16、冒険者になるには
今後の仕事について、デルリカさんに冒険者になる事を勧められた。
以前、行商人のゴンドさんの護衛をしていた〈疾風の牙〉のラングさんにも同じ事を言われていた。
しかし、平凡な能力の自分には勤まると思えず、深くは聞いてはいなかったため、詳しく知らない。そんな僕にデルリカさんが話してくれた事をまとめた。
冒険者育成学校は、冒険者になるために通わなければならない学校。各種試験を1度でクリアすれば、最低2年で卒業が可能。入学には身分も関係なく、面接をクリアすれば入学ができる。入学金はあるが、初めに一括清算と、依頼を受け始めてからの天引き清算を選べるようだ。貴族と公言している者以外は基本後者を選ぶらしい。
学科と実技があり、読み書き計算から始まり、戦闘訓練、貴族や王族の依頼を受ける場合に備えた礼儀作法、地理や植生や魔物の分布、各国の歴史や文化、遺跡の知識など、思っていたよりも多くの事を学べる所のようだ。
ある程度の実力が認められると、ウッドライセンスが支給され、実際に依頼を受ける授業が始まる。将来的に複数人で活動するか、1人で活動するかによって授業の内容も変わってくるらしい。
ちなみにデルリカさんは基本1人で、依頼内容によっては複数人でパーティーを組むスタイルのようだ。
そして育成学校を卒業すれば、晴れて冒険者になる。卒業の時点でライセンスは黒いアイアンに上がる。そこからは自分で依頼を選択し、旅をしながら生活する者がほとんどらしい。
どんな依頼を中心に受けるか決めるのは自分で、手広く選り好みしない者がいれば、魔物討伐や遺跡探索ばかりの者もいるようだ。
ライセンスは在学中のウッド、初級者のアイアン、冒険者として一人前のカッパー、試験を受けて上がれるシルバー、更に上のゴールド、英雄級のクリスタルといった具合に上がるらしい。クリスタルライセンスは特別で、一国の危機を救ったぐらいではなれないらしい。
デルリカさんはゴールドライセンスで、現在は指名依頼しか受けていないと言う。冒険者教会内でも役職に就いているし、とてもすごい人だった。
「というわけで、戦うだけが冒険者じゃない。知識や人間性がものを言う依頼もある。何か1つを極める事もできる。独り立ちすれば、かなり自由な仕事だ。」
「はい。」
「すぐ結論を出す必要はない。入学の募集は始まっているが、期限はまだまだ先だからな。
ただ、お前は強くなれる。俺には確信があるから、ぜひ冒険者になってもらいたいな。」
「?」
『本当、不思議な人ね。』
その後、空いている部屋に案内されてベッドに入った。盗賊の件が片付いても、当分家に置いてくれると言う。これは、真剣に冒険者になるかを考えなければ。
◇
翌日、用意してもらった朝食を食べながら、昨晩の話を思い出していた。
「冒険者をしていて楽しかった事とか、嬉しかった事って何ですか。」
「ん?まぁ、新種の魔物を発見したり、遺跡で貴重なものを掘り出したり、単純に強くなる事は楽しい。いろんな国で美味いものを食べるのもいいぞ。遠方へ行く護衛依頼を受ければ、自由時間に観光ができる。
嬉しい事も色々ある。小さな依頼でも、依頼主から心から感謝されるのは1番嬉しい。自分がした事で、誰かが助かるんだ。冒険者以外にもたくさん友人ができるし、良い出会いもある。」
そう嬉しそうに話すデルリカさんだが、最後は少し笑顔に影が差していた。何かあったのだろうか。
『それより、この家には本がたくさんあるの。どんな内容か気になるわ。』
テーブルの上で大人しくしていたルクシエがそんな事を言い始めた。
「本?」
「お、本が読みたいのか?この家にある本なら好きに読んでいいぞ。地図も読めてたし、文字は読めるんだろ。
俺は頻繁に家を空けるだろうから、家の中のものは好きに使えばいい。外の倉庫は危険なものもあるから、勝手に入るなよ。庭は聖具で結界を張っているから、体を動かしたければそこを使え。森に入るのはまだ早い。」
他にもいくつか注意点と、不在の間にやっておいて欲しい事を聞くと、早速デルリカさんは出かけて行った。
とりあえず、ルクシエが気になると言う本を手に取り開いてみる。
『何の本?』
「これは、魔物の図鑑だな。この国に生息する魔物の分布や特性が纏められている。あれ、これ、書いてるのデルリカさんだ。こっちの本も、あの本も。料理の本まで。
本当に、よくわからない人だな。」
家にあるほとんどの本が、デルリカさんが書いた本だった。本を書くのは、高名な学者や隠居した偉人のイメージがある。貴族で現役冒険者で本まで書いて、他にも色々やっているのではないかと思ってしまう。
その日は頼まれていた洗濯をして、残りの時間はひたすら本を読んで過ごした。
一人旅で洗濯と簡単な調理はできるようになっていた。
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