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15、討伐報酬と宿


 再び仮眠室を借りて寝ていたのだが、揺さぶられる感覚に目を開けると、目の前に整った顔があった。どうやら戻ってきたようだ。



「アレンのおかげで盗賊の壊滅が目前だ。洞窟の件は調べるのに時間がかかる、とりあえずは俺が見た2人分のだ。」


 そう言って手渡された布袋は、ジャラジャラ音を立てている。

 紐を解いて確認すると、銀貨の山だった。


「…これは、貰っていい、のですか?」


「もちろんだ。盗賊2人の討伐報酬。片方が幹部だったから、奮発させたぞ。」


「討伐報酬。」


「窃盗、誘拐、密売、殺人。上げればキリが無い悪党達だ。討伐したことは誇っていい。罪人に同情は要らない。」


 デルリカさんの横でトラのアメーラが咥えているのは、おそらく盗賊2人のステータスカード。デルリカさんがチェーンを掴んで僕の目線に突き出す。


「見ろ。ステータスカードは1番ポピュラーな聖具だ。法を犯した罪人のカードは、赤銅色に変わる。こうなったら捕縛、討伐の対象だ。

 だからお前のやったことを褒め称える奴は居ても、批判する奴は神が許さない。」


「…あ、ありがとうございます。」


「さて、まだ日暮れ前だな。買い出しして行こう。」


「へ、行くってどこへ?」


「ん?あぁ、しばらくウチに泊まれ。

 どっちみち、洞窟の調査が完了するまで報酬は受け取れないんだ。高級宿とは違うが、どうだ?」


「え、いいんでしょうか。

 …ありがとうございます。」


 なんだか色々あったが、当面の宿を手に入れた。





 入ってきた門とは別の門から街を出ると、塀の外の住居密集地を通り過ぎ、どんどん街から離れて行く。

 途中からは明らかに人の気配がなく、どう言い換えても”森”だった。獣道が少し通りやすくなったぐらいの道を進んでいくと、開けた場所に3棟のログハウスが現れた。


「ここが俺の家だ。俺しか居ないし、好きに使うといい。

 左右の小さいのは倉庫みたいなもんだ。」


 後に続いて中央の立派なハウスに入ると、中はものが少なく綺麗に整えられていた。

 部屋を見回し驚いている僕に、デルリカさんは肩をすくめて言った。


「もっと汚いのを想像してたか?心外だな。」



 何とこの家、浴室があるという。

 貴族の家には必ず浴室があるもので、実家でも毎日使用していた。話していると忘れそうになるが、デルリカさんは貴族だ。普通の貴族の家とは異なるが、家の設備は相応に充実している。

 実家を出てから馬車の雑魚寝や野営、料金の安い宿屋を利用してきたため、せいぜい濡らした布で身体を拭く程度だったので、湯をたくさん使えるだけで非常に嬉しい。それがここでは、毎日好きな時に使用していいという。もうそれだけでデルリカさんの株が急上昇した。

 そして早速、夕食を頂いた後、遠慮なく使わせてもらうことにした。


 実家の浴室は使用人と共に入るため広く、花柄のタイルや壁の装飾などがあったが、ここは部屋と同じように木で作られていた。独特な、どこか安らぎを感じる香りが充満し、ゆっくりと湯に浸かる事ができた。

 ちなみに、ルクシエも風呂が好きなようで、桶に湯を張ると、頭だけ出してくつろいでいた。

 

 ただ、ひとつ気になることがあった。それには、服を脱いですぐ存在に気がついた。

 胸の中央、心臓の真上に、薄っすらと痣のような模様があるのだ。痛みも痒みも無い。禿頭の盗賊に嬲られた名残だろうか。ルクシエも『そうかもね』と、あまり興味なさげだ。

 怪我ならいずれ消えるし、意味のあるものならいずれ分かる時が来るかと、今はそのまま無視することにした。





「こっちに座れ。」


 デルリカさんが用意してくれた、膝上まである大きめのシャツを着て部屋に戻ると、手招きで呼ばれた。

 テーブルにはホットミルクが2つ。


「アレンは、盗賊に捕まる前、何をしていた?」


「仕事を探していました。慣れない街で裏路地に入ってしまい、捕まりました。」


「仕事か。やりたいことはあるのか。」


「いいえ。ただ、住み込みで働ける仕事を、と。」


「子供が住み込みで働ける仕事は少ない。雇われたとしても、稼ぎは無いに等しいぞ。

 それに、お前の見た目では注目を集めるし、また攫われる可能性が高い。」


「はい。稼ぎについては覚悟していましたが、僕自身については誤算でした。」


「今後の当てがないなら、俺にいい案があるぞ。話だけでも聞いてみないか。」


 僕に対しては笑顔の印象が強かったデルリカさんだが、今は神妙な面持ちで僕から目線を離さない。

 仕事を見つけなければ、今後の生活がままならない。そんなことは初めからわかっていたし、苦労する覚悟だってある。しかし、所詮は世間知らずな貴族の子。自分の非力さと知恵の浅さに直面して、心を不安が支配した。

 僕が頷くと、デルリカさんの表情が少し和らいだ。


「よし。では聞いてくれ。

 お前に合っている仕事は、冒険者だ。」


「えぇ…、そんな、僕には…。」


「適当に言ってるとか、自分が冒険者だから勧めているとかでは無いぞ。ちゃんと理由がある。

 まず、お前が訳ありと言う点。冒険者には家に秘密にしている者や、結婚や政略から逃げた者、国に問題を抱えた者など、訳ありが掃いて捨てるほどいる。だから皆、身分や過去を詮索しない。

 それに、冒険者として名乗る名前は、実は本名でなくても良い。

 次に、お前が犯罪者に狙われる点。冒険者になるために通う学校では、戦闘についても学ぶ。自衛の力を身につけ、逆に襲ってきたものを捕まえるぐらい余裕になる。

 しかも、冒険者として名が売れれば、お前の外見を珍しく思う奴も減るし、下手な奴は手出しなんて考えない。

 俺としては、お前の状況的に最適な仕事だと思うぞ。」


 確かに、今聞いた話が本当なら、僕の抱える問題を気にしなくていいことになる。

 しかし、魔物と戦ったり、要人護衛をしたり、そんな仕事が自分に向いていると思えない。聖霊がいなくても聖霊術は使えるとわかっているものの、系統は"風"ひとつだけ。術の色も効果がない"白"。特殊技能もなし。只々平凡な僕には、名前を売るなんて夢もまた夢。

 

 床でトグロを巻いていたルクシエが、足を登りながら話しかけてくる。


『楽しそうね、その冒険者っていうのは。もっと詳しく聞いてみてよ。』


「あの、その話が本当なら、確かに合っているのかもしれません。しかし、僕に冒険者が向いているとは到底思えないのです。だから、もう少し詳しく教えてください。」


「いいぞ。

 初めに、冒険者育成学校の話かな。」


 ホットミルクのおかわりを貰い、デルリカさんの声に耳を傾けた。

お読みいただきありがとうございます。


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