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stigmata (聖痕) 

 アリスの屋敷があるヒルズタウンからは、途中エンストを三回も起こしたが、聖パッセンジャービジョン大学まで路面バスは通常運転をした。イーストタウンのバス停で白のロングコートを着たシンクレアが乗ると、アリスはシンクレアと楽しくお話ができた。


 アリスはその間。手首の傷のことをすっかり忘れてしまっていた。


 けれども、アリスはやはりモートのことが気掛かりだった。

 その話をすると、シンクレアは「この街を一度救ってくれたんだもの。モートのことなら何もかも任せてしまえばいいのよ。何も心配なんかいらないのよ。ねえ、そうだわ。モートなら何も言わずに黙って、またこの街を救ってくれるはずだわ」と励ましてくれた。


 モートは前に世界の終末を回避して、ここホワイトシティを救った英雄だった。


 車窓からの風のない雪の降る景色に急に光が射しこんできた。ここホワイトシティでは珍しいことだった。光の下を二十を超える鳩が遥か西の方へと飛んでいった。


「まあ!」


 アリスは今の何もかもの幸福な出来事によって、感極まって涙が滲んだ。次第に手首の傷がほんの些細なことのように思えてきた。

 


 アリスはモートのことをまた考えた。

 いつも無口で感情的になることがないが、頭が良く対人関係ではある種のとても奇妙な強さを持っていた。

 

 そんなモートはアリスにとって素晴らしいフィアンセだった。


 アリスとシンクレアがバス停から降り、聖パッセンジャービジョン大学の急な石階段を登るころには、……何故か天空が真っ赤に染まっていた。アリスは不思議に思って空を見上げた。シンクレアはそれでも陽気に話し掛けてくる。


 空から何か大きなものが地へと落ちてくる。それは赤い色の塊だった。その次は多くの赤い水滴が降りだした。まるで空がガラスか何かで傷つけられたような光景だった。


 ホワイトシティ全体が一斉に血の雨で真っ赤になり出した。

 

「あら? ねえ、アリス……空が真っ赤よねえ? それに赤い雨……」


 激しい眩暈に襲われ卒倒しそうになったアリスは、聖パッセンジャービジョン大学の片隅で、モートの姿を偶然見つけた。モートは一人。壁に寄り掛かりながら何かを熱心に読んでいたが、空の異変に気付き、どこかへと走り去っていった。


 きっと、この地上へと再び舞い降りた天使のオーゼムのところだろう。

 アリスは気を失う寸前に……そう思った。


――――


「やあ、アリス。もう大丈夫だよ」


 アリスはその抑揚のない声で気を取り戻した。


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