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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
2章 アークライン神聖国
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53話 情報共有

 ドーラさんに案内してもらって無事に部屋へ。朝ごはんを食べて から、いざ図書館……だったはずなのに、ルキィ様やタクがわざわざこっちにまで来てくれた。



「下で合流だったのでは?」

「私たちは既にご飯も済んでいて、動きやすかったので。お気になさらず」


 ですか。であれば、気にしないことにします。



「椅子は部屋にたくさんありますし、お座りください」

「タクも座れよ。お前だけ立ってるとか、逆に気を遣うから」

「うぃ」

「言わずとも、ご理解いただけているでしょうが、皆様もお座りくださいませ」


 了解です。自然と机を挟んで置いてあるソファの上に俺と四季が並んで座った。そして、左右をアイリとカレンが固め、対面のソファにルキィ様、椅子にタクが座った。



 少しだけ、ルキィ様が悲しそうな顔をされているのは、アイリが横に座ってくれなかったからだろう。残念ながら、あっちにいってあげてとは言いませんよ。この子の自由意志ですし。



 それはそうと、タクはタクでルキィ様の横には座らないのな。スペースあるのに。茶化してやってもいいが……やめておいてやるか。いかに俺らが勇者であるとはいえ、ルキィ様は王族。いろいろと考えないといけないことがあるんだろう。



「…ルキィ様。しゃんとして」

「さて、情報共有とまいりましょうか!」


 アイリの言葉の破壊力よ。ふにゃっとされていたのに、一瞬でよみがえった。



「了解です。とはいえ、私たちはルキィ様が欲する情報などはわかりませんので、大きなことを羅列しますね」

「ルキィ様が知らないだろうことは、バシェル王国からの暗殺者の撃退および、フーライナでのチヌカとの遭遇および撃破「マジですか」マジです」


 思いっきりルキィ様に割り込まれた。意外ではあるけど、それだけ、チヌカとの遭遇はこの世界の人にとって衝撃的なことなんだろう。



「えーと、まず確認させていただきたいのですが、暗殺者は始末しましたが、それで構いませんよね?」

「勿論です。正直なところを申しますと、王家の大切な暗部ではありますから、全て問題なし。というわけではありませんが…」


 でしょうね。「勇者であっても指示に従って襲撃できる」ということはこの世界ではすごく重い。当時はわからなかったけれど、この世界でちょっと長く過ごしたから、そのすさまじさがわかる。何しろ、|この世界の皆が抱いている《勇者》信仰よりも、王家の命を優先できるってことなんだから。



「ただ、おかしくなってしまっている父様や姉様の直属の部下ですから、最悪、内戦を考慮している身としましては、減るのも一概に駄目とは言えないのですよね…」


 複雑そうな顔で言うルキィ様。でしょうねとしか言えませんね…。



「あぁ、一つお尋ねしたいのですが、ルキィ様がその暗部を引き抜くことはできないのですか?」

「完全に不可能とは申しませんが、ほぼ不可能ですね。彼らは直属の王族に絶対服従いたしますので。シャイツァーで縛っているというわけではございませんが、その絶対的中世があるからこそ、我々、王族も彼らに全幅の信頼をおけるところがありますので」


 信頼関係で縛っているようなものですか。…それではやはり難しそうですね。



「とはいえ、シュウ様方と南の勇者様方の一団に派遣した暗部以上に、削るのは無理でしょうね。暗殺計画の中止が発令されたそうですから。これにより、皆様の旅路の安全性の向上と人的資源の損耗の回避がなされました」


 へぇ。中止ですか。最初は暗殺しようとしていたのに中止。なんか引っかかる。だって、明らかに中止した理由は暗部の払底ではない。バシェルは人間領域の盟主的な国。あっちの世界で言うところのアメリカだ。俺らに来た暗部は数がいたが、そこまでの数じゃない。もう一方もまた同じなはず。であれば、それだけで不足するはずがない。



「中止の理由は何なのでしょう?」

「不明です。おそらく、父様と姉様に何かをしたクソ医者の指示だと思いますが…。そこまでです」


 これ以上は本人に聞くしかないと。…なら、どうしようもないですね。んー、戦力の消耗を嫌ったか?



「習に清水さん。だからお前らはバシェルを通ろうと思えば通れるぞ。だが、一応、聞いておくがそれで動きは変わらんだろ?」


 確信を持った目で問うてくるタク。わかってるじゃない。その通り。答えは決まっている。



「あぁ。戻らんな。賢人たちがいるなら、そっちは安泰だろ。無事に帰還魔法の捜索を進めてくれる」

「なら、私たちは帰還魔法捜索班が行きにくい獣人領域や魔人領域の情報を集めることを優先すべきでしょう」


 それが一番、早く帰ることにつながるだろうから。



「今更ですが、志半ばで倒れられた場合はどうされるのです?その場合、情報は伝わりませんよ?」

「他の領域にたどり着けているならば、人間が来たという情報は残るでしょう」

「それが探索の助けになると信じていますから」


 もっとも、途中で死ぬ気はありませんが。



「承知しました。では、チヌカについてお伺いしたいのですが、なぜチヌカだとわかったのですか?」

「思いっきり名乗られたので」

「「は?」」

「マジです。冗談みたいな話ですけど」


 声を揃えてルキィ様とタクに見られたけど、マジなんですよね。それが。…どういう思考回路をしているんだか。



「能力などは…」

「後で紙にでもまとめてお渡ししますが、フーライナのチヌカは簡単に言いますと、既存の生き物の改造ですかね?ですよね、習君?」

「あぁ。それでいいと思う」


 生き物の作成だと、リブヒッチシカがノサインカッシェラになって大暴走したことを説明できないし。



「その能力ですと……、フーライナで被害を出していた魔物の大量発生はそのチヌカが原因ですか?」

「でしょうね。まぁ、大元は断ちましたし、大量発生していた蜂、バッタ、鳥も潰したので、フーライナは割と回復してくるかと」

「そこまでやってくださっていたのですね…。私たちは猪を倒しまし、フーライナは大丈夫そうですね」


 猪…あぁ。唯一、俺らが行かなかった西の案件でしたか。それをしばいているならば、大丈夫でしょう。あの国は強そうですし。



「唯一の懸念は人魔大戦への影響ですが…」


 ぼそっとつぶやくルキィ様。それは確実にあるでしょうね。食糧庫の生産能力が一時的であれ、落ちるのですから。



 …これ、魔王討伐班と帰還魔法捜索班に分けて正解だったな。戦争でめちゃくちゃになれば捜索どころじゃなくなる。万一、食糧が足りなくとも、勇者たる望月達が参戦すれば、戦線を国境付近で押しとどめられる。



「なあ、習。お前らの計画って、このまま北上して、獣人、魔人、エルフ領域経由の人間領域着の環状線だったっけ?」

「そうだぞ?まぁ、大戦勃発したら帰還すると思うが…」

「大戦勃発の可能性があるというだけで、行かないということはないですね」


魔人領域に入る前なら引き返せばいい。入ってる最中でも、それで危うくなるなら、侵入時点でわかるだろ。もろに大戦に巻き込まれるってことは、それすなわち、人間として敵とみなされる。だからな。



「で、それを聞いてどうすんだ?」

「せっかくだし、一緒に次の国まで行かねぇ?と思って」

「それはいいですね!」


 すんごい勢いでルキィ様が割り込んでこられた。ほんと、ルキィ様はアイリのことが好きなんですね…。



「私は構いませんが…」

「俺もです」


 アイリもカレンも異議はなさそ……あ。



「カレン。カレンは戦えるの?」


 俺らの旅は戦闘が発生する可能性のあるもの。だからこそ、カレンが戦えるかどうかは非常に重要。連れて行く気満々だったけれど、戦えないのにつれていくという選択肢はない。



 守らないといけない人……もっと悪い言い方をすれば、足を引っ張る人が増えると、確実に旅は厳しくなる。だから、連れていけない。



「もっちろーん!」

「カレンちゃん。口だけではなんとも言えるのです。何かそういう証明はできますか?」

「もー!心配しょーなんだから!」


 カレンはぷんすかと軽く憤ったと同時、頭上にどこからともなく取り出した弓を掲げた。



「え。待って。それ、どこから取り出したの?」

「無からだよー!これがボクのシャイツァー!」

「「!?」」


 え。待って。シャイツァーって勇者以外は消せないんじゃなかったっけ!?



「ふふん、みんなの考えてることはわかるよー。でも、ボクはハイエルフー!これくらいのことはできるんだー!何でかは知らないけどー!」


 そうなのね…。なるほど。勇者しかできないって言ったって、あれだもんね。ハイエルフに関しては記録がないに等しい。であれば、出来てもおかしくはないか…。



「でも、シャイツァーを持っていること、それ自体は戦えることの証明にはならないよ?」

「そーなの?でも、みんな、シャイツァー持ってるから、戦えてるんじゃないのー?」

「違いますよ!?習君はどうか不明ですが、私はあちらの世界で手ほどき受けています」

「俺も受けてるよ。四季」


 四季が受けてるってのは少し意外ではある。けど、しょっぱなからあんだけ戦えていれば不思議じゃない。



「そーなの?」


 俺らから目を離して、アイリやルキィ様、タクに目をやるカレン。でも、全員から俺らへの同意が返ってきて困惑している。



「カレンちゃんがハイエルフだからじゃないか?普通に戦えるのは。少なくとも、俺や習はあっちの世界で謙三(久我謙三)のところで「え」…え?」


 四季? 何でそんな声を出してるの?



「あの、もう一回言っていただいても?」

「謙三のところで学んだってとこか?」

「ですです。えっと、つまり、久我流ですよね?」

「そうなるな」

「好敵手久我…」


 突然、ソファにもたれかかる四季。え、ほんとにどうしたの。四季が脱力する前の言葉は好敵手久我…え。マジ? それを言っていた人はただ一人だ。たまーに武術の大会っぽいのに出たとき、いっつも会っていた師範さん。まさか。



「あの、四季。もしかしなくても四季の流派って…」

「お察しの通り。清川流です…」

「宿敵清川……」


 そりゃあ、脱力もしたくなる。え。ほんとに? 



「…あの、お父さん。お母さん。わたし達にはわからないんだけど」

「だろうな。だが、そっとしておいてやれ。こいつらは今、「何で頻繁に出会う機会があったはずなのに、会えてないの…」ってなってるんだ」

「…どれくらい頻繁なの?」

「半年に一回くらいが、10年か?」

「頻繁かどうかは怪しいですが、20回あって会えてないとあれば相当ですね。会場が広くて会えていないだけとかはございませんか?」


 なんか外野が言っているが、頭に入ってこない。いや、マジで何で…? 何で頻繁に他流試合している流派にそれぞれ属していて、会うどころか、見たことすらないんだ???



「100ないですね。一部屋に全員集まるので。そして、俺は基本、全部に参加していたのですが、どちらかが出ているときは相方が必ず用事か風邪で来ていなかったはずですね」

「…何かしらの作為がある?」

「かもしれないな。…問題は、それをやって得しそうなやつがいないってことだが」


 いや、考えても無駄か。考えたところで答えなんて出ない。切り換えよう。



「よし、ごめん。それはともかく、カレンは戦えるってことでいいのか?」

「そーだよ!」


 めっちゃ自信満々に言うカレン。だけど、それを全部信じてあげることはできない。嘘だったら全員、死にかねないんだし。



「了解。であれば、後でどれくらい戦えるか見ようか。それでいいよね?」

「ですね。それを見てから、カレンちゃんが同道するか否かを決めましょう。する場合は、予定変更なし。しない場合はカレンちゃんをここにおいていただく……ことになりますかね?」

「だと思う」


 ハイエルフだからエルフ領域に連れて行ってあげたいと思わないでもない。けど、エルフ領域も壁があるからなぁ。



「共有すべきことはこれくらいですかね?」

「おそらくは」


 アークラインで戦ったチヌカがまだだけど、こっちは資料を作って後で渡せばいいし。



「であれば、私たちはそろそろお暇致します。それなりに公務もございますから」


 あるのに来てくださったんですね。



「俺たちは図書館に行ってきます」


 エルフたちについてもっとちゃんと調べたいので。



「では、一緒に行かれませんか?」

「了解です。皆もいいよね?」


 うん、よさそう。



ルキィ様と共に階下へ。そして、図書館へ。そして、大聖堂へとつながる扉の前で、ルキィ様はアイリをぎゅっと抱きしめると、本当に名残惜しそうな顔をして─というか、タクに腕をひかれながらもチラチラこちらを見て─扉の向こうに消えていった。



 …あ。タクを弄り倒すの忘れてた。…まぁ、いいか。別の機会でもできるし。



「別れは済ませた?」

「すぐまた会うけどな。で、何でいるのさ、ブルンナ」


 ルキィ様が公務だったら、ブルンナもそうなはずでは?



「いや、一応、いたほうがいいかなって。だって、ドーラはエルフでしょ?こう見えても、エルフのことはある程度、調べたからね。その結果、たぶんここや禁書庫に情報ないから、封書庫に行こって言いに来た!」


 あー。なるほど。ちゃらんぽらんとはいえ、接している感じ、部下には優しいブルンナそこを見ていないはずがないか。でも、



「いいのか?やばいのしかないんだろ?むしろ、そこにあるかは怪しくない?」

「…それはそうだけど。ぶっちゃけ、皆がいる今のうちに入ったほうが安全じゃない?って思って」


 あぁ、ブルンナですら入ったことがないのか。



「そういうことなら、タクを呼んだほうがいいんじゃない?」

「申し訳ないけど、本しかないところで火を振り回すのは駄目」


 それもそうだ。…剣を振り回すことはできるけど、邪魔か。



「そういうことなら構わない」

「ですね。あ、戦闘の恐れがあるなら、カレンちゃんは待ってもらったほうがいいですかね?というか、ブルンナちゃんもまずいですよね?」

「下手に触るとまずいってだけだし、戦闘にはならないから大丈夫だよ!ちゃんと姉様から許可は取ってるし!」


 抜け目ないな。…普段からそうすればいいのに。



「あー、聞こえなーい」


 何も言ってないんだよなぁ。目は口程に物を言うとはいうけど。



 ずんずんと奥に進むブルンナ。キンショコマモルクンに禁書庫を開いてもらって、彼? に封書庫の扉も開いてもらう。



「ここは二重扉になってるよ。万一、暴れられても外に出られないようにね。後、奥の扉は開いても、障壁ができるようになってるらしい」

「そこまで厳重なら、やっぱカレンは置いていったほうがいいんじゃない?」


 実力が未知数の子だよ?



「大丈夫だよ!いざいざ!」


 フラグ立ちまくってるなぁ…。微妙な顔をしながら四季と顔を見合わせていると、後ろの扉が閉まり、前の扉が開く。



 そして、飛び込んできたのは禁書庫よりもさらに古そうで埃の被った書庫。そして、さんざん大丈夫と言っていたはずなのに、目の前に浮いている何冊もの似たような本。



「みんな!ここ封書庫では掟があるんだ!」

「そんなこと言ってなかったはずだけど、続けて?」

「変なことが起きたら力で黙らせる!」


 脳筋! 魔法がある世界でそれはないでしょ! でも、放っておくってのも無理だ。



「カレン!悪いが戦闘だ!」

「弓ならば、私たちが前衛を張るので、ブルンナちゃんにあいつらが行かないようにしてください!」


 扉の所に障壁があるらしいが、実際に目で見てないからわからないんでね!

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