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第三場

第三場 同場


本舞台、元と同じ今の佐平次内の道具。ドロドロを打ち上げると明転。佐平次、前場の勢いで七三に駆け出したまま呆然としている。下手に三太立っている。佐平次、ハッとなり振り返る。


佐平次「今のは」

三太「なんでい。おめえ女房がいたのか」


ト、佐平次、三太に気づいてビックリする。


佐平次「お前○いや、今のは。今のはなんだ」

三太「名はおりんというのか。やっぱ上方の女はいゝなあ。さっきの照れ方もこう色気があって」


ト、三太、おりんの真似をする。


佐平次「いゝ加減なことを言うな。答えてくれ、今のはなんだというのだ」

三太「ヘヽヽ。ケチの佐平次がこのザマとは人様が見たら大笑いだ」

佐平次「おい、こっちの話を聞きやがれ」

三太「(せわ)しない人だ○仕方ないねえ、教えてやろう。今のはお前の過去さ。お前さんが、心から笑えた日で、この人がいりゃ他にはなんにもいらねえと思えて○そしてお前さんが忘れたものだよ」


ト、佐平次、思入れ。


佐平次「おりんはいゝ女だった。上総から江戸へ出て右も左もわからねえ時に出会ったんだ。元は上方のいゝところのお嬢さんだったらしいが訳あって家を飛び出してこゝまで来たそうだ。お互い訳ありだからか知れねえがいつの間にか仲良くなり、あとはあれよあれよと、とんとん拍子。狭い裏長屋で掛けに追われて暮らす日々だったが、あゝ、あれ以上の日はいくら金を払っても買えねえや」

三太「そりゃ、大層なことだ。もう一度あの頃に戻りてえか」

佐平次「もちろんさ。あのあと娘が生まれて、塩噌(えんそ)にすら困るような暮らしで、日が明けてから暮れるまで足を棒にして働いた。でも、家に帰ると、こう女房と娘の笑顔だけで疲れがすべてが吹っ飛ぶのさ」

三太「それなら、もう一度見せてやろうか」

佐平次「ほんとかえ。お前さんがなんなのかはわからねえが金はいくらでも払う。だから、もう一度あの頃を思い出さしてくれ」

三太「もちろんさ。たゞお前が思っているものとはちと違うかも知れねえがな」


ト、三太笑う。


暗転。道具回る

ドロドロにてつなぐ

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