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7話 その12

「――ど、どうして転移魔法を?」

「屋上の入口の鍵は閉まっていました。あの男が閉めたんだと思います! おそらく、『猶予をやろう』とか言って、数秒したら殺しにくる算段でしたよ? あれは必死に逃げ惑う対象を見て楽しむクズです! そして楽しんだ後は快楽のために殺戮を繰り返すサイコパスだと思います!」


 また、大層な物言いですね……。そんな恐ろしい性格なのかは分かりませんけど、たしかに鍵が閉まっていたのだとしたら、元々私たちのことを殺害する予定だったのかもしれませんね。ともあれです……。


「アヴィさん、私の考えに沿って一緒に逃げてくれてありがとうございます。あそこでアヴィさんがどうしても戦うと言ったら私も戦わなきゃいけなかったですし、良かったです」

「もちろん主様がそう考えていることは分かっていましたよ! アイアスとかいうあの男は間違いなく強いと、会って直ぐに分かりました! だから我だけならまだしも、主様を巻き込むことだけは絶対にしないつもりでしたからね!」


 ……ふむ。アヴィさんはそこまで分かった上であんな態度だったんですか。……やめて欲しいですね。とまあ、それよりもお話しなきゃいけないことがあります。


「一応部屋まで逃げはしましたけど、安全だと思いますか?」

「大丈夫です! 安全です!」

「……えと、どうしてそう思うんですか?」

「あれが本気で殺しに来ていたのなら、もう既に主様を守った我が死んでいると思います! なので今大丈夫ということは、当分大丈夫です!」

「……なんですか、それ。……アヴィさんは本気で言ってるんですか?」

「もちろんです!」


 正直納得できるような理由ではありませんが、そうは言っても仕方がないのでその理由で諦めることにします。それと他にも聞きたいことがあるんです。


「……あの、アヴィさんはあの方の目的に何か心当たりとかはありますか?」

「初対面ですよ! まったくありません!」

「まあ、そうですよね」


 いくらアヴィさんでも、そんなことは知らないようです。……それとなんとなくですが、アヴィさんが横にいないで私一人だったら、アイアスさんに殺されていた気がします。もしさっきみたいなことや、グリフィスさんの時みたいなことが私以外の方の身にも起こっているなら、数日後には誰かが殺されていてもおかしくありません。危険すぎですね、この学院は……。結局のところ、管理が行き届いているようで、全然じゃないですか。とにかく、当面の間は一人で行動するのは控えようと思います。

 私がそう思っていると、同じことをアヴィさんに言われます。


「とりあえず、主様は一人で行動するのは控えてくださいね! 主様は隙だらけなので、相手がその気になったら簡単に殺されてしまいますから!」


 私は誰にでもそんな簡単に殺せるほど弱くはありませんよ? しっかり警戒していれば、言うほど隙だらけにはなりません。

 そう思いつつも、一応同意はします。


「アヴィさんの言うように、当面の間は一人で行動するのは控えます。ただ、私は隙だらけではありませんからね。いつもしっかり警戒してます」

「主様は……まったく、いつも反抗してきますね! 最高に可愛いです!!」


 アヴィさんは嬉しそうです。まあ嬉しいならそれでいいということで、私は玄関で靴を脱いで寝室に直行しました。




 私は寝室に入って直ぐに、ベッドに飛び込み布団に包まります。

 ……最高です。外に出たのでお風呂のぽかぽかした温かさは抜けてしまいましたが、それがあってもなくても布団は気持ちいいのです。

 因みにレンさんはもう寝ているようで、電気も消えています。しかしそんなことはお構い無しにアヴィさんは元気な声を出します。


「主様! 寝ましょうか!」

「そうですね。レンさんはもう寝ているので、あんまり大きな声は出さないでくださいね」

「分かりました、主様!」


 アヴィさんは少し声を小さくしてそう答えます。そしてそのまま布団に入ってきました。


「主様と一緒に寝ていいなんて最高です! それも主様公認で!」


 アヴィさんは相変わらず元気ですね。これから寝るというのに……。

 私はアヴィさんの発言には触れずに話を変えました。


「せっかくの夜のお散歩だったのに……。アイアスさんの一件で無駄に疲れちゃいましたね」

「我は全然平気ですよ!」

「……そうですか。アヴィさんは疲れることあるんですか?」


 私はそう言った直後に一昨日のことを思い出しました。

 そう言えば、クラウディア王女の護衛兼付き添いのお仕事をした後に帰ってきて、お仕事が疲れたから褒めてください的なことを言っていましたね……。

 そしてアヴィさんも全く同じことを思ったらしいです。


「我だって疲れることはありますよ! クラウディアの護衛はつまらないし疲れます! 主様の護衛なら何万年でも余裕ですけどね!」

「……そうですか」


 私は最後の余計なことには触れないでおきます。それからアヴィさんは私がごたごたしていて忘れてしまっていたことを言ってくれました。


「主様! 二つの魔法の魔法式はまた明日見せますね!」

「……それでお願いします。……さっきからずっと触ってきてますけど、アヴィさんの体はひんやりしていますね」

「主様は逆に温かいです! ぬくぬくですね!」


 ……体温の差ですね。いつもはそこまで気になりませんが、同じ布団だと密着する箇所が多くて少し違和感があります。


「……もうかなり眠いので寝ますね。おやすみなさい」


 私がそう言うと、アヴィさんは「おやすみなさい!」と元気に返してきます。

 ……眠くないのでしょうか。まあ、それはどうでもいいです。今はただ、布団の気持ちよさを堪能しましょう。

 私はそれから一分と経たずに眠りにつきました。

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