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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第五章:地獄の沙汰もバカ次第
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ゲームフェイズ2:『20』審判1

 暫く、誰も何も言えなかった。ただ黙って全員で、燕の死体……或いは、むつの死体とも言えるであろうそれを見つめていた。

「……むつちゃん」

 そんな死体を見て、まだ状況を把握しきれていないらしいヤエが、恐怖と混乱に満ちた表情を浮かべている。そんなヤエの隣では、五右衛門が困惑していた。

「ちょ、ちょっとぉ……アタシ達、ほんとに何も分かって無いんだけど?これ、どういう状況なの?」

「あー……説明、しちゃった方がいいかな、これは」

「……危険なような気もする。ひとまずは諸々、確認してからの方がいいだろう。ヤエさんと五右衛門さんには申し訳ないが……」

 デュオと海斗はそんなことを話し合いながら、五右衛門とヤエに『ごめん』とやっていた。なのでバカも、『ごめんなぁ……不安だよなあ、でも、もうちょっとだけごめんなぁ……』と謝った。ヤエも五右衛門も、納得のいかないような顔はしていたが、バカですらしょんぼりとしつつ真剣な顔をしているのを見て、『ああ、何か事情があるんだろう……』とは思ってくれたらしい。


「ひとまず……移動するか」

 さて。そうしているところに、海斗がそう声を上げた。

「海斗、どっか行くのか……?」

 バカはしょんぼりしながらも海斗にそう尋ねると、海斗はこくんと頷いた。

「ああ。まあ……光源が手に入ったから、もう一度天井裏に戻って、『リプレイ』を確認しておきたい。それから……燕が本当に死んだのかも、確認しておきたいな」

「え?」

「彼の異能が何だったのか、僕達は未だにはっきりとは分かっていないんだ。『氷を操る異能』か、『コピーに似た異能』……そのどちらかであることはまず間違いないだろうけれど、『コピーに似た異能』だとすると、ものによっては今、危険な状況にあることになる」

 海斗の表情は、険しい。まだ、『終わった』とは思っていない。そういう表情だ。

「そうだね。俺もそれがいいと思う。……まあ、現状、俺が一番危ないように見えると思うけれど」

「え?え?デュオが危ない……?」

 バカは頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべて首を傾げる。すると、デュオは苦笑して教えてくれた。

「樺島君。例えばだけれど、燕の異能が『誰かを操る異能』だったら、どう?」

「……えっ!?」

「さっき、燕は俺に触れた。だから、燕の異能が俺に作用して、今、俺は燕に操られている。そういうことも考え得る、ってことだよ」

 バカは何度かデュオの言葉を反芻して、ようやく、意味を理解した。

 そう。今……目の前にいるデュオが、燕かもしれない、と!バカにしては頑張った!


「いや、でも、デュオはデュオだと思うぞ……?」

 が、バカとしては、やっぱり目の前のデュオはデュオだと思うのである。デュオの周りをくるくる回って確認してみても、つついてみても、匂いを嗅いでみても、やっぱりデュオである。……そんなバカを見ていた海斗に、『お前、匂いで人を覚えているのか……?』と何とも言えない顔をされてしまったが。

「……まあ、俺は俺なんだけどさ。でも、それを証明する手段って、無いんじゃないかな」

「そうかぁ?匂いも真似できるもんかぁ?」

「匂い……は、ほら、そもそも、俺の体をそのまま操ってたら、匂いの違いって無いと思うし……」

 デュオの解説を聞いて、バカは『そっかぁ、そういうのもあるのかぁ』と納得した。納得が遅いが、バカにしては頑張ったのだ!

「デュオさんに関しては、私がある程度、証明できると思います。……デュオさん。私達が直近で一緒に食事をした場所はどこですか?」

「……あー、うん。サイゼリヤ、だね……。七香さんが一度も行ったことが無いっていうから、面白くて、つい……」

「……少なくとも、記憶も参照できるような異能ではない限り、あなたはデュオさんということで間違いなさそうですね」

 一方で、七香がデュオの証明をしていた。バカは、『やっぱり頭がいい人ってすごいなあ』と思うばかりである。


「しかし……接触した、ということなら、四郎さんと樺島さんも同じことでは?」

 が、そこで七香にそんなことを言われてしまっては、バカとしては只々びっくりするしかない!

「お、俺もかぁ!?……えっ!?俺って今、俺じゃないのぉ!?」

 我思う!故に我在り!だがそう思っているバカがここに居ない可能性をバカは考え始めてしまって、まるで、宇宙に放り出されたような気分になってきてしまった!何故なら、バカだからだ!バカだからこうして勝手に迷子気分になってしまうのだ!バカだから!バカだから!

「……これを燕が演技しているとしたら大したものだと思うが、まあ、念には念を入れて確認した方がいいだろうな」

 そんなバカを見て海斗は深々とため息を吐いて……ずい、とバカの胸に指を突きつけた。

「樺島。お前が初めて僕とまともに喋った場所はどこだ?それから、最近、僕と遊びに行った場所も答えろ」

「最初に喋ったのは天秤の部屋!最近遊びに行ったのは陽の家!」

「俺の家!?えっ!?君達、そんなに俺と仲、いいの!?」

「うん!俺達、仲良しだぞ!ヒバナも一緒だったぞ!」

「ヒバナも!?彼、ヤクザだったよね!?」

 ……とばっちりでデュオが混乱してしまったが、海斗は『よし。樺島だ』と納得してくれたのでヨシ!


「……で、問題は俺だな?」

 そうして、四郎が『はーやれやれ』とため息を吐いた。

「生憎、俺自身が本物かどうかは、誰も証明できねえな。深い仲の奴はいねえし……」

「あっ!四郎のおっさん、俺の職場の名前、言えるか!?」

「あー……キューティーラブリーエンジェル建設……?いや、待て樺島。俺がそれを言えたからってな、お前のことを事前に調べておいた悪魔が乗り移ってねえとは言えねえだろうよ」

 バカは一生懸命、四郎が四郎である証明をしようとしたのだが……四郎に呆れた顔をされてしまった!駄目だった!

「そういうもんかぁ!?あっ!じゃあ俺のパンツ!俺のパンツ、四郎のおっさん、見てるよな!何色だった!?」

「樺島君。アンタのパンツ、ここに居る全員が見てるわよ。白のブリーフよ。覚えちゃってるわよ。どうしてくれんのよ」

「えっ!?あっ!そうだった!あああー!」

「というか、今時、白ブリーフ履いてる成人男子っているのねえ……」

 更に、体を張った証明もしようとしてみたのだが、やっぱり駄目であった。当然である!

 バカは、『か、海斗ぉ!俺のパンツって、変なのか!?』と泣きそうになりながら聞いてみたところ、海斗に『珍しくはあると思う』と言われてしまったので衝撃を受けた!キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部で支給される、由緒正しきパンツなのに!羽を出す時に失敗してもはじけ飛ばない、特殊素材でできている立派なパンツなのに!

 ……と、バカがしょげていたところ、『まあ、樺島君のパンツは普通じゃないけれど、それって当然じゃないかな。ほら、安全靴とかヘルメットも、普通の恰好とは言えないけれど、樺島君は日常的に身に着けているよね?』とフォローしてくれたデュオによって元気を出した。バカのパンツはよいパンツ。つよいぞ。つよいぞ。




「……何の話だったか」

「パンツ!」

「違う。お前のせいで脱線したその話の、その前だ」

 さて。そうして海斗が頭の痛そうな顔をしながら話を戻した。

「俺の証明の話だな。俺が燕じゃねえことを証明する手段がねえ、って話だ」

「ああ、そうだった……うん、すまない。樺島が入ると、どうにも……おい樺島ぁ!お前のせいだぞ!」

「ごめぇん!」

「……まあ、お前のおかげで、証明もできそうだからな。やっぱりお前は、プラスマイナスゼロ、というか……」

 海斗はぶつぶつ言いながらも、ため息を吐いて、バカの肩をぽふんと叩いた。

「話してくれただろう。『死者が出る部屋』だ」

「……え?」

「それを使えば、証明ができる。……『燕が本当に死んだのか』を」


 バカがきょとんとしていると、デュオがちょっと笑って頷いた。

「樺島君の話だと、『20』の部屋に行くと『死者が出る』んだったね」

「お、おう……何番だったかは忘れたけど、なんもない部屋がそうだったのは覚えてる!」

「僕が最初に入った部屋だから、20番だ」

 バカが忘れた番号も、海斗やデュオが居れば教えてもらえるのだ。バカは『ほんとに、俺、1人じゃ生きてけない……』としみじみ思った!

「行ってみようか。……誰が出てくることになるのかな、これは」

「燕じゃないのか?」

「いや、俺は燕だと思うけれど……だとしたら、『孔雀』が『燕』であることの答え合わせもできるね」

 ……ということで、バカ達は大広間へ戻る。

 燕、或いはむつの躯は……少し迷ったが、大広間に連れて行くことにした。じゃなきゃ、あんまりにも、悲しいので……。




 ということで。

「さて……これから俺達は『死者が蘇る部屋』であるらしい部屋に入る訳だけれど」

 バカ達はエレベーターに乗って、無事『20』のアルカナルームの前にやってきたのだが……。

「本当に燕が出てきちゃったら……相手が異能を使うより先に殺しておくべきだと俺は思う」

 そんなことをデュオが言うので、バカはしょんぼりするしかない!

「えええ……そんなぁ……」

「……残念ながら、相手の異能がどういうものかを安全に確認する方法って、無いからね。どういう効果範囲かも、どういう発動条件かも分からない以上、確認だけしたらすぐ戻ってくるべきだと思う」

「そうだな。俺もそう思う。……相手が悪魔だってんなら、余計にそうだ。俺としては、生き返らせるってのにも反対だけどな……だが、『今居る奴らの中に燕の魂が紛れ込んでるまま行動する可能性』と、『これから復活する燕と戦う危険』を天秤にかけりゃ、ま、前者の方が怖いな」

 デュオは勿論、四郎も賛成らしいので、バカとしてはもう、『出会い頭に燕を殺す』という意見には反対できない。

「殺してしまうとなると、情報源を失うことにはなるが……正直なところ、僕はもう、『今回』得られる情報は無いと思う。さっき、燕が口を割らなかったところを考えるに、これ以上は無駄だろう」

「俺も同意見だよ。だから、これから後の作業は全て、『確認』と『考察』、あとは『まとめ』のための時間ってことになるね。……いいかな、樺島君」

 バカはバカだが、デュオの言う事は分かるので、大きく頷く。

 ……すべては、バカに託された。『燕』が生き残るのも、『むつ』が生き残るのも……もう、この周では不可能だ。だから、バカが『やり直し』で上手にやるしかないのである。

「じゃ、行くぞ。……樺島。先頭は七香さんと四郎さんに任せる。現状、一番『コピー』されたくないのはお前の異能だからな。いいな?」

「わ、分かった!」

 そうして、バカは珍しく、自分が先頭に立たずして、アルカナルームの中へと入ることになったのである。




 ……すると。

「……ま、これで一安心、ってところかな」

 デュオはそんなことを言いながら、『安心』とは程遠い表情でため息を吐いた。

「君がここに出てきたってことは……さっき死んだのは君だ、っていうことだ。そういうことだよね?燕」


 デュオにとって……否、この場に居るバカ以外の全員にとって、彼は、『はじめまして』の相手である。

 メタルフレームの眼鏡の奥、険のある目が印象的なその少年は……『孔雀』だ。

 バカはようやく、1周目以来の彼と再会できたのである。

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― 新着の感想 ―
まー今時だとボクサーパンツとかだしねえ。キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部もなんでわざわざ白ブリーフ支給? どっかから余剰品大量買い付け、からの特殊加工? 燕済まない、君の境遇や…
メンバーの一人の家に集まって遊ぶダンスィたち仲良しかわいい~~!! 燕、もし閉塞感を打開する方法としてデスゲームに勝って願いで悪魔になることを選んだとして、その時に駒井燕はデスゲームで死んだことにする…
もうパンツの話しか残ってない私…。 そんな特殊技巧品のパンツだったのね…。
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