少ないやつを先に調べる』というやり方だ」

 早速、海斗が説明してくれるのを聞きながら、バカは『作戦会議には秘密基地が要る……!』と背中をもそもそやって、みょん、と羽を出しテントのようにして……もふん、と海斗を羽テントの中に入れた。バカは度々、海斗をこのように羽にしまっておくことがある。なので、しまわれる側の海斗も慣れっこであった。

 ……こうして2人で羽のテントの中に入ってしまうと、なんとなく秘密基地っぽい。バカは『作戦会議!秘密基地!』とまたにこにこ顔である!


「デュオについては、ひとまず『人を殺す』奴だということは分かってるんだろう?勿論、殺すこと自体が目的なのか、カードを奪うことが目的なのかは分からないが……少なくとも、人を殺すことを躊躇わない。そして、僕らと敵対する。それが分かっているわけだ。だから、行動も予測しやすい」

「うん……」

 バカは、『デュオも、何か考えがあるんだろうなあ……』と思いつつ、だが、タヌキを人質ならぬ狸質にしていた時の冷たい表情を思い出して、ぞっとした。

 ……いつか、デュオとも分かり合える時が、来るのだろうか。

「彼についてはできる限り早く知りたいが……彼が本当に悪魔だった場合、かなりリスクが大きいな。できれば外堀から埋めていきたいが……」

「うん……?」

 バカは、『外堀って、なんだ?』と頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべている。バカには今一つ、『堀』という概念が無いのであった!バカだから!


「次に、タヌキか。彼……彼、なんだよな?」

「え?あ、うん。成人男性、って言ってた!」

「うん……まあ、そのタヌキについては、異能は不明だとしても『自分の体を取り戻すこと』が目的だとは分かっているんだろう?なら、協力を持ちかけることも容易だろう。尤も、こちらもデュオ側を調べてからじゃないと、少し危ないかもしれないが……」

「危ないのぉ!?」

 続いてタヌキの話になって、バカは驚いた!今のところ、バカにとって一番危なそうじゃないのがタヌキだと思っていたのに!

「まあ……四郎さん関連の話を聞く限り、タヌキが嘘を吐いている可能性も、無いわけじゃないからな。とはいえ、まあ……なんとなく、悪いやつではないような気は、する……」

「うん……タヌキ、悪いやつじゃないよぉ……。あいつ、義理堅くていいタヌキだよぉ……」

 バカはちょっぴりしょんぼりした。もし、タヌキが悪いやつだったらどうしよう、と……。


「四郎さんについては……お前の話では、『氷を生み出す異能』かそれに近しい異能だと考えられる。そして目的は、『悪魔殺し』と。……事情は色々ありそうだが、まあ、協力を持ち掛けやすい上、行動もある程度予想しやすい」

「うん。四郎のおっさんは分かりやすい!」

 ……バカは大いに頷いた。何せ、四郎についてはなんとなく、やりやすい相手だと思われたので。

 四郎は、目的をはっきり宣言していた。目的の為には多少の犠牲は厭わないようでもあったが、同時に、タヌキやバカや海斗のことは気にしてくれている様子でもあったし、まあ、義理堅いいいおっさんだろうと思われる。

 ……ちょっとぶっきらぼうなかんじがするところも含めて、バカは職場の大先輩達……ちょっと偏屈なところもある、愛すべきおっちゃん達のことを思い出す。バカはおっちゃん達に可愛がられて日々育っているため、四郎のようなタイプは大の得意なのであった!


「で、五右衛門さんは全く分からない、と。……『出られなくても構わない』と言っていた、というのが余計に分からないんだが……」

「……五右衛門、ヤエが死んじゃった時、すごく、ショックだったみたいだ」

「……そうか。なら、もしかしたらヤエさんと何か、つながりがあった、のかもしれないな」

 バカは前回、五右衛門とはほとんど喋らなかった。なのでとても気になる人ではある。

 ……ヤエの死で取り乱す様子から、何か、ヤエとの間にあったのだろうな、と、思われる。だがその割に、『出られなくても構わない』らしいのだから……バカはやっぱり、五右衛門のことが分からない!


「むつさんについては……その、孔雀と一緒に居る人、というところか。異能は分からないし、目的も不明、と……」

 続いて、むつについて考えると……『そういえば俺、むつとはそこそこ喋ったなあ』と思い出される。

 孔雀が1人で行動する間、むつがぽつんと取り残されてしまって、そこにバカがご一緒することが多かったためであろう。バカはその内容を思い出して……ふと、首を傾げる。

「むつはな、『友達を探しに来た』って言ってたぞ。で、それ、孔雀のことらしいんだけど、なんかちょっと戸惑ってるみたいだった」

「戸惑い?そうか……」

 バカの発言は、海斗を少し悩ませた。だが、海斗はすぐ、何かの可能性に思い当ったらしい。やはり海斗は賢いのだ。

「……むつさんは、『駒井燕の死』を知っていたんじゃないか?」

「へ?」

「死んだと思っていた燕が、生きていた。……そうなったら、その燕の死の真相を確かめに来たむつさんは、混乱するし、戸惑うだろうな。僕達が最初、依頼を聞いた時のように」

 バカは『ああ、なるほど!』と納得する。死んだと思っていた友達の死の真相を確かめようとしていたら、デスゲームで、その友達本人と再会してしまった!ともなれば、むつの戸惑いはやむなし、である。

 ……そして同時に、むつが『実は死んだと思ってた友達が生きてたんだよね』などと言えない事情も、なんとなく分かる。

『死んだ人が生き返った』なんてことがあったら、真っ先に『ならそいつが悪魔か?』と疑われてしまうだろうから。だからむつはきっと、『じつは孔雀って死んでたはずなんだけど』なんてことは言わなかったのだろう。


「……そして、七香さん、というのが、現時点で判明している中で一番強力な異能の持ち主、ということになるか」

「あー、うん。強かった……。生半可なタックルじゃ、太刀打ちできねえもん!ちゃんと気合入れてねえと、こっちが負けちまいそうだからさあ!」

 バカは七香の異能であろう、あの手の形をした強い力の塊を思い出す。

 ……アレは強かった!だが、バカはあの七香の異能にちゃんと、勝てたのだ!だからバカはちょっぴり誇らしい!

「となると、現状、一番危険なのは七香さん、か……。できれば敵に回したくないが、デュオと組んでいるらしい、となると……うーん」

 海斗は『僕が敵対したら一瞬で殺されそうだからな……』とぼやいている。確かにそうだ!恐らく、ヤエは七香の異能で絞め殺されてしまったのだ。五右衛門も、七香に絞め殺されてしまうところだった!

 バカは、『海斗のことは絶対に守るぞ!』と、決意した。決意と共に気合が入った羽がばふぼふと動いて、海斗に『暴風を起こすな!』と怒られた。バカはしゅんとして、羽もしゅんとしたので、海斗は改めて羽の中に入ってぬくぬくし始めた!


「ヤエさんについては……異能も分からないし、目的も分からない、のか」

「ヒマワリ、好きそうだった!」

「そうか……。まあ、それよりは、陸上部に入っていたものの、事故で脚を失った、というところの方が有益な情報のような気がするが……」

 続いてヤエの話になると、バカはヒマワリ畑のことを思い出す。……思い出しついでに、ヒマワリの花の中で死んでしまっていたヤエのことも思い出しかけて、慌てて首を横に振って考えを振り払った。今はしょんぼりしている場合ではない!

「情報が無い、という点では五右衛門さんと同じような状況か。うーん……優先順位を付けるのが難しいな」

 海斗が悩む一方、バカはぼんやりと思う。『ヤエの願い、ちゃんと叶うといいなあ』と。何が彼女の願いなのかも、よく分かっていないのだが……。


「……そして最後。孔雀、か」

「うん……」

 そうしていよいよ、最後のメンバーについて考えることになり……。

「……分からないことだらけだな」

「うん……」

 ……バカと海斗は揃って、天を仰いだ。尤も、2人揃って羽テントの中なので、ふわふわの真白い羽が見えるばかりだが。

「孔雀については、何よりも優先したいところではある、が……同時に、警戒もしないといけないようだし……」

「うん……」

 バカの脳裏に浮かぶのは、海斗の腹を刺し貫いた孔雀と、孔雀の喉を突いた海斗の姿だ。

 てらり、と血で濡れた刃のあのぎらつきを、バカは生涯、忘れられないだろう。

「まあ、それでも第一に調査する必要があるのは、孔雀、だろうな。少なくとも、『駒井燕』のことは調べておかないといけないから……まあ、お互い、怪我に気を付けていこう」

「うん……そうだな。ご安全に、だな!」

 バカは、脳裏に焼き付くあの光景を振り払うように、ぶんぶんぶん、と首を振って、しゃっきりと前を向く。

 ご安全に、はどこにでも言えることだ。そして特に、孔雀について調べる時は……特に、ご安全に!




「……ということで、まあ、最優先すべきは孔雀だな」

「うん!」

 さて。

 そうして作戦会議は、ごくごく当たり前の結論に落ち着いた。

 ……元々、このデスゲームでの目的は『駒井燕の救助』である。そして、現状、『駒井燕』であろうと思われる孔雀が居るのだから、やはり、孔雀について調べて、孔雀との共闘の道を探るのが一番いいだろう、と思われる。

 バカは、『今度こそ俺、孔雀と仲良くなるぞ!』と意気込んだ。たまから預かったこの依頼!必ずや、成功させるのだ!


「次点で……僕は、七香さんを調べるべきだと思う」

 が、続けて海斗がそんなことを言い出したので、バカは首を傾げた。

「デュオじゃなくて、か?」

 バカはてっきり、『次はデュオ』だと思ったのだ。

 ……やっぱり、デュオはちょっと怖い。タヌキのしっぽを捕まえて、残酷なことをできる人なのだ。だから、怖い。誰かを傷つけることを厭わない相手は、やっぱり怖いのだ。

 だからこそ、デュオについて調べてみたい、と思ったのだが……だが、そう思ったバカの脳裏に思い出されるのは、あの時、最後に見た、七香の眼光である。

 片腕を潰されて、血を失って、それでも尚、異能を使って……デュオを助けようとしていた。

 あの時の七香の目にありありと見えた執念を……七香が何を考えていたのかを、バカはちゃんと聞いてみたいな、と思うのだ。できたら、本人の口から。


「七香さんとデュオは関係があるようだから、七香さんを調べていけば、デュオの情報にも行き当たると思う。それに、上手くいけば、七香さんとデュオの関係を解体することができるかもしれない」

「解体!」

 バカは、『解体は俺の得意分野!』と目を輝かせた。……このバカの得意分野は物理的な解体であって、人間関係の、それも男女の関係の解体は、間違いなく専門外であろう。だがバカはまだそれに気づいていない!

「お前のタックルを止めるポテンシャルがあるほどの異能の使い手なんだろう?なら、七香さんを味方に付けられれば、心強いよな」

「うん!味方だったら心強い!」

 バカは、ちょっと想像してみる。『もし、七香が味方だったら』と。

 ……そうしたらきっと、ヤエは死なずに済むし、五右衛門も首を絞められなくて済むだろう。そして四郎も、あんな怖い脅しをかけなくていいのである。

 そして何より……もしかしたら、七香が、あの時『リプレイ』で見たみたいな笑顔を、バカ達にも向けてくれるようになるかもしれない!

 そうだったら嬉しいなあ、と、バカはひっそり思うのだ。やっぱり、無表情を向けられるよりは、笑顔を向けられる方が嬉しいのである!




 ……ということで、バカと海斗の作戦会議は終了した。

 結論は、『孔雀を調べる!余裕があったら七香も調べる!』というものである。

 ……まあ、『余裕があったら』の部分は、臨機応変に、ということになるだろう。

 前回、バカは全く理解できていなかったが……今回のデスゲーム、『アルカナルーム』に入るために、色々な人と組む必然性が発生するのだ。

 だから、その時々で人の組み合わせが変わるのだろうし、狙って誰かと一緒のチームになるのは中々に難しい。

 その時々で、手に入るチャンスは大きく異なる。だから、結局のところ、バカの戦略は『出たとこ勝負!でもできるだけ孔雀を付け回す!』という所に落ち着いてしまうのだ!

「……まあ、もし、孔雀がむつさんと組むことを止めないようだったら、僕が行くことになるな」

「えっ!?」

 が、海斗がそんなことを言い出したので、バカは『そうなの!?』とびっくりした!

「当然、そうなるだろう。孔雀が9、むつさんが6なら、合計15。アルカナルームの最大値は『21』だから、お前の10を足してしまったらオーバーする。一方、僕の1なら問題無いだろう?」

 バカは指折り足し算をして、『そっかぁ……俺、孔雀と組むの、めっちゃ難しいんだぁ……』とようやく理解した。バカはまた一つ、賢くなった。

「……ま、上手くやろう」

「うん……ご安全に、だぞ!」

「ああ」

 バカにはできないことも、海斗にはできないことも、色々ある。だが、2人でやりくりすれば、きっと、色々なことができる。

 ……それを分かっているから、バカは海斗に背中を預けるのだ。

「よろしくな、『相棒』!」

 前回、海斗に言われた『相棒』が嬉しかったので、バカはそう言って、海斗に拳を突き出してみせる。すると海斗は少し驚いた顔をして……。

「相棒?……ふふ、そうだな。こちらこそよろしく、相棒」

 少し照れたように拳を出して、バカとグータッチしてくれた。

 ……海斗は、バカのことを『相棒』と呼んでくれたことを覚えていない。

 分かってはいるバカであるが……やっぱり、この『やり直し』の中に自分だけ取り残されてしまっているような、この感覚は、何度やっても、ちょっとだけ、寂しいのだった。




「さて、樺島。残り時間はあと10分だが……」

「え、あ、うん……」

 そうして、海斗は部屋のモニターを示した。

 モニターには残り時間があと10分程度であることが表示されている。『俺、一旦自分の部屋に戻っておいた方がいいかなぁ』と、海斗の個室を出ようとし……そこで。

「さて、樺島。じゃあお前が個室に戻る前に、確認しておこう」

 同時に海斗もまた、同じことを考えていたらしく……顔を見合わせて、にや、と笑う。

「11番目のセフィラ。……『ダァト』の個室の存在を」




「『ダァト』は、『ケテル』と『ティファレト』の間に位置するセフィラだから……ええと、真正面のアレか」

「ほ、ほんとにある!」

 バカと海斗は、海斗の個室から出てバカの個室の方を向いた直線状にある部屋……恐らくあれが『ダァト』なのであろうと思われる個室を、見つけてしまった!

「まあ、お前の話を聞く限り、本来ならばこれは『一度大広間へ出た後、エレベーターのギミックを使って再び天井裏を来訪した際に見つけられるもの』なんだろうな」

「おおおおお……」

 バカは、『これがさっき見られなかったやつ!』と、その目を期待に輝かせて個室を見つめる。

「中を見ておきたいが……ドアは開かない、か。やっぱりこれも、開ける正規の手段があるんだろうが……」

「タックルか?やっぱりタックルするか?」

 バカがタックルの構えを取る中、海斗は少し考えて……。

「……いや、止めておこう。流石に不審すぎる。僕の部屋をピンポイントで開けて、その上、『ダァト』の存在にまで気づいている、ということが悪魔側に知られたら危険だし、悪魔ではない人には『こいつこそが悪魔だ』と思われるだろうな」

「そ、そっかぁ……」

 バカは、『海斗ってやっぱり頭いいなあ』と思った。バカはどうも、『自分とは違う立場の、自分とは違う人から見たらどう見えるか』という想像をするのがちょっと苦手だ。そしてそれを、バカはちょっぴり気にしている。


「……まあ、既に僕の部屋を開けてしまっている以上、そこはどうしようもないから……よし」

 だが、海斗はふと、少し笑って……言った。

「樺島。お前の異能を偽装するぞ」

「……へ?」

 ……そしてバカは、こてん、と首を傾げるのだった。


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― 新着の感想 ―
偽装は…怪力でしょうなぁ。 むしろそれ以外あり得ないレベルw それにしても海斗の言うとおり、四郎さんの氷、七香さんの見えざる手以外は分かりませんでしたね…。 ダンベル出したのはたぶんタヌキだと思いま…
偽装…。 羽が生えるかわりにバカになっちゃう異能とか…?(失礼) 2巻をお取り寄せしたので明日本屋さんに届きます。 楽しみーヽ(=´▽`=)ノ
次回作が連載始まってるのに今更気づいて連載始まってるのに嬉しく思いました しかもまた海斗が一緒に居てくれるとかもはや名コンビって感じで嬉しい 前作を読んでいたので失敗は前提としてどこでやり直すかと思…
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