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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 エルフ領域
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80話 続々エルモンツィ

「おマエ……まさか!?」

「…見た通りだよ」


 手数が足りなかったから、お前の鎌を強奪した。ただそれだけ。



「…一切の抵抗がなくて、よかったよ」

「たかがその鎌を奪っタだけで、いい気になるナヨ!」


 なってないよ。本命はお前のでかい鎌。ワタシ(アリア)もそう言っていたしね。



 振り下ろされる鎌はわたしの大きな鎌で受け止め、小さい鎌は強奪した鎌でぶん殴る。強度は無くても、魔力を流して強化すれば一撃程度は耐えられる。余った腕で振るってくる小さい鎌に対しても、こっちが余裕で勝ち切れる。



「ちいッ。私の鎌を有効に使ウナ!」

「…嫌だよ」


 ある方が便利だもん。っと、ムカついたのか小さい鎌を狙って大きい鎌を振り下ろしてきた。別にこの小さい鎌に拘泥する気は一切ないんだけど。



 受け止めて競り合うだけ無駄。魔力は一切流さず、インパクトの瞬間に手を離す。小さい鎌は一瞬で霧散し、エルモンツィが嬉しそうな笑みを浮かべながら、追撃に小さい鎌を振るってくる。



 ちょっと勇者だったアリアの成分が抜けて、馬鹿になってない? わたし本来の鎌を横向きにし、小さい鎌を受け止めつつ、軽く押して消失させる。衝撃はないとは言えないけれども無視できる。



二本腕ではありえない状態で振り下ろされてくる鎌目掛けて鎌を叩きつけ、攻撃を防ぎつつ、衝撃を使って飛び下がる。お父さん達の傍っていう間違いのない安全圏に飛び込みながら、小さい鎌に手を伸ばしてもう一回、掌握する。



「…これで元通り」

「貴様ァ!」

「…何で激高してるの」


 それくらい想定してしかるべきなのに。



「…わたしに気を取られていていいの?」


 お父さん、お母さんにセン。他に火力になりうる仲間がこっちにはいるんだけど?



「はっ!奴らなぞ、お前をひねり潰シてからでイイ!強くなった私が、勝ツ!」

「…そう」


 エルモンツィはわたしにまっしぐら。有言実行の極みだね。



エルモンツィは体への被弾はあまり気にしてない。アリアが鎌を狙ってって言った理由がよくわかるね。気にしてるのは特に動作に影響が出る手と足だけ。しかも、手は大きな鎌を持ってるのだけ。だから、皆の援護が刺さる。



もっとも、胴への直撃は「攻撃を逸らす」という点ではほぼ無意味。普通なら体勢を崩して狙いが終わったり、振り下ろしとかの威力が落ちたりするはずなんだけど、ご自慢の肉体でねじ伏せてる。



 でも、完全に無意味ってわけじゃないんだけどね。被弾して肉が盛大に抉れれば重心が狂う。それを嫌ってるのか大きな被弾をしたら回復してる。でも、それってエルモンツィが持ってる資源──魔力なのか瘴気なのかわかんないけど──を削ってるのだけど。割と資源は潤沢なのだろうけど…、じわじわと削れてくよ?



 そして、皆の大きな鎌への攻撃はちゃんと意味のある所を狙い撃ちしてる。超硬い大鎌と言えど、それよりも硬いわたし達のシャイツァーで一点ばかり狙えば、打ち勝てる。



 消耗と一撃で決められる結末。それを狙っているのだけど、エルモンツィはどっちも気付いてないんだろうね。多分。



 まぁ、こっちもお父さんとお母さんの「紙」っていう資源を、じりじりと削られつつあるのだけど。こっから世界樹に突撃しないといけないんだけど……。後を考えている余裕はないかも。



 腐っても伝説に残っているだけはある。これだけやりあっていても、体力は有り余ってるみたい。動きに精彩を欠くどころか、腕が増えたのに慣れて来たのかちょっと鋭い攻撃が増えて来た。



 やんなるね。



 あっ。また小さい鎌がお亡くなり。小さい鎌しか殴ってないんだけどな。純粋に耐久力が尽きたね。魔力で強化しても元が(脆い)。無理やり維持しても、|投資に対する利益が見合わない《コストパフォーマンスが終わってる》。壊れるならそれでよし。



「…嬉しそうにしてるけど、繰り返すだけだよ」

「はっ。ホザクナ!」

「…ん」


 ほざくなと言われたので、攻撃を掻い潜って早々に強奪してやった。さらにエルモンツィを煽るため、強奪したばかりの小さい鎌をぶん投げて、小さい鎌を撃墜。その上で、さらにもう一本を強奪。



 わたしを狙う小さい鎌の比率が上がった。わたしを狙う鎌が増えれば、一か所に固まりやすくもなる。まとめて消し去れるね。



その分、抜けてくる鎌の量もちょっと増えちゃうけど。まぁ、致命傷には程遠いね。ちょっとした切り傷。少しばかりお父さんとお母さんから伝わってくる「大丈夫?」って念が強まってるのが気がかり。



 あいつ、わたしを吸収するって言ってるもんね。そして、あいつの鎌、生き物を殺せば確実にそっから鎌を出せるもんね。悪影響出ないかな? って心配になるよね。いくらわたしが「心配しないで」って顔をしていても。



でも、大丈夫っていう確信はある。死んじゃったら別だけど…。まず、毒とかの心配はいらないってアリアが言ってた。



 そして、アリア曰く、わたしの持ってる魂の総量の方がエルモンツィより多いし、魂として純粋。微妙な傷から奪い取ろうとしても、逆にその道を通ってわたしに向かってちょっと不純なエルモンツィの魂が流れ込むよ。



純粋、不純っていう言い方が正しいのかどうかはわかんないけども。概念としては合ってる。



 んあっ。大きい鎌を殴りたかったのに、腕で鎌を受けて来た。それはちょっと想定外だけど……、立て直せる。体をひねって避けて、横なぎに振るわれる大きな鎌をわたしの大きな鎌の柄で受ける。



 押し合いになると少し不利になるけれど、お父さんとお母さんが魔法で支援してくれる。それでできた隙間にセンが体をねじ込んで一撃離脱。



 無事、立て直せたね。



「私と手を取りあウ道はナイか?」

「…は?」


 何でいっちょ前に武器を収めちゃってるのさ。ちょっと押されてきてる感があるからって、それは無いよ。



「…既に言葉は交わしたでしょ。だからそれで終わり」

「強くなりたいダケなら、別に取リ込む必要ハないハズ」

「…残念ながら、それだけじゃないよ。アリアと話して確信した。…わたしが抱いている飢えは欠けた魂を何かで代替するため。(エルモンツィ)を取り込んでしまえば、それとおさらばできる。なら、やらない手はないよ」


 会話は終わり。そう宣言するように小さい鎌をぶん投げ、作ってもらった距離を詰める。



 それに、心配されるから絶対に口に出せないけれども、わたしには「アリアを吸収しちゃったからもう他に選択肢が、ない」って確信してるってのもある。



なにせ、飢えという形で発現していた魂の欠損を埋めたいという衝動は、偶然とはいえアリアと合一したことで満たされてしまった。ほぼ満たされることのない渇望を癒す唯一にして最高の手段を見つけてしまった。



だから、魂は満たされることを求めて、わたしの体を食いつぶしてしまいかねない。そうなれば、魂だけではこの世界に存在できないから、わたしは死ぬ。



 せっかく、わたしのことをちゃんと見て、求めてくれる人たちに会えた。ここで死んで終わりたくはないから、やらない未来はない。



そして、今、この場には二人とセンがいる。万が一の支援を受けられる。これ以上の環境はもう、ない。



「…悪いけど、死んで。わたしのために」

「強情ナ。だが、私も主のためニ死ぬわけニハいかないんデネ!」


 叩きつけた鎌が大きな鎌と激突。今回もわたしもエルモンツィもぶつけ合ったまま押し合いをする気はない。鎌同士の激突は大きな反発を生み、その反発の勢いで大きく振りかぶって遠心力もろとも何度も、何度も、何度も叩きつける。



 こんなことやっていると、小さい鎌へ対応できなくなっちゃう。でも、わたしは一人じゃない。二人とセンが何とかしてくれる。だから、わたしは全力でエルモンツィの本体たる白授の道具(大鎌)へ攻撃を叩き込む!



 勿論、みんなに頼りっきりってわけじゃない。当然のように抜けてくる小さい鎌もいるから、それくらいはちゃんと避ける。



んー、距離をとってもいいけれど、繰り返しになるだけだよね。なら、このまま継続しようか。いい加減、決着をつけないとお父さんたちの紙が切れかねない。



 酷い被弾をしていないという意味では、今のところエルモンツィとの戦いは優勢。でも、それを実現するためにお父さん達はかなりの魔法を使ってる。戦闘前の紙の全数は把握しているから、まだ余裕はあるとはいえるけど、既に耐久限界に近い紙は何枚もある。



 別に紙を使いきっても、魔法を使えなくなるわけじゃないけど、後に響く。それを踏まえると、今の段階からちょっと攻め方を荒くしていくしかない。



「フム。焦っているノカ?フハハ。辛かロウ。恐ろしかロウ。目に見えて被弾が増えているゾ!」

「…致命傷じゃ、ない」

「はっ。その勢いデハ、先に膝をつくのはわたし(アイリ)ダゾ。だが、心配することハナイ。悔しがる必要もナイ!なぜなら、わたし(アイリ)の前にいるのは、エルモンツィ!チヌリトリカの忠実なる僕にして、人間領域に重大な傷跡を残した伝説のチヌカなのだから!」


 知ってる。知ってることを改めて言わなくてもいいのに。服が赤に染まってるから優勢だと思ってるのかな。でも、残念。やっぱり勝つのはわたし達だ。何せ、ようやく成果が出た。



 硬い硬い白授の道具たる大鎌。その大鎌が一点集中攻撃によって、僅かにひびが入った。



 〆の作戦決行の合図は共有できていない。作戦内容も共有できていない。だって、言ったらバレる。でも、一点集中したいってのは行動で伝わってるのは確定してる。だから、後は決行の瞬間に合わせてもらうだけ。芸も何もない、作戦ですらない博打モドキ。こんなことしたことはないけれど、お父さん達とならできるでしょ。



 芸もなく繰り返される大鎌の激突。その中で、エルモンツィの足元に着弾したお父さん達の岩槍が地面をえぐった。エルモンツィはその穴に足を取られて僅かに姿勢が崩れたまま、大鎌を振り下ろしてきた。ほとんど通常と変わらないハズの攻撃。でも、狙うなら今。



わたしは接近戦以降後の「いつも」のように真っ向から受けると見せかけて、小さい鎌を強奪しながら横に逸れる。代わりに、頭から角のように障壁を生やしたセンが突っ込み、鎌のヒビに角を叩き込む。



「「『『竜巻』』」」


 同時に、お父さんたちが既に用意していた紙を使って代償魔法を発動。消え去った紙から出現した荒々しい風が、周囲の小さい鎌を巻き込みかき消しながら上空へと立ち昇っていく。



 その攻撃の隙間を縫って、エルモンツィから生えている小さな鎌を持つ腕を二本切断。わずかに体勢がブレた瞬間を逃さず、センが大鎌の軌道からズレる。まだ勢いが残って振り下ろされる鎌をお母さんがヒビの部分に合わせてファイルで受け止め、お父さんがペンを上から叩きつけて挟みこむ。そこへ叩き込まれる『聖属性』の代償魔法。



 紙が消えて一瞬、眩い煌々とした光に大鎌が包み込まれる。わたし達には目くらましにならない閃光をよそに、エルモンツィの大鎌を持つ腕へ小さい鎌を投げつけ、まだ無事な小さい鎌を持つ腕の動きを誘導。



逃げ道を全て潰して得た絶好の機会。やりたかったことを現実にするために、エルモンツィの腕を狙って鎌を振り降ろし、腕をぶった切る。



「チィッ…!」


 ひらりと舞うエルモンツィの腕と鎌。それを回収しようとするエルモンツィの前進を、お父さんとお母さんが一歩前に詰めて止める。



 ぶっ飛んだエルモンツィの鎌と腕から、斬られた手を足蹴にしてぶっ飛ばして鎌だけを回収。ちょっとだけ魔力を流してみる。…うん。抵抗はかなりあるけれど、ごり押しで何とかならないこともないね。



「ちょっ……。お前、それはダメダロウ!?」

「…まだ甘いよ」


 強奪した鎌とわたしの鎌をぶつける。…ん。これを続けるよりもいい手法があるね。



「…セン!思いっきり!」


 詳しい説明は一切なし。だけど、それで伝わった。



 地面に寝かせた鎌。その一番脆い部分を足に光を纏わせたセンが思いっきり踏みつける。一度と言わず、二度、三度。



 でも、そんなのがずっと許されるわけがないよね。エルモンツィが発狂しながらお父さん達の攻撃をガン無視して突っ込んできた。奪還される前に鎌を回収。鎌を潰していたセンには、エルモンツィの突進を受け止めてもらう。



 エルモンツィの鎌にあったヒビは、もはや亀裂へと進化している。これなら。



 わたしの肉体に魔力を流して『身体強化』の濃度を上げる。そして、鎌の刃にも魔力を込める。エルモンツィの鎌をわたしの鎌に沿えて、わたしの鎌を下へ勢いよく滑らせる。



 たったそれだけ。たったそれだけの動作でエルモンツィの鎌の刃はすっぱりと両断された。その裂け目から魔力を叩き込んでエルモンツィの魂の掌握にかかる。



わたしだけど、わたしじゃない。そんな不思議な感覚がするものがわたしに流れ込んでくる感覚は既にアリアの時に経験した。でも、今回はそれを遥かに上回る。だけど…、想定よりは弱いね。お父さん達が代償魔法でぶち込んだ聖魔法が効いてるんだろうね。



…なんだ。エルモンツィにも勇者だった時の記憶はあったのね。というか、アリアから来たものよりも多いじゃない。エルモンツィって名は、彼女の本名『衛津(えいつ)瑠衣(るい)』から来てたのね。



でも、しんどくない経験はそれくらい。後は全部、辛い経験だけ。分割された魂の比率がわたしの方が多いのもそのせいかな? こっちに来る前の衛津瑠衣は割と普通に幸せそうだったし。経験した喜怒哀楽とかの総量で別れてるって考えると、この辛い感情ばかりってのも納得。



辛い経験を自分のことのように味あわせられるのは、ちょっと辛いかも。でも、それでも、耐えられる。



ただの辛い経験であれば、わたしも体験した。経験したことのない「愛した人を失った」とか「赤子を失った」とかでさえ、自分のように思えるのは確か。流されて自分を失いそうになるくらいには辛い。けど、その対となるはずの得た喜びがなく、張りぼてのようにしか思えないんだよね。



 だから。エルモンツィの魂──いわば勇者、衛津瑠衣の負の思い出部分を「だから、何?」と一切合切切り捨てて、わたしはわたし。そう主張してねじ伏せる。



 掌握完了。だのに、まだエルモンツィは残ってる。奪った鎌に魔力を流して、いつもの汚い白と黒が混じってるのか混じってないのかわからない色の刃から、美しい刃へと切り替える。



 一閃。エルモンツィの体がズレて、倒れ伏す。



『主ヨ……』


 その主がわたし達の苦境の原因ではあるのだけど。まぁ、こっちで愛しい人を見つけたり、なんだりしてたみたいだし、つり合いは取れてるのかな? わかんないけれど。



 折った刃の先、切り捨てたエルモンツィの肉体。そこからわたしの魂の欠片を拾い集めて融合。これでわたしの魂は完全に満たされたね。もう、あの狂おしいほどの食欲はない。



融合の過程は辛いなとは感じたけれど……。正直、ワタシ(アリア)(エルモンツィ)わたし(アイリ)と同じと感じられても、心の奥底では「わたしはわたし。過去は過去」と思っているから、どこか他人事とも感じてる。



けれど、いや、だからこそ。かな。この言葉は絶対に送らないと駄目だと思う。



おやすみ。ワタシ(アリア)。おやすみなさい。(エルモンツィ)。そして──お疲れ様。勇者だった私(衛津瑠衣)。わたしはわたしとして、生きて行きます。

 お読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字その他、もし何かありましたらお知らせいただけますと喜びます。


 ……もし来月や再来月あたり投稿がなかったら「忙しすぎるんだな」と思ってお許しください。

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