ゲームフェイズ2:『2』女教皇1
「樺島。おい、樺島!」
「へあっ」
バカは、強めに背中を叩かれてようやく我に返った。ふと見れば、海斗が心配そうにバカを見つめていた。
「どうしたんだ。急にぼんやりして」
「え、あ、ごめん……」
バカはしょんぼりしながら、海斗と、そして、バカの目の前で首を傾げていたむつに謝る。
……否、彼女は、『むつ』ではない、のかもしれないが……。
「えーと……じゃあ、はい、樺島さん。チューリップ。どうぞ!」
だが、ちょっと笑って氷細工のチューリップを渡してくれたむつを見ていると、よく分からなくなってきてしまう。
「ありがと……」
「よかったな、樺島」
結局、ただ氷細工のチューリップを受け取って、バカはまた考えることになる。
……目の前の彼女が『むつ』ではないのだとしたら……目の前のこの人は、一体、誰なのだろうか、と。
「……なあ、海斗ぉ」
「どうした、樺島」
バカは、『言おうかなあ、でも、俺の勘違いかなあ……』とちょっと迷いながら氷のチューリップを見つめていたが……『海斗なら、俺が何言っても馬鹿にしないもんな』と思い直して、話すことにした。
「……むつが嘘を吐いてるの、1個、あったんだけど……」
「は!?ど、どこでだ!?」
「チューリップ。あのな、むつは、チューリップ、好きなんだけど……さっき、むつ、チューリップじゃない花、真っ先に作ってたし……なんか、変だなあ、って……」
「お、おい。順を追って説明しろ。それから……あー、次のゲームの部屋に行ったところで話した方がいいかもしれないな、それは……」
海斗はちょっと迷ったように、きょろ、と周囲を見回して……だがその時丁度、リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴った。
「丁度、ゲームフェイズが終わったところだ。次のゲームフェイズまで、ちょっと待っていろ」
「あ、うん。分かった」
「……次のチームは、僕とお前と、デュオがいいと思う。いいか?」
「うん!」
バカは大きく頷いた。海斗が居てくれたら心強いし、デュオも居てくれるならもっと心強い!頭脳派が2人も居るならば、バカは何だってできる気がするのだ!
それから、海斗はそっと、デュオに何かを話しに行った。デュオと海斗は二言三言、何か話して、そして頷き合って、それで会話終了となったらしい。頭がいい人達の話は、終わるのが早いのだ!
「おおー……カード、結構集まりましたねえ」
そして、一方の皆は結果発表のモニターを見に行っているので、デュオと海斗のお喋りには気づかなかったらしい。
バカもモニターを眺めに行って……そこで、『海斗0枚、デュオ3枚、タヌキ2枚、四郎3枚、五右衛門0枚、むつ1枚、七香0枚、ヤエ2枚、孔雀0枚、バカ0枚』という結果を確認した。
今回も、『やっぱり9番の腕輪の人は存在したのでは?』『本当に9番の人は居ないのだろうか……』といった議論がそこかしこで起こっていたが、バカとしても、これは気になるところである。
孔雀は、どこに行ってしまったのだろうか……。
……そして、むつも本当に本物じゃないとしたら、本物のむつは、どこに行ってしまったのだろうか……。
さて。
そうして結果発表を確認したところで……。
「次のチームの希望はある?俺は樺島君と引き続き組みたいけれど」
「ああ、それなら、そろそろ僕も樺島と合流したい。情報共有もしておきたいしな。……その、むつさん、いいだろうか」
デュオと海斗が真っ先にそう言ってしまうと、周りの皆は『どうぞどうぞ』と特に止めもしない。むつに至っては、『あ、うん。じゃあ私は海斗さんと交代でヤエちゃんのチームに入るね!』とニコニコ顔である。……デュオやバカのことが、あまり好きじゃなかったのかもしれない!
「でしたら、私達のチームは変わらず、私と七香さんと四郎さん、ということでよろしいですね!よろしくお願いします!」
「おう。よろしくな、タヌキも七香も」
「ええ」
……そうして、タヌキチームも『また私達、一緒のチームですよ!』とにこにこぽこぽこやっているタヌキにつられてか、四郎も七香も、割とご機嫌である。実に平和だ!
「じゃあ、入る部屋だけれど……そろそろ、1桁の部屋に入ってみてもいいと思うんだよね。どうだろう」
「いいんじゃないか。樺島が腕輪を破壊すれば、本来1人でしか入れない部屋にも、大人数で入れる。より安全だろう」
更に続いたデュオの提案に、全員、『いいと思う!』と頷いてくれたため、次は1桁台の部屋を狙うことになる。
……そして。
「じゃあ、ここ3人は『2』のアルカナルームに入ろうか。俺の腕輪があれば入れるし」
「じゃ、アタシ達はむつちゃんの『6』にしとく?折角むつちゃん来てくれたんだし……」
順調に、各チームが入る部屋が決まっていき……。
「だったら俺達は『3』だな。七香は腕輪をもうぶっ壊してるし、俺の『4』はもう入っちまったところだ」
……四郎がそう言い出したため、バカは、『んっ!?』と、気づいた。
『3』だ。『3』である。
……入っちゃうと、まずい部屋である!
「あっ……」
バカは、止めようかどうしようか、迷った。
だが。
「わ、分かった!じゃあ、えーと、四郎のおっさんの腕輪、ぶっ壊せばいい、んだよな……?」
「おう。頼むわ」
バカは、意を決して四郎の腕輪を『バキイ!』とやった。
……これで、彼ら3人は例の、『ちょっとえっちな部屋』に入ることになってしまう訳だが……。
「四郎のおっさん……頑張れよ!パワーはな、パワーだぞ!」
「は?おう、まあ、パワーはパワーだよなあ……?」
「うん!困った時にはタックルだぞ!」
「お、おお……?」
……バカは、『この3人なら、きっと大丈夫だ』と信じて、彼らを送り出すことにした。
だって、タヌキはともかく……四郎は強いし、七香も強いのだ。
タックルで物事を解決できるのは、何もバカだけではないだろう。
彼らだって、筋肉解法を用いてはいけないということは、無いのである。
ということで。
「じゃ、行こうか。えーと、俺の個室を使うのがいいかな」
バカ達は早速、『2』の部屋へ向かう。……本来、デュオしか入れない個室であるはずなので、バカはなんだかちょっぴりどきどきするような気分だ!
「『2』は……『女教皇』か。何が出てくることやら……」
「タックルか!?なあ、タックルか!?」
「うーん、初手でタックルするのはやめておこうか。人が居るとも限らないしね……。あははは……」
エレベーターの中、バカは『タックル!』とやる気いっぱいである。今頃、七香と四郎、時々タヌキが『女帝』をしばいているところだろうと思うと、自分もタックルをかましたい気分になってきてしまうバカなのであった。
「まあ……できそうだったら、樺島に頼むか。話し合いの時間は長くとりたい。どうやら、そういう局面に突入しているようだしな」
「タックル!?」
「ああそうだ、お前の大好きなタックルだぞ。よかったな」
「タックル!」
バカは海斗に頼られたのがちょっと嬉しかったため、『タックル!』とより一層の気合いを入れて、『ももももももも』と震えはじめた。海斗に『止まれ』と言われたのですぐ収まったが!
……そうして、エレベーターが到着した先、『2』の部屋のドアは……。
「タックルーッ!」
「ドアはタックルで開けなくていいんだぞ、樺島」
……やる気いっぱいのバカによって、タックルで『バキイ!』と破られた!
「ひい!」
そして、ドアが破壊されたその先で怯える1人の女性が居た。……デュオの話から考えるに、彼女が『女教皇』なのだろうが……。
「あ、あなた達は一体……!?」
「俺、樺島剛!こっちは海斗!そっちはデュオ!よろしくな!」
……『女教皇』は、目の前で仁王立ちしつつにっこにこのバカを見て、只々、怯えを露わに座り込んでいる。
多分、バカとは致命的に相性が悪いタイプの人である!人ではなく、悪魔なのだろうが!
……更に。
「じゃあ、タックルか!?これ、タックルで解決していいやつか!?」
「あー……ちょっと待ってね、樺島君。えーと……」
バカに怯える女教皇の前に、デュオがそっと、進み出た。
そして。
「じゃ、カード貰っていい?他に貰えるものがあったら、全部欲しいな。……そうしたら俺達、樺島君があなたにタックルするのを止められると思うんだけど、どう?」
……デュオがそう脅し始めたため、女教皇は『ひぃいいいん!』と泣きながら、カードやらその他諸々やら、色々と出してはプレゼントしてくれたのだった!
かわいそう!




