24話 ノサインカッシェラ
とびかかってきたノサインカッシェラを回避。
勢いが相当あったからか、結構な距離を飛んで「ドスン」と大きな音を立てて着地……できず、ずぶずぶめり込んだ。
脱出しようともがいている光景は阿保っぽい。雨で地盤が緩んでいたというのもあるだろうが、それ以上に、生まれたばかりで力を把握できていないような印象。
とりあえずペンを投げてみる。
俺のペンと四季のファイルが同時に着弾。アイリが鎌で切り裂き、センが足で思いっきり蹴りつける。
が、効いている気があまりしない。確かに、ペンは穴をあけ、ファイルは命中点を凹ませ、鎌は腕を切り落とし、センの蹴りは肉を抉った。しかし、それらの傷はすぐに回復された。
回復も瘴気を消費することでなしているのだろうから、『浄化』とか『回復』を叩き込めば弱らせられるだろう。だが、確実に紙が足りない。
「四季」
「はい」
まだあいつが自分の体に慣れていないうちに紙を増やす。まずは『回復』を。既に3枚書いているから、魔力消費量は既にそこそこ──およそ0.5割──だ。
リブヒッチシカ戦では魔力をあまり消耗しなかったが、そろそろきつくなってきた。
「ガルッ!」
もがいていたノサインカッシェラが新しく腕を生やして大地をつかみ、四本の腕にグッと力を入れて飛びあがる。
瘴気の量は減った。減ったが、そんなのありか。
…ありなんだろうなぁ。ノサインカッシュは魔物を作る籠。であれば、それを胸に持つノサインカッシェラはその力を使って自己改造できる…というのは自然。
それはともかく『回復』完成。
「習君!」
「わかってる!頼む!」
抑え込む役を四季とアイリ、センに任せつつ、まだ紙を作る。女の子二人と、リブヒッチシカの口ぶり的に、生まれてあんまり時間の経ってないお馬さんを前に立たせるのは正直、俺の矜持に反する。が、そんなこと言っていられる場合じゃない。そんな矜持は捨て去る。
四季の紙に込めてくれたイメージと合わせられれば、魔力の損失を多少は抑えられるはず。書いている途中にでも合わせられるが、最初から合わせに行く。贅沢できるほど魔力に余裕はない。
「四季!この紙は!?」
「『聖火』です!」
「了解!」
四季が紙に込めてくれた想像の端緒。それで十分、合わせられる。長々聞いている時間の方が無駄だ。
ペンに魔力を込めて紙の上へ。もちろん、前方への警戒も怠らない。
ノサインカッシェラは目の前にいる生き物を粉砕するのを優先しているのか、四季、アイリ、センに大味な攻撃を集中させている。
腕が四本ある以外はゴリラみたいな見た目をしているからか、力でねじ伏せる戦い方を好むようだ。振り下ろし攻撃をする度、地面に溜まった水と土がまとめて跳ね上げられる。
手ごろなサイズの石や折れた木の破片があればぶん投げてくる。三人も出来るだけ落とそうとしてくれてはいるが、たまにくる。
来たものはしっかり避ける。三人に余計な心配はかけられない。
『聖火』は聖属性を帯びた炎。不浄を燃料に燃え盛る火。そのイメージでペンを動かす。『回復』が4枚、『浄化』が1枚あって、さらに『浄化』が一枚消えているからか、要求魔力量はかなり多い、およそ0.6割。
四季の想像と合わせにいっているからか、魔力量の多さによる抵抗はだいぶ減衰されてはいる。いるのだが、現存魔力量からしてあまり慰めにならない。
『身体強化』による魔力消費量もかさんでる。そろそろ3割を切…っ!
ちょこちょこ避ける三人にしびれを切らしたのか飛びかかってきたノサインカッシェラを避ける。
紙からペンをあまり離さないように、かつ、足を取られないようにしつつ…、ここを払って…!『聖火』完成。
のはいいが奴の腕の範囲から外れきれていない。受けたくないが受けるしかあるまい。ッ…、重い!
叩きつけを受けたからか、振動が骨に響く。アイリや四季、センがフォローに入ってくれるから追撃は受けないが、少し後に引きずりそう。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫。紙もちゃんと書ききれた」
だが、今持ってる浄化系の魔法は、戦闘中に書き上げた新品の『聖火』『浄化』『回復』、それにアイリに渡してある『回復』に、使い古しの合計三回分の『回復』2枚だけ。まだ足りない。
代償魔法ならば確実に潰せるだろうが、今は無理。使えるようになるのは今日の18時だとか20時。持久を考慮に入れていい時間ではない。
「まだ書きますか?」
…次は多分0.8割くらい取られる。そうなれば残り魔力は2割。だが、そこまでして書いて潰しきれるか?
瘴気を自分で削ってくれるのを待つのも一つの手。そうすれば現存の紙で手が届くかもしれない。だが、目安が不明。ゴールのない持久ほどつらいものはない。
それを待つなら代償魔法を待つ方がまだ精神的に良い。だったら、書くか。
「今度は『聖光』です」
「ありがとう」
頼む前にくれた。
『聖光』。聖なる光ならば「聖なる光が邪を払う」というもので良いだろう。はっきり言って『浄化』と何が違うかわからない。だが、それでも完全一致じゃなくて微妙に違う魔法としておけば多少は消費魔力量が減るはず。
「グルァ!」
「…させない!」
埒が明かないと思ったのかさらに腕を生やそうとしたノサインカッシェラの先手を打ち、アイリが生えてきそうな場所をえぐり取る。
抉られた肉はポトリ地面に落ち、そのまま蒸発するように消え去る。が、奴に堪えた様子はなく、肉を再生しつつ別のところから新たに腕を生やしてくる。
これで手は6本。腕が増えようとすべての大本はノサインカッシェラ。距離さえあればほぼ安全ではあるが、4本の腕で常に殴りつけながら、2本の腕であたりのものをつかんで投擲。とかして来るようになった。皆の負担が大きくなってきた。とっとと書き上げてしまわないと。
「習君!」
「わかってる!でも、ありがとう!」
突進の予兆が見えた瞬間、魔力を全力で足に回して『身体強化』。勢いよく飛びのきながら、ペンを動かし続ける。後、もう少し。だのに、あいていた手から投げられた木が飛んできやがった。
「やらせません!」
四季が割り込んでくれ、うまく撃墜…出来てない!
受けた衝撃ですっ飛ばされる四季。書いている途中ではあるが、足を少し上げて四季へ軽くぶつけて速度を落としてやる。そして、足に力を込めて体全体で受け止める。
あっ…、しくじった。微妙にずれた。
「ごめんなさい!」
「問題ない。そっちは?」
多少、威力は落ちるかもしれないが、それは俺がとっとと書ききってしまっていればよかっただけのこと。
「平気です!」
「ならよかった」
だから、四季が無事ならそれでいい。
ノサインカッシェラはさすがに地面にめり込むようなことはないか。アイリとセンが相手してくれてる。けれど、振るわれる腕と真っ向から衝突しようものなら吹き飛ばされてしまう。それを理解しているから少し戦いにくそうだ。
とりあえず『聖光』完成。王の真ん中の横棒がぐにゃってなって、上の棒と混じりそうな見た目ではあるが、ギリギリ混じってない。ちゃんと認識されるはず。
「出来ましたか!」
あぁ、出来たよ。『聖光』の威力が未知数。削り切れるかどうか怪しい。怪しいがとりあえず、『浄化』、『聖火』、『聖光』は全て叩き込む。それで様子を見る。
「アイリ!セン!」
「サポートをお願いします!」
「…ん」
「ブルッ!」
一気に突っ込む!
俺らへ放たれる石や木は、速くとも一直線に飛んでくるだけ。さっきまでのように別のことをしながらならともかく、今のように投げる本人、飛んでくるものを見れているのならば、あまり脅威ではない。…当たれば吹っ飛ばされるが。
危なげなく至近距離へ。攻撃が来る前に、
「「『『聖火』』!」
繋いでおいた手に握った紙を発動。落ちてくる腕を燃やす。聖なる炎はリブヒッチシカ曰く神気…俺らからすれば瘴気を燃やし、延焼する。
「…お父さん!お母さん!燃えてる!」
「ブルルルッ!」
「へーきなのー!?」って?大丈夫。
「聖なる火では俺らは燃やせない」
「ので、大丈夫です。それより、残った腕を!」
頷いたアイリが即行動。振るわれた鎌がノサインカッシェラの腕を切断し、地面の上で燃え盛る炎の中に落ちる。
「「『『浄化』』!」」
ノサインカッシェラの足を光で包み込み、機動力を削り、燃え盛る火へ叩き落す。
「「『聖光』!」」
聖なる光で包みこみ、ノサインカッシュ──籠──から生えてきている全ての黄色い光を殺す。そこに、
「「『『聖火』』!」」
聖なる炎をもう一度。追加であふれてくる瘴気を焼き殺し、中へ!
「…どう?」
やった!と言いたいところなのだが、
「このままだと駄目っぽい」
「ですね」
湧き出る瘴気は燃やせる。だが、このままでは籠の内部…、リブヒッチシカの核に届かない。
炎は籠の内側に入りこめているようではある。が、
「致命的な損害を与えられてない」
「入り口が狭すぎるようですね」
籠に僅かに存在する歪みを拡大して、入り口を広げようとしているようではある。が、実を結んでいない。
「…ここに追加しても無駄ってこと?」
「そうなる」
『浄化』、『聖光』を追加しようと無駄。籠を攻撃できる場所は『聖火』だけで埋まってる。追加したところで加勢すらできやしない。
「ブルルッ、ブルルルル?」
「「なら、穴を広げる?」…って?それはそうなのだけど」
狭ければ道を広げればいいじゃない。その発想は間違ってない。
だが、今、ノサインカッシュから攻撃がないのは聖火が燃やしているから。燃え盛る範囲からノサインカッシュが出るなり、火が消えてしまうなりすれば、攻撃されてしまうだろう。力加減の調整が難しい。
だが、やるしかないか。このまま見ていたところで、今の手持ちの浄化系統を全て叩き込んだとしてもこいつを仕留めきれない。ならば、やった方がいい。
ペンをノサインカッシュに突き立て…!?硬い!
「習君?」
「想像以上に硬い。アベスのときも大概硬かった気がするけど、こっちはそれ以上」
「なるほど。では」
四季もファイルで殴りつけ、顔をしかめさせる。
「岩や鉄よりも硬いのでは?」
「シャイツァーじゃなければ、先に殴ってるものが壊れそうだ」
「ですね。では、センは攻撃しないように」
「ブルル…」
不満そう。でも、これは変えられない。センが怪我する。
「…わたしは殴っても?」
「逆に殴って」
返事を返した瞬間、鎌の切っ先を叩きつけるアイリ。インパクトの瞬間、硬質なものと硬質なものが激突したような、甲高い音が鳴る。
「…なるほど、これくらいなら問題ないね」
ぼそり声を漏らすと、繰り返し叩き始めるアイリ。鎌と籠が激突するたび、音が変わる。概ね何かが激突する音であることには変わりない。だが、ぺちゃ、ぐちゃ、だったり、カン!キン!だったり、ゴッ、ドスッだったりと節操がない。
見てないで殴るか。
四季の攻撃はうまいこと息があってるから気にしなくても平気だが、アイリのは少しだけタイミングを見計らう必要がある。が、問題ない。
うまくアイリの鎌の攻撃の邪魔にならない時々に俺、四季が攻撃を挟み込める。
籠は未だに燃えているが、炎は『聖火』。俺らを焼くことは一切ない。
だが、殴る効果の程は微妙。出来るだけ全員、同じ場所を殴り続けているが、それでも微妙と言わざるを得ない。籠の歪みは多少、広がっている。内部の瘴気の荒ぶりも酷くなっているように見える。が、その原因が籠の揺れにあるのか、聖火にあるのか、はたまた別の何かなのか……それがわからない。
だが、それより、
「そろそろ時間切れ!」
聖火が消えてしまう。追加できないこともないが、これを続けるよりは、たぶんこっちのがいい!
「セン!乗せてください!」
「ブルッ!」
ちょっと離れて早々にセンに3人で乗り込む。
「復活したら思いっきり逃げて」
「ブルッ」
「…それでいいの?」
よくはない。出来れば潰しきりたかった。けれど、こっちの方が多分マシ。
「…残り魔力は?」
「2割」
「同じく」
だから無茶は出来ない。現状、露出している核に最高火力で『浄化』系列の魔法を全て叩き込んで、ようやく仕留めきれるかどうか。それだけで1割はすっとぶ。
格をさらけ出した時に、それだけの魔力を残しておかないといけない。
「消極的だが、逃げ回って消耗を誘う」
「瘴気…あの気持ちの悪い靄の補充は恐らく簡単ではないはずです。逃げ回っている間に回復されることはないでしょう」
簡単ならばリブヒッチシカがこんな大仕掛けをする必要はない。リブヒッチシカがわざわざ「間に合った!」なんて言ってボロスの核を保護する意味もまた、ないはずだ。
「グルアアア!」
「さぁ、逃げるぞ!」
「ブルッ!」
瘴気を消費し、さらに手足を二本ずつ増やしたノサインカッシェラ。鬼ごっこの始まりだ。
攻撃は変わらず、何かを投げるか突撃するか。
腕の本数が増えたから多少、モノが飛んでくる速度は上がっているし、飛びかかってくる速度も上がっている。だが、センの走りは以前よりも安定感が上がっている。し、速度も上がる気配がある。
走って逃げる分にはまだ余裕がある。
「セン、調子は?」
「ブルルッ!」
「ばっちりー!」と。なら、
「足元に気を付けて走り回って」
「出来るだけ、森から出ないようにお願いしますね」
出てしまうと、投げられている木や石がどこかへ飛んでいってしまいかねない。どこからか飛んできた石や木に当たって死亡…なんて痛ましい状況は作りたくはない。
「ブルルル、ブルルルッ!」
「「わかった、くるくる回るー!」…ですね」
「了解。走りはそっちに任せる!」
こっちはノサインカッシェラにちょっかいかけて弱らせよう。
「アイリ。遠距離攻撃の手段はある?」
「………鎌を投げるくらいなら」
?何故答えるのに間が……。あぁ。なるほど。あるにはあるけれど、きっと使いたくないんだろう。
ならば仕方あるまい。赤目を見られて嫌われると思っていたくらいだ。きっと『エルモンツィ』絡みの何か。
この子が「明かしてもいい」と思えるほど、ちゃんとアイリにこっちが信頼されていないのが悪い。
『浄化』出来る何かだったら流石に、ちょっと理不尽な気がするけれど、怒る。だが、それなら言ってくれる程度には信頼してもらえているはず。だから、俺のペンやファイル投げレベルのあろうがなかろうが大差のないものなのだろう。
なら、無理強いはしないさ。この子が言う気になってくれた時に言ってくれればいい。
「四季!」
「はい!」
「「『『氷弾』』!」」
氷の弾を乱打。飛んでくる石木を砕きながら、ノサインカッシェラへ着弾。体の肉を抉る。
瘴気も減っているはずだが、あまり重くない損傷でも回復に力を回している。だったら怪我をいっぱい作るほうがよさげだな。
「「『『氷槍』』!」」
「「『『氷弾』』!」」
敢えて巨大な氷槍を押し出し、腕で破壊させ、槍の影に隠しておいた小弾で無数の風穴を開ける。
「グルアアァ!」
「セン!あいつ、木を掴んで移動し始めた!」
「前に落ちてくるかもしれないので、ご注意を!」
「ブルッ!」
今までやってこなかったのは飛びかかってくるより遅いからだろう。だが、木を掴んで強引に軌道を変えられる。その利点を重く見ることにしたらしい。
しかも移動だけじゃなく、そのまま引っこ抜いてぶん投げてくる。鬱陶しさは以前の比ではない。
って、マジで前に落ちてきやがるか!
「「『『放水』』!」」
「「『『岩弾』』!」」
水を叩きつけ、舞い上がる土や投げられる木、ノサインカッシェラを諸共に押し流す。思いっきり岩をぶつけてたたらを踏ませ、センの逃げる時間を確保!
っ…、魔力の使い過ぎか?頭が痛い。
「あの…、習君。微妙に回復してませんか?」
!?嘘…、
「じゃないね」
瘴気を使わせたはず。だのに、逃げ回り始めた時よりも微妙に総量が増えている気がする。籠に与えた損害以外、振り出しか?
何かカラクリがあるはずだが。
「グルアアアアア!」
「…二人とも!」
ノサインカッシェラが雄たけびを上げて、高らかに巨大な何かを掲げる。掲げられているものはあまりにも巨大で、こちらに降ってくるはずの雨を遮ってしまっている。
そんな大きさのものはこの森にはボロス達の木しかない。くそっ、戦闘の間にここまで戻ってきてしまっていたのか!
「セン!」
「ブルッ!」
センが加速。猛スピードで遠ざかり始めるが、ノサインカッシェラも負けてはいない。すべての手を使って担ぎ上げると、勢いよく放り投げてくる。
森をなぎ倒しながら飛んでくる巨大な木。センが射線から外れようと頑張って走ってくれているのに、ノサインカッシェラが強引に軌道を変えてくる。
センの速度は普通なら追いつけない。それくらいこの不安定な森で圧倒的な速度を誇ってくれてる。
だが、いつの間にかノサインカッシェラの足は6本に。腕は10本になっている。その増えた分の速度上昇に加え、俺らの魔力みたいに瘴気を回して『身体強化』っぽいものまで発動。その上、進路を阻むものがボロスの木でなぎ倒されているから何もない。
色々積み重なった影響で、微妙にセンの方が遅い。いつか当たる…というより、そろそろ当たりそうですらある。だが、ギリギリまで引き延ばせばその分『身体強化』に回した瘴気を消耗させられる。
「セン、消耗を抑えて走れ」
「万一、当たりそうになれば撃墜します」
「ブルッ!?」
アイリとセンが驚いてる。
「…そんなことしたら、二人の魔力が…」
「確実に尽きて気絶するだろうね」
「ですので、申し訳ないですが後はお任せします」
本当は取りたくない手段。気絶なんてすればすさまじく足手まといになるのだから猶更。
だが、ノサインカッシェラは単細胞。視界に入っている一番近いやつを狙う。
たぶん邪魔にはならない。そして、アイリが見られることに躊躇する力があるのなら、俺らは気絶している方が思う存分戦えていいはず。
などと理由をつけてみているが、この状況に追い込まれた時点で取れる手段はこれ以外にない。見ていても籠が脆くなっているのがわかる。振動でガタガタ揺れて蓋が外れそうになっている。
あと少しで籠は自壊するだろう。だが、それを見届けることはできない。
…ほんと、ままならない。そして、もう限界だ。
「アイリ!セン!悪いけど後は任せる!」
「お願いします!行きますよ!」
今ある攻撃魔法──『火槍』『火球』『旋風』『氷槍』『氷弾』『岩弾』『岩槍』『放水』──を全て四季と結んだ手の中へ。それらを順番に全発動。
ノサインカッシェラの向きを保とうとする試み諸共、飛んで来るボロスの木を打ち砕く。そして、残った魔法でノサインカッシェラ自体も吹き飛ばす。
っ…、何とか自力で安全っぽいところに行きたい。が、駄目だ。魔力がなさ過ぎてまともに動けない。
「…ごめん。あとは何とかするから、安心して」
「ブルッ」
少し悲しそうなアイリとセンの声。すまない、後は任せる。




