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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
2章 アークライン神聖国
55/93

49話 告白

 カーチェ様から逃げるように俺らの手を取ったブルンナ。彼女が進むに任せて歩いていくと、俺らの部屋に戻ってきた。



「ブルンナ。ブルンナが行くに任せて戻ってきたけど…」

「それでよかったんですか?」


 一応、俺ら勇者だぞ。カーチェ様が非礼をはたらいた!? ってなる勇者だぞ。



「問題なし!無事に姉さまから逃げられたからね!」

「…問題しかない。怒られるよ?…勇者様に何してるんだ。って」

「出るって言ってたから道案内しただけだからセーフ!正規の道で戻ってたら何人で待ちしてるかわかんないからね!仕事してる風を装うから質が悪い!」


 なるほど? 多分、これ、あれだ。俺らの元々の付き合いからいいって確信があるからしてるね。確かにそうだけど、カーチェ様に怒られたくないってんなら、悪手でしかない。



「…でも、勇者様に何してんだってなるよ?」

「……確かに!言質を、言質をください……!」


 頭がそこまで回ってなかったのね。めちゃくちゃ動揺してる。可愛らしい顔してるから、そんな子の目に涙が溜まってるってのは破壊力抜群。守ってあげたくなる。恋愛感情は一切芽生えないけど。



「構いませんよ。何なら一筆書いておきましょうか?」

「お願い……はしちゃうと、お願いしたってことでめんどくさくなりそう!うぐぅ、絞られたくないけど、絞られてから言質の話になったら、助けて!」

「諦めるの?」


 それだと、怒られるの確定するけど。



「いつものことだし」

「「反省し(なさい)」」


 てか、あんだけ怖がってる感出してるくせに、いつものことで片付けるとか、正気の沙汰じゃないぞ。



「いやー、なんていうかこう、姉さまには複雑な感情があってね…。あれは今から36万…いや、1万」

「何でそのネタがこっちにあるんだ…」

「しかもそれ比較的最近…2010年代のですよ?」

「俺的には四季が知ってるのが意外なんだけど」


 四季は勝手に知らなさそうって思ってた。



「私とて、ネットサーフィンはしますからね。そこで見ました」


 なるほど。四季だって、ネットサーフィンくらいはするか。



「で、ブルンナちゃん。その心は?」

「勇者様が持ち込んだ」

「…ん。そんな回答で大丈夫か?」

「大丈夫だ。問題ない」


 あ、マジであるのね。アイリも把握してるってことは。



うーん、わかってはいたけれど、勇者が召喚されたであろう時期がマジで俺らと近すぎる。時間軸どうなってんだろう。



「…話逸れすぎ」

「確かに。えっと、ブルンナの複雑な感情だよね。えーと、禁書庫とかで知ってると思うけど、教皇一族はブルンナと姉さまだけなんだよね」

「それは知ってる」

「ですね。政争でごちゃごちゃになったとか」


 そのごちゃごちゃで軒並み吹っ飛んでるあたり闇が深そうだけど、実態はよくあるやつ。。教皇になればこの世界の最高位になって、贅沢できる! とかいう糞思考の持ち主が食い合っただけ。



 主義思想関係ない分、こっちのが酷いかもしれない。



「その通り。ま、もしそうなっても、今のうちの国は下が優秀だから教皇が無能なら無能で、判子を押すだけの機械にして回せるようになってるから、贅沢するだけとか出来ないんだけど」

「運がいいよね」

「我が国ながら」


 権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する……ではないが、権力者は往々にして腐敗する。だから、下が優秀なら、その下が腐敗する可能性もある。



だけど、この国は運がいいのか、それとも、なまじアークライン教が強すぎるからまともな人が多いからか、上が腐りかけてきたら、下が突き上げて是正させるし、下が腐りかけたら、まともな上からの一撃で腐りかけてるところを切り落とす。その繰り返しで今日まで来てる。



「だからという訳でもないけど、姉さまよりも上が駄目で、姉さまが優秀って分かった瞬間、下の行動が早かったんだよね。下手に醜聞を晒すと教皇の権威そのものが下がりかねない。だから、そそくさと吊るせるやつは吊るして、そこまでではない奴は塔にぶち込んだ」


 吊るす(物理)。塔は幽閉。そして、その場所は…、



「ここから見えてるあそこか」

「ん。ただひたすら高いだけの場所」


 大聖堂は四隅に塔がある。外から見れば荘厳な大聖堂をより立派に見せるための飾りだが、実態はただの牢屋。最上部で眺めは良いのだろうが、あそこに入れられると出られない。



「あそこにぶち込まれるようなのは大聖堂から出ないから、あの塔が一番この国で高いと信じてる。そんなことはないのにね」

「それは知らないぞ」

「ですねぇ」


 大聖堂の中から塔を見ていれば変わったのかもしれない。けど、俺らが見たことがあるのは外からの塔。どこからどう見ても、中央のカーチェ様の部屋が一番高いところにある。



「……だから、あの部屋は虚構にまみれた籠。あそこにぶち込まれても、自分は中央よりも高い部屋にいる。だから大丈夫。そんな虚飾で心を満たす無能の墓場なの」


 気まずそうな顔を一瞬だけしたけれど、ブルンナ、俺らのツッコミをするりと流したぞ。



「ま、そこはどうでもいいよね。大事なのは、ブルンナにとって家族と言えるのは姉さまだけってこと。あぁ、心配しないでね。ブルンナも姉さまも母様は既に天に召されてるから」


 既にお亡くなりと。心配しないでってのは……既に消化しきれてるってことか。あれ? でも、母様? お父さんは…。



「あ。父様も勿論、天に召されてるよ。てか、それが大動乱のきっかけだし。わざわざ母様って言ったのは、ブルンナと姉さまが異母姉妹だからだよ。それでも、姉さまはブルンナを大事にしてくれてねー」


 だろうな。見てれば分かる。カーチェ様のブルンナへの制裁は割と苛烈に見えはしたけど、実態は仲のいい姉妹のじゃれあいだろうし。



「…なら、何で怒られるようなことをするの?」

「勉強は、勉強ばかりは退屈なのぉ!」


 だろうね。俺らも勉強ばかりしろって言われるのは嫌だし。でも、



「必要だから言われてるんでしょ?」

「それに、今日の暴挙に勉強は関係ないのでは?」

「正論でぶん殴るの止めて。正論パンチが一番つらいってそれ(一番言われてるから)


 ジト目でこっちを見られても困る。それしか言いようないのに。



「で、結局、怒られるのは嫌なのに、いつものことでぶん投げてるのはどこに帰着するの?」

「姉さまは姉さまだけど、ブルンナにとっては母様代わりでもあるの。だから、姉さまは好きだから、嫌われたくない。けど、姉さまは母様として、ブルンナをしかってくれることもあるから甘んじて受け入れるしかないという的な?」


 的な? と言われてもわからないよ? 



「ま、まぁ、ブルンナはブルンナなりに、姉さまに複雑な思いを抱いているというわけなのです!って、ブルンナのことは良いでしょ。二人は今日、これからどうするの?」

「やることもないから、図書館に行こうかなって」

「ですね」


 情報収集は大事。帰還魔法がありそうなめぼしい場所はピックアップできたとは言え、そこにまつわる話の深堀りとかは出来てないし。



「なるほど。じゃあ、案内「は、いらないよ。既に知ってるし」「ですね。しかられてらっしゃい」ふにゃああ」

「…どういう感情の発露なの?」


 ほんとにね。猫? って言いたくなる声をあげてるくせに、ソファに顔をめり込ませてぐでっとなってる。



「行ってくるから戸締りお願い」

「ふぁっ!?いや、それは駄目。さすがに怒られる!諦めて行ってくるね!」


 しゅばっと窓を開け放つと、ブルンナはそこから飛び降りて行った。ほんと、嵐みたいな子だ。鍵を閉める手間を増やしてるけど。



「さて、行きますか。アイリちゃんも、不穏分子がいなくなってますので、来ますよね?」

「…ん。ついてく」


 それは何より。なら、一緒に行こう。







______


 図書館についたはいいが、時間が時間。そそくさとUターンして部屋で昼食。食べたら書庫に行って、本格的に書物を読み漁る。そうしていると、夕食の時間。センにご飯代わりの魔力をあげて、さくっと夕食を食べて、さっさとお風呂。



 今日は俺が先。今更だけど、ほんとにアイリに異常がないのかを、四季が目で見て確認してくれるつもりらしくて、アイリが食べてる間に入ってしまった。



 今は二人が入浴中。待っている間、個々人で情報の整理が出来るからこの流れは割と楽。食べてるのを見るのも好きなんだけど、これはこれでいいかもしれない。



 えっと、この辺がこうで…



「…お父さん」

「え。アイリ、早くない?」


 100も数えて無くない? いつもはもうちょっとゆっくりしてるはずだけど…。



「…ん。お父さんと一対一で喋りたかったから。時間は取らせない」

「え、でも、それで大丈夫なの?アイリがいないなら四季もさっさと出てこない?」

「…大丈夫。見てもらってたら髪の毛がお風呂にざばって浸かったから。…洗いなおして、温まりなおすくらいはすると思う」

「するかな?」


 四季ならお話するために、俺が待ってるからってしなさそうだけど…。



「いやでも、早くない?何も言われなかった?」

「…ん。目いっぱい、お母さんに甘えてから「…お父さんに甘えてくる」って言ったから」

「おぉう…」


 それは駄目とは言いにくそう。でも、



「…わたしがここまで、甘えるのは珍しいって?…ん。この間のことで、完全に信頼しても大丈夫って、そう判断した。…甘えちゃ、駄目?」

「いや、全然」

「ありがと」


 アイリはそう言うと、安心したようにほっと息を吐いて俺の横に座る。



「…ついでに、もっと甘えてもいい?」

「いいよ?何をして欲しいの?」

「話を聞いてほしいの」


 アイリはそう言うなり表情をきりっと引き締めた。



「…わたしが悪いことでもあるのだけど「なるほど。分かった。悪いけど、それ以上は言わないで」…」


 アイリが「わたしが悪い」と切り出して、四季ではなくて、俺にだけ言ってくる。そして、甘える。であれば、内容は一つしかない。



「…何で笑うのさ」

「ごめん、ごめん。アイリも、ちゃんと俺を見てくれてるんだなって思ってさ」


 ちゃんと俺の意思を尊重しようとしてくれている。それが嬉しい。別に四季に言ったってかまわなかったろうに。



「四季との関係でしょ?」

「…ん」


 未だに俺、四季に告白してないもんねぇ…。そこをはっきりして欲しくなったのね。



「何で今……ってのは野暮か」


 フーライナにいる間は、まだバシェル王国に近かった。追手が放たれないとも限らないから、ごちゃつくのは避けたかった。



 アークラインは今までは新興宗教の脅威があって、そっちに意識を割いていた方時間は取れなかった。だから、今。



 いや、それだけじゃないか。さっきの「甘えたい」ってのは紛れもなく、本音。だからこそ、このいびつな関係をどうにかしたくなったんだ。壊れるにしろ、続けられるにしろ。



「…ん。考えてくれてることは、多分、合ってる」


 少し恥ずかしそうにはにかむアイリ。ものすごく可愛い。



「それ、四季にもやってあげて」

「…善処する」


 それ、ほんとにやるか分からないパターンのやつ。まぁ、でも、狙ってやるものでもないしね。



「…お父さんがそう言ってくれたなら、わたしからこれ以上を言うのは野暮だね」


 アイリはそう言うと、ぴょんとベッドから飛び降りてエレベーターの方に歩いていく。



「アイリ?」

「…邪魔にならないように、図書館に行ってくる。呼べばブルンナも来るはず。だから、…今日は帰らないから、頑張れ」

「え、ちょ、」


 とか言ってる間にエレベーターの戸が閉まった。えぇ…。マジか。



 いや、でも、いい加減、考える時期だよね。時期的には最良。バシェルもアークラインにまでちょっかいはかけられないだろうし、何ならルキィ様が来る。追手はまずいない。



 問題はムード的なものってところだけど……。世界最高級の宿の最高級のお部屋。割と良い場所ではあるんだよね。隣に大聖堂もある。



 アイリに後押しされてる感は否めないけれど、俺の四季が好きって気持ちは紛れもなく俺のもの。そして、関係を進めたいって気持ちも俺のものだ。…うん、心を決めよう。



「習君、お風呂いただきましたーって、あれ?アイリちゃんは?」

「アイリならブルンナと遊んでるってさ」


 嘘は言ってない。会えるかは確定してないけど。



「なるほどです。どこでです?」

「図書館だって」

「なるほどです。…追いかけますか?」

「いや、遊んでるんなら、邪魔をするのもあれじゃない?」

「確かに。では、お話しましょうか。でも、その前に情報整理をしても?」

「勿論」


 無事? かは知らないけど告白しやすい形にはなったね。告白は四季の準備が終わってからにしよう。…全部吹っ飛んでしまったら、もったいないから。



 変な行動をして、四季に気取られないかと内心びくびくしながら、何でもないように過ごしていると、四季から声が飛んできた。よし。



「では、お話を「それなんだけど、ちょっと待って」?」


 少し困惑した顔でこちらを見てくる四季。あぁもう、決心したからか、いつもよりも綺麗で魅力的に見える。



「四季。今更だけど、大事な話を先に詰めたい」


 そんな思いを振り切り、真面目な顔で声をかけると四季の雰囲気も切り替わった。



 じっと見つめられると鼓動が早くなる。口にした結果はほぼ分かり切っている。けれど、全てが台無しになるかもしれない。そのあるはずもない万が一、それが怖くて、口が震える。



 その恐怖を、結果をほぼ予想出来ている俺は幸運だと、自分に言い聞かせて拭い去る。



「四季。いえ、清水四季さん。俺はあなたが好きです。順序がおかしいですが、付き合っていただけませんか?」

「勿論、喜んで」


 俺が言った瞬間、四季はそう言って頷き、俺に抱き着いてきてくれた。



「あ゛ー。よかった…」

「すごい声出てますよ、習君。私が拒否すると思っていたんですか?」

「ほぼ思ってなかった。けど、完全には否定できなかった」

「……なるほど」


 だけど、四季が好きって言ってくれていても、俺は他の言い訳をしたと思う。その最たるものが告白の順序が違うということ。既に一緒にいるから好きでもないのに好きと思っているだけでは? みたいな感じで。



でも、それを俺からは口にすることはない。そして、四季も思い至っても同様にしない。というか、口にするべきでもない。悪くないはずのアイリが責任を感じるだろうから。



「日頃からもう少し、習君に好きだとアピールしておけばよかったですかね」

「それはそれで俺の立場がなくなるんだけど」


 ただでさえ、ヘタレ感あるのにヘタレの称号から逃げられなくなる。



「そも、お付き合いどまりじゃないですか」

「その先は、もう少しちゃんとしたところで、ね?このままだと、勢いでしかなくなるから」


 さすがにそれは嫌だ。



「一理ありますね。では、待たせていただきます」

「ん。期待を裏切りはしないから」

「信じています。ですが、私も夢のあるプロポーズされてみたいという思いはあります。ありますが、いつまでも待たせる。なんて選択は取らないでくださいね?あぁ、でも、時間制限に追われてというのはもっとヤです」

「難しいことを言うね…。でも、了解」


 頑張って、期待には応える。



「あぁ、なるほど。アイリちゃんがいないのは、このためでしたか」

「まぁ、うん。そう。だけど、アイリ関係なく、俺は四季が好きだよ」

「知っています。私も習君が好きです」


 そう言われると無性に四季が愛おしくてたまらなくなって、自然と顔と顔が近づいて行って唇が触れ合った。



「ふー!」


 もっと、もっと、そう思った瞬間、俺でも四季でもない、鈴の鳴るような声が部屋に響いた。

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