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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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多分もうゲームフェイズ1:大広間

「よし!いっくぞぉー!」

「うおっ本当に人間振り回してやがる!」

「大丈夫だ。デュオも一応納得済みだから」

 ……ということで。

 バカは、『無敵時間』を使ったデュオをぶんぶんとぶん回して……床を、カチ割った!

 そしてそのまま、デュオを抱え、海斗を背負い、四郎はまあ自力でもいけるだろうということでお任せして……全員一緒に、飛び降りた!




「いやあああああああああああ!五右衛門さん!空から!人が!」

「何ぃ!?空から人ぉ!?」

「あっ!こんにちは!」

 そうしてバカ達が、しゅたっ!と着地したところには丁度、タヌキと五右衛門が居た。丁度いい!

 ……バカは、『ちょっぴり不思議な取り合わせ!』と思ったが……よくよく考えると、バカと海斗とデュオと四郎が居なくなった今、残るメンバーはタヌキと五右衛門とむつと七香とヤエなのである。つまり、『男女に分ける』とこうなるのだ!つまりここは!男子チーム!

「な、何よアンタ達!どこから来たわけ!?」

「え?あ、天井から……?」

 当然のように、五右衛門には滅茶苦茶警戒され、ついでにタヌキにも滅茶苦茶警戒された。タヌキが尻尾を膨らませ、毛を逆立てて『あああああああああ』とやっているのを見ると、ちょっぴり申し訳ない気持ちになってくる。

「あの、あのな、五右衛門!タヌキ!悪いんだけど、ちょっと協力してほしいんだ!俺達、『9』の部屋に入りたくてぇ!」

「は!?なんで!?何なのよホントに!」

「すまない、説明は後だ。今は時間が無い。……よし、樺島。お前自身のものと、僕の分と、五右衛門さんの分。3人分の腕輪を破壊しろ。デュオとタヌキと四郎さんの腕輪で合計は『9』になるからな」

「なんですかぁあああ!?腕輪の破壊ってなんですかぁああああ!?」

 ……そうして、大混乱の一同の中、バカは的確に動き、五右衛門の腕を捕まえて、それが咄嗟に鋏になってしまう前に、『バキイ!』と腕輪を破壊した。

 五右衛門がぽかんとしている間に、バカは自分の腕輪を破壊し、海斗の腕輪も破壊した!

 と、いうことで。

「じゃ、いくぞー!」

 バカは、ひょい、とタヌキを小脇に抱えて、もう片方の腕には未だ『無敵時間』中のデュオを抱え、ついでに五右衛門の手を繋ぎ、ずんずんと進んでいった。

「なんですか!?なんなんですか!?なんですか!?なんなんですか!なんなんですかぁ!」

「おお、このタヌキ、短歌も詠むのか。風流じゃねえか」

「風流……ではないだろう、どう考えても……」

 タヌキは『きょわああああああ!』と悲鳴を上げていたが……五右衛門はひとまず、大人しくついてきてくれるらしい。バカはにこにこしながら、エレベーターのボタンを押すのだった!




 そうしてバカ達を乗せたエレベーターは、『9』の部屋に向かってふいふいと動いていく。

 が。

「あああああ!あああああああ!」

「そろそろ落ち着いていい頃じゃねえか……?」

「これが!落ち着いて!居られますか!ああーん!人攫いぃ!いや、違う!タヌ攫いぃ!」

「このタヌキ、ちゃんと自分がタヌキであることを自認しているのか……。でも喋るんだな……」

 ……タヌキは相変わらずの大暴れであった!急に攫われたショックが大きいらしい!

「ごめんな、タヌキ……。びっくりしたよな……。あの、抱っこした時、痛くしなかったか?大丈夫か?」

「それは大丈夫ですけどもぉ!ああーん!びっくりした!びっくりしたぁ!」

「ごめんなぁ……」

 ……ということで、バカはタヌキを抱いて、その背中をなぜなぜと撫でてやっている。そうするとタヌキは次第に落ち着いてきたらしく、『うーん、撫でられ心地は悪くないですねえ……』などと太々しくも言うようになってきた!


 そうしてバカがタヌキを宥めていると、それを見ていた五右衛門も、『こいつら、悪い奴じゃないのかもね……』という顔になってきた。バカ達の第一印象が最悪であった分、ここから先は上がるしかないのである!

「で、事情は説明してくれるんでしょうねえ?」

「あ、うん。えーとな、俺、『やり直し』で、何度もこのゲーム、やり直しまくってて、だからタヌキと五右衛門のこともめっちゃ知ってるんだけどぉ……あの、タヌキ、ピアノ教室通ってただろ?そこでお花のお手入れ、してたんだろ?あとそこで七香と会ってるんだよな?」

「エッ!?確かにピアノ教室でお花のお手入れしてましたけど、七香さんは知らな……アアーッ!?よくよく思い出してみたらドストエフスキー読んでたあのお嬢さん、七香さんだったァーッ!?」

「タヌちゃん、ホント元気ねえ……」

 事情を説明し始めて、またもやタヌキが『あああああああ!』となってしまったので、バカは『いきなりだもんなあ、ごめんなあ……』とタヌキを撫でた。五右衛門は、『なんかよく分かんないけど多分こいつは悪い奴じゃないわね……』みたいな顔になってきた!




 ……ということでエレベーターが『9』の部屋の前に到着しちゃったので、バカが早速、ランタンの回収に出向く。

「じゃ、行ってくる!」

「ああ、気を付けて。……まあ、お前は飛べる訳だから、気を付けることはあまり無いような気もするが……」

 今回は、前回のようには躊躇しない。行きはよいよい、帰りもよいよいである。バカは一気に羽を広げて、バッ、と飛び立ち、ランタンの灯りを目指して一直線に飛んでいく。飛び立ったバカを見て、タヌキと五右衛門は目を丸くしていたし、その横で海斗は何故かちょっと誇らしげにしていた。

 バカはランタンに到達すると、そっと、丁寧にランタンを持ち上げて、大事に大事に、抱えた。ついでにカードも拾ってそれはケツのポッケにつっこんでおいて……早速、ぱたぱたと海斗達の元へ戻る。

「ただいま!」

「おかえり。やっぱり飛ぶと早いな」

「うん!」

 フライングバカについて、海斗はやっぱり誇らしげだし、四郎は『いい飛びっぷりだ』とやっぱりなんだか嬉しそうだし、タヌキと五右衛門は『人間が……飛んだ!』とびっくりしている様子だし……何かと忙しないが、まあ、これで目的であったむつの魂は回収できたのでヨシとする。

 だが。

「あのーう……これ、何か大事なランタンなんですか?」

「うん!これ、むつ!」

「むつ……え?むつさん?これが?え?え?……え?」

 ……説明には、時間がかかりそうである!バカは、デュオ……はまだ寝ているので、海斗に『よろしくな!』と笑顔でお願いした。海斗は『やれやれ……』とため息を吐きながらも、タヌキと五右衛門に諸々の説明をし始めてくれたのだった!




 そうして。

「成程ね……。大体は、まあ、分かったわ。信じるかは別としても、ね」

「あっ、私は信じますよ!あと、『仲間にするならタヌキがいい!』って思ってもらえていたのも嬉しいです!」

「えへへ、タヌキ、いい奴だからぁ……。ヤエが元気なかったら撫でさせてやるし、七香が元気なくても撫でさせてやるし……優しいよなあ、タヌキ」

「その記憶、私には無いんですが……え?私、お嬢さん方に撫でてもらってたんですか?いや、まあ、確かにタヌキのフカフカボディですからね、やましい気持ちは特にありませんけどぉ……それ、いいんですか?本当にいいやつですか……?まあでも、元気のないお嬢さん達に私ができることってソレくらいかぁ……」

 海斗の説明は終わり、五右衛門とタヌキは大体納得してくれ、そして、『無敵時間』が切れたデュオが目を覚ました。おはよう!

「ええと……今、どんなかんじ?」

「こんなかんじ!」

「ああ、成程ね。うん。まあ、俺が寝てる間に全部済んだ、ってかんじか」

 デュオへの説明は、バカが抱っこしているタヌキを見せびらかし、タヌキが『タヌキです!』と元気にご挨拶し、そして五右衛門が『あーもうやれやれ』と言いたげな顔をしていたことによって瞬時に終わった。デュオは理解力が高いのだ!

「じゃあ、ここに居る全員は、『燕』のことは分かってる状態、ってことかな」

「ええ!それは分かるんだけど……つまりそれって、今、七香ちゃんとヤエちゃんが『燕』と一緒に居るってことでしょぉ!?大丈夫なの!?」

「燕はまだ、俺達が動いていることを知らない訳だから。まあ……大広間に戻ってきたら、天井の残骸が落ちているからね。何かあったことは一目瞭然だけど……」

「大丈夫じゃないじゃないのよぉ!ねえ!ちょっとぉ!」

 五右衛門としては、やっぱりヤエのことが心配なのだろう。バカは、『わかるよ、ヤエのこと、心配だよな……』と五右衛門の肩をそっと叩いた。五右衛門は、『なんで知ってるのよ……ああ、知ってるんだったわね……』と、何とも言えない顔をしていた……。


「まあ、そうだな。五右衛門さんの言う通りだ」

 が、まあ、心配なのは心配だ。海斗も心配そうだし、バカだって、俄然心配になってきたところである!

「戻るなら早い方が良さそうだ。すぐ戻ろう」

「そうだな!すぐ戻ろう!」

 バカは早速、タヌキを抱き上げたままエレベーターに向かってスタスタと歩き始める。だが。

「あっ、でも、心配になった女性陣がこっちに迎えに来ちゃって入れ違い、ってことはないですか?」

 タヌキは聡明なタヌキであるので、そういう細かいところに気が付くらしい。バカには無い視点であった!それもそのはず、バカは自分を迎えに来てくれる先輩を探しに行って、2人で迷子になることがよくある生き物なのだ!海斗と一緒に遊ぶようになって、色々と教わって、そんな迷子事故は大分減ってきたが!

「あー……一応、可能ではある。ヤエさんが大広間に残してきた僕の腕輪を持って1人で迎えに来れば、ここへ来られる。或いは……ヤエさんにエレベーターを操作してもらって『8』に向かった後、そのエレベーターの昇降を利用して『→0』に七香さんと燕が行って、腕輪を破壊する、ということも……」

「あーあーあーあー、ややこしいから細かいところはいいわ。つまり、あんまり可能性は考えなくていい、ってことでしょ?」

「まあそういうことだね。急ごう。俺達も結構、時間を使っちゃったから」

 だが結局のところ、『入れ違い』は気にしなくても良さそうである。バカは『よしよし』と頷いて、全員が乗り込んだエレベーターのスイッチを押した。


「……むつぅ、悪いんだけど、ちょっと、人質にしちゃうから、その、ごめんな……?」

 エレベーターの中、バカはそっと、ランタンに話しかける。するとランタンの中の火は、めら、とちょっと動いて……きょろ、きょろ、と辺りを見回すように揺れた。もしかしたら、今起きたところだったのかもしれない!

「あの、むつ。俺のこと、分かるか?」

 無論、むつの魂はバカのことなど知らない。ほよ、と、首を傾げるように揺れているむつの魂を見て、バカは『ああ、まあ、そうだよなあ』と、ちょっとしょんぼりする。

「あの、あのな?むつ。俺、これから燕と喧嘩しちゃうんだけど……でも、燕のことも、むつのことも、大好きでぇ……2人とも、いい奴だから、俺、2人とも、助けたいから……」

 バカがしどろもどろ、要領を得ない説明をする間、むつの魂は、ほやほや、と揺れながら、バカの話を聞いていた。

 ……そして。

「だから、あの……協力してくれると、嬉しい。燕のこと、助けようぜ。あいつ、なんか、一人で色々、抱え込んじゃってるみたいなんだよぉ……」

 バカがそう言うと、むつの魂は……もよん、と、頷くように揺れたのだった!




「さて。そろそろ到着だ。準備、しようか」

 むつの魂との意思疎通ができてバカが喜んでいると、デュオがにこやかに……それでいて緊張気味に、そう、話しかけてきた。

「到着してすぐ戦闘、ってことも視野に入れておいた方がいい」

 ……そう。

 これからバカ達は、燕と喧嘩する。むつを人質にとるのだ。当然、燕と平穏無事に会話だけできるとは、思えない。

 きっと、燕はバカ達のことを怖がるだろうから。……怖がっている人とは、対話はできない。ただ……交渉は、できるのだろう。バカの苦手分野ではあるが。

「樺島君……は、異能をコピーされるリスクを考えると、できるだけ表に出したくないけれど。でもまあ、異能を『怪力』とかに偽装することを考えると、やっぱり前線に出さなきゃ不自然か。じゃあ、フォローは四郎さんに頼むことになるかな」

「おう。任せろ。……要は、燕に樺島の異能をコピーさせることだけはしちゃいけねえ、ってことだろ?なら、最初に俺の異能をコピーさせとく方がいいだろうな」

「そうだね。まあ、四郎さんの異能は多分、見て分かりやすい異能だし……多分、樺島君の異能は、燕にはバレていないんだと思うから。だから、四郎さんがメインで戦うことになると思う」

 バカは、『やっぱりデュオって頭いいんだなあ……』と思いながら、ふんふん、と頷いた。同時に、『俺の異能は、コピーさせちゃ、駄目……!』と、改めてきちんと脳みそに刻み込んだ!


「ね、ねえ、戦うことになっちゃったら……七香とヤエちゃんは、どうすんのよ」

 一方で、心配そうにしているのは五右衛門である。

「こっちに引き入れたい。彼女達と戦う必要は無いからね。それから……まあ、七香さんは、俺が呼べばこっちに付いてくれると思うよ。ヤエさんについては……救助したいけれど、その隙を燕が見せてくれるか、だな」

 デュオがちょっと考える素振りを見せつつ、ちら、と五右衛門を見ていると……五右衛門はそんなデュオには気づかず、ちょっと考えて、それから強く頷いた。

「……だったらアタシも協力するわ。前線で戦えるから、アタシと四郎ちゃんが戦って、樺島君がヤエちゃんを助けに行けばいい、ってことになるんじゃない?」

 なんと!五右衛門も積極的に協力してくれるらしい!バカは『よろしく!よろしく!』と五右衛門の手を握ってぶんぶん振った!


「むつさんは……あー、僕が預かっておくか。生憎、僕の異能は戦える異能じゃないんでね……。『リプレイ』じゃ、どう足掻いても、足止め程度にすらならない」

「……難儀だなあ、おい」

「まあ……僕には樺島がいるからな……おい樺島。お前は僕の武器なんだぞ。くれぐれもよろしく頼む」

「うん!そんで海斗は俺のずのーだもんな!よろしくな!」

 ……バカと海斗がちょっと笑い合った時、エレベーターのドアが開く。


 さあ……燕との、決戦の時だ。



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― 新着の感想 ―
五右衛門達とはこの時が初対面ではないです? 五右衛門って呼んでも通じないのでは
タヌキ、自分の体使ってるデュオがいるのに警戒心なし!?w 樺島以外もやり直しの度に少しずつ記憶が刻まれていってるのでは無いでしょうかw
今日もたぬきは通常営業。
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