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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
2章 アークライン神聖国
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51話 エルフ

 アイリもカレンも手渡した紙に書いてある字を頭に刻み込もうとしてくれたのか、紙を見つめたまま寝落ち……するかと思ったけど、予想は外れた。渡した紙を大切にしまい込んで、俺らに引っ付くように二人とも寝た。



 そんな二人が寝たのを見届けてから寝た…はずなんだけど、この目の前の状況はどうなってるんだ?



「何でブルンナが寝室に入ってきてんだ?」

「ブルンナだからだよ!」


 説明になってないね。ほんと、この子は何で同じようなことを何度も繰り返すんだろ…。ほんとに本気で折檻したほうがいいかな? きっと、カーチェ様も許してくれるはずだし。



「ぴえっ。やめて、許し亭許して」

「「何でそのギャグがこっちの世界にあるんですかね()…」」


 言葉遊び系のギャグだよ? それ? どう考えても自動翻訳で通じないタイプのやつだよ?



「知らないっ!それより、それより、昨日の約束を果たしに来た!」


 どっかの漫画みたくバァン! って効果音つきそうなかっこしてるけど、そんなのしたっけ?



 四季のほうを見る。こてっと横に首をかしげている。アイリ…は静かに横に首を振った。カレンも同じく。



「いやいや、またまぁ……してないわ」


えぇ……。流れるようなセルフノリツッコミの芸術点は高いけど、えぇ…。



「ちょ、待って。えーと、どうしよ。…えぇい!ま、いっか」

「いや、よくないから。何があったの?」


 愕然としたと思ったら、こっちを見て顔を青くしてるとか意味が分からない。



「特別ゲストが待ってるの!てへっ」

「…てへっ。じゃないから」


 アイリの鎌の刃じゃない部分がゴスっとブルンナの頭に直撃。



「ちょっ、いったぁ!?なんでそんなもん、軽々と振り回せるの!?」

「…わたしが持つ分には軽くなる。けど、他の人にはそのままの重さになる」

「なる。…え。そんな凶器でぶん殴ってきたの?」

「…制裁。…で、誰を呼んだの」

「え?呼んでないけど?」

「「「「え?」」」」


 あれ? 呼んで…あ、あぁ!



「「待ってるだけですか()」」

「おー、タイミングばっちり。って、ちがーう!そうそう。待ってくれてるの!姉さまと一緒に」


 姉さま? てことはカーチェ様。



「予定は?」

「この後すぐ!」


 CMかな? って、そんなツッコミしてる場合じゃない!



「ちょっ、それならこっちのアポも取ってくれるかなぁ!?」

「取ったつもりになってっ、げぶっ!」


 アイリの鎌の一撃。ナイス。ほんっと、何してんの!?



「急がなくていいってさ。後に予定控えてるけど、問題ないし」


 その情報いる!? 余計に急がなきゃじゃん!



「わかった。なら、さっさと着替えるからこの部屋から出てって!」

「いえ、習君なら、外の部屋で着替えようとしてくるはずなので、この階から出て行ってください!」

「うぃ!」


 あーもー! 



「習君!いつも通り、私の服頼みます!」

「俺のはお願いね!」


 えっと、四季の服は…これが似合うかな? 悩んでいる暇はないけど、今選べる中ではベストな選択なはず。



 四季が選んでくれたのは、これか。なら、



「…わたしは」

「「これ!」」


 アイリは俺らと違って、自分の服を自分で選べるセンスはある。けど、俺らと合わせるなら今、渡したのが最適なはず。で、カレン…あれ?



「待って。カレン、今更だけど、何で服着てるの?」

「ですよね。私たち、渡した記憶がないんですけど?」


 動揺してたとはいえ、なんでそんなことにも気づかなかったんだ、俺ら。



「?ふつーに渡してくれたけどー。おかーさんが」


 え? 四季が? 思いっきり首を横に振ってるけど…?



「渡してくれたよー?」

「…わたしは知らないけど、少なくとも着いたときは服を着てたよ?じゃないと、わたしかブルンナが言ってる」


 確かに。なら、四季が動揺してる中、記憶が残ってないけど渡してくれてたのか。すごいな。じゃあ、いいか。理由はわからないけど。



「…お母さんがお父さんに自分以外の子の裸を見せたくなかっただけだと思う」

「え、アイリ。なんか言った?」

「…ん…んん」


 ? なんか変な間があったような。まぁ、いいか。となると、



「体格的にアイリの服を貸してあげてもいい?」

「…ん」

「「ありがとうございます(ありがとう)」」


 となると…んー、カレンだと明るい系統のが合いそうだからどうしよう。アイリのは割と黒か赤が基調で、しかもロリータファッション系のが多いからな…。むぅ。



 いやでも、それでもなんとかなるか。俺が黒で四季は黒みを帯びた赤(蘇芳)のドレス。アイリに渡したのは黒いやつだから…。



「ごめん、アイリ。まだ着替えてないよね?」

「そっちではなくて、こっちにしましょう」

「…ん」


 深紅の服を着てもらって、逆にアイリのをカレン…に渡す。いやでも、



「カレンちゃんだと、黒すぎますね。白のレースをつけましょう。それでいいですよね?」「うん」


レースはボタンで付け外しができるタイプの服。こういうのが伝わってるのも勇者のせい。ありがたいけど、ほんと、浸食がひどい。



「よし、じゃあ俺は外で着替えるから」

「はーい」


 ちゃちゃっと着替えて、脱いだ服を整えてから身だしなみ確認。よし。



「終わりました!ちょっと雑ですが、見れはするはずです」


 はや。そして、ほんとに終わってるらしく、ドアがガチャリと開かれた。



 今日の四季が来ているのは蘇芳(すおう)色のドレス。胸元にワンポイントとして黒い花飾りがついている。かっちりとした服だから、試着以外で着ているのは初めて見るけど、やっぱ四季の雰囲気に合っていて、綺麗さが際立ってる。



 アイリとカレンは色以外、おそろいの服。レースがたくさん取り付けられていて、一目見て豪華なのがわかる。アイリは深紅でカレンは黒ベース。アイリは服をかわいらしく着こなしている感があるけれど、カレンはほんの少しだけ、子供が背伸びしてる感がある。…そこがかわいらしいところではあるんだけども。



「どうです?」

「あぁ、ごめん。見惚れてた。大丈夫。寝ぐせとかもないし、いつも通り綺麗だよ」

「それはよかったです。習君も大丈…あぁ、失礼。ネクタイが歪んでいますね。うん、これで平気です」

「ありがと」

「いえ。ですが、ネクタイは必要ですかね?」

「さぁ?」


 わかんないけど、とりあえず付けた。さて、何はともあれ用意ができた。早くあっちに行かないと。



「終わったー?」

「呼んでないのに窓から来るのね」


 ブルンナさんよぉ。



「声は聞いてたからねー!事故死は御免被るし」

「え。死ぬの?」

「うん。殺される」

「ブルンナちゃん。どうでもいいこと言ってないで行きますよ」

「うぃー」


 だね。待たせているなら急がなきゃ。正規ルートがあるはずなのに、この前と同じくカーチェ様の寝室を経由して執務室へ。



 思いっきり私室を通ってるのに、公的な部屋(執務室)に行くときにノックしてるの笑えるなぁ。



「何でブルンナはこっちから来るんだ…。まぁ、勇者様たちだからいいっちゃいいんだが。それで、ドーラ。心の準備はできたか?」

「はい、ばっちりです」


 カーチェ様の呆れ声の後に続いた女性の声。おそらく、彼女がお客さんなのだろう。少しだけ声が震えていた気がする。



「よし、行こー!」


 だけど、ブルンナにそういう情緒はないらしい。いきなりドアをあけ放って、カレンの手を引いてずかずかと入っていく。



「どう!?ドーラ!」

「頭が痛いです…」

「くっ、やっぱりそうか…!姉さま!癒しの力を!」

「いえ、姫様の行動が」

「え」


 残念でもないし当然。



「あの、どういうことですか?」

「私たち、呼ばれたってことだけは聞いているのですが、それ以外、何も聞いてないんですよ」

「ブルンナェ…」

「やはり碌に許可を取られておられませんでしたのね…」


 ごまかす様に笑うブルンナに、カーチェ様とその横に座る女性から冷たい視線が飛ぶ。



「あとでしばく」

「何でぇ!?」

「この状況でその言葉が出るのがすげぇわ。はぁ…。すまない。今回、呼んだのは他でもない。カレンのことだ。なんでも、ハイエルフなんだろ?あぁ、政治的に利用する気とかは一切ないから安心してくれ」


 断言してくださると安心できますね。



「で、今回のはな」

「カーチェ様。ここからは私が。皆様、初めまして…ではありませんが、名乗らせていただくのは初ですね。私はこの国にお仕えさせていただいております、ドーラ=メトネルと申します。記憶喪失の身ですが、貴族の末席に名を連ねる名誉に預からせていただいております。お気軽にドーラとお呼びください」


 そういって、綺麗なお辞儀をされるドーラさん。



「ご丁寧にどうも。こちらは「いえ、大丈夫です。すでに皆様の名前はお聞きしておりますから」ですか」


 というか、俺らの部屋の管理やご飯の配膳とかをしてくださっているメイドさんだわ。なら、わざわざ名乗る必要もないね。



「…記憶喪失?」

「はい。アイリ様。私はカーチェ様に拾われるまでの記憶がないのです。この耳なのでおそらく、エルフだろうとはおっしゃってくださっていたのですが、何分、確証がなく」

「耳だけでは駄目なのですか?」


 カレンに似たエメラルドグリーンの髪。その隙間から見えているのは一般的にエルフ耳と呼ばれる耳。それが証拠になると思うのですが。



「あー、それはだな、エルフ領域から出るエルフは少ないとはいえ、いるにはいる。そして、人間と子を為したものもいる。その場合、子供にエルフ耳が出ることも多いんだ。だから、違いは分からん」

「見た目上は同じでも、エルフとはその子たちは違うらしいよ!」


 ファンタジーでよくあるエルフとハーフエルフの差かな? いやでも、遺伝上の問題ならクォーターエルフとかもいるはずだから、その表現は正しくないか。



「その違いとは何なのですか?」

「それがよくわからんらしいのだ。感覚的なものらしくてな」


 えぇ…。それですと、あてにならないですね。



「ということは、あれですか?ドーラさんにその子供たちをお見せしたことはあるんですね?」

「その通りだ。もっとも、会わせたことがあるのは二代目くらいだがな。それで記憶が戻るそぶりもなかったんだ。なら、逆は?となってな。上位っぽいハイエルフが出てきてくれてるなら、会わせてみたいなとなってな」

「ですが、ここまで急になったのはかんっぜんに姫様の勇み足ですね」


 ですよねー。それでもこの会談が実現したのは、俺らもカーチェ様達も「相手を待たせるわけにはいかない!」ってなったから。なんだこれ…。



「…ふつーのエルフは呼べなかったのー?いないわけじゃないんでしょー?」

「エルフはドーラと同じく貴族位についてるのが多くてな。まず、エルフという種は、強力な魔法を使えることが多くて、戦力として優秀なんだわ。そして、希少だ。それゆえに、コレクションしたがる馬鹿がいるから、保護するためというのがある。だから大体のエルフは、魔法がうまい人として、エルフってことは隠す」


 筋は通っている。けど、



「エルフって寿命が長いのでは?」

「帰るエルフもいるしな。それに、残る場合でも、死んだことにすればいいからな。もう、どこに真エルフが残ってるかなんざ、ここのドーラ以外わからんよ」

「あー、なるほどです」



 それなら無理そうですね。情報も徹底的に隠されているでしょうし。



「それでも、カーチェ様は探そうとしてくださいました。ですが、私は記憶を取り戻せたとしても、拾っていただけた恩がございます。ですから、カーチェ様から離れる気はございません。ですから、私の側から固辞したのです」


 早口で言うドーラさん。その口調からはカーチェ様が冷たい人だと思われたくない。そんな気持ちが感じ取れる。



「別に記憶が戻れば離れてくれてもいいんだがな…」

「カーチェ様。私がやりたいのです。それ以上は野暮です」

「だな。で、どうだ?記憶は戻りそうか?」

「いえ、全く」


 一切の悲壮感なく言うドーラさん。だけど、それを聞いたカーチェ様やブルンナは少し悲しそうだ。



「ですが、第二世代や第三世代のエルフがエルフでないという感覚はわからないでもないかもしれません。カレン様が放っておられるオーラは、記憶がないなりに「私とは違う」と直感させられるものですので」


 あぁ、なら、間違いなくカレンはハイエルフなんだろうな。嘘だとは一切思ってなかったけど。



「なら、ドーラもやはり、エルフなんだろうな」

「の、ようですね。…だから何だという話なのですが。カレン様。少し近くによらせていただいても?」


 尋ねられたカレンはちらっとこっちを見る。こっちとしてはカレンがいいなら構わないよ。



「いーよ!」

「では、」


 近づいてじっとカレンのあちこちを観察するドーラさん。



「あぁ、なるほどです。オーラが違うといったのですが、見た目からして違いますね。私と同じ髪色をしているように見えるかもしれませんが、髪色の中にきらきらと小金に輝いているものがあるんです」


 えぇ…。俺には同じようにしか見えないんですけど。…他も同じく。ほんとに、エルフにしかわからない何かっぽい。



「でも、そういうのがあるってことは、カレンちゃんをエルフ領域に連れて行ったほうがいいのでしょうか?」

「基本的に外に出ようとしないエルフの、そのまた上位のハイエルフがわざわざ外に出ているのです。むしろ、外を見回ることに意味があるかと」


 確かに。外にハイエルフを出してますものね。十分な数のハイエルフはエルフ領域にいると考えられますか。



「あの、記憶喪失なドーラさんに聞くのは酷かもですが、何でエルフは外に出ようとしないのです?」

「さすがにそこまでは…。私も何で出てきたのか記憶にありませんし。申し訳ありませんが、後で書物を漁っていただけないでしょうか?」

「…読んでないの?」

「記憶を取り戻すきっかけになれば、とおすすめされたことは御座います。ですが、「やはり戻りませんねぇ」で、終わらせてしまいましたので」


 おぉう…。いやでも、目的が目的だし、そういうこともありますよね。



 ん、鐘の音。2の鐘(8時)? いやでも、音が違いすぎた。なら、なんだ?



「来客が大聖堂に来たな」

「であれば、出たほうがよろしいですか?」

「いや、いてやってくれ。お前らにとって悪い相手じゃないだろうさ。むしろ、いてやってくれるほうがありがたい」

「そういうことでしたら」


 目でほかの三人にも確認を取ると、返答はOK。なら、いさせていただこう。



「であれば、私は給仕に回りますね」

「頼む。椅子を適当に持ってきてくれ。相手はんなもん気にしないだろうからな。あ、手伝うのは止めてくれよ?心臓に悪いから」


 了解です。座って待っています。一人だけ働いている人がいるのにじっとしているという微妙に居心地の悪い時間を過ごすと、扉の向こうからメイドさんの声が聞こえる。



 そして、扉が開かれる。その先にいたのは…、え、



「習?」

「タク?」


 目を丸くしているタクだった。

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