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お客様3人目

スナック"TONYA(トーニャ)"。

この店はお酒が一番安く(利益率が)、次におつまみ、お酒以外の飲料水(水、お茶を除く)、軽食…と高くなっていく。

中でもジュース類、軽食はかなり割高になっている。

なのでその商品を頼む人は何も知らない一見さん位なもの。

あとはお金に余裕のある?、少し頭のおかしい…頭の悪い人。

そんな人はそう滅多にいるものではないと思う。


しかしウチの店にはそんな頭のおかしい…頭の悪い人が来る。

常連でしかも3人も…

そんな3人を皆は"下戸"と"ゲコ"をかけて"カエル3兄弟"と呼ぶ。





「「「こんばんわー ママ来たよー!」」」

「…いらっしゃい。3兄弟。」

「「「わーい!」」」



2~3日に1度、3人は一緒にお店に来る。

頼むものは

「ママ、カルピスとナポリタン!」

「僕はコーラとチャーハン!」

「オレンジジュースとサンドウィッチ!」

決まってジュース類と軽食。

このセットで料金は1500円は越え、2000円越えないぐらい。

特に他よりも手のかかる軽食はとにかく高い。

ママが「作るのが面倒臭いから注文してこない位、高くしてある。」と言うほど。

しかし、"カエル3兄弟"さんはそれを知ってて注文する。

ファミレスの倍の値段がするのに…


「はい、はい…まったく… お前さん、3カエルの飲み物を頼むよ。」

「はい!」


「お待たせしました。カルピスとコーラ、オレンジジュースです。」

「「「ありがとうー じゃ、かんぱーい!」」」

"""カシャンッ、ゴクッゴクッ…"""

「「「うまい!」」」


「店員さん、大分ママの味に近づいてきたね。」

「そーだね。美味しくなってきた。」

「でも、まだまだママの味には勝てないね。」

「ハハハ…ありがとうございます。ママに負けないように精進しますね。」



"カエル3兄弟"さんの中には"ママの味"というものがあり、それを求めてこのお店にくる…らしい。


正直言ってよく分からない。

100歩譲ってママの味があり、ママと自分が出したものの味が違うのはいいとして、同じ物を同じように出している自分にも段々とママの味が出てきてるのが分からない。

『…やっぱり、おかしい人達だよな…』



「ほら、サンドウィッチとナポリタン……………とチャーハンだよ。」

注文を受けて10分ちょっとで3食を作るママ。

2つしかないコンロで手際よく調理するママはとても凄くて、カッコいいと秘かに思っている。

"カエル3兄弟"さんたちも。



「「「いっただっきまーす! …うまーい!!」」」

"カエル3兄弟"さんは出された軽食を食べ、満足そうな顔をして

「「「ママの味だな~」」」

と笑い会う。

『…ママの味ってなんだろう?』



「ママ、聞いてくれよ。店員さんがママの味を出せるようになってきたんだよ。」

「そうそう、いい感じに。」

「あと少しってとこまで来てるんだよ。」

さっきの話をママにもしている。

なんだろう…なんか恥ずかしいような気がするのでやめてほしい…

「ハハッ、そいつはいいね。お前さん、3カエルにも認めら始めてるよ。よかったね。 ちなみに聞くけどその"ママの味"ってのはなんなんだい?」

自分も疑問に思っていたがママも思っていたらしい。

てか、今までママが聞かなかったのが不思議。

「「「それはねー…"愛情"!!!」」」

"ブバッ!"

"カエル3兄弟"さんの威勢のいい返答を聞いて、隣でお酒を飲んでいた"エロジジイ"さんが吹き出した。

"クックッ…"

さらに隣にいた◯◯さんが笑いを堪えている。

"…………"

ママは飽きてれ物も言えない風に首を横に降った。

「へー…」

自分は返事だけして何も考えていなかった。



「そうかい…愛情の味だったのかい… あんた達…結婚して子供もいるってのに…愛情に餓えているのかい… 可哀想に…」

ママが"カエル3兄弟"を憐れみの目で見る。

「「「そうなんだよ。ママ以外愛情をくれないんだよ。」」」

"カエル3兄弟"さんが口を合わせて言う。

30歳を越えたいい大人達が…

『やっぱりヤバい人達だった。』





「「「ママ、おかわり!」」」

5回目のおかわり。

「………あんたら、今日は飲み過ぎじゃないかい? それぐらいにしておきな。………でもまだどうしても飲むって言うなら外の自販機でジュースでも買って飲んだらどうだい? それの方が数倍安いよ。買ってここで飲んでもいいから…」

TONYAのジュース類の提供は中グラス(約350ml)で500円を越え、原価がビールよりも安いのに販売価格はビールよりも高い。

それを5杯飲むと2500円を軽く越え、3000円後半いくか、いかないか位になる。

流石にジュースのみでそれは可哀想に…? 申し訳なく…? 思ったのかママが提案する。

………が、

「やだよ。ママの味しないもん!」

「そうそう、僕たちママの味を楽しみに来てるんだもの。」

「ママの味のためならいくらでも出すよ!」

"カエル3兄弟"さんが口々に言う。

「…あー…まー…… あんた達がそう言うなら出すけど……」

「「「わーい!」」」

嬉しそうに笑う"カエル3兄弟"さんを横目に明らかに呆れているママ。

そして…



"トットットップ… トットットップ… トットットップ…"

「ほら…」

「「「わーい! ありがとう! 」」」

"""ゴック、ゴック…"""

「「「プハッ! うまーい! やっぱりママの味だな!!」」」




その光景を何度見ても馴れれず、"クシャッ"と引きつった苦笑いをする自分がいた。


お客様3人目(達):カエル3兄弟(ママの味を求めて)

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