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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
4章 エルフ領域
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78話 エルモンツィ

 アイリ、俺、四季の順でセンに乗って、いざ突貫。目標は何故かいるチヌカの一人、エルモンツィだ。



 たまに飛んでくる世界樹からの非人道ミサイルはセンが巧みなステップで回避。どうしようもなさそうなものはアイリが鎌を振るって強引に軌道を変える。



 俺らはやることがない。地面に着弾したエルフさんにも息のある人はいるが、ほとんどが致命傷。そして、心情的に進んで見捨てたくないがこれから先、激戦が予想されてる。だから、見捨てざるを得ない。



 俺らの魔法は割となんでもできるが、魔力と紙に依存しまくる。大量に回復魔法を使っている余裕が、ない。紙が無くて回復できないってのは洒落にならない。そして、紙があっても魔力使用量がでかくなりすぎてるってのはもっと洒落にならない。



 自分や家族と知らない人の命。同じ皿の上に載せたら、天秤は絶対に前者に傾く。



「アイリ。まだ余裕ある?」

「…ん。勿論。それより、あいつを見ておいて。いつこっちに向きを変えてくるか……とか言ってたのが悪いのかな、来たね」

「ね」

「ですねぇ」


 さっきまで世界樹まっしぐらだったのにな。エルモンツィ。何が気になったのか唐突に後ろを見ると、俺らが視界に入ったのか一直線にすっ飛んできた。



「とりあえず、当初の想定通りに(クラスメート)の方に突っ込んでいかれないようにするために、外周付近を走りながらこの広場の逆側を目指すよ」


 声をかけて、センに動きを変えてもらう。もっとも、センが賢いからこうやって上で喋ってるだけでその通りに動いてくれるのだが。



森に入るかどうかは相手がどんな能力を持ってるか次第。今わかっているのは、見りゃわかるでかい鎌を持っていることと、割と速いことだけだ。



前者は記録にもあった。後者は、彼我の相対速度から判断できる。何せ、徒歩に比べて明らかに迫ってくる速さが違う。



 ただ、あいつがこっちに突っ込んでくる理由がわからない。さっきまで世界樹を優先してたのに、わざわざこっちに突貫してくる理由は何だ?



「…鎌の数、増えてない?…おっきいのじゃなくて、小さいのだけど」


 ん? 



「確かに。あいつの周りをぐるぐる回っているな」

「増えた要因は何なのでしょうね?確かに、さっきまではなかったですよね?」

「だな」


 サイズの問題ってのはあるか? 遠かったから黒い点にしか見えなかったとか。少なくとも、隠し持ってたってのはほぼありえない。



何せ、エルモンツィは歴史に名を残す存在。世界樹がああなったのはいつからかは分からないが、そん時からずっと戦っているなら隠し持ってることなんて出来ないだろう。



「…投げてもないのに小さい鎌が近づいてきてるね」

「アイリみたいに自在に操れる能力を持ってるんだろ」

「ですね。そして、魔力切れは望み薄です」


 俺らのシャイツァー(魔法の道具)に対応する白授の道具だろうしな。あのでっかい鎌。シャイツァーは物によってピンキリだが、魔法を使う補助をしてくれる。



 伝承で鎌以外の情報がほとんどなかったエルモンツィだ。その白授の道具の魔法補助は鎌に特化してるんだろうし、その分だけ、魔力補助も強力だろう。



 飛んできた鎌は滑らかに空を舞う。操作をどうやっているのかはわからないが、十個程度ならば余裕らしい。……きっと数十、数百も余裕なのだろう。



「…お父さん。お母さん。鎌に構ってばっかりだと、世界樹の攻撃を捌ききれない。…鎌は対処を割と任せていい?」

「了解」

「勿論です」


 世界樹の非人道的ミサイルは質量がやばい。俺らのシャイツァーじゃ軽くて投げるだけじゃ受け切れない。超妥当な判断。



 いくらミサイルはこっちに飛んでくる数がそんなにないと言っても、当たると致命傷になりかねないものな。



 でも、ミサイルの飛来数は少ない。普通に暇なときがある。アイリはその時間を鎌の迎撃に当てる。今がその暇な時間。任せていい? と言ったばかりなのに、アイリは大きくした鎌をセンに乗ったまま振るい、まとめて三個撃墜。鎌を一瞬で縮めると、手元でくるりと鎌を回転させ、再度、巨大化。飛んできたミサイルに叩きつける。



 衝撃で大きく弾かれる両者。その間に俺と四季が鎌を落とすためにシャイツァーをぶん投げる。んー。あいつら、小回りが良すぎる。ほぼ当たらん。めっちゃぬるっと避けられる。



だから、数で勝負。俺らは勇者。アイリのように手元にない鎌を操ることは出来ないが、アイリ達、アークラインの皆と違ってシャイツァーを瞬時に手元に戻せる。しかも魔力消費はほぼなし。一発一発の間隔は長いが残弾無限の弾みたいなもの。遠慮はいらない。



アイリの鎌が振るわれ、回避運動をする鎌を四季と挟み込んでようやく命中。



幸いなことに小さい鎌の強度はあまりなさそうだ。これで硬かったらちょっと地獄だった。


ペンが激突すれば容易く砕け散る。世界最高峰のシャイツァーと比べるのが間違いな気がしないでもないが、それでも踏ん張るもののない空中だ。それで軌道がおかしくなるんじゃなく、砕け散る時点でそう判断できる。



「?…ねぇ。なんか鎌の動き、変じゃない?」


 うん? エルモンツィの出してる小さい鎌の動きだよな。それが変ってのは……んーー。言われてみるとなんか変かもなぁって気がする。



「なーんとなくだけど、アイリの鎌にまとわりつこうとしてる?」

「っぽいですね。まぁ、既に5本にまで減っているので微妙なところではありますが」


 俺らを殺しに来てたわけじゃないのか? それとも、最初は殺そうとしてたけど、狙いを変えたか。わからん。わからないが、何故か小さい鎌はアイリの鎌を切りつけようとしていない。



 シャイツァーだから効かないと思っているのかもしれないが……、そうだとしたらんなところで遊んでないで、こっちに来るべきのはず。なのに、それがない。鎌付近に留まっていられればいいって印象を強く受ける。



「あ。もしかしてですけど、アイリちゃんから鎌を引っぺがして持っていこうとしてます?」

「かも?」


 俺らのやり取りを聞いて、鎌の動きを止めるアイリ。それに反応する小さい鎌の動きを見るに、そうっぽい。けなげに鎌を引っ張っていこうとしている。けど、踏みとどまる場もない鎌がアイリの力に勝てるわけもなく。



「…ん」


 ぶるっとアイリが鎌を振るい、刃の側にいた鎌が切られて消える。これで残るは三つ。さらに俺らが追撃して、残りは一。それもアイリが叩き潰して消えた。



「チッ」


 エルモンツィが露骨に舌打ちした。意味不明すぎる。アイリが鎌の動きを止めたといえ、何で俺らが何もしないと思ったのか。



「ならば、仕方あるまい。おい、わたし!」


 ? エルモンツィが喋り始めたと思ったら、意味不明なことを言い出した。



「察しが悪いなわたし。えーと、その白馬に乗ってる中で、鎌を持ってるお前だよ!」

「…だよね。何?」


 会話しながらも、俺もあちらも動き続ける。俺らは望む位置に行くため。あちらは多分、こちらとの距離を詰めるため。



「一人でこちらに来い。お前がそいつらに聞かれたくないだろう話をしようじゃないか」

「あ。アイリちゃん。聞く必要ないですよ。私達は貴方を突き放すつもりはありませんので」

「だな。引き離して何をする気なのかは知らないが、どう考えても罠だ」


 言葉だけでなく行動でもその気持ちを示すように、アイリの体を抱きしめる。四季も俺の後ろから手を伸ばして、腰のあたりに手をやる。



絶対に一人で行かせないから。



「…大丈夫。行かないよ。…二人のことは信頼してる。し、仮に一人で行っても全力で割り込むでしょ」

「よくおわかりで」

「ですねぇ」


 ほっとくとかない。割り込まないにしても、割り込める位置には行く。し、それすら厳しそうなら全力で皆のところに戻って、盗み聞きできる友達に頼るさ。



 まぁ、エルモンツィが言う「話をしたい」ってのにも嘘はないんだろうが。あいつ、こっちに当たりそうな非人道ミサイルまで鎌で迎撃しているもの。あいつには当たらないんだからほっときゃいいのに。



「チッ。ならば、聞いておどろ……まぁ、いいか」

「「いいの!?」」


 途中で言葉きったのって、言うかどうか思い切り迷ってたからだろ!? 敵ながら判断が早すぎる。



「どうせ先の攻撃の目的は割れてんだ。これを言ったって構うまい」

「仮説の段階だったんだが?」


 そして、それを言った時点で仮説じゃなくなったんだが? 賢いのか賢くないのかわからんぞ。こいつ。わざわざこの心の声を言わないが。



「チッ」


 あっ。みたいな顔してんじゃねぇよ。他のチヌカ(チヌリトリカの配下)と違って、妙なところで人間臭い。



「ならば、ますます言ったって構うまい。そして、私がそいつを「わたし」と呼んだことから既に察しがついているだろう?わたし(アイリ)(エルモンツィ)の分割された魂の転生体だよ。故に、わたしを渡せ」

「「断る(嫌です)」」


 アイリをより一層強く抱きしめながら強い拒絶を叩きつける。そして、奴が言葉を紡ぐよりも早く、さらに言葉を繋げる。



「チヌカの魂。その一部の転生体だと言われたって、俺らの答えは揺るがない」

「この子はこの子。私達のアイリちゃんです」

「髪色から察するにお前らは勇者だろう?お前らにわたし(アイリ)のことがわかるかよ」


 勇者ってわかるのか。こいつ。何…って、あぁ。シャイツァーをテレポートさせてたからか。口で言ってるように髪だけで判断したわけじゃないな。賢いところもあるな。だが、賢いのにその程度で揺らぐと思ってるのか。こいつ。



「あなたが言うように、私達はアイリちゃんの半生を知りません。それどころか、ほとんどの接点はありませんでした」

「でも、それがどうした。少なくとも今のアイリは俺らを父母と思ってくれている。ならば、俺らはアイリが心の底から拒絶しない限り、拒絶しない」

「そいつを渡してくれさえすれば、私は完全体になれる。世界樹の防衛に貢献できるぞ?」


 世界樹の防衛をする気はあるのか。チヌカは何がしたいのかわからんな。



「仮に世界樹を守れたとして、その後で敵対する可能性があるんだろう?」

「チヌリトリカ自身と、私達が敵対しないとも限りませんし」


 そら、答えられないだろ? なら、



「みすみす敵を強化する馬鹿がどこにいる」

「そして、あなたは故意にその可能性を除外しているのでしょうが…。別に、あなたが強くならなくても、私達にはアイリちゃんがいます。あなたの理論はアイリちゃんにも通用するはずです。なら、アイリちゃんでいいじゃないですか。元から味方なんですよ?世界樹を思うのなら、あなたが死んでくれませんか?」


 思わずと言った顔でアイリが後ろを向く。そうやっても、俺に遮られて四季の顔は見えないよ。



「それは無理だ」

「でしょう?であれば、私達が受け入れられないのも当然でしょうに」

「だな」


 思い通りに行かないのが悔しいのかギリっと歯を食いしばるエルモンツィ。むしろこっちとしては何で通ると思うのかがわからない。



「そいつはチヌカの魂の一部の転生体だぞ」

「さっき聞きました」

「ていうか、それ言っていいのか?暗にチヌカだと普通の人間には受け入れられないってわかってることになるが」


 どの立ち位置から言ってるんだか、その言葉。これまでのチヌカみたいにチヌカであることを誇ってこないのが、なんか違和感がある。



「過去、チヌカを討滅するために勇者を召喚しておいて、何をいまさら」


 確かに。そんな記録があったな。それを知ってるなら、嫌われてる自覚あってもおかしくないか。…そのことを馬鹿にするようなそぶりを見せないのが、チヌカらしくないが。



「で、本当に私の提案を受け入れないつもりか?」

「愚問だな」

「ですね。翻意を促すだけ無駄です。さ、諦めてさっさと持っている武器を掲げなさい。何があろうとこちらはアイリちゃんを離しませんよ」

「そうか?私を倒した結果、そいつが二人の知るわたしのままである確証はないんだぞ」

「「馬鹿だろ。お前(馬鹿ですか?あなた)」」


 あまりにも言ってることが馬鹿すぎる。この分だと、さっきからポンコツかましてたのも素だとしか思えない。



「罵倒される筋合いはないはずだが?」

「筋合いしかないだろ。お前に渡せば、確実にアイリは失われる。論外だ」

「だが、期待せずに済む」

「愚かですね。私達は親なんですよ?子供のことを信頼しないでどうするんですか」


 変わるのが怖いから、最初から期待を捨てる? 論外もいいところ。



「その理論だと、「変わるのが嫌ならとっとと死ね」が極論だぞ」

「人は生きていれば否応なく変わりますよ。たまに変わらないように見える人もいますがね」


 変わらないように見える人って、欠点が目に付くからか、人として終わってる感じの人に多い印象があるが。



「そして、変わるという点で言えば、子供なんて最たるもの」

「成長も見方を変えれば変化でしょう。そして、子供だけでなく、親も関わりの中で変わるものです」

「だからこそ、変わるのを恐れていてはいけない。そして、それを恐れていたのなら、俺らは最初からアイリを預からなかった」


 そうでないと俺らもアイリも間違いなく不幸になるから。



「だが、思う通りになるとは」

「それこそ、普通だろうに」

「今の状態とは少し違うかもですが、思っている通りに育ってくれない。それが普通の人間の子育てでしょう。ですから、そんな覚悟はとうの昔に決めてるのですよ」


 それこそ、アイリを預かると決めたあの時に。じゃなきゃ、いくらルキィ様の提案だったとしても父母とは呼ばせない。多分、預かっている友達の子って設定にした。



「だから、この交渉モドキは無駄。俺らの結論は変わらない」

「私達はアイリちゃんを渡しません。し、アイリちゃんが悪い方には変わらない。そう信じ、そのために出来ることがあるならばやる。それが親の務めでしょう。といいますか、それが出来ないなら親失格です」


 うん? 今の四季の言葉がエルモンツィに刺さった? なんか一瞬、苦虫を嚙み潰したような顔をしていたが。



「さぁ、もういいでしょう!」

「そうだな。私の慈悲を無下にするというなら、仕方あるまい。後は武で語るまで!」


 奴が言い放った途端、彼女の体からブワッと小さい無数の鎌が立ち昇る。隠せないと思っていたのに、どっから出してきたんだか。



 会話中も移動していたから立地は最高。既に想定通りの位置。後は全力で叩き潰すだけ。

 お読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字衍字などなど、もしあればお知らせいただけますと嬉しいです

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