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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第一章:あのバカが帰ってきた!
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ゲームフェイズ2:大広間6

「今……俺は、死んで、た、か……?」

 四郎が、動揺している。それを見てバカも動揺していた。

 そして海斗は……。

「……タヌキ。ちょっと来てくれ」

 五右衛門の顔面に張り付いていたタヌキを呼んだ。

 タヌキは、何かあったと理解したのだろう。五右衛門に何か言うと、ぴょこん、と五右衛門の顔面から飛び降りて、ぽてくてとやってきた。

 そして海斗は、そんなタヌキを蒼白な顔で見つめて……言った。

「1つ、聞きたい。……僕と樺島と一緒に『14』の部屋から出てきた後、何があったか説明してくれ。その時の大広間の様子も含めて、仔細に。……返答によっては、ここでお前を、殺す、ことになる」




「こ、殺さないでください!私、何も知らないんです!四郎さんに何かするなんて、絶対に、絶対にありませんから!」

 タヌキが毛を逆立てて必死に言うのを、バカはおろおろしながら見ていた。

 バカは、タヌキが好きである。なんとなくコミカルで可愛らしいし、多分、人が好い。四郎に義理立てするところも見ているし、そして何より、結構な数のアルカナルームを一緒に探索した仲である。

 だから、バカはタヌキを疑うなんてことはしたくない。したくないのだが……。

「か、海斗……タヌキ、何かしたのか?デュオじゃなくて、タヌキが……?」

「聞いてみないと、分からない。だから聞きたい。もう一度、聞くぞ。『14』の部屋から出た後、『3』に入るまでの間、何をしていた?何を見た?誰が居た?答えろ!」

 海斗は、タヌキに厳しくそう、言う。四郎も、タヌキをじっと見ている。……そして、タヌキは。

「……分かりました。できるだけ、思い出してお伝えします。あの時私は……」

 タヌキは、すっかりしょんぼりしながら、ちょこん、と座って話し始めた。

「……『18』のアルカナルームに、入ったんです。むつさんと、孔雀さんと一緒に」




「……は?『18』……?僕達が最初に入った部屋……か?月面の……?」

「はい。『月』のアルカナルームです。私と樺島さんと海斗さんと四郎さんで入った『18』の部屋なんです」

 海斗がぽかんとしている中、タヌキは『困惑されるのも尤もですよねえ……』と頷いた。

「えーと、順番に説明しますと……まず、私が『5分待って誰も来なかったら『3』のお部屋に入ろう』と思って大広間で待機していたら、孔雀さんとむつさんが来たんですよ。そこで、『悪いが付き合ってほしい。一度入ったアルカナルームに別の組み合わせでもう一度入るとどうなるか試したい』と……」

 バカは最早、時系列など何も覚えてはいないが、ひとまず、バカと海斗とタヌキで『14』の部屋で水に杯を沈めた後、タヌキ1人を大広間に残してバカと海斗が『11』の部屋に入った、ということは覚えている。つまり、その間に起こった出来事、ということなのだろうが……。

「ちょっとなあ、お断りしようかなあ、と思ったんです。何か裏がありそうというか、意図がちょっと分からないというか。しかし……お断りしようかなあ、って悩んでたら……捕まっちゃいまして!」

「捕まっちゃったのか!?」

「はい!胴体を、こう、ぐわしっ、と捕まれまして!そのまま抱えて、大急ぎで樺島さんの個室へ連れ去られてしまい!そのまま強制的に、『18』のお部屋へ移動する羽目に!」

 ……バカは、ちょっと想像する。

 孔雀が、タヌキを『ぐわしっ!』と掴み上げて、そのまま抱えて走る様子を。

 ……ちょっとかわいい気がする!

「それで……どうなったんだ?」

「あ、はい。特にどうもありませんでした。ただ、『18』のアルカナルームに入って、『月だねえ』『月なんですよぉ』って話をむつさんとしたくらいで……あ、その間、孔雀さんはエレベーターの方に居たので、そこでは一緒じゃなかったんですけれど、むつさんとは『誰が悪魔なんだろう』って話をしました」

 バカは、『ほげえ』となってきた。孔雀の奇行について聞いてみても、ちょっとイメージが追い付かないのである。孔雀のあの、メタルフレームの眼鏡の奥の鋭い視線を思い出すと……タヌキを抱えて爆走し、その後、エレベーターを調べていた、という様子が全く、想像できないのである!

「……むつさんは、『孔雀はデュオさんを疑ってる』っていうことを、ちょっと言っていました」

「むつが?」

「はい。あ、でも、むつさん自身が、というよりは、孔雀さんが疑っているんだけれどなんでだろう、っていうかんじでした。それで、私はちょっと警戒していたので、『なんででしょうねえ』って言って誤魔化して……」

 ……タヌキも色々と考えて、色々と大変だったらしい。バカはそれだけ理解した。

「それで、孔雀さんが私とむつさんを呼びに来て、3人で大広間に戻ったら、そこで、引っ込んでる個室が変わってまして」

「個室が、入れ替わる……?」

「はい。どうやら、私とむつさんと孔雀さんが『18』に戻っている間に丁度、私の個室が戻ってきて、海斗さんの個室とデュオさんの個室が使用中になったみたいで。私達が『18』に居た時間は10分くらいだったので、その間に、っていうことになりますか」

 海斗が首を傾げている。バカは『ほげえ』となった。もう、バカにはこのあたりが限界である!

「……デュオの部屋も、か?」

 そして四郎は、『理解が追い付かない』という顔であるが……。

「あ、はい。それは確かだと思います。私、『18』の部屋に連れて行かれる前はですね、『3』のアルカナルームに入るためにデュオさんの個室を使おうと思っていたんです。私の個室が使用中だったので。でも、戻ってきたら私の個室が戻ってきていて、それで、デュオさんの個室が使用中になっていたので。覚えてます!」

 タヌキがそう言うと、『ありえん』と天を仰いだ。

 ……何か、おかしなことが起きているらしい。


「ええと、それで話を戻しますと……私とむつさんと孔雀さんが大広間に戻ってきたら、孔雀さんは『俺は『9』のアルカナルームに入るから』って言い出しまして!」

「えええ……」

 孔雀、ちょっと自分勝手じゃないだろうか。バカは訝しんだ!

「その時、大広間には七香さんが相変わらず居たんですけど、やっぱり七香さんは誰とも組まないって言ってて、そして私とむつさんが組んでも、『9』なので、孔雀さんと被っちゃいますし……元々私は『3』のアルカナルームに入ろうかな、って思ってたので、そのまま私の個室を使って『3』のお部屋へ行きました」

 ……ついさっき『孔雀、自分勝手じゃないだろうか!』と思ったバカであったが、『あっ、そうかぁ、むつがタヌキと2人でアルカナルームに行くのを防ぐためだったのかなあ……』と、ちょっと思い直した。

 友達の、それも女の子の友達のことだ。できるだけ、怖いゲームには参加させたくないのだろうし……そう考えると孔雀はやはり、悪いやつではないのではないだろうか。バカの中で孔雀の評価が定まらない!

「それで、むつさんと孔雀さんがお見送りしてくれて、『いってきます!』ってやって……それで、『3』のアルカナルームが、その、えっちな部屋だったので、『やっぱり無理矢理孔雀さんを押し退けて9番に入った方がよかったかなあ!?』って後悔しました。以上です!」

「……成程な」

 タヌキの話が終わって、四郎は腕を組みながら、唸る。

「だとしたらやっぱり俺は記憶がぶっ飛んでるらしい、が……同時に、デュオと孔雀はグルだってことか……?」

 そしてそんなことを言うものだから、バカは大変びっくりした!




「そうなのぉ!?」

「……俺がデュオに何かされたっていうんなら、そうなんだろう。だが俺はそこのところが一切記憶にねえ」

 四郎は、冷や汗を額に滲ませながら、必死に思い出そうとしているのか、額を抑えて唸る。

「俺は、お前らと『18』の部屋を出た後、大広間で人を待ってた。で、そうしたら孔雀がやってきてな」

「孔雀が?」

「ああ。……一瞬、妙なかんじがあった。意識が途切れたような、そんな感覚があったんだ。だが、孔雀に話しかけられたんで、違和感について深く考えることも無かったんだが……」

 バカは理解が追い付かないが、四郎とタヌキと海斗はそれぞれ、理解が追い付いているらしい。『どういうことだ?』と考えに考えている。バカはそれを、おろおろしながら見守った。

「……さっきのタヌキの話を聞く限り、孔雀がタヌキを抱えてどっかいった間にデュオが俺を連れて出てきた、と考えるのが妥当だろうな。つまり、孔雀はデュオが俺を連れて出てくる、って場面を知ってたことになる。となりゃあ、孔雀はグルだ」

「え、ええええ……え、ええっと、それもちょっと変なんですよぉ……。だって、私が戻ってきた時、もう四郎さんは『4』のアルカナルームに出発した後だったんですよ?使用中の個室はそこで既に変わってたんですから……」

「そいつもおかしな話だな……。くそ、俺が『4』のアルカナルームに入った時にどの個室が使用中だったかなんざ、覚えてねえが……」

 タヌキと四郎が、互いに頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべて話している様子を見て、バカはおろおろする。

 おろおろしているが……バカはバカなりに考え、バカなりに分かるところだけ分かり、そして、結論を出した。


「あの、俺、バカだから全然わかんないんだけどさあ……とりあえず、デュオは、何か知ってる、んだよな……?」

 ……今回のこの、不可思議な状況。

 これらについて、デュオは少なからず知っているはずなのだ。




「そう、だな。デュオは、知って……」

 海斗も同じように、バカの言葉をなぞって……しかし、そこで、はた、と気づく。

「……待てよ?デュオが四郎さんを連れてきた時……七香さんは、大広間に居たんじゃないのか?」

「え?七香?……あっ」

 バカは、前回の『リプレイ』で見た七香の姿を思い出す。

 バカの前ではまるで表情を変えない七香が、花が綻ぶように笑って駆けていった、あの姿を。

 そして海斗も恐らく、バカと同じことに思い至ったのである。

「……まずいぞ。つまり、孔雀はともかく、デュオと七香さんは確実にグルだ。……ヤエさんが、危ない」

 ……今、デュオと七香が、ヤエと一緒にアルカナルームに入っているのだ!3人きりで!




「おい五右衛門!こっち来い!」

「なぁによぉー、四郎ちゃーん……あんた達、来るなって言ったり来いって言ったり……タヌキちゃんが『樺島さんと海斗さんがえっちなことをするので見ちゃだめです!』って言ってたけどぉ……何やってたのよぉー」

「ええええええええ!?俺達、えっちなことしてないよぉ!?」

 四郎が呼んだ五右衛門が、何やらとんでもないことを言いながら戻ってきたので、バカは『えええええええ!?』とびっくりした!タヌキが『あっ五右衛門さんすみません!アレは嘘です!咄嗟に他に何も!何も思いつかなくて!』と弁明したため誤解は解けた。多分、解けた。

「悪いがそれどころじゃない!すまないが、今すぐヤエさんを救助に行く必要がある!」

「は!?ど、どういうことよ!?」

「それを説明している時間も無い!腕輪を……」

「海斗さん!海斗さん!『2』と『6』の腕輪、持ってきました!」

 ……そうして、外した腕輪を置いておいた場所から、タヌキがデュオとむつの腕輪を持ってやってくる。これで合計は『8』。未だ事情を呑み込めていない五右衛門も連れて、『8』のアルカナルームへ向かい……。




 エレベーターが止まる。ドアが開くや否や、バカを先頭にして、全員が『8』の部屋の中へと雪崩れ込む。


 部屋は、植物に覆われていた。

 太く捻じれた大木があり、その根が床を突き破り、若木が生え、草が生い茂り、蔦が張り巡らされ、花は咲き誇って……そして、ヒマワリがかたまって咲く場所がある。

 ヒマワリの花畑の中に、ヤエが倒れていた。倒れたまま、動かない。




 そして少し離れた個所、蔦を引き千切ったようなその場所で……七香が、座り込んでいた。

 その膝に、動かないデュオの頭を抱えるようにして。


12月25日(木)に前作『頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム』の書籍2巻が発売されます。

特典情報など詳しくは活動報告をご覧ください。

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― 新着の感想 ―
最新話から読み返して疑問が出たのだけど、1と5の部屋から広間に戻った時点で腕輪外した? 海斗と五右衛門さんの腕輪外しておかないと8の部屋にいけないよね?
正直なところ誰も死なずに一周で終わってもそれはそれで美しくていいんじゃないかなとは思ってたんですが、えっちな部屋の内容が気になりすぎて早くループしてくれという思いもありました。 ここからが本当の疑心…
これ、タヌキがどこまで正直言っているかも大事ですね せっかくたぬきになったのでぜひ化かしてほしいです
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