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お客様4人目

「こんばんわ、ママ来たよ。 キミもこんばんわ。」

「いらっしゃいませ、こんばんわ!」

「いらっしゃい、"アオ"。適当に座りな。」


「ふー…疲れた。ね~ママー? この子借りていい?」

「あー? 混み始めたら返しとくれよー」

「はーい! さっ、ママからお許しが出たからこっちおいで、こっち。お姉さんの相手をして!」

"ポンポン"と隣の席を叩き、ここに来るよう催促をする女性。

彼女もここ"TONYA(トーニャ)"の常連客の1人。




"アオ"さん。

それがこの店での彼女の呼び名。

綺麗に整った顔にある2つの眼は濃青色のカラーコンタクトによりまるで瑠璃のように青く輝き、服装は深海を思わせるような紺青色のスーツを身に纏い、蒼天のような青みがかった長く美しい髪をなびかせる彼女にぴったりなあだ名。

あとは好きなお酒に由来する。


そんな"アオ"さんは週に3~4日、"TONYA"に来店され、「職場と自宅と"TONYA"以外に行き場所が無い!」「なんなら"TONYA(ここ)"に住みたい!!」と豪語する程の超常連客。

20代半ばと若い割に世の中の事をよく分かっており、常識もしっかりと持ち合わせるいるため平均年齢50代の"TONYA"のお客様とも難なく接することができるとてもいい子だとママ言う。

自分にとっては、行動や言動が全てにおいて大人で格好よく、それでいて美しくもあり"憧れる大人"を体現したかのような人。


ただし…

「ねっ、人差し指出して。」

「……? はい。」

"アオ"さんは差し出した自分の指を優しくつかむと…

"チュッ"

指に柔らかく温かな感覚が触れる。

「これは指名料ね。 ……って、オーイ。キミー? オーイ? ……ママ、この子また固まっちゃった。」

「全く…純情な子なんだからちゃんと加減しな。…おっ、赤くなってきたね。もう動くよ。」

「フシュ~………」

「ごめんね、キミ。お姉さん調子にのっちゃった。お詫びに頬っぺにキスしてあげる。」

「い、い、いい、いいです! 結構です! 大丈夫です!」

「ええ~~…」

こういうからかいさえなければ…






"アオ"さんはとても美しくて格好いい。

紺青色のパンツスーツにハイヒールのパンプス。

スラッと綺麗な身体にとても美妙に整った目鼻立ち。

その姿はまさに高雅で絶対的な美しさを持つ青いバラよう。


それに加えて些細な事にも気遣いができ、優しく悠然と物事に接する性格や全知全能を思わせる程の博識さと秀才さ。

また、育ちの良さを感じさせる麗しい所作と言動。


全てが合わさり"アオ"さんは完璧とも言える"美"を佩帯(はいたい)している。





しかしそれは自分と接する時は何故か何処かへ行ってしまう。

時折見え隠れするのだか基本は分からなくなってしまう。

……………そんな"アオ"さんも嫌いではないのだが…



「お姉さんの話を聞いてばかりじゃなくてキミの話も聞かせてよ。学校の話とかお家(おうち)の話じゃなくて"キミ"のお話。」

「…えーと…自分の話なんて面白くないですよ? それこそ自慢と悲壮と愚痴になってしまいますから。」

「いいの、いいの。キミのそういうのが聞きたいの。キミの愛憎悲喜哀歓をお姉さんにさらけ出して。仕事終わりの肴に丁度良い。」

「ええー…」

正直"アオ"さんが何を考えているのかは分からない。

自分に鬱憤を口に出させることでストレス発散させようとしてくれているのかもしれない。

…"アオ"さんにはそういう所があり、そこが凄くいい。

とても優しさを感じる。

「うんうん、それは先生が悪いね。キミは全く悪くないのに………それは辛かったね。おいで、お姉さんがよしよししてあげるから。…おーいーでー! もう!」

"サス…サス…サス…"

「うー…」

半ば強引に頭を寄せられ撫でられる。

「辛かったね。……頬っぺにキスして慰めてあげる?」

「いいい、いいです!」

やっぱり自分のことじゃなくて、"アオ"さん自身の欲望を満たすためにやっているのかも……




「お酒、無くなっちゃった。」

「…何かお注ぎしましょうか?」

「うーん…」

"カランカラン…"

氷だけになったグラスを揺すりながら少し考える"アオ"さん。

今日だけでもすでに6杯を飲んでいる。

それなのに"アオ"さんは酔っている様子を一切見せない。


"アオ"さんはウイスキーの"碧Ao"が好みでロックにして飲む事が多い。

"碧Ao"のアルコール度数は43%。

決して低くはない。

それを今日は6杯中4杯飲んでいる。

それでも酔っている様子は全く無い。

"アオ"さんはお酒がメチャクチャ強い。



「よし、決めた。"碧Ao"のダブル、ロックで。これで今日は終わりにするから…肴はキミで!」

「…お酒は分かりましたが…肴は超高額になるのでやめておいた方がいいですよ?」

カウンターの奥に入りグラスに氷を入れジガーカップで"碧Ao"を注ぐ。

"カッコロッ…スー…シュー…"

「ふぅ~ん…高いんだ~… ママ~! 彼いくら~?」

「分給1000円。」

「30分買った!」

"パシッ"

…カウンターの上に置かれる30000円。

「さっ、こっちおいで。お姉さんの相手をして。…膝の上がいい?」

「…あーえー…いやー…ママ?」

まさか冗談で言ったことが現実になってしまうとは思ってもみなかったので焦りが隠せない。

ここでこれを許したら今後自分は肴(売り物)の1つになってしまう。

店員として相手するのと肴として相手するのでは訳が違う。

ママに助けを求める視線を送ったが

「大丈夫だよ、行っといで。」

まさかの見捨てられる。


店主の決定には逆らえず渋々"アオ"さんの隣の席へと戻る。

「そこでいいの? こっちじゃなくて?」

"アオ"さんは自身の膝の上を指差す。

「はい…ここで。」

「そっか、じゃあそこで私の相手をしてね!」

「はい…」


この日はこの後30分頭を撫で回され、頬っぺたを捏ね繰り回され、会話で吐息の温かさを感じられるほど密着されメチャクチャドキドキさせられた。


『本当に…良い人なんだけどな…』


お客様4人目:アオさん(美しくて格好いい…?)

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