QUEST 2
町の外へ出てから、道端の木陰で俺たちは本と一緒にもらった地図を広げた。
結構使い込んであり、縦横に走る折り目はかなり年季が入っている。もしかしたら、以前にも何度も俺たちのようにインフィニート探しの旅に出た人たちがいたんだろうか。でもその地図、不思議な事にまっさらで何も描かれていなかったんだ。
「なあサージュ。これって軽~い嫌がらせかぁ?」
俺はその地図を陽に透かせたり、こすったりしたけど何の変化もなかった。そんな俺を見て、サージュは得意気な笑みを浮かべながら手を差し出した。
「まぁ、僕にまかせて。ちょっと貸してよ」
俺から受け取った地図にサージュは左手をかざして呪文を唱え始めた。すると幾つかの大陸や、街の名前と地形が次々と浮かび上がってきて、地図らしくなった。
「やっぱ、魔法で封印してあったみたいだね」
サージュは地図全体に目を通してから、俺に手渡した。
「おぉ~! すげぇ…… って、そっか、おまえって……」
俺はそこまで言いかけて、こいつのもうひとつの正体を思い出した。
サージュは親指をピッと立てて満面の笑みを浮かべている。
「僕がトレジャーハンターもやってるって事、忘れてた?」
「今いる所が…… ここだから」
サージュがそう言って、地図の下の方の一番大きな大陸の真ん中に描いてある城の絵を指差した。
「この街道を道なりに行くと、まず最初に村がひとつあるんだよね。そこから片っ端に町や村、それにもしかしたら洞窟なんかも見ていかなくちゃならないかもしれないね」
俺も一緒になって地図を覗き込んだ。いろんな町や村、それにいくつか怪しげなダンジョンもご丁寧に書かれている。まるで「いってみない?」と誘うように。
「なあ、インフィニートがどこにいるのかすぐに分かる呪文ってねぇの?」
サージュにそう聞くと、
「あるにはあるんだけどさ、今の僕にはレベル不足。あとちょっと探索魔法を使いこなせればできるんだと思うんだけどさ。最近クエストに出てないだろ?」
肩をすくめて自嘲的にぼやいた。
「そんじゃ、探索魔法をじゃんじゃん使ってレベルあげろよ。俺も協力してやるからさ!」
なんて景気付けてやったのに、さらに肩を落としてため息をついた。
「あのねぇ、スフィーダ。いくら僕の魔力が賢者クラスだからって、限度ってもんがあるんだけどなぁ。そこんとこ分かって欲しいよ」
自慢してんだか、本音なんだか。
「どうせ俺には魔法っ気は全くねぇよっ! ほれほれ、とっとと先に進もうぜ。いきなり野宿は勘弁して欲しいからな」
地図を適当に畳むと、俺はサージュを急き立てるように声をかけた。 進もうとする道のその先には、これからを暗示するかのように暗雲が垂れ込めていた……。