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19、特殊技能【未来予知】



 僕が初めて狩ったグレイトボアは、現在その巨体を宙吊りにされている。

 後ろ足をロープで縛り、丈夫な木の枝から吊るして血抜きをしている最中だ。魔物の肉を食べる時、十分に血抜きが出来ていないと魔毒酔いで苦しむことになるらしい。仕留めたらすぐに血抜き。これが狩りの鉄則だという。

 十分に抜けたら、その場で不要な内臓を取り出し、血を溜めていた穴に一緒に埋めてしまう。魔物の種類によっては特定の内臓が薬の原料になったり、食用になったりするらしいが、このグレイトボアの内臓は全て破棄する。血や内臓をその辺な放置すると、他の魔物を引き寄せてしまうため注意しなければならない。


 そこまで済ませて、一旦家に帰ることになった。


 この巨大なボアをどうやって持ち帰るのかと思っていると、デルリカさんが手際良く布を広げ、その中にボアを包んでしまう。そして簡易的なソリのような物を取り出すと、布に包まれたボアを転がして乗せ、ソリに繋がったロープを掴んで引き始めた。ロープはデルリカさんだけでなく、その聖霊のアメーラまで引いている。この2人は物凄い力持ちだなと、漠然とした驚きを抱きながら後を追って帰路に着いた。



 家に着くと、聖具によって守られた庭先で作業を始める。

 ナイフで皮を剥ぎ、肉と骨に解体していく。皮下の油は灯りの燃料にもなるらしいが、この家では使用しないのでまとめて街に持っていくらしい。薄くスライスした肉に塩とハーブを揉み込んで、天日に干して保存食にする。

 恐ろしく手際の良いデルリカさんに見本を見せてもらい、アドバイスを貰いながら下手なりに作業を進め、すべてが終わるころには夕日が沈みかけていた。


 全身土埃に塗れ、ボアの返り血と解体作業中にかいた汗でドロドロな僕とは違い、デルリカさんは涼しい顔で夕飯の準備を始めた。先に身体を綺麗にするように言われたので、夕飯は任せて湯を浴びに行く。

 湯船に浸かりながら自分の胸元に視線を下すと、以前より色の濃くなった痣がある。輪郭がハッキリしたものの、その模様が何なのかは分からない。最近では、悩んでも何も解決しないと分かっているので、気にしないことにしている。



「丁度準備が終ったから食べるぞ。」


 部屋に戻ると、夕飯の美味しそうな香りで腹が鳴った。テーブルには今日狩ったボア肉の料理が並んでいる。


「わぁ、美味しそうですね。ありがとうございます。いただきます。」


「たくさん食え。」


「むぐっ…お、おいしい!」


 メインのボア肉の香草焼きの旨さは想像以上だった。昼食抜きで作業をしていたことも相まって、いつもの2倍近くの量を完食したのだった。





「アレン。俺の昔話に付き合ってくれ。」


 夕食後、自分で淹れたお茶の香りを楽しんでいると、デルリカさんが髪から雫を垂らしながら目の前に座り、唐突に話し始めた。


「?」


「俺はな、【未来予知】という特殊技能持ちなんだ。」


「【未来予知】?」


「ああ。ただこの力はコントロール出来なくてな。稀に夢を見るんだ。その夢の内容を現実にしなければならない。

 10年前、ある街の近くの森で魔物の氾濫が起きた。冒険者をしている俺は、当然街の防衛に参加していたんだが、予知夢では救えていた少女を助けることができなかったんだ。目の前で少女を食らう魔物を、ただ倒すことしかできなかった。

 何とか氾濫を抑える事ができたから、次の日に家に帰ったよ。俺には愛する妻と、9歳の息子が居たんだ。一刻も早く自分の無事を知らせるために、全速力で馬を走らせて帰った俺を待っていたのは、ベッドの上に折り重なって倒れている血の気の無い2人だったんだ。」


「!?な、どうして。」


「さっき言っただろう。俺は夢の内容を現実にしなければならないんだ。それができなかった時、俺自身か俺の周りの人間に不幸が降りかかるんだ。その時はそれが妻子に向いてしまった。俺の【未来予知】は成功すれば予想以上の成果を得られたり、人の力を越えた結果を出すこともできる。その反面、失敗したときのリスクが大きい。特殊技能の使用をコントロールできない俺からすれば、常に爆弾を抱えているようなものだ。

 その後この土地に移って、極力親しい人を作らないように、夢を現実にできるだけの力を得られるように動いてきた。

 俺がアレンを気にかけているのはな、お前が俺の夢に出てきたのと、出会った時の顔色の悪いお前が、10年前に救えなかった息子と重なって見えたからだ。」


「…僕が夢に?」


「そうだ。お前とまだ会う前に夢に見た。」


「どんな夢でしたか?」


「それは言わない。たとえそれが現実にならなくても、今不幸が降りて来るのは俺だろうから気にしない。」


 そう言って天井を見つめるデルリカさんの横顔は、苦痛に歪んでいる。


「お前に何かを強要する資格は俺には無い。だから自由にすると良い。

 ただ、時々お前に息子の面影を見てしまうんだ。だから、命は大切にしてほしい。

 もう遅いから寝なさい。」


「はい…。」


 なぜ僕に伝えたのだろう。僕に目をかけてくれる理由は明確になったが、これを聞いて僕はどうすれば良いのだろう。与えられた部屋のベッドに潜るが、よりデルリカさんの事が分からなくなってしまい戸惑いが膨らむ一方だった。



お読みいただきありがとうございます。


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