100話 その3
それから優しい時間を楽しんだあと、またしっかりと遺跡群の踏破を続けていきました。そしてあっという間に日付も変わり、本来なら日が昇ってくる時刻になりました。ただ、ここではずっと同じように光が大地を照らしています。
『――ロッドさん、伏せてください』
そう伝えた瞬間、複数人のロッドさんが同時に身をかがめ、夜空さんから放たれた特異点の力が守り人の身体を消し去りました。
「……倒せましたね。……ロッドさん、今の戦いで何人のロッドさんが殺されてしまいましたか?」
そう聞いてみると、ロッドさんは自分の分身を消しながら答えます。
「十二の私が殺されました。ですが、なにも問題はございません」
「そうでしょうか……。同時に四人のロッドさんが討たれるところを見ました」
攻撃を引き受けることをやめて普通に戦ってくれていますし、一人でも勇者の中で十分強いロッドさんが、複数人出てきた上で十二人も殺害されているのです。……もしかしたら、私のことを守るために当たらなくてもいい攻撃に当たっている可能性もありますけど、それでも私とは関係のないところで半数以上のロッドさんが殺害されていたのはたしかです。……守り人の強さが、ホントに脅威を感じさせるほどになってきた気がします。
「左様でございますか」
そう言い、ロッドさんは澄ました表情をしています。私はアヴィさんのことも見てみるのですけど、ニコニコしているので首を横に振ってみました。
「外に出ましょう。この感じなら、きっと一週間は掛かってしまいます」
「もっと掛かりそうですね!」
「そうですか?」
「はい! 今のペースなら三週間は掛かりますね! ロッドは完全に死んでます!」
「……それはダメなので、ロッドさんには帰ってもらうことになるかもしれません」
「あ、起動中のこの地に一度入ったら出られませんよ! なのでロッドは建物の前で待機になりそうですが、それはそれで死にますね!」
「……まだなにかあるんですか?」
「一週間もすれば残っている守り人の分だけ外にも色々と湧き出します! ロッドが勝てる強さではないので、逃げ場はなしです!」
「そうですか。なら守ってあげてください」
「えー! 我はロッドのことは守りません! こいつは終わってますからね!」
そう言って抱き付いてくるアヴィさんは、「我は主様一筋なんです!」と困ったことを言っています。ただ、今すぐロッドさんが死んでしまうわけではないので、私もとりあえず気にしないことにしました。まだあと三日ありますし、なにか対処できる方法が見つかるかもしれません。
そんなことを考えながら建物を出た私は、そのまま次の遺跡に向かってみます。
そしてアヴィさんに巻き付かれながらしばらくぼーっとしていると、案外すぐに次の遺跡が見えてきました。ただ、その瞬間にどこか遠くで……私たちの進んできた方から、強烈な力を感じます。
――? ……今、なにかが――。
そう思考した瞬間、私たちの前に二人の男性が現れました。そのお二人はその圧倒的な気配からも、理を通さずとも見ただけで勇者だと分かります。
……んと、……このお二人は……?
嫌な圧を感じるわけではありませんけど、それでも気を抜くわけにはいかない状況の中で、男性は関係なく口を開きました。
「やあ、ユノ。僕はアビス。よろしくね~」
「オレはラグナだ」
突然そう言われてしまったので、私は肩を落とすアヴィさんのことを見てから、お二人……アビスさんとラグナさんに質問します。
「えと、お二人はなにしにここに来たんですか?」
そう聞いてみると、不敵な笑みを浮かべるラグナさんとは対照的に、アビスさんは軽快に答えてくれました。
「僕たちはレンに頼まれて、君の手助けをしに来たんだ~。レンの方ももう少し時間が掛かるみたいだからね」
「……あの、お二人はレンさんのお知り合いの方なんですか?」
「そうだね、レンのことは昔から知ってるよ~。そうだ、君とは前世でも会ったことがなかったから、しっかり自己紹介をしておこう!」
――? 前世ですか……?
そんな言葉に引っ掛かりを覚えつつも、私はアビスさんのお話を聞くことにします。
「さて、まずは簡単なところからだね~。僕は今から九千二百年前に生まれた、『叡智の勇者』だよ。だから、転生する前のレンとも知り合いなんだ~。それに、君がオリヴィエであることも、人魔大戦の終結に大きく貢献したこともよく知っているよ~」
「……そうなんですね。あれは全てレンさんのおかげなんです」
「さあそれはどうだろう。……ラグナ? 君もしっかり話しておいたら?」
「なに、あえて話すほどのことでもない」
「なら僕が代わりに紹介するよ~。そうしないとユノも困るよね?」
「はい、困ってしまいます」
そう言ってみると、アビスさんはラグナさんの腕を肘で突きながらお話してくれます。
「ラグナはね、こう見えても結構すごいんだよ? 二万二千九百年前の『滅昏の勇者』で、『世界の管理者』でもあるんだ」
「……? 『世界の管理者』とはなんですか?」
たしか、フォティニアさんも『世界の管理者』という言葉を使っていました。
「そのままの意味だよ。名前の通り、この世界を守る調停者のことだね~。僕が聞いた話だと、今はラグナを含めて世界に三人いるってことだったかな~」
「……そうですか」
……えぇと、そんなとってもすごいお二人が、私たちの手助けをしにきてくれたんですか。……そういえば、レンさんには義理の兄が二人いると聞いたことがあります。アビスさんとラグナさんが、そうなのでしょうか……?
そう考えていると、ラグナさんが口を開きます。
「フッ、ユノよ。お前はレンのためにも、今度こそ必ず生きろ。弟の嘆きを見たい兄はおらぬからな」
「……そうですよね。……私もレンさんの隣にいたいです」
「まあレンもそれを望んでいるから、心配はないんじゃないかな~?」
「……ふふっ、それだと嬉しいです」
レンさんのことを考えてつい嬉しくなってしまうのですけど、お二人には言わないといけないことがあるのです。
「……あの、そうでした。……私たちは今、運命の導くままに遺跡を回っているんです。そして――」
「王に会いたいんだよね? 全て知っているよ」
「そういうことだ、なにも心配はいらぬ。お前はただ付いてくれば良い」
お二人がそう言うので、私はムキーッとしているアヴィさんのことを見てみました。すると、アヴィさんも口を開いてくれます。




