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20、新たな目的地

今日も予定の22時を過ぎてしまいましたが、何とか投稿できました。

毎日投稿も残すは明日のみ。

頑張ります。


 初めての狩りから15日。

 今日僕は、お世話になったこの家を旅立ちます。



 今日まで毎日1人で森に入り、聖霊術の練習がてらホーンラビットを1~3羽仕留めて夕食や保存食に加工していた。

 ホーンラビットは15㎝程の角が額に生えており、その脚力と俊敏さが特徴の、僕が片手で持ち上げられる小型の魔物だ。白色の毛皮は割りと高く売れ、肉の味には癖がなく筋も少なく食べやすい。ボアよりも解体が楽だが、単調な味になりやすいのでスパイスや燻製など味付けに工夫を凝らしてみた。

 何のためのホーンラビット狩りかというと、デルリカさんに渡すお礼を用意するためだ。約2ヵ月、無償で家に住まわせてくれた上に、家にある本で様々な知識を得られて、魔物の狩りと解体を教わった。これ以上ない経験ができ、最高な生活環境を与えられているのに、僕は簡単な家事しかしていないので申し訳なさが拭えなかった。デルリカさんは社会的な地位もありお金には困っていない上に、家には様々なものが揃っている。お礼をと考えて浮かんだのは、グレイトボア狩り前に言っていた「冬になると雪が積もって狩りができないから、保存食がたくさん必要だ。」という言葉だった。消えものなら余計な気遣いも無いだろうという考えもある。ホーンラビットならば1人で加工まででき、ついでに毛皮を売って路銀も稼げるという寸法だ。

 今日までに仕留めたホーンラビットは48匹。偶然見つけたハーブピジョン3羽分も加工肉の仲間入りをしている。



 完成した保存食は既に保存室に移動済みで、実は今まさにデルリカさんと分かれる所だ。


「デルリカさん、大変お世話になりました。十分なお礼もできずに申し訳ありません。」


「いやいや。そもそも、俺が無理やり連れてきただけだ。それに、あんなにたくさん干し肉を用意されて、文句なんて言える訳がない。こちらこそ礼を言おう、ありがとう。

 冒険者も、やってみて合わなければ辞めればいい。決めるのはお前だ。」


「はい。本当に色々とありがとうございました。」



 僕が深々と頭を下げると、頭上で笑う声と共に頭に大きな何かが乗る。わしゃわしゃと髪を乱されながら顔を上げると、デルリカさんが満面の笑みで僕の頭を撫でていた。


「ああ。元気でな。」


 お互いにもっと言いたいことがあった。

 たった2か月でも、僕はデルリカさんから新しい世界を教わった。家事や聖霊術の指導だけでなく、剣術の相手にもなってくれた。たとえ僕に秘密があっても、それも含めて包み込んでくれる存在に心から安心して生活ができた。人を欺き強かに生きていくことを覚悟していた僕には、とても温かく心地の良い時間だった。

 僕にとってデルリカさんは、師匠のような親のような存在になっていた。冒険者になって成長したらまた会いに来たい。改めてお礼を言いたい。そんな思いをあえて口にしないのは、デルリカさんの特殊技能【未来予知】に影響を与えたくないという本人の意志を酌んだものであり、僕の男としての見栄でもあった。


 目を合わせて無言のやり取りがあった後、もう一度無言で頭を下げて反転する。何度も買い物で歩いた道は今日も変わらず賑わっている。目深に被りなおしたフードを押さえ、進む足取りはいつもよりも軽快だった。



 この街を出てどこに行くかはもう決めているんだ。同じテレイト領の南側、サルファイト皇国の中央都市の西側に位置する大きな街「パルアラマイト」が目的地だ。そこにはこの国に3つあるうちの1つ、「パルアラマイト冒険者育成学校」がある。

 ちなみに他の育成学校は、サルファイト唯一の海がある「リバイスト領」と、東端の「エンバス領」にあるらしい。冒険者育成学校ができたのは30年程前で、その頃デルリカさんは既に冒険者をしていたので学校は通っていない。ただ、出身地はエンバス領と言っていた。いずれ始まる旅の道程に組み込んでおく。

 そして冒険者育成学校に入学することが目的ではなく、そこで1人で生きていける知識と力を手に入れ、自分のやりたい事や生き方を見つけたいと思っている。





 同じ領内の移動は比較的簡単で、街から街へ数日乗合馬車を乗り継いでいくだけでいい。経験値の差か、グラディリス王国からサルファイト皇国に来るときのような不安感も無く、周囲の景色や同乗者の会話に意識を向ける余裕もあった。盗賊の討伐報酬やホーンラビットの毛皮で稼いだ小銭もあり、心身共に余裕のある行程だった。

 


 パルアラマイトの停留所に到着したのは昼を少し過ぎた頃。到着して直ぐに行動できるように、馬車の中で干し肉を食べておいて正解だ。初めての場所で道に迷い、人気のないところで事件に巻き込まれるのはもう勘弁したいので、御者に目的地を聞くのを忘れない。

 この街には大きな建物が多い。基本的にどの街も聖霊に配慮して大きな建物や幅の広い道が多いが、この街はひと際大きく感じる。歩く人間が少し小さく見える程だ。さらに、店の名前が書かれた看板やどこそこはこっちと言った案内板も見受けられる。国境の町や村には無かった特徴だ。それだけ識字率が高いのだろう。


 御者に聞いた通り目印を確認しながら進んでいくと、周囲のレンガ造りの建物とは毛色の違う無骨な建物が見えてきた。石造りの壁には装飾もなく、2つある扉は黒い金属製だ。左の扉に「冒険者協会パルアラマイト支部」、右の扉に「パルアラマイト冒険者育成学校」と書かれた札が下げられている。

 2階建てのようだが、1階部分正面には窓がなく中の様子は窺えない。

 緊張と期待で高まる胸を落ち着け、右の扉を押し開けて踏み込んだ。




お読みいただきありがとうございます。


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