81話 玩具の砦
カレン視点です。
カレンは本来、単語を伸ばしがちな子ですが、地の文の時にそれすると読みにくいので、漢字にルビ振ってます
おとーさんとおかーさん、それにアイリおねーちゃんがセンに乗って走ってく。
「ついてかなくて良かったのか?」
「ついて行きはしたかったけどねー。物理的に無理だし仕方ないよー」
センの上は3人で定員。そこにボクは乗れない。だから仕方ないんだよー。ガロウ。
「後、ボクが抜けちゃうとうちの家族みーんな、君らのとこから離れることになっちゃうからねー」
おとーさん達のお仲間に悪い人はいないっぽいから、ほっといてもいいっちゃいいんだけどねー。それでも、いないよりましでしょー。
「なるほど。ありがとう」
「ありがとうございます」
「どういたしましてー」
お礼を言われるよーなことでもないんだけどねー。
「っと、喋ってばっかじゃダメだよねー」
えーっと、残ってる人らをまとめてる人ってどこだろー? 西光寺 薫さんと、西光寺 賢人さんの双子の姉弟。もしかして、まだ馬車(馬はいない)の中? なわけはなさそーだね。足音がしてるし。
「待ったか?」
「ちょっとはねー。でも、早かったよー」
「馬車の中での取り決めは弟にぶん投げて来たからな。姉はさっさと来れたのだよ」
ふふんってちょっと胸を張ってるけど、胸を張ることじゃない気がするー。まー、いーけどさ。
「何でわざわざ来たんだ?」
「ん?そら、念のための護衛だ。それに、受け止めたエルフもいるだろう?もっとも、森野氏や清水嬢がなんも言わずに出てったんだ。そのまま保護することになるだろうが」
「え。保護ですか?」
え? 何を言ってるんだろー? このエルフ。
「撃たれて来たんだ。さすがに回復は必要だろう?」
「回復は魔法でしていただけましたよ。であるなら、私は突貫するのみです。ここでのんびりしているのは皆に申し訳が立ちません。それに、皆様は私を必要としておりませんよね?」
「確かにしてはいないが…」
「で、あるならば。私としては行くのみです。先ほどはありがとうございました。回復していただいた勇者様は当に出発されてしまっているのが心残りではありますが、後で会えるでしょう」
そう言うと突っ込んでいくエルフ。まっじめー。
「拠点が出来たらエルフを呼び寄せられるか?」
「無理だと思うよー。今の問題は中に入らないと駄目っぽいしー」
『エルフは本樹の奉仕種族だからねー。本樹第一ってことさー。あぁ。天然物のハイエルフは本樹と世界の管理者的な立ち位置だから、ちょい立ち位置違うよー』
それをぶん投げろと? りょーかい。
「奉仕種族か。神話とかでしか聞いたことないな。そういうものならそういうものと認識するしかないな。で、天然ってのは?」
「ふつーはハイエルフは世界樹に生ってー、そこで育つからねー。ボクは実が出来ただけー。ほんとの親はおとーさん達!そー言うことを言ってるよー」
育つのに必要な一切を仕方ないとはいえ、世界樹はくれなかったからねー。
「なるほどな。っと、話が大分逸れたが、障壁は消えてる。離れるなよ。何せあの障壁は朝昼夜氏と葉蔵氏のシャイツァーの合わせ技だ。朝昼夜氏の方は条件ないが、葉蔵氏の条件──乗り物に乗っている──はセンがいなくなって満たせなくなったからな。護衛するには離れられると困る。カレン嬢は余裕だろうが」
まーねー。避けるだけならちょーよゆー。二人は守れないけどー。
「障壁は朝昼夜って人に葉蔵さんを乗っけてやってたんだっけー?」
移動中にそう言ってたよねー? って思って聞いたら、ちゃんと頷いてくれた。なら、
「乗り物認定が大事なんだったよねー?動力源がセンでー、乗る部分が朝昼夜さんで通るならー、朝昼夜さんに手綱とか付けて、強引に動かしたらダメなのー?」
「それじゃ動かんだろ」
「滑りはするでしょー?」
微小だけど。てか、
「手っ取り早く、認識ずらしちゃえばー?」
「……その発想はなかったな」
だろーね。へーきで味方を操っちゃう人とかあんま信用出来ないもん。
「あえて聞くが、何でそれをセンが出撃する前に言ってくれなかったんだ?」
「おとーさん達に嫌われたくはないからだねー」
二人なら、別に嫌いはしなさそーだけど。
「あなたなら、別にドン引きされてもいーし。何より、あなたは皆の安全を考えるならー、そーいう選択肢を選べる人でしょー」
おとーさん達もどっちかと言うとそーいう人だけどさ。
「だな。だが、私は良くても、そっちの二人はいいのか?普通にどんびいてるが」
なかなかいい笑顔で問いかけてくる薫さん。割といい性格してるね。この人。
「ガロウとレイコ?別にいーでしょ。こーゆーとこで甘やかしてもいいことないよー。特にガロウ」
「それもそうだな」
俺!? みたいな顔してるけど、そらそーでしょうに。
「レイコを守りたいんでしょー?なら、どんびいてないで、やれることは何でもやるの精神でいなよー」
「だな。私らも利用する精神で構わん。勿論、君らの今の庇護者たる森野氏や清水嬢もな」
「え。それは……、えぇ……」
純粋だなー。望んで人間領域に来たわけでもないはずだし、あんな地下にぶち込まれてたのにー。人生経験がほぼないボクでさえ、そー思うの、割とやばいよー?
「一番守りたいのがレイコ嬢なのだろう?なら、うまく他人を使え。二人やアイリ嬢、カレン嬢は二番に置いてやればいいさ。というか、君、遠慮するレベルで二人のことは信用しているんだな。あぁ、それが悪いって言いたいわけじゃない。普通に意外なだけだ」
「そら世話になるんだからな。ほぼ戦えないから邪魔にしかならねぇことも自覚してるし。んで、んなの聞くのおかしいかもだが、さっき言ってたのやらないのか?」
「さっき?……あぁ。葉蔵氏の操作か?今はやらんでいいだろ。そこまで差し迫ってるわけでもなし。世界樹との距離は遠く、世界樹、もとい世界樹を支配しようとする存在の攻撃はノーコン。チヌカは脅威なのだろうが、今は森野氏達と戦っていて手一杯。であるなら、さきの非道の準備はしても、実行には移さんさ。肝心な時に非道が効果を発揮しなくなっても困る」
薫さんの言葉にちょっとだけ引く二人。「やっぱやるんだ」って思ってそー。
「姉。狩野さんが目くらましをするってよ」
「OK。さっそく、実行してもらえ。あぁ、皆。驚くなよ」
馬車の中からの賢人さんの声に答える薫さん。それを合図に、馬車に重なるように光が出現。例の幻かーって思ってる間に、その光はボクらの乗る馬車の形を形成。
センは所用でいないのにー、曳く人のいないはずの馬車はまっすぐ進んでってー、いい感じのところまで行くとくるりと方向転換。世界樹とこちらの視線を遮るように光を残して、背後の森へ消えていったねー。
「今、目の前に展開されてる光はただの幻だ。触れないようにしてくれよ。手が光を突き破って、幻じゃん!ってなると面倒だからな。もっとも、それでこっちを攻撃してくるようになるとは思えんが」
まぁ、現在進行形であんま狙われてないもんねー。世界樹を乗っ取ろうとしてる奴としては、こっちを最優先で攻撃したいだろうけどー、距離があるからねー。
世界樹もただでこっちを攻撃させない。そのせいで、攻撃はちょっとズレる。そのちょっとのズレは、距離が離れれば離れるほど致命的になるからねー。
たった1°のズレでも、1m離れれば1.75mm。それが1 kmになれば、1.75 m。もはや特定個人には当たらないよねー。
この広場は結構広いしー、世界樹の抵抗もあって誤差は1°じゃすまないしー。誰かに当たればいいじゃなくてー、特定個人……よりは大きいけど、特定集団にぶち当てないといけないしー。と、悪条件がいっぱい。まー。当たんないよね。
ちゃんと世界樹から見て一直線になるように馬車も置いて、被弾面積はちゃんと最小になってる。
「あの私達に何かすることはございますか?」
「うん?レイコ嬢達がする仕事?ないぞ。あぁ、いや。違うな。ここか、馬車の中にいてくれ。以上だ。何せ今、取り組んでいるのは拠点の構築だが、別に土木作業するわけじゃない。適したシャイツァー持ってる奴がいるから、そいつ任せだよ。となると、後は万一のときの武力だが…。二人に武力はないだろう?だから、じっとしててくれ。それ以外にない」
わー。ばっさり。でも、事実、二人に出来ることって、それ以外にやることないからねー。
「あぁ。心配しなくとも、二人がいなかろうが私はここに出て来てたさ。ちゃんと外で見ておく人は必要だからな」
擁護するのね。さっきの発言の後に即座に続けてだったらよかったのに、三拍くらい挟んだねー。「一応、言っとくか」感がすごーい。
「姉。変なことはしてないか?」
「弟。外に出てきて姉に言う第一声がそれか。弟の中で姉の印象はどうなってるのか問い詰める必要があるな」
「ないぞ。いつも思ってる通りだ」
「そうか」
え。納得しちゃうのー!? あ。ガロウが普通に声に出して言ってる。
「ただの戯れだからな。別に姉は弟にどう思われてるかくらいは分かってる。くそ心配かけたことがあるからな」
「それな。ある程度、反省してくれてよかったよ」
「弟だけでなく父母にもあぁまで心配かけたからな」
話にはさらっと聞いてたけど、好奇心のままに実験? をしたらやらかしたんだっけー。まーなんでもいーけど。
「それより、進捗は?」
「恵弘が頑張ってるから、あともう少し。有宮はもう準備できてる」
「ならよし。弟。弟も姉と同じように攻撃に備えてろ」
「勿論」
まー、来ないんだけどねー。もう突っ込んでったけど、さっきまでいたエルフが奇跡的だったんだよねー。
「てか、レイコ。ソワソワしてないで、じっとしてなよー」
「皆さんが頑張っておられるときに何もしないというのは何とも居心地が…」
レイコは神獣だし、貴人にあたるはずなんだけどねー。じっと誰かが動いてるのを待つときはあったはずー。薫さん達が勇者だからってのが効いてるー?
「であるなら、戦えるようになるべ「え。あ」なんだ?ガロウ氏。レイコ嬢が戦うのは良くないのか?」
「いや、そういうわけじゃないが……」
薫さんの言葉に割り込んだわりに、詰められたガロウの言葉は尻すぼみ。レイコがいないときにおとーさん経由で聞いたけどー、戦った時にレイコは失敗したんだもんねー。
「ふむ。であるなら、私から言うのは止めておこう。だが、森野氏や清水嬢とは話しておけよ?今、「何かしたい」って言ったレイコ嬢なら、いずれ爆発しかねんぞ」
「だねー」
もー。ガロウ。また驚いた顔してこっち見ないでよー。
「ボクが何も言わないと思ったー?おとーさんとおかーさんはどっちかと言うと待つけどー。おねーちゃんとボクは言うよー?」
おとーさん達が待つのは「待っても何とかなる。どうにもならないときは何とかさせる」っていう思いを多分、無意識に持ってるからー。実際、魔法で何とかできるだけの力を持ってるしねー。
でも、ボクやおねーちゃんはどうにかなるにしてもー、その過程でどうにもならない可能性があるのが嫌ー。
「二人の前で言わないのは卑怯だと思うなら思ってくれていーよー。実際、「二人の意見を尊重する」って言ってー、「その姿勢でいいのー?」って議論から逃げてるよーなもんだしー」
とはいえ、ボクらとおとーさん達で思想が違うってのも悪いことじゃないんだけどねー。ボクらが鞭で、おとーさん達が飴。こうすれば、ガロウがちょっと二人に話しやすくなるかもだしー。
特にガロウとおとーさんは男。二人でお風呂行くこともあるんだから、口も開きやすくなるでしょー。
「へいへい!準備出来たって!☆」
あ。有宮さん。その後ろに建築の肝になる大宮さんもいるね。何故か豊穣寺さんもいるけど。あの人、シャイツァーはパソコン? だったよねー。何が出来たんだろー。
「早速やるべ。繰り返しになるけど、動かないでね!ほいほいほいっ」
ボクがこっちに来た人見てる間に、実行の許可を取ってたもんねー。ほんとに早速、有宮さんは嬉しそうに袋から種をバラまいてるねー。地面に落ちた種から即座に芽と根が出てするすると育ってくねー。出て来た根はたちまちのうちに太さを増して、大地を切り裂いて進んでくのにー、芽は伸びないねー。
魔法だからとーぜんなんだけど、種の挙動としては変だよねー。あ。種が地面に潜っていった。そして、そのままぐいぐいと根を広げてるっぽいねー。
種というか、芋の育ち方な気がするねー。有宮さんのシャイツァーは種袋。芋も種と言えば種なんだけどねー。あの人の認識だと種と芋は等価じゃないのかなー。
「うぃ。そろそろ揺れるよー。でも、攻撃じゃないから、安心白い恋b「それは止めて置け」んにゃピクノメーター」
「何の体積を測る気だ有宮嬢」
「知らんガーナのカカオは美味しい!」
「カカオのままでは喰えないぞ」
んー。会話の中身が空っぽだー。作戦進行中なのにゆっるゆるー。
「はいはいはーい!揺れるぞい☆」
ふざけた注意の一声の後、ぐらぐらと揺れて目線がちょっと高くなったねー。
「切り株で高さを稼ぐとともに、建物の基礎を作るべ。まぁ、攻城兵器から常に攻撃を受けてるようなものだから、無駄に高くしないけどね。被弾面積でかくしたところでだし。一応、水分をいっぱい含んでるから火事もちょっと怖くない!さぁ、殺っちまえ!えこー!」
「建物作るのに、殺そうとすんなし。まぁ、いい。出でよ!『玩具の砦』!」
おとーさん達みたいに紙を掲げる大宮さん。でも、その紙の書き込みはおとーさん達とは段違いで、精緻な作品になってるねー。そんな大宮さんの頑張りの結晶が光に包まれて宙に消えて、瞬間的に周りに建物が出てきた。
「待て待て待て待て。勇者だってのも知ってるけど、ただの魔法でこんなの出来るのおかしいだろ!?」
「それがシャイツァーだ。そして、俺はこういう建物を作るのが本職。そんな俺が本気で設計図を書いてんだ。こんくらいの暴虐は当然だろう」
「私も手を貸したしな。魔法で誤魔化せるとは言え、強度不足とかにならんように構造計算は必要だからな」
なるほど。豊穣寺さんはよくわかんないけど、魔力の消費量を減らせるように協力したっぽいねー。「変な形になっても建物は出来るけどー、その分だけ脆くなるから魔力で補わないと駄目ー!」とかありそーだし。
「要塞出来たなら、幻術切っていい?」
「大宮氏。大丈夫か?」
「計算上は問題なし。カレンちゃん。世界樹に頼んで一回くらい攻撃をさせてくれ」
「りょーかい」
というわけでー、一回くらいなら攻撃飛ばしてもいーよ。
『どういうわけなの!?まーいいけど』
「言ったよー」
「了解。了解も得られたし、切っていいぞ。狩野嬢」
「切ります」
ボクら今、建物の中にいるから、変化がよくわかんないんだけどー。誤魔化してた幻覚が消えて、出来た建物が見えたかな?
『えぇ……。見た目が終わってんだけど。ナニコノ……ナニコレ?切り株の上にどぎつい見た目の建物が建ってんだけど。赤とか青とか黄色とかのブロックで構成されてて……あぁ。これ、勇者様の世界でいうおもちゃのお城か!……いや、何で?』
ボクに聞かないでよー。
『あ。飛ばすよ』
「来るってー」
「することないけどな。あ。一個くらいできるか」
一個……。え。壁が透けて外が見えるようになったー!?
「マジックミラーで透過してる。向こうからは壁にしか見えない」
説明してくれている間に弾が接近。でも、当たる前にエルフが絡めとられたねー。
「あれは網だ。弾と化してるエルフさん達を受け止める用のな。砦の尖塔の間に網を張った。この網を付けてもおかしくなさげな建物が玩具しか思いつかなかった」
だから、玩具にしたってことねー。
「公園の遊具の方がそれっぽくないか?」
「も、あるが、防衛施設じゃねぇだろ。それ。だからだよ」
「砦みたいな遊具もあるけどね!多分、最近、撤去されてるけど!」
向こうの話されるとよくわかんないねー。
「あのあの。それよりも、どうやって助けるんです?網ごと落下されてしてしまっていますよ?」
「それで正常動作だ。そして、やれることはないぞ。あの網に何かが引っ掛かったら網は下のクッションに落ちるようになってる。引っかかったエルフさんらには落ちてからは、自力で脱出してもらうしかないな」
「なら、いいか。それ以上は私らが危険だしな」
レイコが「えぇ……」って顔してるねー。でも、危険なのもわかってるから、それ以上は何も言えないって言うー。まー、世界樹に「時期は図ってね!」くらいは言っとこー。
さて、無事に拠点は出来たからー。後はおとーさん達だね。しくじるとは思ってないけどー。早く無事に帰って来てくれないかなー。
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字衍字にその他もろもろ。もし何かあればお知らせいただけますと嬉しいです。
また、申し訳ありませんが先月に引き続き多忙継続中です。来月は今月より怪しいです……。




