2話 王城にて
「あ。習。この階はクラスメートが集まってるんだが、そろそろ寝てるだろうから静かにな」
了解。忘れないうちにトレーを部屋の前の返却台へ置いて…、
「行こう」
「あぁ。あ。俺の部屋はお前の部屋の横な」
「そうなの?俺が心配だったから?」
「ほざけ」
ひでぇ。
「べ、べつにあんたのことが心配だったんじゃ」
「男のツンデレとか誰t…」
誰得って思ったけどタクはイケメン。つまり、イケメンのツンデレ。…需要有るのでは?爆ぜろ。
「お前も大概では?」
「ははっ、気のせいだ」
たぶん。
「とはいうものの、普通にお前、心配って言ってくれてたな」
「実際、心配だったしな。クラスメートも心配してくれてたぞ」
ありがたいことで。だったら今度機会があったら感謝の気持ちを伝えておかねば。
「道は覚えられるよな?」
「もちろん。方向音痴じゃないぞ」
部屋を出て左へ。突き当たりまで行って右に折れる。階段の折り返し部を2階降りて反転、直進。
「ここだ」
「ここか」
階段から廊下を2本行ったところの右ね。覚えた。
ただ、図書室というにはでかい。図書館と言われた方がしっくりくるくらいに本がずらっと並んでる。
「あれ?司書さんとかいないの?」
「いない。出入りの監視は魔道具で。本の検索もまた然り。ついでに鐘の音もここでは聞こえない。静謐な空間をご提供」
読書にはぴったりの環境だ。
「中世世界では高価なはずの本はこの部屋の中であればどこでも持って行けるらしい」
「それはまた…すごいな」
「本が大好きな勇者が昔いて、ある程度この形を作ったらしい」
色々反発があっただろうに…よくやるよ。でも、その恩恵を俺らは受けられる。感謝せねば。
「ふわぁ…」
「お、珍しいな。この時間にお前があくびなんて」
朝なら兎も角、夜にあくびとか滅多にしないのに…。…寝るときはこてっと寝るからかもしれないけど。
「ごめん、習。なんか安心したからか眠くなってきた」
「そか。ありがとう。タク。ゆっくり休んでくれ」
「あぁ、寝させてもらうな。お前はここを満喫するといい」
俺の心配してくれて眠れてなかったのかな?ごめん、タク。ただ、一つだけ言わせてほしい。…満喫って言われても既に出発まで8時間きってるぞ。
まぁいいか。図書館図書館。…あれ?本が机の上に積まれてる…。こんな夜中にとは思うけれど、それは俺も同じか。24時間営業ならば他に人がいてもおかしくはない。
この世界の話ってどこにあるんだろう?神話はいいから一般的な話。…検索の魔道具使うか。
うわぁ。魔道具の外見はもろにパソコン。違和感がすごい。…こっちの言語であっても、普通に読めるし、字もうてるけれど慣れていないから面倒くさい。「日本語」って書いてあるところをポチッと。
全部日本語になった。キーボードも馴染んだ配置。えっと、異世界…って違う。こっちからしたら地球が異世界…って出た。「もしかして」すらなく出た。
上に(私達から見て)異世界『アークライン』、(こっちの人から見て)異世界『地球』、(どっちから見ても)異世界ってタブまでついてる。最適化されてる…。
よさげな本…は全部棚にないっぽい?図書館の地図が光ってるのは…山積みのところか。仕方ない。声をかけて読ませてもらおう。
本の山の前…からだと相手の顔が見えない。黒髪が見えたから多分同類だろうけど…、どんだけ積んでるんだろう?…横に回ろうか。
「あの、すみません」
「ひゃっ!?」
!?
声をかけたらめっちゃびくってされた!?
「あ、ご、ごめんなさい。わた…」
あたふたする彼女が頭を下げながら何か喋ってる。でも、声が耳に入らない。
彼女の髪は背まで届きそうなくらい長く、滑らかで黒い輝きを放っている。彼女の黒目はいろんな人の目線を吸い込んでしまいそうなほど綺麗で、彼女自身の持つ雰囲気はたおやかで美しく、大和撫子という言葉の体現。
本当に綺麗な人だ……って、俺は何をしてるんだ?初対面の人をじろじろ見ちゃ駄目だろうに。
「「ごめんなさい!」」
頭を下げたら行動がかぶった。びっくりして頭を上げるとまた目が合う。えっと、こういうときは…、
「初めまして、俺は森野習といいます。クラスメートの方…でよろしいですか?」
自己紹介。ぐだっとなりそうなら話し出せる雰囲気を作ってしまえ。
「あ。これはご丁寧に…。私は清水四季と申します。どうぞよしなに」
……話が続かない。何故だ。友人の女性とは喋れるのに…!いや、理由は明らかか。多分、俺、この人に一目惚れしてる。
「あの…、森野さんとお呼びしても?」
「あ。はい。もちろんです。では、こちらは清水さんとお呼びしても?」
よかった。頷いてくれた。えっと、共通の話題……、あぁ。あった。
「「あの」」
被ったぁ!?
「「どう」」
またか。えぇっと…、手でどうぞどうぞしてみても、清水さんもしてる。えぇい、
「清水さんも起きるのが遅かったのですよね?」
「はい。あなたも…ですね?」
コクっと頷く。
「貴方も西光寺達の班ですよね?戦えます?」
「無理ですね。言語理解はできるのですが」
「おぉ、同じですね。ここに来られたのは…、」
「はい、寝れないからですね。後、本が好きですし。…召喚される直前も入り口から一番遠いところにある本棚から本を取ろうとしていたのです」
ほんとうに本が好きなのですね…。
「差し支えなければシャイツァーのお話を聞かせていただいても?もちろん、俺も話しますので」
「はい、いいですよ。これから一緒の班になるようですし」
了承してくれた。じゃあ、先に俺の話から。
「俺のシャイツァーはこの『ペン』ですね。できることと言えば、いろんな筆記用具の筆跡で字を書くことくらいですが…」
「あぁ、でしたら私と似たようなものですね」
え?この微妙なのと似てる?
「はい。私のはこの『ファイル』です」
彼女が取り出したのは本当に何の変哲もないファイル。豪華に見えるように飾り立てられてはいるが、それを取っ払ってしまえば、5枚セット売りで売ってるようなものと変わらない。
「できることと言えば、このように」
すっとファイルに手を入れて、取り出す。手に持っているのは…紙?
「紙を出すだけです。種類は豊富なのですが、だからどうするの?…という。あ。これ、差し上げますので、書けるか確かめてください」
「了解です」
ペンで適当に…あぁ、書けるね。
「書けますね」
「ですね。…だから何って感じなのですけど」
…やめてください。苦笑いする以外、何もできないので。
「あ、でも、メモには使えますね」
「確かに。森野さんであれば、筆記用具なしで書けますか…。何もなしでメモができるのは便利ですね。では、大量に差し上げますね。一応、10枚くらい」
そんなにもらっても使い道…はあるね。メモっていったばかりじゃん。
「ありがとうございます。で、提案なのですが、清水さんが既に読んだ本と読みたい本を教えてくださいませんか?時間もないので手分けしてメモできそうなことをメモしましょう」
「いいですね。さすがに読み切れないと思っていましたので渡りに船です。えっと、この山は読んだので…、」
読んだ(山一つ)……目が覚めたのは俺と同じくらいだと思うのだけど。読むのはやい。
「適当に山で分けますね。私はこの二つ。森野さんはそちらの二つ。時間があれば残りの山を。…あ。共通の山は深いことを書いてるようでして、浅く広くの今だとあまり重要ではないです」
「了解です。では、手分けしていきましょう」
「はい!あ。紙、足りなくなったら声かけてくださいね」
ありがとうございます。では、読みますか。
一冊目は魔法とシャイツァーの話。「どちらも術者の意図や思いを反映する」…的なことが冒頭に書いてある。タクが双刀なのはあいつらしい。めっちゃ好きそうだし。…そうなると、俺のが意味わからないけれど。清水さんのも意味がわからない。
ま、例外もあるか。本が正しいとも限らない。それはさておき、考察は今、いらないな。ひたすらメモって、後でそれを根拠に考察すればいい。
メモに徹しよう。
______
「おい、習」
…ん?
「おい、習。起きろ」
この声は…タク?宿題なら勝手に鞄からとって…、
「おい、習」
むぅ。強情な…。ってそういえば異世界召喚くらってたな。起きるか。
「おはよ、タク」
挨拶しながらのびをする。あぁ、体が硬い。寝落ちしたか?
「あぁ、おはよう。で、」
「あ。待って」
お前の横にいる人の格が明らかに高いのはわかる。でも、清水さんが寝てる。寝たままはまずい。
「清水さん。清水さん」
声かけても駄目。…揺すって起こそう。ごめん、触る。
「清水さん。起きて」
「んんぅ…、ふぇ?あ。森野さん。おはようございます」
「はい、おはようございます。清水さん。あの、ごめんなさい。触って起こしました」
「え?…あ。あぁ。構いません。むしろうr…何でもないです。ところでこちらのお二方は?」
……あれ?返事がない。
「タク?」
「え、あ。ごめん。えっと…、居たんですね」
居た?何とち狂ったことを…?
「あぁ。なるほど。森野さん。実は私、本を読んでいるとものすごく影が薄くなる体質?でして…。本を読んでいて寝落ちしたので、その体質が発動。お二人は私に気づけなかったので、突然現われたかのように見えているのかと」
!?え、そんなのあるの!?
「えぇ、そんなことがあるのです。あぁ、ほら。初対面の時、失礼なことに驚いていたでしょう?それもその関係です。まさか、森野さんが私を見つけられるとは思わなかったので」
マジですか。
「えっと、タク?」
「え、あ。あぁ。うん、確かに見えなかったぞ」
そっちは聞いてない。確かにほんとに?って聞きたい案件ではあるけれど、本人がそう言ってるのに疑ってどうする。嘘つく場面でもなし。…俺には実感がないけれど。
「あぁ、違うか。おはようございます。俺は矢野拓也。この習とは腐れ縁です。あなたは清水さんでよろしいので?」
「えぇ。清水四季と申します。以降よろしくお願いいたします。そして、そちらの女性は…?」
あ。格が高いってわかってるのに放置してた。…やばくない?
「森野様、清水様。はじめまして。私はこのバシェルの第二王女、ルキィ=カーツェルン=バシェルと言います。どうぞよしなに」
王女…様?格が高いってレベルじゃなかった。変な汗が出てくる。やらかした…!
「「すみませんでした」」
「いえ、無礼打ちとかするつもりはありませんので…」
許された。
「そもそも論になるのですが、ただの王女よりも勇者様の方が、格が高いです。ですので、ご心配なく」
それなら安心……ん?勇者…。
「「あ!出発!」」
「仲良く手遅れだぞ」
あぁ、やっぱりか…。
「会話をしなければ間に合っt「カーンカーンカーン」…訳はないよな」
三回なったから今の鐘が3の鐘。出発時刻の2時間後。普通に間に合わん。
「やらかしたか…」
「ですね、やらかしましたね…」
「とかいいながら二人していそいそ本を開いてんじゃねぇ」
こつかれた。やっぱり駄目か。
「お二人ともかなり余裕がおありですね?」
「焦ってもどうにもなりませんし…」
「それなら、まだ読んでいない本でも読んで情報でも集めようかと」
情報は生命線。ないよりはある方がいい。
「なるほど。ですが、残念なことに時間がありません」
「「何故です?」」
「それはですね…」
……なんかめっちゃ言いにくそう。ありそうなのは…、
「「役立たずは死ね」」
目に見えてルキィ様ががっくり落ち込んだ。正解か…。最悪だな。
「習。清水さん。上を見ても天井しかないぞ」
知ってるわ。
「さ、さすがに役立たずは死ね。…は極端です」
「が、それに近しい意見はあるのでしょう?」
「そうですと私達は格好の獲物ですね」
ペンとファイル。これでどうしろってレベルのシャイツァー。殺しに来られてもおかしくはない。ルキィ様に言うことではないが、召喚しといてなんたる扱いか。
「まさかとは思いますが…、」
「勇者は戦える人だけが勇者ということです?」
「いえ、そんなことはないのですが…」
一部が暴走してる…ってことか。面倒な。
「にしても…、二人ともさっきから息ぴったりだな」
「ですね。見えない清水様を森野様が見えるという点も含めて通じ合った夫婦のようです」
!?それ言うの!?しかも今!?そういう状況じゃないでしょ!?いや、ルキィ様が申し訳なさのあまり縮こまれておられたけどさ…!?
「ははっ、すまんな。ついにお前にも春が来たかと思うと嬉しくてな」
う そ つ く な。確かにその気持ちはあるだろうけど、それが理由じゃねぇだろ。
「のんびり本を読もうとしてたやつが何を言うか」
時間の無駄って観点から見れば同じくらい無駄…か。
「はぁ、確かにな」
「でも、お前、実際に清水さんのこと好きだろ?」
確かにそうだけど…。
「たぶん脈有りだぞ。よかったな」
視線の先の清水さんはルキィ様の言葉がまだ尾を引いているのか顔が真っ赤。チラチラこっちを見る目は俺の気のせいでなければ、気になる人に向ける目だ。
「タク、何で起こしてくれなかったの?」
ニコニコするタクと、微笑ましそうに見てくるルキィ様。二人の作るぽわぽわした空気がいたたまれない。無理矢理話題を変えてやる。
「あー。それはな。寝つくのが遅くてな…、うだうだしてたら出発時刻。着替えて見送り出ましょうね。だと」
おぉ、乗ってくれた。ありがとう。
「私はそもそもお二人がここにいることを知りませんでしたので…」
でしょうね…。誰が悪いかと言われれば圧倒的に俺ら。寝落ちしたのが悪いとしか言えない。
「図書館に誰も人が来なかったのは…」
「召喚でわたわたしていましたので…。また、そもそもですが誰かが来たとしましても、明日出発の人がここで寝ているとは思いませんので、起こさないかと…」
でしょうね…としか言えない。
「出発を待ってくれなかったのは…?」
「勇者が二派に分かれたことを知られたくないから、とっとと出したかったっぽい」
勇者の数が多くても、やっぱり勇者がどっかに行くと民へ不安感が広がる…って話か。とはいえ、マジで召喚そうそうにたたき出すとは思わなんだ。
「あ、後、大変お恥ずかしい話なのですが…「望みを聞いてくれない勇者ならば、気前よく物を与えて出発させて、殺せば全部取り戻せる。その上、頼みを聞いてくれない勇者の存在を闇に葬れる…!」という愚かな考えがありまして…」
ルキィ様がこの上なく言いにくそうな顔をしていると思ったら「そりゃ言いにくいよね」って話が出てきた。
「今からでも西光寺達を追いかけよう…って俺もルキィ様も言わない理由もこれな。仮にも勇者に差し向ける追っ手。多分強い。二人で追いかけてる最中に遭遇しようものなら、さばききれない可能性がある」
確かに。それにしても、本当に対応がひどいな。
「うぅ、すみません。そもそも召喚自体を止めたのですが、聞き入れてもらえず…。うぅ、姉様も父様も何を考えておられるのやら…」
姉様と父様…、第一王女と王か。
「タク、第一王女と王は?」
「見てない。が、ルキィ様は信用できる」
うげぇ…。であれば、王女と王がやばい可能性が高そうだ。
「あの、今何をお話になっていたので?」
「え?あ。あぁ。ルキィ様が次女であらせるならば、王女様と呼ぶだけでは区別できないと思いまして…」
「え?あの、呼び方は自由にしてくださいね?」
「ありがとうございます」
さすがに姉と父がやばいのでは?と言うのは憚られる。雑なごまかし方だけど、ごまかせたと思う。
「それで、です。申し訳ないのですが、お二人には西光寺様達の向かった方角とは逆、北へ向かってもらいます」
了解です……が、見間違えでなければ、ルキィ様がぷるぷる震えておられるのですが。
「あのいけ好かない糞が。人目がなければ私が殺してやるのですが…」
王女様が使っていい言葉じゃない言葉で呪詛を垂れ流しておられる…。
「たぶん、王付きの医者のこと。あいつは見た。たぶんやばい。…それと、召喚当初しかみんなと一緒じゃなかったから、誰かまではわからんかったが…、一人やばいっぽい」
!?
「それは既に?」
「あぁ。伝えた。王のことも含めてご存じだ」
おい、さっき誤魔化した意味。ただの道化じゃないか。
「失礼。皆様、参りましょう」
「「「了解です」」」
迫力に負けてとっさに返事してしまった。でも、ルキィ様について行けば悪いことにはならないだろう。
「閉じろ」
ルキィ様も声で図書館の本棚が移動、図書館の入り口を物理的に封鎖した。
「私達以外に人は…いませんね。では、開け」
俺らがさっきまで使っていた机が左にスライド。床がパカッと開いて階段が出現。
「私の部屋に繋がる隠し通路です。王族はこういう通路を多々持っているのです」
「俺らに見せても構わないので?」
「問題ありません。これが私の誠意です」
なるほど。であれば、こちらも何も言いません。
人一人が余裕で通れる少し暗い通路をただ進む。階段を降りてすぐは直線だったが、今は微妙に傾斜しているようで、上へ進んでいるような気がする。
「到着です。森野様、清水様はここでお待ちくださいませ。…火よ」
正面の壁が消え去り、可愛らしく豪勢な部屋への通路が出現。
「私の部屋です。…あまり見ないでいただけると嬉しいです。それはさておきまして、これを」
ルキィ様がぽいと放り投げた袋を受け取る。何が入っているのかはわからないけれど、結構重い。
「路銀です。かき集めたので少ないですが、お納めくださいませ」
「習、右に右折すれば外に出られるらしい。誰にも見られなければ追っ手は出されない…はず」
「…寝坊されたお二方をわざわざ追うとは思えませんが…。西光寺様方の追っ手に見つかると面倒ですので、このまま誰にも見られないで外へ出てくださいませ」
了解です。
「この道は、王族自ら作る道です。私しか知らないので安全なはずです」
ルキィ様、それフラグです。
「あ。あと、外で苗字は名乗らない方が…と思いましたが、設定にもよりますね。苗字があると貴族と思われやすいこと。黒髪黒目に勇者が先祖である貴族が多いことにご注意を」
「習、清水さん。二人で行くならよそよそしいのはやめとけよ。一人旅って思われるとやっかいだ」
絡まれやすそうだしな…。了解。
「では、行きますか。森野さん」
「あ。少しだけ待って。タク」
タクを手招き。
「なんだ?」
「お前、ルキィ様に一目惚れしてるだろ」
「なっ!?」
図星か。やっぱりね。どおりでそんな感じがすると思った。
「ばっ、おまっ…。何で今!?」
「仕返しだ」
図書館での清水さんあたりのね。それ以上でもそれ以下でもない。
「ま、達者でな」
「あ、あぁ。元気でな」
「あ。荷物はよろしく」
「!私のもお願いします!」
忘れるところだった。別に大事な物はないけれど、頼めるなら頼んでおかないとね。
「ごめん、清水さん。行こう!」
「いえ、私も荷物頼めましたのでちょうどよかったです」
さて、では、今度こそ。
「「行ってきます」」
「「行ってらっしゃい」」
進もう。ここを抜ければもう外だ。




