表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[改稿版] 白黒神の勇者召喚陣  作者: 三価種
2章 アークライン神聖国
38/93

32話 図書館

 異世界の宿に来たらエレベーターがあった。何を言っているか分からないと思うが、俺も何を言っているか分からない。きっと、過去の勇者が残していったものなのだろうけど、何故、宿に置いておけるんだ?



 人間領域の盟主っぽい、バシェル王国の城にはなかったはずなのだけど。アークライン教の聖地だからだろうか。バシェルの国教もアークライン教だったはずだし。



 ……そんな勢力を持つ宗教国家のお膝元で暗躍する新興宗教二つ。嫌な予感が強まるな。



「ふふん、どーだ!驚いたでしょー!」


 黙っていたのをブルンナは驚いていたからと解釈したらしい。好都合だ。ここで知ってそうな反応を返そうものなら、勇者だって確信を与えてしまうことになりかねない。



 正直、勇者だとバレてもいいような気がしなくもない。けど、アークラインはまだバシェルから近い。勇者権力で新興宗教叩き潰す手伝いした結果、碌に資料を閲覧できずに、バシェルの追っ手から逃げる……なんてことになるのは嫌。



「無反応やめてよー!」

「あ、あぁ、ごめん。驚いてた」

「音とこの壁()の動きが対応しているようですが……。自慢するということは、これだけじゃないのですよね?」


 うまく知らない演技を出来ているだろうか。エレベーターが何か知らない人はここを見ただけじゃ、何がすごいか分からないとかないよね?



「そかそか、それならいいや!じゃ、乗って乗って!最上階に行くから!」


 めっちゃ笑顔。誤魔化されてくれた? うーん、微妙。微妙と言うか、乗ってからが本番かな。「最上階に行くから!」で、「そーか、了解」ってぽちっと最上階らしき6階のボタンを押したら「乗り方わかってるじゃーん!」ってなる。



 ほんとこの子、可愛らしくてちょっと阿保っぽく見せてるくせして、なかなか侮れない。



 中は洋風。明治期に建てられた西洋風の建物の中という印象。



「で、どうしたらいいのです?」

「ボタンを押すの!揺れるからちょっと気を付けてね!」


 言いながらブルンナはドアの横についてるボタンを押そうとぴょんぴょん飛び跳ねている。正面だけじゃなくて、横にもスイッチはついているんだが。これは横のスイッチを押しに行ったら「やっぱ知ってるじゃん!」って言いたいパターン? 



 まぁ、助力するにしても普通、横のをわざわざ押しに行きはしないから、考えすぎか。



「あ。ごめん。上に行く前に先にこの中見たい?」


 ここは頷いておこう。



「了解。だったらボタンは押さないでね。動き出すから」

「ブルンナが押そうとしてたやつと、壁についてるやつを押したら駄目ってことでいい?」

「いーよ!」


 だよね。知ってる。内装が珍しい洋風って点を除けば、正味、向こうで見慣れたエレベーターの何も変わらない……わけじゃないか。よく見れば後ろの壁、1 mくらいまでは床から壁が生えているけど、その上は何もない。エレベーターシャフトに直接触れる。



 めっちゃ危なく見える。けど、俺らの乗ってる籠とシャフトの隙間は1 cmもない。けど、微妙な隙間。物が落ちるかもしれないし、子供なら指を挟みかねない。



「あ、心配しなくてもその隙間には物を落とすことも、指を突っ込むことも出来ないから」


 安全対策はばっちりと。たぶん魔法なんだろうけど。



「ブルンナ、他に今見れるところある?」

「んー、ないかな」

「なら、移動しちゃいましょう」

「りょーかい。これ押したら動くから、目の前に見えてる壁見てて!」


 じゃあ、行っくよー。とウキウキした様子でボタンをポチっと。っ……。割と揺れた。



「習君、蕾を持っていても、あの程度なら支えてくれなくてもこけはしませんよ」


 ? 支えて……あ。いつのまにやら四季の右手を取ってた。えーと、割と無意識だった場合の対応は……、



「そっか、ならよかった」


 なるべく、自然な感じで離す。かな? かなりレスポンスが遅かったから、微妙っぽいけど。



「…大丈夫?お父さん」

「うん、大丈夫」


 アイリに気を遣われてしまった。夫婦で子供もいるって設定なのに、腕掴んだくらいで恥ずかしがってたら変だもんね……。



「揺れるって言ったじゃん!それはそうと、後ろ見て、後ろ!」


 エレベーターがゆっくり動いているから壁もゆっくり動いてる。



「触ってもいいよ!そんなに早く動いてないから、こそげる心配は要らないよ!まぁ、気を付けないと、危ないけど」


 だろうね。動いているものから静止しているものを触るってのは、基本的に危ない。



 自分で動かしているなら加減が効くけど、勝手に動いているものなら、そこに自分の意思は反映されない。何か想定外が起きても、想定外に対応できるようにシステムを構築していない限り、無慈悲に動き続けるんだから。



 上がっていくと上の方の模様が微妙に切り替わる。モチーフが何かは分からないけど、これは春かな? っ。また揺れた。



「ドヤァ」


 ブルンナがドヤ顔してる。いや、止まった説明…って、あぁ。2階に止まったのか。籠とシャフトの模様がいい感じに合わさってる。きっと、全部の階でそうなるようにされているんだろう。



「つぎぃ!」


 また揺れた。……隙間全然ないはずなのに、どうやってここまで揺れてるんだ? いや、普通に考えて魔法だよな。……魔法で揺れる? まさか。



「ブルンナ。この揺れって、調整出来るとかないよな?」

「え?出来るよ?」


 出来るんかい!



「何故、揺らしたのです?」

「気分」


 ……一回、しばいてもいい?



「これで強さを、調整できるよ!」


 俺らの剣呑な雰囲気を察したのか、露骨に体を棒に向けて言う。さっきまでなかった気がするのだけど、体で隠してた?



 まぁいいか。棒がスイッチということは、大方、回して揺れの強度を変える。棒を押し込んだらオフ、引っ張ったらオン。そんな感じだろう。もたれかかった時に勝手にオンになったら危ないし。



「って、遊んでる間に着いたじゃん!」


 ほんとだな。最上階の絵は日本風。これも勇者の出身地に日本が多いって証拠かな。



「まぁ、どうせまた下に行くから、その時にちゃんと見るよ」

「だね。降りよっか」


 部屋はやたら豪華。わかってはいたが、世界最大の宗教国家の本気を見た気がする。



「どう?こっちもすごいでしょ?この部屋丸々、好きに使っちゃってくれていいから!ここはこの部屋の玄関。一個入ると、くつろぐ用の部屋ね。今は誰もいないから、見せびらかすように開いているけれど、中に人がいたら向こうから見えなく出来るから」


 エレベーターで間違って人が上がってきても大丈夫と。



「階段も横にあるから、そっちから来た人用ってのもあるよ。中にはお風呂とトイレ、さきの寛ぐ用の部屋と、寝室があるよ!」


 部屋の数はそこまで多いわけじゃないのね。……となると、その分、一部屋が広いパターンかな。



「これで宿の案内は終わり!で、どうする?このまま図書館も行っちゃう?それとも、明日にする?ブルンナはどっちでもいいよ!あ、でも、時間が微妙だね。ちょっと早いけど、ご飯にして、それから図書館にする?ブルンナはそれでもいいよ!」


 それがいいかな? 四季もアイリも……それでよさげ。なら、



「ブルンナ、それでお願い」

「りょーかい!じゃ、中に入って!」


 意気揚々と進むブルンナの背を追って、部屋の中に。



「荷物は好きなところに置いておいてねー」


 馴染みの友達を家に呼んだのかって感じで、こちらを見ずにてってこ奥に進んでいく。そして、壁についているボタンの横で、



「このボタンを押したいと思いまーす!」


 と言うと、俺らが何も言わないうちにぽちっと押す。たぶん、注目を集めたかったんだろう。ボタンが押されて、少しだけ待つとポーンと言う音が鳴って、壁が開く。そして、中からするすると台車と料理が出てきた。



「どーだ!すごいでしょ!」


 再びドヤ顔のブルンナ。確かにすごい。すごいが……、たぶん、あれもエレベーター使ってるよね? 何で貴重っぽいエレベーターをこの部屋一つで実質的に二つも占有してるの?



 それだけ、この部屋に泊まる……というより、泊まれる人は偉いってことなんだろうか。それとも、悪趣味な成金とかに金を出させたいんだろうか。



 それは置いとこう。台車に乗っているのはほっかほかのグラタン……かな? 俺らがご飯食べるかどうかわからなかったはずなのだが、何ですぐに温かい食べ物が出せるの?



「料理があったかいのは、そーゆー機械があるから!すごいでしょ!あ、この部屋限定の機能だよ」


 この部屋への力の入れ方がおかしい。



「それはそれとして、食べよ!ほらほら、冷めちゃうよ」


 それはそうだ。だけど、当然のように俺らに交じってくるのね。別にいいけど。



 蕾を安全なところに置いてもらってから、グラタンを台車からやけに豪華な机の上に。そして、着座。…わかっていたがふっかふか。 あ、そういえばブルンナの前でいただきますしたことあったか? ……ない、かな。でも、心情的にしないのはなし。



「「「「いただきます」」」」


 ブルンナもするのね。先祖代々のあいさつとか言う必要なくてありがたいけど、拍子抜け。



 ま、食べよう。スプーンでカリカリのチーズを貫く。……わかっていたけど、ドリアじゃない。少し残念。お米を久しぶりに食べたかったのだけど。



 炭水化物がマカロニで、後は玉ねぎと鶏肉かな? マカロニを掬って口へ。……美味しい。ソースがすごく濃厚。それでいて、マカロニの味もする。



 マカロニって湯がいただけでのを食べるとほぼ無味に近かった記憶があるんだけど、ちゃんと味がある。……いや、これはどっちかというと風味? マカロニの材料の小麦の風味が漂ってきて、香ばしい。



 もう一口。今度は玉ねぎと鶏肉が口の中に。玉ねぎは甘くて、鶏肉はジューシー。噛むたびにコクのあって奥深い、チーズとミルクの味が広がる。







______


 さて、俺と四季、ブルンナは食べ終わった。し、アイリも食べ終わってる。でも、アイリはきっと量が足りてない。



「アイリ、足りてる?遠慮しないで言ってよ?」

「…ん。足りてるか足りてないかで言うと圧倒的に足りてない」

「ふぁっ!?」


 ブルンナが変な声出してる。そりゃ、アイリの見た目で俺よりいっぱい食べると思わないよなぁ……。



「な、なら、用意させるね!少し待って」

「…いい、荷物に入ってるからそれを食べる」

「待って!それだとこっちの沽券に関わっちゃう!どれくらいいるか教えてくれたら、それで発注かけるから!」


 衣食住は保証する的なこと言ってたものな。それを守れないってのは避けたいだろう。



「…わかった。なら、さっきの5人前頂戴」

「……わ、わかった。それでやるね」


 ブルンナが一瞬だけ、マジかって顔をした。ほんと、意外だよね。



「…お父さん、お母さん。わたしは待たなくていいから、図書館行ってきて」

「え、でも……」

「いいから。どうせ、わたしは図書館に行かないから」


 人目に着くと面倒な可能性があるし、危険性もなさそうだものね。了解。



「買い物するときとかはどうします?」

「…それは行く」


 アイリの瞳が暗に「護衛だからね」と言っている。ついてきてくれる理由が何であれ、来てくれるなら、良いか。



 いくら物騒だと言っても、閉じこもりきっちゃうのはあまりよくない。一日の数時間くらいは、外に出してあげなければ。危険から守ってあげないといけないが……、その時間くらい、出来ないとね。



「…だから、行って」

「わかりました。では、行きましょう」

「え。待って。えーっと、たぶん、給仕はいらないよね。だから、ご飯は出来たらエレベーターで運ぶようにしとくから、悪いけど勝手に取ってね!」


 遠慮しているっぽいブルンナをぐいぐい押していくアイリ。俺と四季がエレベーターに乗った後、ブルンナが言い切る。その瞬間、ブルンナがえいっとエレベーターに押しやられ、扉が閉まる。



 籠が上から下に降りていく。どうもシャフトの絵は下から明治日本、春、夏、秋、冬、和風っぽい。作ったのが勇者だからか俺らからすると超典型的な絵。だけど、典型的な分、懐かしさとかが胸に沸き立ってくる。…表に出しはしないが。



 到着。最初もそうだったけど、一切揺れなかった。てってこ走るブルンナを追って廊下を進む。俺らの身長が高いから、ブルンナが走ってるのに歩いていても普通についていける。



 ブルンナは人一人が通れるようなドアの前で立ち止まり、こちらに体を向けてくる。



「ここから先が、わが国が誇る図書館!中では静粛に!だよっ!」


 ブルンナが一番うるさいって言葉をぐっと呑み込んで、頷くとブルンナが扉を開いて中に。



 おー、本がめちゃある。うっすらと紙とインクの匂いが漂ってきてる。壁一面が本棚になっていて、その本棚は無駄に高い天井付近まで続いている。



「5階部分まで蔵書が保管されてる。まぁ、読むスペースは一階にしかないわけだけれども」


 声を潜めてブルンナが解説してくれる。ただ、目の「ドヤァ、すごいだろ!」感は声量が下がっても変わっていない。



「あぁ、一階だけなのは監視の都合だよ」

「本は高価ですものね」

「そんなに人が来ないからってのは理由じゃないの?」


 見ている感じ、そんなに人がいなさそうなのだけど。まぁ、5階まで蔵書があるから本を取りにくいから少ない! って言われると納得なんだけど。



「あぁ、それはないよ。人が少ないのはこっちが貴族用だから。向こうの一般人用はそこそこいるよ。ただ……、新興宗教のせいで人が減ってるのもないわけじゃないよ」


 ですよねー。困ってるからこそ俺らに助けを求めてきたわけだよね。



「向こうってどこになるのです?」

「あ。説明してなかった。あの中央にある壁の向こう。この図書館は全体として円形だよ」


 円形の図書館を真ん中が壁でぶち抜いてる向こう……と。ま、その壁も四階くらいの高さでなくなって、天井の窓から光が入ってくるような構造になってるね。



 そして、当たり前のように壁が切れてる一般人用区画の天井付近も本が一杯。



「貴族が向こうにまで本を取りに行くの?」

「ふっふっふ。そんなわけないじゃん」


 そう言うとブルンナは、親指と人差し指をかっこつけた顔をしながらこすり合わせる。



 何がしたいの? あ、あぁ、指を弾いて音を鳴らしたかったのか。下手くそ過ぎて全然わからなかった。



「待機はいいから来て!」


 顔を赤くしてプルプル震えながらブルンナが図書館なのに叫ぶと、仕切りのところから何かが飛び出てきて、俺らの目の前に降りてくる。これは……ドローン?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ