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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第五章:地獄の沙汰もバカ次第
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ゲームフェイズ2:『3』女帝

「……その、これは」

 デュオが声を掛けると、ベッドの上で女帝の尻を叩いていた七香は、『あら』と、何事も無かったかのように顔を上げた。

「ああ、やはり来ていただけましたね」

「あ、うん……まあ、うん」

 デュオは『色々と言いたいことはあるんだけれど、何から言っていいものやら』とばかりの表情でちょっと唸って……それから、尋ねた。

「その、これ、彼女のお尻を叩くことで何か、部屋のクリア条件を満たす、っていう状況……?」

「いえ。これは単に折檻していただけですが」

 ……デュオがますます何とも言えない顔になってしまった。

「あああー!私から!私から状況を説明しますね!はい!皆さん、ちゅうもーく!あそこの看板をご覧ください!以上です!」

 が、そこへタヌキがぴょこぴょこぽんぽこ、と跳ねてやってきて、部屋の一角を示したため、バカ達は全員、そっちを見て……そっちを見た瞬間に、海斗がバカの目をサッと覆ってしまったので、バカは残念ながら、この部屋の詳細を知る機会をまたしても失ってしまった!

「あの通り!この部屋、なんだかちょっとえっちなお部屋でしたので!でも、そんなことするわけにはいきませんのでぇ!」

「私達が戻らなかった場合、樺島さん達が救助に来てくださるだろうと踏んでいましたので、無理に脱出する必要は無いかと」

「そう!そういう訳で!じゃあ、こちらの『女帝』さんだけ押さえておけばいっかぁ!ってことになりまして!そしたら、七香さんが八面六臂の大活躍といいますか!何と言いますかぁ!」

「そ、そう……。いや、まあ、そうだね。うん。この通り、助けに来たのは正解だったか。そっちもいい判断だったよ。うん……」

 ……タヌキが『あわわあわわわわわああああ』と大慌てで説明をしてくれた横で、七香はやはり、憮然とした表情である。そして四郎はなんとも気まずそうにそっぽを向きっぱなしであるし……女帝は、『こんな無礼を働かれるの、初めて……』と、やっぱり泣いている!

 ……バカは、なんだかかわいそうになってきてしまって、女帝にそっと、お布団を掛けてあげるのだった!




 そうして、女帝が『さっさと出ていけ!』とカードをくれたので、バカがドアをタックルで破り、そして、それぞれのチームがそれぞれのエレベーターで大広間へ戻った。なべて世は事も無し。

 大広間に戻ったバカ達、そしてタヌキ達は、むつとヤエと五右衛門に『無事でよかった!』と出迎えられ……そして、なんとなく、気まずいような複雑な気持ちになってしまうのであった!

 まさか、七香が女帝のお尻を叩いていただけで、危険なことがあったわけではなかった、なんて言えない!


 何はともあれ、全員無事に大広間に揃ったのである。バカはほっとしつつ、全員の顔を見回した。

「えーと、俺達、天井裏に行ってきたんだけれど……」

 そんな中、デュオが説明するのを皆で聞くことになる。デュオは説明が上手なので大丈夫だろうから……バカは、特に、むつに注目することにした。

「天井裏って、要は、俺達が目覚めたあのフロアなんだ。大広間に来る前に居た。……案の定、1つ、個室が余分にあった。『ダァト』の部屋だと思う。そこにはエレベーターの操作盤があって、ボタンが2つあって……片方のボタンを押した先では、腕輪の宝石を砕くためのものらしい機械を見つけたよ」

 孔雀の死体があった、あの空間のことは内緒にするらしい。デュオはそこに触れないまま、説明していく。

 ……一方、むつは少し緊張した様子でデュオの話を聞いていた。

「多分、本来はそこで腕輪を破壊することで初めて、『0』の部屋に行けるようになるんだと思う。俺達の場合、樺島君が居るからそれが全く必要ないけれどね……」

「宝石を砕いてしまうとなると、その腕輪は二度と、数字ありの状態としては使えなくなるんだと思う。となると、樺島に腕輪自体を破壊させた方が便利だ。今後も、天井裏の機械を使う必要はないと思う」

 海斗も説明に加わって、ひたすら、『腕輪の宝石を砕く機械』について説明していく。……まあ、つまり、『その部屋の通路の脇に隠しドアがあって、そこに孔雀の死体がありました!』という話を内緒にするためなのだろうが……。

「へー……それにしても、なんで天井裏になんて行くつもりになったのよぉ」

「元々、この個室の並びも、個室のドアに刻まれた模様も、『セフィロト』を示しているからね。となると、隠されたセフィラである『ダァト』がどこかにあるんだろう、とは思っていたんだ」

 五右衛門の質問にもさらっと答えて、それから、デュオはちょっと考えた。

「実は、蝋燭が尽きちゃって、途中で探索は終えてきたんだ。エレベーターには2つボタンがあったけれど、もう片方は確認できていない。……どのみち、もう一度、行くことになると思う」

「蝋燭、ですかぁ……。あったかなあ……あ、ごめんなさい、蝋燭は持ってなさそうです!蚊取り線香はありました!」

「……タヌキ、色々持ってるなあ、おい」

 ……タヌキが謎収納から色々と出してくれるのだが、生憎、光源になりそうなものは無かった。蚊取り線香は光源としては、ちょっと厳しい!

「光源、ですか……。今までに入ったアルカナルームの中に、光源になるものがあればそれを持ってきましょうか」

 一方、七香はタヌキが一旦出しちゃった諸々をタヌキの謎収納にしまうのを手伝ってやりながら、記憶をたどっているらしい。『どこかの部屋に光源は無かったかしら』ということだろう。

 そんな七香の言葉に、全員が何やら考え始めた。やっぱり、全員で『光源……』とやっているところらしい。

「……案外、思い当たらねえな」

「そーねぇ……。ヒマワリ畑はあったし、あの部屋は明るかったけど……部屋自体が明るいだけで、何かライトがあるわけじゃなかったのよねぇー……」

 四郎と五右衛門が『案外難しい』と言っている通り、バカも何も思いつかない。

 何せこの空間……なんか、勝手に明るいのだ!

 特に、『塔』や『太陽』や『恋人』の部屋は、部屋の中が屋外みたいなものである。勝手に明るい!光源は多分、太陽!そんなかんじなので当然、蝋燭やランプの類なんて無いのである!


「……あっ」

 だが、バカは1つだけ、思い出した。

 ……バカの記憶にあるそこは薄暗くて、足元がよく見えなくて、落とし穴だらけで……そして、そんな中だからよく目立つカンテラを目指して歩く部屋だった。

 その部屋で、海斗とヤエが仲良くなったのだ。あの部屋は、何番の部屋だったか……。




 ……と、皆が悩んでいる脇の方で。

「海斗。ちょっといいかな」

 デュオが、海斗にこそこそ、と囁く。

「『リプレイ』って、どれくらい条件が絞れていれば発動できる?」

 海斗は、ちょっと考えてからまた声を潜めて、ひそ、とデュオに伝えた。

「……『時刻と場所』の宣言さえできれば発動できる。今回の場合は、『目の前の人物が死ぬ30秒前から』を宣言しようと思っていたんだが……」

 一旦、そこで言葉を途切れさせて、海斗はまたちょっと、考えた。

「……そもそも、彼は死んでいたのか?」

「へ?」

「『死』の定義によっては、僕の『リプレイ』が、『条件宣言の不備』で不発に終わる可能性もあると思っている」

 海斗がちょっと眉間に皺を寄せると、デュオも『確かに、そうだね』と、眉間に皺を寄せた。

 ……そして、バカも珍しく、ちょっと思い当たるものがある。

「あの、俺、燕は『死んだ』ってことになってないんじゃないかと思うんだけど……」

「は?」

 バカは『これ、なんか見当違いのこと言ってるかなあ……』と、ちょっぴり心配になりながらも、ちゃんと伝えることにする。

「……あのな?『なんもない部屋』があるんだけど、死んじゃった人が出てくる部屋らしくてぇ……でも、いつだったか、入った時、なんも無かったんだよぉ……」

「ちょっと待て。意味を考えるから」

 バカが一生懸命伝えようとしたことは、ひとまず海斗とデュオの『考え中』になった。ということは多分、伝わったしい、伝える意味があることだったのだ!

 ……と、バカがそわそわしていると。

「……つまり、『孔雀が出てこなかった今までの回の中で、死者が出てくる部屋に何も出てこなかった。つまり、その時、孔雀は出てこなかったにもかかわらず、死んでいない判定になっていた』ということか」

「多分、そう!」

 海斗は無事、バカ自身もよく分かっていないことを読み取ってくれたのである!ありがとう!


「そう、か……。うーん、いや、実は、俺も『リプレイ』は結構リスキーだな、と思ってたんだ。だからさっき、すぐ『リプレイ』を使うようには言わなかったんだけれど……それは単に、『対策されてるかも』っていうことだったんだよね」

「た、対策……?」

 が、更に、デュオからそんな話が出てきてしまったので、バカは頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべることになってしまった!

「まあ……すごく単純に、『何故、孔雀があそこに倒れていたのか』っていうことを考えると、犯人はほぼ確実に『悪魔だ』ってことになるんだよね。それも、『ゲーム開始前から、このゲームの構造を知っている悪魔』ってことになる。そうでもなきゃ、あんな小部屋に初手で行かない」

「そうだろうな。僕としても、『最初からこのゲームの全ての情報を知っている者が居る』ということは感じていた」

「だよね。となると……『参加者の異能』も把握しているかもしれない。特に、海斗については……ほら、『宇佐美光』と『駒井つぐみ』と一緒のデスゲームに参加したことがあるんだから、一番情報が出ていると思う」

「そういう訳だ。だから、僕の『リプレイ』の対策を講じることは十分に可能なんじゃないか?」

 デュオと海斗がぽんぽんと話していくのを聞いて、バカはいよいよ、混乱するしかない。バカの頭が追い付けない速度で、2人の話は進んでいく!

「例えば……さっきの話になるけれど、『リプレイ』には、『リプレイしたい場所とタイミングの宣言』が必要になる。それは『何時何分』っていう指定の仕方じゃなくて、『この人が死んだ瞬間』とかでもいいみたいだけれど……だったら、『そもそも死んでいない』なら、『死んだ瞬間』は指定できないはずなんだよね」

「更に、『リプレイ』できるのは1分間だけだ。となると、僕がどういう条件を指定するかを考えて行動しておけば、まあ、対策できてしまう可能性が高い。……少なくとも、僕が1回分の『リプレイ』を無駄遣いする羽目になることは、十分に考えられる」

「そ、そうなのかぁ……」

 バカには分からない話だが、ちょっと深刻な話であるらしい。2人の顔を見ていると、それが分かる。

「だったら、まあ、それを最初から割り切って『リプレイ』を使うしかないだろうね。『こういう対策をされたっていうことはこういう状況だった』っていう推測はできるわけだし……」

「……そうだな。まあ、その方針でいくしかないか……。いや、他にも、『ダァトの個室エレベーターを動かした瞬間の操作盤の前』だとか、『ダァトの部屋のドアが最初に開いた時』で見ることはできるんだが……」

「まあ……俺は素直に、『孔雀が倒れた瞬間の30秒前』あたりから見るのがいいと思う。まず一番に知りたいのはそこだから」

「……そうだな。よし。じゃあ、光源が見つかり次第、もう一度行ってみよう」

 ……ということで、海斗とデュオは何か決めたらしい。バカも、『なんかライトが見つかったらもっかい天井裏!』ということは分かったので、『やっぱりまずはライト……』と、周囲をきょろきょろ見回した。当然、そこらへんには何も無いが!




「あの……そろそろ次のゲームの部屋、決めたいんだけれど。いいかな」

 そうこうしていると、むつが提案してきた。なのでバカ達も皆に合流して、チーム編成を決めることになる。

 ……のだが。

「えーと、じゃあ、私とヤエちゃんと五右衛門さんのチームで、『9』に入るよ」

 ……むつが最初にそう言い出したので、バカは、『おや』と思った。

 バカの、あんまりちゃんとしていない記憶力によれば……『海斗とヤエと一緒に入った部屋』に、火が付いたランタンがあったはずである。

 バカが自分の腕輪を破壊していたことが多かったことを考えると……多分、『1+8』、つまり『9』の部屋が、その部屋だったはず。

 ……その部屋を、ピンポイントにむつが指定してきたことは、とても不思議だ。

 不思議、なので……。

「あの、むつぅ」

 バカは、ちょこん、と手を挙げた。

「俺もそこ、ついていきたい……」

「……えっ」

 ……ここで、一緒に行かなかったら駄目だ。バカは、なんとなくそう思ったのである。



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― 新着の感想 ―
20:20待機勢、パニックです いつも楽しませていただいてますが、体調は大丈夫でしょうか…? とても楽しみですがそれよりもお身体を大事にしてください!
五右衛門とヤエちゃんを同行者に選んだ理由、既にコミュニティが完成しちゃってるバカ君達で3×2の組分けができるかつ、一番警戒しなくていいコンビでもあるからかなあ……と言うのは深読みだとしても、9の部屋を…
バカくんがかしこい…! …なんだかとっても矛盾ですが。
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