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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
3章 イベア
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61話 次の一手

直に地図を書いています。ズレていたらごめんなさい。パソコンなら多分、大丈夫です。


「いえ。まだ手はあります」


 力強い目でそうおっしゃるルキィ様。



「あるのか?」

「何で貴方が忘れてんですか。ポンコツ」

「えっ」

「クリアナではないです」


 悲報。クリアナさん、ぽんこつと言われすぎてぽんこつが自分の代名詞だと思ってしまう。文脈で察してください。



「こほん。話の腰を折られましたが……、大憲章(マグナ・カルタ)は急造品です。であるがゆえに、穴はあるではありませんか。『緊急時、王は法の定める範囲において、議会の同意なしに判断を下してよい』と」

「ですが、ルキィ様。それには『ただし、後で議会の判断を行い、それが不適当とされた場合は相応の責任を負う』と付きます」

「あぁ。なるほど。ルキィ様の言う通りか」

「えっ」


 クリアナさんが目を丸くしてディナン様を見る。その顔は「ついに錯乱しましたか!?」って無言のままに語っている。



(おれ)らは議会……いや、違うか。大憲章を神聖視しすぎてんだよ。色々とやりこめられた苦い思い出があるがゆえにな。だが、よく考えなくともワイバーンが出て来てんだ。間違いなく異常事態だろ?」

「それはそうですが……、ルキィ様を前にしてこんなこと堂々と言うのもあれですが、人間領域最大の国たるバシェル王国。そのバシェルの目に見える瑕疵(かし)です。その扱いもまた重要事項では?」


 おっしゃる通り。であるがゆえに、ルキィ様の側にも行動制限がかかる。英国では崇高な理念のもと作られた大憲章。だのに、自分たちのために勝手にでっちあげた奴らなら言いかねないゴミのような理論のせいで。



「謝罪のために来ているはずの王女が勝手に動くというのも、批判材料になりますよ?」

「だからこそ、手がないと言っていたのではありませんか?」


 俺らの言葉にはっとした顔になって、考え込まれるルキィ様とディナン様。普通、人命がかかっているならそんなことは言わない。だけれども、なんか微妙に政治基盤がぐらついておられるディナン様にとっては、その普通を信用してしまうと痛い目をみかねない。



 話を聞いている限りこのイベアで力を持っていそうなやつらは性善説なんて全くもって当てはまらなさそうなんだから。



「…やはり駄目では?」

「ちっ。ならば一回スポルトに急いで戻ってとんぼ返りするか……?」

「いえ。ルキィ様。ディナン様。とっておきの手段があるじゃないですか」


 クリアナさん?



「勇者様がおられるではありませんか。なら、『勇者の要請に応えた』という建前があればなんとかなるのではありませんか?」


 ……確かに?



「そういえばそうでしたね。タクヤ様が近衛として動いてくださっているので、タクヤ様と仲の良いシュウ様とシキ様もなぜか近衛だと認識してしまっていました」

「近衛服を着ているからな……。名乗っていたのに(おれ)もそれが頭から抜けていた」


 俺らはそれが使えるとそもそも思ってませんでしたね。勇者の権力が強いとはいえ、そこまで影響を及ぼせるとは。



「ですから、要請を出していただけませんか?」


 まっすぐこちらを見つめてくるクリアナさん。当然、俺らに異議はない。だって、回避できない糞状況を回避しようとあがいていたんだから。



「勿論です。内容としては「ワイバーンが出ているという異常を見過ごすことは出来ない」でいいですか?」

「構いません。といいますか、要請とは言いましたが、実際に出していただかなくてもよいのです。後で口裏を合わせていただければ」


 ですよねー。了解です。



「ならば、行動をどうするか。だな」

「ですね。今まで目撃された場所はどこです?報告内容にそれは含まれているでしょう?」

「当然。おおよそ首都スポルトを起点に南東方向に固まっているな。それこそ、イベア南の玄関口ディブラッタより、やや北東に位置する『ラダ』。そのさらに北西に位置する『アゴン』。アゴンの東に位置するファヴェラ大河川沿いの街『アバレンス』……それらを繋ぐ街道上だと聞いたな。アバレンスとアゴンの中点より北の『サロネラブ』では報告がなかったはずだ」

「はい!」


 ? 勢いよくクリアナさんが手を挙げ、ディナン様がすんごい嫌そうな顔で彼女を見る。



「聞きたくないがどうした。言ってみろ」

「地理が!わかり!ません!」

「んなこただろうと思ったが、ここはお前の国だぞ」

「私はスポルトと我が家の領都『ルーニャ・アルコ』で限界です」


 貴族でしょ、貴方。どうやって近隣の領地と関係を保つの……。



「あ。皆さん、ポンコツだと思っていらっしゃいますね!?大丈夫です。ルーニャ・アルコはスポルトの西……正確には西北西?に位置することくらいは知っていますから!」


 だからどうしたんですか。その情報、安心材料になりませんよ。知らなさすぎってところに「やべぇ」って思ってんですから。



「しゃーねぇ。地図出すかぁ……。手元にあったっけな?」

「宿におきっぱだと思いますよ!「とっととギルド行くぞ」って荷物ぶん投げられたじゃないですか!」

「だったか」

「あぁ、でしたら俺らにお任せを。四k「どうぞ」ありがと」


 まだ言い切ってすらなかったんだけど。ま、流れ的に予見できるもんね。えーと、さっきの話を総合的にまとめて……。右側にファヴェラ大河川を書き加えて、こんな感じかな?







メピセネ大砂海

───────

1 ☆    |川

    2  |

   3  4 |

     5 |

  6    |

───────

他国


☆ スポルト

1 ルーニャ・アルコ

2 サロネラブ

3 アゴン

4 アバレンス

5 ラダ

6 ディブラッタ







「詳しくは知らないので超簡易的ですが」

「構わん。大丈夫だ。内容もあっている」


 ですか。それならよかったです。



「実際には間に小さなオアシス町というか村はありますけどね」

「地図を描かせた。お前が言うな」

「事実陳列罪ですよ!それ」

(おれ)王族ぞ」

「ぐぅ」


 なーんで流れるように漫才をしているんですかね。ま、それは兎も角、この配置が合っているならわかることは一つ。



「少なくともワイバーンが最初に現れたのは南東方向でしょう」

「だろうな。ディブラッタにまで来ているのは単純に移動したんだろう。既にルキィ様達がワイバーンを10頭討伐してくれたが、それが群れの全部とは思えん。食糧が足りんくなる」

「ですが、荷馬車は襲われこそすれ、馬は死んでいませんでしたよ?」

「それなんだよなぁ…」


 食糧調達のために! というわけではなさそうなのはその行動から明らかですものね。食糧調達なら馬を殺してしまう方がはるかに良い。



「ていいますか、何で南東方向ってわかっているのに、こんなところにいるんです?スポルトからサロネラブを経由してアバレンスまで行く街道はあるでしょう?」

「俺らは二人で動いているとはいえ、一応、騎士団の体で動いてんだぞ?通常の警邏任務くらはあらぁ」

「ですよね。知っていました」

「なら何で聞い……あ。いいわ。言わなくて」


 理由なんておちょくりたかったが半分以上占めていそうですものねぇ。ほんとこのお二人は何とも言えない関係だな。絶対にひっつかない確信のもてる気の置けない友人って感じ。……微妙に違うか。少なくともディナン様の求婚はガチだし。



「ワイバーンの目的はわかりませんが、少なくとも彼らは大量の食糧を必要とします。食糧がありそうなところへまずは行きませんか?」

「それが丸いか。だが、(おれ)としちゃあ、ワイバーンを見かけたという報告だけで馬車が襲われたとか、数少ない家畜が襲われたとか、とんと聞かないのが謎なんだが」

「え。無いんですか」

「ないんだわ。それが」


 初耳なんですけど!? それなら、ますますあの荷馬車の事例の特異性が上がる。だって、初めての襲撃された事例ってことになる。……今までもあって、報告できていないだけかもしれないけれど。



「ワイバーンの死骸の分析も必要かもしれませんね。食事を必要としないのかもしれません」

「んな馬鹿な……とは言えんな。少なくとも「ワイバーンを見かけた」以外の定時連絡で異常はないわけだ」

「そういう重要な話は先に言いなさい。ポンコツ」

「え!?」

「そのネタ、さっきもやりました」


 天丼定期。ポンコツ=クリアナさんの代名詞。が成り立っちゃってる。



「すまん。(おれ)とて、衝撃的過ぎて忘れることはある。とりあえず、行先はラダで構わないよな?」

「えぇ。ラダ、アゴン、アバレンスを相互に繋ぐ街道で目撃されていたのでしょう?それが今、ディブラッタに来ているのなら、群れは南下しているはずです。その上、少なからず畜産もやっていたでしょう?」


 ワイバーンの移動方向と彼らの食糧を考えると、それがいいでしょうね。あの討伐した10頭は先遣隊でしょうし。



「よし。それじゃあ……話し合いはこんなもんでいいか」

「ですね。帰りますか」


 了解です。いそいそと立ち上がるお二人。部屋を出てギルドを出て、馬車へ。「何で同じ馬車なんですか」「同じ宿だろう?」なんてじゃれてるような、にしては敵意が多いようなやり取りをされるお二人(ルキィ様とディナン様)や、それを見て膨れてるクリアナさんを見ながら宿に到着。



 宿につくなりディナン様を見たルキィ様の近衛さん達が「しゃーっ!」とネコかな? とツッコミたくなる声をあげて威嚇したことで部屋問題がまーた再燃したのを尻目に、センにご飯をあげて俺らは先に部屋で就寝。付き合ってられない。







_____


 翌朝。朝ごはんを食べてルキィ様達とディナン様、クリアナさん達と合流。



「タク。昨日の争いはどこに着地したんだ?」

「めっちゃ普通のところだな。ディナン様はそのままで、ルキィ様は諦めてワンランク下の部屋を使った。決定打はクリアナさんの「ディナン様が使いつつある部屋をルキィ様、使われるんですか!?」って叫び」


 反応が想像しやすすぎる。その叫びは魂の叫びだったんだろうな。クリアナさんからしたら「好きな人の使った部屋に恋敵が!?」で、 ルキィ様もルキィ様で「確かに。うわぁ。嫌だなぁ……」って王族にあるまじき感情をあらわにされた顔をされていたに違いない。



「シュウ様。シキ様。今日もこいつ……ディナンも一緒に馬車に乗せてもらってもいいですか?」

「え。別に俺は構いませんが……」


 四季もアイリもカレンも大丈夫そうだね。でも、



「何でです?」

「ディナン様達は二人とはいえ騎士団なのですよね?であれば、自前で脚は持たれているのでは…?」

「シキ様のおっしゃることはもっともですが、こいつらは専用の馬は持ち合わせておりませんよ」


 何故に。持ち合わせておられる方が色々と楽でしょうに。



(おれ)らは危険なところに行く関係上、馬が常に無事とは限らん。後、場合によっちゃあ馬は無理だからラクダにしないと駄目な時もある」

「ですから、行く先々で馬を借りれるような仕組みを構築しているのです!一騎借りれば、それだけで移動できますからね!」

「毎回、二騎借りているがな!」


 めっちゃ食い気味。どんだけ同乗しているって思われたくないんですか。



「把握致しました。…が、ルキィ様と同乗するのは駄目なのです?」


 俺らではなく。何せ、護衛対象は一か所に集まっているほうが護衛は楽そうですが。



「そりゃぁ……」


 ちらっと視線をルキィ様の方にやるディナン様。その後ろにはめっちゃ怒っている猫の如く、ふしゃーっ! と威嚇しまくっている近衛達。



 うん、あれは無理ですね。同時に、感情で主に迷惑かけまくるような近衛、首にしちゃえばいいのに。なんて思いも湧いてくる。



「とはいえ、お忘れではありませんよね?ディナン様」


 あっちもあっちで酷そうだけど、ディナン様、こちらにも酷いことしていますけど?



「流石にわかっている。ルキィ様がいないからとシキに言い寄ったりしないさ。そして、子供たちにも言い寄らない」

「本当にですか?」

「勿論だとも。既婚者に手を出す趣味はない。子供たちは(おれ)からすると少々若すぎる。好みじゃない。何だったら、ラーヴェ神とシュファラト神に誓ってもいい」


 ! 神に誓う……ですか。アークライン教しか存在しないこの世界において、それの意味する重さは地球の比じゃない。



「であるなら、私は構いませんよ。習君」

「…二人に任せる」

「同じくー」


 了解。皆。なら、乗ってもらおうか。



「どうぞ」

「悪いな」

「じゃ、御者は私がしますねー。そら、どいたどいたー」


 クリアナさんが御者席に座ってくれていた近衛さんを押しのけた。が、押しのけられた近衛さんは嬉しそう。仕事が減ったから……じゃない。あれはルキィ様の馬車に戻れるからだ。



 全員乗り込むと、隊列を組んで馬車は出発。ディブラッタから通じている道を真っすぐ進む。通常の隊商なら途中で一泊するらしい道を、鍛えられた馬とそもそも普通の馬じゃないセンはやすやすと踏破。僅か一日で目的地たるラダに到着。



 そそくさと宿屋まで移動して、晩御飯。どうせ部屋割りでディナン様とルキィ様が揉めるしね。



「ディナン様!クリアナ様!お食事の前にすみませんが、急報です!」


 席に座っていたら街の入り口で応対してくれた騎士さんが駆け込んできて叫ぶ。そしてそのまま、誰かが言葉を紡ぐ前に言葉を吐き出した。



「ワイバーンがサロネラブとアバランスの間の街道でも隊商を襲撃しました!」


 え? ディブラッタとアークラインの街道で出たからワイバーンが南下したって考えてたのに、何でこれまでワイバーンの目撃情報があったところよりも北方で目撃されてるの?

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