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序章 その12

 窓から強い日差しが差し込んできて、私は目を覚ましました。


「ふぁ~~」


 もう朝ですか……。まだ眠いです。と言うか日差しが強いです。目を閉じてても眩しいのやめてください。

 私はそんなことを思いながら、体を起こそうとします。

 ……あれ? またリタさんは私に抱き付いて寝ているんですね。相変わらず可愛いです。ホントにこれだけ偉くて可愛い子が私の妹だなんて今でも時々信じられないくらいです。リタさんの姉として生まれられてホントに良かったです。

 とりあえず、私は頑張って起きることを決意して、リタさんに声を掛けてみました。


「リタさん。もう朝ですよ」

「もう少し寝る~」


 そう言い、顔をうずめてしまいました。それを見た私は、さっきの決意も一瞬にして忘れ去ります。


「なら私ももう少し寝ます」


 そんなことを呟くと、厄介な太陽の日差しを遮るために結界魔法を使って結界を作り出しました。

 ……よし、これでよく眠れます。

 準備を整えた私は目を閉じて、直ぐに眠りにつき始めます。……ですが、寝るギリギリで急に体を揺らされました。


「お姉ちゃん! 二度寝はダメ!」

「……むう」


 さっきまで寝ていたのに、なんでそんなに元気なんですか?


「リタさんがもう少し寝るって言ったんです。だから私ももう少し寝るんです」

「だからダメだってー。お姉ちゃん一度寝るとそうやって理由付けて全然起きないんだもん」

「…………」

「お姉ちゃん?」

「…………」


 再び私は眠りかけましたが、今度はかなり強く体を揺らしてきます。


「……やめてください、凄い揺れます」

「うん、揺らしてたんだもん。……じゃなくてね?」


 そう言うと、リタさんは揺らすのをやめて静かになってくれます。


「――ぅぐ、冷たっ!?」


 ですが、今度はいきなり首に氷をくっ付けてきました。


「何するんですか! ……凄い冷たいです」

「お姉ちゃん、いいから起きて?」


 まったく、なんてことをしてくれたんですか。……ひどいです。

 私はリタさんを見てよく注意しておきます。


「リタさん、やって良いことと悪いことがあるんです。これはやってはいけないことですよ?」

「う……ごめんなさい。……でもね? お姉ちゃん昔から起こしても全然起きてくれないんだもん」

「そんなことありませんよ。しっかり起きることの方が多いです」

「――え、お姉ちゃん? よくそんなこと言えたね……」


 急に空気が変わりました。

 ……あれ? 何だか怒っているような? ですが、私はしっかり自分で起きてます。リタさんに起こされることの方が断然少ないです。


「お姉ちゃんが私の声だけで起きたことなんて一度もないよね? お姉ちゃんの体を揺らして起こそうとしたら、風魔法で吹き飛ばされたこともあるし、麻痺魔法とか睡眠魔法で動けなくさせられたり、眠らせられたりしたこともあるし……。他にも沢山あるよ?」

「……またそれですか。前にも言いましたが、身に覚えが無いんですけど?」

「お姉ちゃんって疲れて寝ちゃった時は大体記憶無いんだよね」

「やめてください。ちゃんと記憶はありますよ。私はしっかりと覚えてますから」


 まったく失礼ですよ? 可愛い妹なので全然許せますが、そうじゃなかったら怒っているところです。


「……なら、お姉ちゃんは昨日の寝る前の記憶はある?」

「もちろんあります」

「なら答えて?」


 昨日の寝る前はたしか、お風呂に入ってて……? あれ? 案外思い出せません。

 ――いえ、そうでした。思い出しました。たしかお風呂で一度寝てしまったんですね。ですが、それからのことはよく覚えていません。……なぜでしょう。

 困ったことに、リタさんの言う通り記憶が飛んでいるようです。こうなったら強引にでも話題を変えることにします。


「今日はどこ行きます?」

「……?」


 リタさんは突然のことに理解が追いついていないようです。


「ですから、今日はどこに行くんですか?」

「え? なんでいきなり?」


 ちょっと無理がありますね、これ……。でも仕方ないです。無理やり押し通すしかありません。


「昨日行きたいところがあるって言ってましたよね?」

「うん、言ったけど。……え? そうじゃなくて、昨日の寝――」

「なら、着替えて出かける準備をしましょう。楽しみですね」

「――お姉ちゃん、そんな適当な切り抜け方じゃ無理だよ?」


 私は必死に考えた末に諦めました。リタさんが相手なのでこれ以上はやめておきます。


「……そうですね、リタさんの言う通りでした。ごめんなさい」

「ふふっ、もういいよ、お姉ちゃん」


 素直に認めると、リタさんは優しく微笑んでくれました。……最初からこうしていれば良かったです。




 それから適当に準備をし終えてからのことです。


「朝は軽めに食べて出発しよっか。ここのホテルの朝食はとっても美味しいって評判なんだよ?」


 毎回どこで仕入れた情報なんでしょうか? まあそれはいいです。


「なら楽しみですね。私はパンでも食べようかな……」

「パンもそうだけどね……。色々あると思うから見てから決めるといいよ」

「じゃあそうしますね」


 朝食は食べ放題方式で、自分で好きに選んでいいというものでした。ざっと見ただけでも数百種類の食べ物が用意されていましたね。あの量を用意するためにどれだけの人が働いているのか。……流石帝都です。

 私は野菜スープにパンを食べましたが、リタさんは何だかんだと色々と食べてました。野菜スープもとても満足できる美味しさでしたが、なんと言ってもパンです。あの程よい甘みとふわっふわな柔らかさは最高でした。リタさんも美味しかったらしく満足してました。良かったです。







 それからはまったりと行きたいところに寄りながら帝都を散策しました。

 あっという間に一日が終わって、また次の日もあっという間に終わって――。

 時間の流れの速さを恐ろしい程に実感しました。

 ……気付けば最終日です。

 この日は最後に私の行きたいところに行くという感じでした。とは言え、ほぼ二週間も帝都で過ごしたわけですから、行きたいところは特にありません。

 なので、結局リタさんと一緒に過ごした街を、景色を見渡せる展望台に行きました。そこから街を眺めていて思いました。

 ……この二週間で、平和で優しい思い出が沢山、本当に沢山できました。――とっても、とっても幸せな日々でした。これは私たち二人だけの一生の宝物です。


「……お姉ちゃん。また二人で一緒に来ようね」

「……ええ。いつかきっと」


 私の言葉に対して、リタさんはどこかはかなく寂しい目で私を見てきて言います。


「……きっとね」


 それからお互い無言で見つめ合っていましたが、私が先に口を開きます。


「……そろそろ列車の時間もありますし、向かいましょうか」

「……そうだね。お姉ちゃん……」


 リタさんのその返事にはどこか切なさを感じます。

 ……リタさん、私も本当はもっともっと一緒に過ごしていたいです。……ですが、そんな甘えたことは言ってられません。今は今しかできない、やるべきことをやっていくしかないんです。




 そうして展望台を、帝都を後にした私たちは再び魔法急行列車に乗って、師匠の元に向かうのでした。

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