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[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
2章 アークライン神聖国
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43話 聖霧

 せっせと作った『霧』の紙が、俺らの言葉をキーワードにさらりと消える。それを代償に、教皇猊下が置いて行った聖杯。それから絶えず湧き出る水が、出てくるたびに霧と化す。



 後は、これを向こうに押しやるだけ。さ、紙



「ねぇ!この霧は向こうにやればいい!?」

「勿論!」

「出来るなら、お願いします!」

「了解了解!ブルンナの力、見せてやるんだからね!」


 嬉しそうに言うなり、ブルンナが懐から棒を取り出し、まるで指揮するように振るう。すると、風も吹いていないのに霧が教会側へ流れていく。



「ちいっ!押し返せ!」


 まぁ、そうなるよな。向こうも魔法を詠唱して押し返そうとしてる。



「騎士達!あなたたちもブルンナを援護してください!」

「俺らも一回、援護する!」


 騎士たちが詠唱を開始。俺らはさっき撃とうと握ったままの紙を握りしめ、発動。



「「『『風』』!」」


 これで均衡が一気にこっちに傾く。が、向こうに到達するにはまだ時間がかかる。こっから魔法を撃つのは、周りに被害が出かねん。霧が邪魔にならないであろう、屋根の上に登りたいとこではある。が、何もないしな。梯子とかかけ「ねぇ」


 ん?



「どうした?」

「…向こう攻撃出来るなら、した方がいい?」

「「勿論(勿論です)!」」


 俺らの返答が聞こえた途端、アイリはきっと教会の方をにらみつけると、シャイツァーを思いっきり放り投げる。



「『死神の鎌』……切り裂け」

「「ぐわっ!」」


 見えないが、上手くやってくれているらしい。普通に色々巻き込んでるっぽいが。向こうから悲鳴と、なんか恍惚とした声が聞こえる。



「よっし!勇者さんの娘さんのおかげで、統率が乱れてる!みんなー!おっしなっがせーい!」


 詠唱する人数が死んだり、恍惚としていたりで減った。そのおかげで一気に天秤が傾いた。聖なる霧が教会の付近を覆う。



 聖水は少量でもいいから飲ませなければならない。だとしても、別に口を通す必要はない。呼吸しているうちに勝手に体の中に入る。胃の中に入ってないので駄目です。なんてことはないだろう。だから、これで一気に洗脳が解ける。



「ねぇねぇ、こっからどうすんの!?」

「突っ込む!」

「え!?霧は出したまま!?」

「勿論!」


 めっちゃ困惑してる。綺麗な青い目がぐるぐるだ。説明しないと、意図を汲んでくれなさそうだ。



「確かに、霧で視程は下がってる。でも、魔法が解けた時に再洗脳されるほうがマズい!」

「大丈夫、と思っていたら大丈夫じゃない。それが一番最悪です!聖杯付近にまで人を引きずってきて、再洗脳不可な状況を作ってください!」

「ていうか、程よく視程通るようにしてほしい!」

「滅茶苦茶ァ!」


 自覚はある。魔法作る時にそういう設定にしておけばよかった。いや、そうすると魔力消費量が跳ね上がったか? だが、後悔先に立たず。ここで会話してる暇はあんまりない。



「最悪、『身体強化』でごり押す!付いて来れる人はついてこい!」

「洗脳解けてる人は確保!歯向かうやつは潰してください!」


 既に白も黒も何人かは潰している。最悪の場合、黒は教会諸共殺す気満々だった。白に犠牲が出る可能性もあることを理解した上で。



 今更、戸惑うものか。助けられるだけは助ける。だが、無理なのは無理だ。ここでチヌカを逃す方が後の犠牲に繋がる。今、ここでチヌカを仕留めきる。



 そのために、 死んでくれ。



 霧の中に吶喊。あちらさんは配慮をする気は一切ないらしく、適当に魔法を放ってきている。俺らにあたりそうなやつはかなり少ないが……、さすがに敵の攻撃で破壊される街まで面倒見きれない。



 ごめんよ、家主さん。恨むならあいつらを恨め。それか、ここに住み続けたこと。



 霧は薄くならない。あまりにもムリゲーすぎるのと、適当にやって効力が下がるのを嫌ったか? ま、言ってはみたが、おそらくそっちのが正しい。



 本当の濃霧なら横の四季やアイリすら見えるか怪しくなってただろう。でも、濃いと思っていたが、10 mは見えてる。割と見にくいけど、頑張ってくれてんだろうな。ありがとう。



 やっと教会が見えた。けど、鎌はどこに?



「…見えないから仕方ない」


 アイリの方を見たからか、弁明された。ごめん。謝らせる気はなかった。



 それはさておき、教会も霧に包まれている。屋根の上さえも霧が覆っていて、おそらく中まで入り込んでる。



 そんな状況で、白も黒も立ちふさがってるやつは立ちふさがっている。だが、そいつらより、洗脳が解けた途端、戦闘に叩き込まれた元白と、死にたがりの癖に現実を叩きつけられてあたふたしている黒の狂乱が邪魔! 



「こっちへ!」

「騎士たちの後ろへ回ってください!」


 声をかければ狂乱に方向性が出る。方向性が出れば、繊維のある白と黒の適当な攻撃に巻き込まれる可能性が上がる。だが、おそらく、今はそれが一番マシな選択!



 正面の発射の予兆が見える攻撃、どっかからぶっ放される攻撃。対応可能なやつは叩き落す。歩ける人は騎士の後ろに回しつつ、気を失って倒れ伏している人を避けながら、まだ戦意のあるやつらを潰す!



 立ちふさがる人に四季と揃って横なぎ。俺が上の方、四季が下の方を狙ったため、飛びのかざるを得ない。瞬間、息が続かなくなったのか、大きく息を吸う。



 この人は白。だから大丈夫。



「この人の保護を!」


 後ろに回して次。次は黒。既に洗脳が解けているだろうに、目をギラギラさせている。アイリが鎌を晒したものな。



 その思いは成就させない。簡単に避けられる魔法を回避。思いっきり体をぶつけて、吹き飛ばす。狙いは白い教会の扉!



 これで扉を吹き飛ば……せないのか。変に立てこもりやがってからに! なら、強引に!



「習君!」

「うん!やるよ!」

「「『『岩弾』』!」」


 扉向けて岩を発射。扉を木っ端みじんに粉砕して中を貫いていく。



「…何で白っ、なの?」


 戦闘中なせいで、アイリの声がちょっと途切れた。だが、聞こえたから答えられる。



「そりゃ、白……チヌリトリカを主神としてる方が、チヌカがいてもおかしくないでしょ!」

「…だよね!」


 わかってくれてたか。それは何より。



 白の教会の中へ突入。外の喧騒とは裏腹に中には誰もいない。上から降りてきそうだが、霧が入ってきてくれてる。周囲を警戒しながら、容赦なくやりたいことをさせてもらう!



「カーペット引っぺがす!」

「…待って。細切れにした方が早い」


 俺らが行動に移る前にアイリが鎌を振るう。その場からアイリは動かなかったが、鎌が大きくなる。その鎌を振るうと、カーペットの端から端までが綺麗に裁断された。



「…怪しいとこ、くりぬいた!」

「さすが!」

「ナイスです!アイリちゃん!」


 切り抜いてもらった布をどけると、その下にいかにもという鉄の板。持ち上……っ、



「これ、鍵がいるじゃん!」

「なら、思いっきり攻撃を叩き込みま「…待って。この近距離ならわたしが殴る方が早い」ですね。お願いします」

「お願い、アイリ」


 距離があるとか、妨害されるとかなら兎も角、そういうのが一切ない状況なら、殴る方がエコだ。っと、忘れていた。後から入ってきた騎士達に指示出さないと。



「騎士達は待機!礼拝堂には絶対に入らないように!」

「了解です!」


 あの中はきっとろくでもない設備があるから。



 アイリが鎌を振りかぶり、二つに分かれるであろう部分を殴る。



「ッ、硬い!」

「平気?思いっきり刃先が滑っていたけど」

「…ん。シャイツァーで弾かれたってことは、ちょっと待ってね……」


 しゃがんで、金具のところをごそごそと触るアイリ。小さく、「やっぱり」と呟くと、その横の鉄自体を殴る。



「…たぶんこれ、シャリミネでできてる」


 ちょっと脇によって、俺らに殴った個所を見せてくれる。確かに、扉の上に一か所だけ鉄っぽくない部分がある。それがシャイツァーよりちょい劣るくらいの強度を誇るシャリミネか。



 鉄メッキ? の下に見えるは漫画とかであるようなオリハルコンっぽいもの。だが……、中に湛えている色が汚い。いつもの汚い白だ。もらった剣もシャリミネでできてるらしいが…、見た目が全然違うな。この剣が加工されてるってのもありそうだが…。どちらかというと、



「チヌカが作ったな。これ」

「ですね。色合いがおかしいですもの」

「…だとしても、硬いよ。…どうする?」


 他の大事なところはある。だが、



「へいへいへーい!あれ、まだ入り口にいるの?中に入んないの?」


 ブルンナが来たか。何で教皇殿下の妹さんがこんなとこまで出張って来るのかね。



「習君。礼拝堂はどうでした?」

「たぶん、洗脳装置がある」


 だから止めた。ちらっとしか見てないが、礼拝堂の中央に生えていた棒。あれが鍵。ここに入り口があるなら、位置関係的にあの鍵に工作するにはベストすぎる。



「ふぁー!!え、じゃあ、霧もっと流す?」

「出来るのか?」

「うん。持ってきてるし」


 え。持ってきて……うわぁ。マジだ。チラッとブルンナを見ると、嬉しそうに聖杯を掲げてる。俺らの魔法が生きているから、水ではなくて霧だが……。持ってきていいものなのか、それ。



 持ってきているから、いいのか。



「なら入れるだろうが……、折角、持ってきてくれているなら、試したいことがある」

「ん。了解。なら、待つ!皆の衆!二人を守れぃ!あ。暇だから、良い感じに霧を流しとくね」


 テンション高いな。任すが…。さて、いけそうな魔法……ないな。作ろう。



「四季」

「はい。掘れる感じで組んでます」

「さすが。ありがとう」


 土でできたドリルを飛ばす。勿論、貫通力重視。そんな思いを込めてペンを動かす。守ってくれているからささっと完成。さすがに弾かれないと思うが……。



「ちょっと離れて」

「魔法撃ちます」

「「『『岩ドリル』』!」」


 正直、先端を見なければ岩槍と変わらんが、確実に貫通力が上がった。そんなものを扉の真横から真下へ発射!



 召喚された岩がくるくる回転しながら床に突き刺さり、抵抗なく地面を掘っていく。



 よし、掘れた。そして、穴の中……もOK! 梯子だ。これなら扉を下から弄れる。そして、底も浅い。やっぱりこれ、礼拝堂の下で何かする用なんだろうな。



「はい、どばー」


 ブルンナがさっそく霧を穴へ流し込んでいく。今だけは、水のが便利だったかもしれない。まぁ、代償魔法の効果が切れるまで、水は霧になり続ける。言ったって、詮無きことだ。



「騎士たちに先に行かせる?」

「いや、俺らが行く」


 さすがに二人同時に降りれる隙間はない。……であるなら、やりたくないけど、今回は……四季が行く。



「では。私が先発します。フォローよろしくです」

「勿論」


 四季が体にロープを縛り付け、縛っていない方を俺に渡してくる。俺がしっかりそれを握ると、四季はひらりと飛び降りて行った。



 心配な気持ちを抑えて待つこと少し。



「ここは大丈夫そうです」


 よかった。無事だった。ほんと、見えないのが心配でならない。



「一応、下から開けれないか試してみますね」

「お願い」


 縄がきしむ音が聞こえる。



「上に誰もいませんよね?」

「勿論」

「では、」


 声がした途端、下から開かずの扉が開く。



「開くんですね…」

「だね。開かないと思ってた」


 上にカーペットが敷かれている扉だ。下から開いたらマズいことにしかならない。だから、上からしか開かないと思ったんだが。



「ま、それはいいですね。奥に広間っぽい場所がありました。行きましょう」


 了解。きっと、そこで戦闘になるはず。



「騎士たちはどうするのん?」

「んー」


 教会の制圧をしようにも、礼拝堂の中央が怪しいからな……。



「包囲して。脱出とかの事態になれば、こっちに分かるように」

「何人かはフォローのために来て欲しいですが」

「あいあい。だって!みんなー!あ、黒の教会も同じよーに!」


 だな。あっちもどうせ同じだろ。



 さて、行くか。四季が待ってる横に飛び降りる。うん、そこまで広くない。俺と四季が並んだら、アイリが間に入れるか微妙な広さしかない。



「…なるほど。順番は?」

「俺らが先頭で」

「今回は、アイリちゃんが一番狙われますからね。庇えるようにしておきませんと」


 先頭にしたばかりに罠に! とか、ごめんだ。後ろからの奇襲も可能性はあるが、ブルンナとか騎士達がいるから大丈夫だろう。



 会話してる間に、四季が言ってくれてた部屋は、既にブルンナが抱えている聖杯から出る霧で、薄く満たされてる。仕事が早い。



 警戒しながら侵入。……普通だ。道と変わらず石造りの地下通路。石は黒と白が混ざったような汚い色。でも、霧に触れたせいか、嫌な感じはあまりない。



「…礼拝堂の中央はあのあたり?」

「「だな(ですね)」」


 そして、そこには変な支柱が。ガイドレールみたいなのがついていて、何かが上下に動きそう。その天井部分にはちょうど、シャンデリアみたいなのが差し込めそうな穴が開いている。



 ガラガラ!



 突如部屋の中に響く爆音。同時に、勢いよく下から見た目だけは豪華なシャンデリアが上がってくる。それは止める間もなく天井付近に到達すると怪しく明かりを灯す。



 来るか!?



 ………………来ない。なら、



「「『『ロックランス』』!」」


 あのシャンデリアをぶっ壊すまで! どうせあれ、白授の道具(ノサインカッシュ)だろ!



 太い岩の槍が激突。甲高い音を立てる。しかし、無傷。



「…支柱を折る方が早い!」


 確かに! 貰ったばかりの剣で四季と揃って殴りつける。



「硬い!」

「…わたしも、手伝っていい!?」

「「勿論(勿論です)!」」


 次の手を打たせないようにするほうが大z……ん?



「「アイリ(アイリちゃん)?」」


 あの子なら、既に攻撃してくれてるはずなのに、くれてない。



 っ、アイリの目が……!



 気づいた瞬間、四季がアイリに駆け寄り、抱きしめる。俺は周囲の警戒。うん、平気そう。



「…っ、ごめん、ぼうっとしていた」


 四季と一緒に抱きしめようかと思ったけど、正気に戻ったっぽい。



「ごめん、ちょっと目を見せて」

「…ん」


 素直に頬を触らせてくれるアイリ。正面から見ても、ちょっと向きを変えてみても、大丈夫らしい。……何かされたけど、レジスト(抵抗)した? っぽい?



 あれは洗脳だったと思うんだが……、でも、騎士やブルンナ、それに俺に四季には影響はないし……てか、ブルンナは何してんだ。



「ブルンナ?」

「はひゃっ!げぶっ「どんがらがっしゃあぁぁん!」いたぁい!」


 漫画かよ。声にびっくりしたブルンナが体を動かしたら、鎧に激突。当たり所が悪かったのか、思いっきり倒れて、首の部分が吹っ飛んだ。



「……?ねぇ、あの中に何かない?」

「うん?首か?」

「そう」


 確かに何かがある。が、俺らが行く前にブルンナが取った。無警戒すぎない? 大丈夫?



「なんか怪しげなやつが出てきたー」


 あぁ。魔法で浮かしてるのか。それならまだ平気だな。



「ほら、見て!」


 ブルンナが言って差し出してきたものは白と黒をぎゅっと押し固めたような塊だった。

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