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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
2章 アークライン神聖国
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54話 封書庫

 浮いている本はひーふーみー……あれ? 多くないか? 何冊浮いてんだ?



「ブルンナ!ちょいと浮いている本の数が多すぎやしないか!?」

「管理ガバガバってわけでもないでしょうに、なんでこうなってるのか思い当たることはありませんか!?」

「あったら、言ってる!」


 ごもっとも。そして、会話している今も本たちは動き続けている。1冊の本を中心に5冊の本が正五角形を構築し、さらにその外側を円形になるように無数の本が浮かんでいる。



 まじで数が多すぎる…。



「あ。そうだ!みんな!表紙見て!なんか統一感ある!?」


 統一感!? ちょっと待ってろ、ブルンナ。今…



「あるよー!」


 !? え、見ようとしたところだぞ!?



「カレン!ほんとに見えたのか!?」

「もっちろーん!弓を扱うかんけー上、見えなきゃ意味ないからねー。ばっちりー!ひょーしに書いてる字が、たぶん同じー!」

「カレン!全部同じ!?」

「同じだよー!」


 ぽんと胸を叩いて言い切るカレンを見て、ブルンナは確信したように叫ぶ。



「あれが全部同じなら、ここにある本だから、該当するものは一つしかないね!初代アークライン教皇『リャール=カーツェ=ラーヴェ』!その日記だよ!」


 初代教皇の日記!?



「「何でそんなものがこんなところに!?」」

「ブルンナもそん時、生まれてないから詳しくは知らないけど、目録には「教皇猊下の部屋から発見された日記。禍々しい気配を纏っているが、破棄したほうがろくでもないことになりそうなため、収蔵」ってあったよ!まぁ、そのくせ、「教皇猊下の日記だし…ぎっちぎちに縛り付けるのも忍びない」とかなんとかで」

「「馬鹿な(んですか)?」」


 気持ちはわからないでもない。ないが…、禍々しい気配を纏っている時点で甘い措置をするって選択肢は消えるだろ、普通!



「…で、どうするの?喋っている間にも、何か仕掛けてきそうだよ?」

「大丈夫!今の会話は無駄じゃない!」

「禍々しい気配があるというのならば、それを打ち消すまでです!」


 四季が右手で紙を取り出し、左手で俺と手を繋ぐ。そら、



「あ!聖魔法を使うなら、ちゃんと狙いを定めてね!聖魔法が直撃したらやばいやつとかもあるから!」

「そういうのは先に言え!」

「もう少しで撃つところだったじゃないですか!」


 適当にビームぶっぱとか絶対厳禁だろ!?



「ちな、火とかもだめだよ!」

「「わかって(ます)!」」


 直接、被害が出そうにない聖魔法でダメなら、ほかはもっとダメに決まってんだろ!だから、狙いをつけて!



「「『『浄化』』!」」


 紙から光の球が出現し、それが本たちめがけて飛んでいく。っ、思ったよりも魔力の消費が多い……! あぁ、そっか。まだチヌカをしばいてからまだそんな時間が経ってなかった。この前、代償魔法を使ったペナルティ的なのが残ってる。



 撃った魔法は命中…はしないと。さすがに、無策で受けてくれるわけないよなぁ! 黒と白が混在するが、決して灰色ではない。いつもの汚い色の球──瘴気球とでも呼ぶべきものが撃ちだされて撃墜された。



「ブルンナー。たしょーの傷なら、つけてもいいよねー?」

「じゃないと、沈静化できないからね!燃やすとか細切れとか、引っ付けても再生できなさそうなやつ以外なら!」

「りょーかい!おとーさん!おかーさん!全部の本の真ん中を狙っていくよー!」


 そう言ったカレンから矢が放たれる。この封書庫自体、そこまで広くないから、せいぜい距離は中距離。だが、それでも宣言通り、全ての矢が本のど真ん中に飛んで行っている。しかも、発射速度もなかなかに早い。まぁ、撃墜されて命中には至っていないが。



「お、動き出した?」

「っぽいな」


 クルクルと回転していた日記達だったが、明らかにこちらを目指して移動し始めた。さらに、円を描くように飛んでいた日記が円軌道を外れて移動しだした。



「…突進してくるようになった」

「だな!」

「ですね!」


 だが、ただ突っ込んでくるだけ。速度はあれど、当たりはしない。もっとも、当たると日記は瘴気を纏っているんだから、ろくなことにならないだろうが。っと、



「こいつら、突進しながらでも球を撃ってくる!」

「乱射はしてきませんがね!」


 それはそう。だが、小型なせいで小回りが効くし、数がそれなりにいるから油断すると被弾しかねない。しかも、うまく協調してこちらの反撃の隙をつぶしてくる!



 中心にある6冊の日記は未だ健在。じわじわと前に進んできてはいるものの、いまだに回転しているだけという不気味さから、そちらから目を逸らすこともできない。



そして、この封書庫はそこまで広くもないから、戦場は限定されている。が、日記が俺らの隙間を抜けて、後ろの障壁を攻撃しようとしてくるから、気を配らないといけない方向を限定させにくい。



 だから、なかなかにやりにくい。



 幸い? 封書庫の本はこんな感じでたまに戦闘してしばかないといけないからか、戦闘スペースは十分に用意してくれている。が、スペース外に本棚がないわけじゃない。いつもみたいに射程適当な魔法をぶち込む! なんてできない! よさげな射程を探っていかなければ。



「…あれ?」

「どうした?アイリ?」

「…二人に比べると、わたし、あまり狙われてない?」


 ん? んー。確かにその傾向はあるか? 俺や四季、後ろの障壁には露骨に突進していっているのに、アイリだけは積極的に狙われてない。なんか、進路上にいるから、とか、邪魔してくるから、とか、そういう理由があるから狙ってるって感じ。



「っぽいですね。でも、」

「前には進めないだろ?」

「…残念なことにね」


 狙われていないからといって、じりじりと進んできている6冊の日記を狙おうとすると、下がれと言わんばかりに日記に割り込まれている。だが、それだけ。俺らには一般通過日記でさえ、容赦なく瘴気の球を撃ちだしてくるくせに。



「ボクの矢も撃墜されるしー!活躍したいのにー!」

「撃墜されないよりかはましだよ!」

「ただ、焦って前に出たりしないでくださいね!」

「わかってるよー!ここのぼーえいがさいじゅうよー!だからねー!そこははき違えないよー!」

「それがわかってるなら上々!」


 はき違えた結果、障壁突破なんてされたら目も当てらんないからな!



だが、現実問題、当たらん。誰一人として、攻撃が当たっていない。連携がうまいのが最大の要因だが、こいつらチキンすぎる。どんだけ被弾したくないんだってくらい、安全パイをとってくる。



「だー!弓で切り付けても、逃げられたー!」

「弓の使い方じゃないでしょ、それ!」

「シャイツァーなんだから、雑に扱っても平気!」


 それを言ったら俺らもだしな。てか、カレンは曲がりなりにも武器だが、俺らは武器ですらない筆記用具だから酷さが際立つ。



「…被弾覚悟でやる?」

「のはやめたほうがいい」

「そこまで私たちが切羽詰まっているわけではありませんから」


 今すぐにでも! というなら別だが、そうじゃない。そうじゃないなら、無用なリスクは取らないでいい。



「だけどー!いくよー!とっておきー!やっとできるよー!あ。誰か、障壁付近の本を受け持ってくれると嬉しー!」


 それができるのはまともな遠距離攻撃手段を持っている俺か四季。それなら、



「カレン!どれくらいの長さがあればいける!?」

「1分もいらないくらいー!」


 1分。んー、微妙な長さ。だが、それくらいなら稼げるか。ここの障壁もそんなもろいわけじゃないだろうしな。



「アイリ!一瞬だけ、障壁の中に下がって!」

「…どうするの?」

「魔法を使います!」

「…ん」


 まともな説明ではない。が、納得してくれた。俺らと一緒にそそくさと撤退……しながら、ペンを投擲し、剣を…っ、くそっ! 強引に入ってきた本を避けさせられたせいで、当たらなかった。投げたペンも当然のようにダメ。



 だが、撤退には成功。そら、こっから離れろ! 四季と手を繋ぎ、最初に使った紙を使ってまた発動。



「「っ……」」

「…大丈夫?」


 心配そうに声をかけてくれるアイリに首肯を返す。予想はしていた。が、予想通りとはいえ……持っていかれる魔力量がやばい。だが、紙から正面を覆いつくす聖なるカーテンが出現。こちらとあちらを強制的に隔てさせる。



「ちょっ…」

「大丈夫!」

「射程は短く設定していますから!」


 どう頑張ってもほかの本には命中しないさ。



「それよりアイリ!これは何事も無くても10秒しか持たない!」

「フォローはしますので、一番前を受け持ってくれますか!?」

「…任せて!」


 負担を押し付けるというのに、アイリは嬉しそうに頷いてくれた。そして、俺らと一緒に前を見る。カレンが何をするつもりなのか、非常に気になる。だが、そんな余裕はない。



「ぴったり10秒持ちそうだ」


 薄くなりつつあるカーテンの向こうに本が見えるが、そいつらは変なことをしようとしていなさそうだし。



「ですね。ですので…、」

「…今だね」


 ぴったり10秒。聖なるカーテンが完全に消えると、アイリが一歩踏み出し、少し遅れて俺らも前へ出る。だが、それよりも早く、勢いよく日記が殺到。



「ちょっ、突っ込んで「は、来ないだろうな!」え?」


 障壁に激突なんざしたら、向きを変えるために大きな隙ができる。なら、あいつらがすることは、今までと変わらない



「辻斬りならぬ辻魔法ですね!」

「そら、ブルンナ。もっと協力を頼む」


 ちょっと負担が増えてしまうが、やってくれ。



「うぃ。エネルギー体を適当に相殺しとくねー!無理な時は無理だけど!」


 最後! だが、そんときはそんときだ!



 アイリが急速に掠めるように飛ぶ日記に鎌を振るい、いくつかの軌道を変えさせる。軌道が変わらなかった日記から放たれた球は俺か四季が剣で切り捨て、ペンで破砕し、ファイルで受け止める。それでもなお残った球はブルンナが強引に軌道を変えて、球同士でぶつけて相殺する。



 そして、軌道がわずかにずれた本からの第二斉射。これも同様に対処……あ。ちょっと数が多いか?



「無理!」

「だよな!『風刃』!」

「『ウォーターカッター』!」


 四の五の言ってられない! 可能な限り射程を短くした魔法を発射。よし、射程はぎりぎり足りた! が、まだ一発いたのか!? あれは…止められん。



 球と障壁が激突。耳障りな音を立て、障壁があるはずのところの景色が歪む。何回も受けられないな。予想通りだが!



「お待たせー!行っくよー!」


 カレンが弓から矢を放つ。すると、中央の日記めがけて、四方八方から矢が出現。完全にこちらに注意を払っていた日記の意識の隙間を縫った不意打ち。だが、日記もそれに対処しようとして、球を撃ちだし、矢を落とす。



「ふっふー!甘ーい!」


 カレンが言った途端、中央の日記を狙っていたはずの矢が突然、五角形をなす日記の一冊に殺到。矢が一斉に突き刺さった日記は耐え切れずに地面へと落ちた。



 僅かに、本の統制が乱れた。それを逃さず全員で追撃。アイリの鎌、俺と四季の剣の一撃が本を切り裂き、カレンの矢が追加で本を貫く。これでさらに4冊が地面に落ちた。



 これだけ落ちれば、かなりやりやすくなる。突っ込んでいって、あの真ん中の日記を落とすことさえでき……うん?



「なんか、中央の日記の様子がおかしくない?」

「ですね。なんだか力が集まっているような気がします」


 瘴気を周りの日記から吸い上げているような……いや、「ような」じゃない。実際に吸い上げてる!?



「…何をする気だと思う?」

「こういう時の相場は、自爆って決まってるさ!」


 異世界なのに? …いや、勇者が来てんだし、そういうお決まりも伝わっててもおかしくはないか。



「おとーさん達!なんか実際にやりそーだよ?」

「「だな(ですね)!」」


 ぴかぴかと点滅しだした挙句に、なんか背表紙にあたるところから勢いよく、エネルギーを噴射して移動しだした。



「カレン!合図をしたら撃って!」

「りょーかい!」


 タイミングを合わせなければ、きっとひどいことになる。紙は……こんなところで代償魔法なんて使えないわ! ほんと、攻撃魔法以外でも使えたらいいのに! …ん?



「習君!」

「ありがと!」


 四季が渡してくれた紙とファイルを受け取り、それを下敷きに字を書いていく。



「ちょっ、この期に及んで何!?」

「魔法が進化したんですよ!」


 ブルンナが何か言っているが、反応している時間はない! 魔力を大量に込めて……る時間はないな! 四季もそれがわかっていたからか、紙に籠っている魔力はいつもの全力に比べて少ない。



 さらさらと書き上げ……と言い切るには少しつっかえたが、これでよし。



「カレン!その矢に紙を巻き付けることはできるか!?」

「それよりー!もっと早いのがあるよー!上に放り投げてー!」

「了解」


 言われた通りに放り投げると紙らしくひらりと舞い上がり、ひらひらと落ちてくる。



 だが、カレンの一射は違うことなく紙を射抜き、日記を貫いた。



「「『『氷棺』』!」」


 貫いたと同時、四季と手を繋いで代償魔法。紙が消え去ると直ちに、日記もろとも周囲の空間を凍てつかせる。それが起爆剤になったのか、日記が爆発。



 だが、その爆発は氷が抑え込む。日記が放出しているのは熱ではないのか、蒸気は立ち上らない。ただ、氷をがりがりと削り、薄くしていくだけ。



「ねぇねぇ!耐える!?耐えるの!?」


 ブルンナがうるさい。中の様子が見えるように透明な氷を選んだのは間違いだったか?



「あっ」


氷が溶かされ切った。だが、氷は完全に爆風を封殺できていたらしい。周囲にちょろっとだけ薄く広がると、何かにぶつかってもいないのに完全に消え去った。



 そして、封書庫に静寂が戻った。

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