21、入学手続き
一旦毎日投稿を終了します。
何とか折れずに完遂できました!
重い扉の先は、冷たい外観に反して温かみのある板張りになっていた。正面には複数のブースに分かれたカウンターがあり、多くの人が列を作っている。10代の男性が多い中、同じく10代の女性や明らかに上の年齢の者も一定数混ざっている。皆防具を纏い、剣や槍などの武器を身に付けている。ここにいる全員が学生なのだろうか。
その様子に呆気にとられていると、横から声がかかる。
「そこの君。ここ初めての人?」
「え?はい。そうです。」
「やっぱりね。それなら一番左の列に並ぶといいよ。どの列でもいいんだけど、あの人の説明が一番分かりやすいから。じゃあね。」
それだけ言うと、声の主、中性的で整った容姿の人は外へ出て行ってしまった。スラリとした見た目にそぐわない背丈を悠に越えるツヴァイヘンダーと、大きな瞳を潤ませて肩にしがみ付く拳サイズの聖霊のアンバランスさが妙に印象に残る。無意識に眼で追って、閉まる扉をみつめてしまっていた。
我に返って頭を振り、意識を学生の列に戻す。
どの列も同じくらいの人数が並んでいるが、せっかくの先輩のアドバイスだ。お勧め頂いた一番左の列に並んでみる。
順番を待ちながら前の状況を窺っていると、どうやら学生に依頼の斡旋をしているようだ。よく聞こえて来るのは「薬草採取」「ホーンラビット討伐」「資材あつめ」「街の清掃」などだ。学生のうちに危険度の低い依頼を受け、冒険者としての経験を積む実習があると事前に聞いているので、なるほどこれがと納得して観察を続ける。
3〜5人で並んでいるのは所謂パーティーだろう。相談しながら依頼を選んでいる。中には1人で依頼を受けている者もいる。デルリカさんの家の本には、戦力的にも戦術的にもパーティーを組む方が効率的だが、人間同士のいざこざは避けられないと書いてあった。僕が抱える事情的にも、理想はソロの活動だろうな。ただ、現段階では自分の実力も分からないし、専門的に依頼を受けたりの可能性を考えるとその限りではない。
色々と考えている内に自分の番が来た。
軽く手を上げて僕に声を掛けたのは、ブースに座る30代くらいの女性だった。
「こんにちは。ご用件は何でしょう。」
「はじめまして。ここへの入学を考えています。どうすれば良いでしょうか。」
「これはこれは、はじめまして。ようこそ冒険者育成学校へ。では、入学の手続きをさせていただきます。文字の読み書きはできますか?」
「生活に困らない程度なら。」
「では、分からない部分は都度教えてください。」
分厚い本を開きながら女性の説明が始まる。大体が既に知っている知識だが、文字を追いながら再確認していく。
ここには僕のように遠方から来る学生が多く、専用の寮がある。僕は初めからそのつもりで来ているので、入居の手続きも行う。入学金と合わせて最低2年分の寮費が発生するので、多くの学生は後払い、所謂出世払いを選択すると言う。しかし、今度の生活費を考えてもまだ余裕がある僕は、その場で金貨の一括支払いをした。
女性の驚いた顔が面白かった。
入学書類の記入欄は、名前・性別・年齢・属性・色・特殊技能の有無となっており、ステータスカードとほぼ変わらない。名前だけは偽名の「アレン」と記入し、残りは嘘偽りなく記入する。
ステータスカードの提示を求められたが特に内容を見るわけではなく、犯罪者の変色が無いかの確認のようだった。女性は本当にちらっと見るだけで確認を終わらせ、記入した書類を手にしてブースの奥の部屋に下がってしまった。
3分も経たない頃、戻ってきた女性から渡されたのはステータスカードと同じサイズの木の札。これまた同じく紐を通す穴がある。刻印されている単語は「アレン」「パルアラマイト」の2つだけ。半分より下は空白だ。
「この札を持って階段裏の部屋に入り、中にいる人に札を渡してください。そこで面接を行います。」
「分かりました。ありがとうございます。」
そうだ、面接があるのを忘れていた。ただ、余程の問題が無ければ落ちないという前情報が本当なら、気負う必要もないだろう。
説明を担当してくれた女性に頭を下げ、指さされた部屋へと移動する。
階段裏には、大きく扉を開け放った部屋があった。
「失礼します。」
「おう、入れ入れ。」
入ってすぐには待機用、奥には面接官と向き合う椅子がある。僕の他には面接官の男性しか居ないようで、気さくに手招きで呼ばれる。
「はじめまして、アレンです。よろしくお願いします。」
「おー、丁寧な子やな。俺はラシェ。まあ座れ。」
挨拶して木札を渡すと、ラシェさんは再び手を振り振り着席を促してきた。
「さてさて面接と言っても、今のやりとりでもう合格やね。うん、問題なし。
ただ俺暇やから、何で入学するか聞いてもええ?」
高めの声で訛りのある話し方の上、常に手を動かしながら話しをするタイプのようだ。顔の周りでひらひら動く手に意識を持って行かれる。
「あ、えーと、家を出て仕事を探す事にしたのですが、中々見つからなくて。知り合った冒険者の方達が僕には冒険者が向いていると言ってくれたので、挑戦してみようと思いました。」
「ほうほう。ちなみに、君にそう言ってくれた冒険者は誰?」
「グラディリス王国から来てた<疾風の牙>のラングさんと、テレイト領で会ったデルリカさんです。」
「おお!<流星>と会ったんか!ええなぁー。俺も話してみたいなぁ。
かなり遠〜くから見たことなら3回あったんやけど、俺なんかが気軽に話しかけられる人やない。それに、周りには冒険者教会のお偉いさんや、ゴールドライセンスの冒険者がおって、空気が違いすぎて近づくなんて無理やった。」
デルリカさんはラシェさんの憧れの人らしく、推し語りが始まった。若干頬を上気させながら話す様子を眺めていると、何故か僕が誇らしい気持ちになった。
そういえば、デルリカさんが<流星>たる所以の星が降るような聖霊術は見せてもらえなかったな。「星が降る」なら、ホイホイ気軽に使える規模ではないのだろう。いずれ見られたらいいな。
他愛もない話を続けていたが、新たな入学希望者が来たことで面接が終了した。
返却された木札には小さな星の刻印が増えており、ステータスカードと共に首から下げるよう指示される。
冒険者育成学校では常に入学者の募集をしており、月ごとにまとまって入学する事になる。流石人気の職業というべきか、ひと月の入学者が100人近くなる事もあるらしい。今は7の月が始まったばかりなので、末日の入学まで今月の人数は分からない。
まだ依頼は受けられないし、しばらくは街の散策がメインになるだろう。
受付で渡されていた寮の地図と書類を握りしめ、賑やかな街に繰り出すのだった。
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