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願わくば この背に翅を この手に珠を

作者: 海山

幼い頃から

こころに小さな穴が空いていた

多分きっかけはほんの些細なことで

でもその些細な棘は

心のずっと深いところに突き刺さって

事あるごとに僕を苛む


幼い頃から

こころに重い石を抱えていた

多分人から見れば砂粒のようで

でもその重い石は

心のずっと奥に転がって

事あるごとに僕を溺れさせる


他人(ひと)が他愛なく出来ること

その全てに僕は数多の時間と手間をかける

それと引き換えに貰ったのはほんのちっぽけな才能


そのちっぽけな1つを護り育てて行こうと

血を吐く思いで努力した

脇目も振らずに走った


みんなと同じところに立ちたいって

ずっとそう思っていた

ずっとずっと()()に憧れてた


背伸びすることが当たり前になっていた

そうしなきゃ"普通"に手が届かないから


それなのに


気がついたら僕はまたひとりになっていた

視線の質は変わった

侮蔑から尊敬へ

唾棄から愛護へ

それでも僕はひとりぼっちだ


何でもできる僕は幻想だ

誰にでも優しい僕なんていない

明るくて誰にだって話しかけられる僕は仮面を被っているだけ


それじゃあ、ほんとの僕はいったいどんな僕なの?


背伸びしすぎた僕は

ほんとの僕がどれだかわからなくなった


ほんとの僕は薄汚くて暗くて嫉妬深くて何もできない木偶の坊

そんな僕は何処にいるんだろう

そんな僕を認めてくれる場所を

いったいいつ通り過ぎてしまったのだろう


今日も僕はみんなに求められる僕を演じて生きていく

刺さった棘はいつか大きな杭になって

僕を磔にするだろう

抱えた石はいつか巨大な重石になって

僕を深い海の底で溺れさせるのだろう


生きていく

自らが掛けられる杭を背負い

自らの死体を沈める石を抱え

僕は今日も歩いていく


願わくば

この背に翅を

この手に珠を


そうすれば

きっと見つけられるから

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