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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
3章 イベア
81/93

73話 保護した子達

「しゃあ!(おれ)の勝ちだ!」


 ひっどい状態になった穴の底で勝どきを上げるディナン様。なお、穴の底が酷くなったのはほぼ100%ディナン様のせいの模様。



「きゃー!さっすがディナン様ー!」


 俺らの横ではディナン様を見てクリアナさんがアイドルの追っかけみたいな声を上げ……うわぁ。体を左右にひねってやんやん言いだした。でも、そんなことしながらもカレンにディナン様の救出を依頼することは忘れない。



 最後までかっこよくあって欲しいっていうファン心理なんだろう。ま、あっちはいいか。要保護対象者たるエルフのイヴァンさんは……まだ来てないのか。そんなに広くなかったはずなんだが。



「お帰りなさいませー!」

「お帰り。兄さん」

「あぁ、戻ったぞ」


撃破できて嬉しそう。イヴァンさんはまだ来てないが……、先に爆弾解除するか。



「あの、この子らどうしましょう」


 うわぁ。三人ともひっどいお顔。帰ってきた段階で狼の男の子と狐の女の子──すなわち、獣人がいるってことはお気づきでしたでしょうに。



 わちゃわちゃしていたから耳や尻尾に気づかなかったのかな?



「どう見ても獣人……だよな?」

「はい」


 口に出して頷く狐の女の子とその子を守るように前に立って頷くだけの狼の男の子。



「あー、すんごい聞きたくないし、状況証拠……あーー、ここにいるって事実からしてほぼほぼ明らかなんだが、どう考えても人間に捕まってたよな?」

「ですね」

「あぁ。だからあんまり信用できねぇ」


 俺らは? って言いたいが



「シュウ様方は信用できるのです?」


 聞くんかーい! クリアナさん!



「……」

「もう、ガロウ!(わたくし)のことを守ろうとして気を張ってくれているのはわかりますが、そこで黙っていては駄目でしょう!?」

「…ん。守れなかったからって拗ねてるようにしか見えない」


 アイリがぶち込んだぁ! そういうタイプの男の子にんな正論ぶつけたら余計に頑固になるよ!? ほら、すっごい嫌そうな顔をして……あ。女の子を見た。



「確かに。そいつの言う通りだな。この人らは信用していいとは思う。ちゃんと守ってくれたし、黒髪だし」

「ですね」


 黒髪(勇者補正)かー。信用できるかどうかの判定にまで使うのか。マジで過去の勇者の功績がでかすぎる。



「把握した。であるなら、しばらくはシュウ様方に面倒を見ていただくしかねぇだろうな」

「ですねー。私らでは信用できないでしょうし」

「悪いが俺らをさらったやつらにすんげー似てるからな」


 どう見ても砂漠の民! って肌の色してるもんな……イベア王族の方々。ルキィ様や俺らとはまた違う。



「攫われたとはいえ、(わたくし)達が抜け出したのが悪かったのですが……」

「獣人領域から引っ張り出してきたのは人間じゃねぇか」

「それはそうなのですが」


 二人の会話を聞いて|貴族三人組《ディナン様、クリアナさん、ラウル様》の顔が死んだ。気持ちはわかります。国際問題確定演出。



 詳しくこの世界のことを知っているわけじゃないが、現状、人間領域と獣人領域に交流はない。そんな中でわざわざ向こうの領域に行ってまでの拉致。間違いなく国際問題。



知らなかった振りは論外。女の子が「抜け出した」なんて言ってる時点で間違いなく重要人物。探さないなんてありえない。



しかも、人間領域と獣人領域の交流がない……正確には失われた原因は領域の間に横たわるメピセネ大砂海を越えていくための経路が失われてしまったせい。拉致できたってことは、その往復経路が再確立された可能性がある。金のない悪人が死ぬ気で突貫した可能性もあるが……。んな割の悪すぎる博打は打たんだろ。



となると、どうやってこの子らを誘拐したかを聞き出して、経路を復活させて獣人がこっちに来るまでに向こうに行って土下座しないと駄目。終わってるな。



「あ。ガロウ!そういえばまだ自己紹介をしていません!」

「…俺はバレてるけどな。バレねぇように出来るだけ言わないようにしてたのに」

「……そうだったのですね。すみません。えーと、では、改めまして。この子はガロウ。(わたくし)の幼馴「俺からかい!」え。違いましたか?」


 普通は自分からだね。天然さんかな? まぁ、既に言いまくっちゃってるせいで、俺ら知ってるでしょ精神なんだろうけど。



「そして(わたくし)はレーコと呼ばれております。お気軽にレーコとでもお呼びください。改めまして!助けていただき、ありがとうございました」

「ました」


 ペコっと謝るレーコを見て、ガロウも慌てて頭を下げた。ちょーっと、レーコの言葉に引っ掛かるところがあるけれど、それは後にしとこうか。今、踏み込むことじゃない気がする。



「いいってことよ」

「ですね。子供は守られないといけませんから」

「ね」


 こんなとこにいる時点で、大人であれ子供であれ巻き込まれてる気しかしないが。それでも、優先度合いは大人<子供になる。



「っと、俺らでうんうん言ってちゃだめだわな。自己紹介しないと。ディナン様達も……「するさ。だが、保護対象が来たぞ」ですね。ごめんよ。まとめてしよう」


 結構、時間がかかったね。連れてきたって言ってたはずなんだけど。…敵もいないし、これから移動だけど、連れてきたでいいか! とか、そんな感じか? 牛をさっさと倒さないといけないって局面だったし、間違いじゃないんだろうけど…ねぇ。



「お疲れのところすまない。だが、(おれ)らには時間がない。貴方がイヴァンさんでよろしいか?」

「はい。小生がイヴァンです。本日は小生のために労を割いてくださり、誠に「礼には及ばんよ。こちらも必要だったからやったまで」…それでも、感謝だけはさせてください」

「あぁ。受け取ろう」


 ディナン様がそういうとイヴァンさんのそばにいた騎士さんが一歩、前に出て来て口を開いた。



「ディナン様。残念ながらここで発見されたのはこのイヴァン様とそちらのお二方のみです。他は魔獣や魔物だけで人は一人も見当たりませんでした」

「ちっ、従業員だけでなく勝手に連れて来てたであろう違法奴隷やら逃げ遅れた観客やらも盛大に巻き込みやがったか」

「人間だけー、巻き込んだのー?」

「おそらくな。…あぁ。この三人が巻き込まれなかったのは人ではあっても、人間じゃねぇからだろうよ」

「選民思想の腐ったゴミ貴族らしい。……情報を得られてないから仕事が増えまくること確定だが、そいつらがまとめて消えたことだけは万々歳だ」


 ラウル様が吐き捨てた。……簡単に言えばあの貴族どもは敵味方関係なく、人間はシャイツァーで蛇やら猫やらにして無理やり俺らと戦わせてたってこと。マジで終わってる。よくそんな奴らにシャイツァー持たせたな。この世界。



 四季と子供たちは…特に堪えてなさそうね。四季とアイリはメンタル強いし、カレンは…エルフだからか?



「よし、じゃあとりあえず宮殿に戻るぞ。その後は」

「バーン様のところへゴーゴー!です!」

「!師のところへ行けるのですね!」

「あぁ。そも、その師からの依頼だよ」


 そわそわし出したイヴァンさんの手を引くようにディナン様が歩き出す。その横にクリアナさんが来てそっと手を取り、続く。



 俺らも行きますか。自己紹介は歩きながらでもいけるしね。







 来た道を戻って元侯爵の屋敷へ。そこでルキィ様と合流して王宮へ。特に何事も無く王宮着。この後、俺らはディナン様とクリアナさん+3でバーンさんのところへ。



 レーコとガロウは王宮で待ってもらって欲しいけど、この子ら──主にレーコだけど──が、同行を希望したし、イベア側もイベア側で大掃除があるから! と同行させることを主張してるし……まぁ、大丈夫でしょう。



タクとルキィ様は「もはやこの問題はほとんど解決した」ってことで、大掃除のお手伝いに残る。だから人数的には+1。…ルキィ様、謝罪に来てるはずなのにイベアに関しては恩を売ってるような。まぁ、その辺はいい感じに調整されるか。



 今は俺ら含めてお風呂。唯一、戦闘に巻き込まれてないイヴァンさんはこれからオークションです! って状態だったからか、お風呂は不要そうだけど、俺らはいるし。



「なぁ、そっち行っていいか?」

「いいよー。どしたの?使い方がわからなかった?」


 ちゃんと別れる前に教えたはずだし、何ならちゃんとシャワーの音もしてたんだけど。



「…使い方わかってねぇなら、今の今まで声を出してねぇ方がやべぇだろ」

「それはそう。でも、それ以外に思い浮かばなくてさ」


 せっかくいい感じに仕切れるお風呂を用意してもらったのに、わざわざこっちに来るなんて。



「同行させてもらうならこっちの事情を説明しておくべきだろと思ってな。それにレーコの様子を見てると唐突にやらかしかねねぇ。後でシキさんにも言って心構えを作っておいて欲しい。だから、言う」

「なるほど」


 訳ありだとは思っていた。その理由を話してくれるのね。……それにしては動機が弱い気がするけど。あの戦闘でそれなりにガロウ自身も気を許してくれたのかな。



「まず、皆が察してるだろう通り、レーコは俺みたいな一般的な獣人じゃねぇ。神獣と呼ばれる種族らしい。…らしいってのは、今のレーコを見てる限り、それっぽさがないからだな。当の本人もよく言ってんだが、本当の神獣と比べると……な」


 また同意していいのか微妙なことを。言ってる通り、今のレーコちゃんにめちゃ強そうな格はないが。



「で、その関係でレーコに親はいない。神獣は生まれた瞬間に神獣ってわかる……らしい。だから、生まれた瞬間に親から取り上げられて大事に育てられる」

「それは……神聖さを損なうとかそういう感じ?」

「らしい。だから、表向き親はいねぇ。ついでに言うと俺は「ぼっちで育ててたら壊れた」神獣がいたらしくて、それ以来、赤ちゃんから一緒ならセーフとかいうクソ理論で宛がわれたレーコの幼馴染だ。俺も親はわからん」

「ついでで言っていいことじゃないね。それ。レーコのことが大事なのはわかるけど、もうちょっと自分を大事にしな…っと、ごめん。語気が強かった」


 俺の謝罪をガロウは目を丸くしながらも受け入れてくれた。そんな意外だったのかね。



「とはいえ、俺は俺のミスでやらかしてるからなぁ…。別に問題ねぇよ」


 …だとしても、生まれたときはそんなガロウが罪と思うことはしてないだろうに。



「納得いってなさそうだな?なら、見せとくか。俺の背中見てくれ」

「ん?」


 俺の返答を待たず、くるっと後ろを向くガロウ。その背中には酷いやけどの痕が残っている。



「この痕は俺が初めてレーコを誘って抜け出した時、魔物に襲われて付いた傷……ってなってる」

「なってる?」

「実際はレーコが俺を援護しようと放ってくれた魔法が激突した痕」


 あっ。なるほど。



「フレンドリーファイヤによるトラウマか…」

「そ。心的外傷。だから「なってる」」

「把握した」


 だからと言って、抜け出させたことを罪とは思わないが。何回もやっててそれならちょいあれかもだが、初めてでそれって……間が悪かったと言ってしまえさえするだろうに。どうせ、この子は納得しないだろうが。



「トラウマによる後遺症は?」

「魔法が使えねぇ。レーコはもともと魔法を使うのがうまくないのと、誤射前後の記憶がないから、魔法を使うのが下手だから使えないと思ってる。実際は心的外傷で練るのを無意識のうちに拒否ってる」

「了解。治療は……試みたよな」

「勿論。でも、思い出させようとすると気を失うから、どうやればいいのか見当もつかんってさ」


 了解。なら、ついでに聞いておこう。



「ガロウの出来ることは?」

「俺はもっと魔法が使えねぇ。魔力はあるから身体強化は出来るが……、基本は肉弾戦」

「了解」


 あんま思いたくないけど……遠距離攻撃されると二人そろって的にしかならないなぁ。



「他に何かあるか?」

「何でガロウはそんな客観的に見れてるの……?」

「レーコとの行動範囲の違いだわな。レーコは日中、基本的に民から見えるところにいなきゃなんねぇ。トイレとか除いてな。だから、すんげぇ行動範囲が狭いんだわ。俺は逆に民から見えないようにしろとは言われたから、日中にレーコの真横にいることは出来なかったが、建物内なら自由だった。で、ご飯時とかご飯を取りに行くとかでレーコから離れたときに、俺らを世話してくれてる人の会話を聞いた」

「なるほど。…言っちゃあなんだけど、世話係がそんな話をしていいもんなの?」

「知らん。知らんが…、してるってことはいいんじゃね?後はほら。世話係だからこそ、生身のレーコに接するわけで。赤ちゃんや幼子にそんだけ希望を背負わしていいの?ってなるんじゃね?てか、なってるぽい。こっそり聞いた感じだと」


 民が見てるのは神獣と言う偶像。でも、世話係が見るのは生身のレーコちゃん。そこに乖離があるっていう……王族とかそれこそ、アイドルとかでありがちなやつか。



「世話係さんは固定?」

「いんや。ぐるぐる交代。変な奴が混じると困るとかでめっちゃ数がいるわけじゃねぇが、それなりの頻度で変わるぞ」


 親代わりもいないのかよ。そら、壊れるわ。昔の神獣。そんでもって、頼れる……というか信頼できる人がお互いしかいないなら、王侯貴族とかと比にならんくらい辛そう。…王妃が政敵の家出身の王様とかくらいでは。勝てるの。……まぁ、この子らは幼少からそれを強いられてんだが。



「まぁ、そういう環境にいたわけだ。んで、あの子は共感力があるからか、部屋の中から自分を見に来る親子とかを見て羨ましいなぁと思ってたみたい。だから、守ってくれた二人を親代わりに見てる可能性がある。受け入れる準備をしてほしいってのはそういうとこだな」

「なるほど。それは慣れてる」

「…慣れるものなのか、それ?」

「普通はないと思う」


 めっちゃガロウが胡乱な目で見てくる。でも、びっくりすることにアイリ、カレンとで既に2回あったんだよね。



「で、一応、聞くけどそういってるガロウはどうなの?」

「俺?俺は別に」


 ……んー。わかんないな。あっさり言ってのけてるからほんとに何とも思ってないっぽいけど、そういう環境にいた子がレーコちゃんみたいな発想になってないとは思えないんだよなぁ。



 俺が見てる感じも、そうだし。でも、ここで深堀してもこういう性格の子だし、ぜっっったい逆に反発されて終わるんだよね。気になるけど、放置安定か。



「他は?」

「レーコとガロウの名前は誰が付けたの?」

「俺は生まれたときの獣人領域の代表たるリンヴィ様がつけてくれたらしい。レーコはただの種族名。あの子の固有名じゃねぇよ。何でも、神獣はある時に突然、自分の名前はこれだ!って感覚を持つんだとよ」

「なるほど」


 だから、呼ばれている。なのな。……俺らが付けてOKな訳もなし。触れれないな。



「他は?」

「んー。要約するから聞いてもらっていい?ガロウは普通の獣人。レーコは神獣。だから、二人とも親はいなくて、ころころ変わる世話係に育てられた。だから、レーコは親の愛情に飢えてて俺らにそれを求めてくるかもしれない」


 頷いてくれた。よしよし。合ってるね。



「ガロウは肉弾戦が出来るけど魔法は出来ない。レーコは実は魔法が使えるけど、誤射ったトラウマで使えない。し、本人はそのトラウマを覚えてない」

「うん」

「OK。じゃあ、最低限、それは伝えるね。ちょい端折りすぎてるからそこはいい感じに入れるわ」

「頼んだ」


 任された。さて、長風呂になっちゃったし、出ますかね。とはいえ、さすがに俺らのが早そうだけど……。うん。早いね。誰もいない。



 あっちはアイリにカレンもいるしね。そんなもんだよなぁ。準備することもなし。大人しく待ってよう。微妙にガロウはのぼせてるっぽいし。…緊張したからかな? 



「しんどい?」

「ちょい」

「そっか、まぁ、座ってな」

「そうする」


ガロウの様子を見ながら待つことしばし。走ってくる音が女風呂からした。入ってるのは身内だけだし…、カレンかな? あの子、髪の毛そんなに長くないから……。



「声でわかっていましたが、お二人でしたか。お母様はまだ髪を乾かしておられますが、もう少しでこちらに来られますよ」


 開いたドアから出て来たレーコは早々にえげつない爆弾を俺にぶん投げてきた。

 前話と一部矛盾していたのでこっそり修正しました

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