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18、聖霊術と狩り

ギリギリ今日に間に合いました!!


 デルリカの指導の元、庭先で聖霊術の訓練をしていたアレン達。聖霊ではないルクシエとの繋がりである"右目"に集中したところ、予想外にも術が発動した。あまりの驚きから、自身の術で両断された木を前に、アレンは呆然とたちつくしていた。



「おー、初めてにしては結構威力あるじゃないか。

 …ん?

 アレン、ちょっと来てくれ。」


 驚いている僕を気にせず、切断された木に近づいたデルリカさんが真剣な顔で僕を呼ぶ。


「なぁ、ひとついいか。アレンの聖霊の系統は風か?」


「はい、風だけです。」


「…そうか。木の切断面をよく見ろ。」


「切断面ですか。わかりました。」


 言われた通り、切断面を覗き込む。直径40センチ程の木がスッパリ切れている。僕にも聖霊術が使えたんだと、心の中の自分が小躍りしている。

 そんな僕に、マフラーポジションが定位置になったルクシエが問題点を告げる。


『ねえアレン、なんか溶けてない?』


「え?溶けてる?

 本当だ。風で切っただけなのに、何で?」


 ルクシエの言う通り、温めたナイフで切ったバターのように、何故か表面だけ溶けていた。倒れた上半分の切断面も同じだ。

 僕のイメージは鋭い風。このように溶ける所は想像していない。


「風でこうなるとは思えないな。」


「でも、ステータスカードでは風に…え?!」


「何だ。」


「あ、あの、系統が増えることってあるんですか?」


「は?」


 ステータスカードの系統を再確認するため手に取ると、予想外の事が起きていた。今まで【風】と表示されていた所が、いつの間にか【風・毒】に変わっていた。

 聖霊の系統を増やす方法は知らないし、ましてや僕は今初めて聖霊術を使用した。

 そして増えた系統は【毒】。状況的に考えて、ルクシエが持つ系統だろう。洞窟の盗賊を倒す時に毒を使ったと言っていた事を思い出す。

 何の奇跡か悪戯か、僕とルクシエは力を合わせて聖霊術が使えるようになり、新しく【毒】の力も手に入れた。



 デルリカさんによると、系統が増える事はあるらしい。ただし、基本系統を極めた者が上位系統を得るという認識らしく、聖霊術を使う前から増えるケースは聞いたことも無いと言う。

 聖霊の系統は5つの基本系統【火・草木・大地・水・風】と、5つの上位系統【無・鋼・氷結・雷電・毒】からなる。上位系統と呼ばれているが、必ずしも後天的に増えるわけではなく、生まれつき持っている者もいるという。どちらにしろ希少なものらしい。

 聖霊術の本には、大小の五芒星がズレて重なり、頂点から右回りに【火・無・草木・鋼・大地・氷結・水・雷電・風・毒】と書かれた図で表されていた。

 後天的に聖霊の系統が増える場合、【火】なら【毒】か【無】に、【水】なら【氷結】か【雷電】になると考えられているらしい。ただし、上位系統を得るものは少なく、具体的条件などはわかっていないという。


 僕は実際に【毒】を付与した術を使えたわけで、元々持っていたのだろうとデルリカさんが無理やり納得するのだった。

 


その後は日を改めて、【風】と【毒】それぞれを単体で使う術を練習した。何度か繰り返していると、自分の意思で簡単に使用できるようになった。今後の課題は威力とコントロール、さらにバリエーションを増やすことだ。





 初めて聖霊術を使えてから1週間。今日は今までにない挑戦の日になった。


 現在、デルリカさんと2人で家より奥の森に入り、本日狩る獲物を探している。


「アレン、狩の基本を教えよう。これは冒険者になるならないに関係なく、覚えておきなさい。」


「お願いします。」


「魔物には必ず風下から近づくこと。獲物の特性をよく知っておくこと。今から狙うグレイトボアの特性は何だ?」


「グレイトボアはたしか、口から鋭い牙が生えていて、頭と背中の皮がとても分厚いので槍が刺さらないので注意。見つかると全速力で突進してくるので正面に立たず、横から喉を狙うのが定石だったかと。」


「よし、覚えがいいな。

 特性を知った上で、こちらに有利な場所と条件を揃える。それができない時は無理に狩らず、撤退を考えなさい。

 では、グレイトボアを狩るならどんな場所を選ぶ?」


「開けた場所を避けて、身を隠して横から近づく。回避の速度に自信があれば、あえて対象との間に障害物がない所を選び、大木や大岩を背にする。でしょうか。」


「ふむ、悪くない。

 しかし、ひとつ目は周囲の索敵ができる事が条件だな。相手から見えないという事は、自分からも見えない。他の魔物が潜んでいたり、視界から消えた途端に襲われるなんてよくある事だ。

 ふたつ目も避けるのが遅くなれば、良くて骨折、悪くて死だな。ボアの突進力は半端じゃない。

 そもそも1人で狩るもんではないな。ははは。

 まぁ、今日は俺がいるから好きにやれ。」


「が、頑張ります。」


「よし、左前方30歩にいるぞ。周りは心配しなくていい。」


「はい!」



 足音を消して身を低くし進んでいく。10歩の距離まで近づき、木の影に身を隠して様子を伺う。

 狙うは自分の背丈よりも遥かに大きいグレイトボア。肉は臭みがあるが、今の時期は油が乗っていて香草焼きが美味しいらしい。皮は防具になり、牙は薬や工芸品になるという。

 今回は狩りと解体の仕方を教わり、食べ切れない分で保存食を作るという目的がある。



 目の前のグレイトボアは鼻先で木の根元を掘り返し、一心不乱に何かを食べている。丁度こちらに側面を向けており、ポジション取りは大正解だ。

 風で木が揺れる音に合わせて体勢を整え、生命エネルギーの循環を意識する。右手の掌を地面に向けて指先を揃え、左腹部前で構える。練り上げたエネルギーを右手に集めた。


 いくぞ!


「【風刃】!」


 腕を振り上げると同時に片足を踏み込み、少しでも威力を上昇させる。

 指先の軌道から出現した風の刃は、一直線にグレイトボアの首に吸い込まれていく。


「プギィイイイイイイ!!」


 グレイトボアは血飛沫を上げながら、怒りに染まった真っ赤な目で僕を睨みつけている。ゆっくりとこちらを正面に据え、前足の蹄で地面をかいている。


 これはやばい!突進してくる!


 土埃を巻き上げ走り出したグレイトボアを正面に見据え、急いで考えを巡らせる。10歩の距離では避けられない。急いで生命エネルギーを練り上げると、既にボアの牙が眼前に迫っていた。


 咄嗟に両手を地面に向け、横に飛びながら術を発動する。


「【突風】!」


「ビィィイイイイッ」


 瓦礫と共に吹き飛んで受け身を取り、何とか牙に抉られるのを回避する。どうやらグレイトボアも巻き込んだらしく、けたたましい鳴き声が森に響き渡った。

 急いで体を起こし、木の幹の裏に走る。

 濛々と立ち込める土煙で状況がわからない。



 息を殺し、耳を欹て、グレイトボアの様子を窺う。



 ゆっくりと晴れていく視界に、油断すまいと気を引き締めた。そんな僕の目に映ったのは、首から多量の血を流して横倒しになったグレイトボアだった。


「や、やった!やりました、デルリカさん!!」

 

「おお、でかした。」


 無意識に両手を拳に握りしめ、後方のデルリカさんに喜びの報告をしたのだった。

 


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